職も住処もなくした私が訳ありアパートの管理人にスカウトされました。何やら事情があるようです。

ピヨピヨ

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不思議な住人1

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 そして一月後。
 
葵は張り切って朝からアパートの入口を掃く。

「おはよう、葵。お客さんから美味しいおかしもらったから、一緒に食べよう。集会場においでよ」

 彼女は金髪碧眼のロシアン美女イリーナだ。日本語が流暢で、その姿を見なければ、日本人かと思ってしまう。

「おはようございます。イリーナさん、ここのお掃除がおわったら、集会場に行きますね」

 今日はレイワ不動産への出勤日ではない。彼女もそれをしっているから声をかけてくれたのだ。

 アパートの一階に集会場があり、ここの住人は皆そこの鍵を持っていて、住人たちが茶を飲んでいたり、鍋をつついていたりと交流の場にしている。年齢も性別もバラバラなのに皆仲がいい。

 彼らに声をかけられたら、なるべく応える。これも管理人業務の一環なのだ。許す限り住人の求めに応じるように。契約事項にそうあった。

 最近では密な近所付き合いを嫌がる若者が多いという。これがいやでみなここの管理人をやめてしまったのかと思う。少し前ならば、葵もそう思ったかも知れないが、孤独とひもじさを知った今ではそうは思わない。

 それにここの住人たちは、一緒にお菓子やご飯を食べることは好きだけれど、こちらに干渉してくることはなく、いまのところ彼らとの関係を息苦しく感じることはなかった。葵にしてみればここは勤めやすい職場だ。わりとアパートの管理の仕事が気に入っている。

 ただ一つ、疑問があって、彼らは一様にどこか不思議で……。

 掃除をおえて集会場に入ると、すでにイリーナが革張りの大きなソファーに座って待っていた。
テーブルには限定品のクッキーが更にもられ、載せられている。彼女はロシアンパブで働いてい、朝は仕事のかえりなのに、いつも元気だ。
 葵はイリーナのために早速紅茶の準備をする。

「イリーナさんはジャム入りですよね」
「うん、よく覚えてたね」

 イリーナが破顔する。

「鬼頭さんも飲みます?」

 奥の部屋のソファーで寝ている30代前半とおぼしき青年にも声をかける。ガタイが良く強面だが、なかなか整った顔立ちをしている。いかにも女性にもてそうだ。だが浮ついたところはなく、仕事がないときはななぜかここで酒を飲み昼寝する。鍋などは自室ではなく集会場で作り、誰かしらお相伴に預かっていた。


「いや、俺はいい」

 そう言って手酌で日本酒を午前中からかっ食らっている。言い方はぶっきらぼうだが、彼の面倒見のいい人だと知っている。社長滝崎からの情報によると、鬼頭は投資家でかなり儲けているらしい。

 そう言えば、彼はつい先日家賃は50年分払い込んであると言っていた。

(うん、それ、かなりおかしいよね? 普通ならマンション買うよね?)

 ここの住人は彼に限らず時折おかしな言動をとる。


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