職も住処もなくした私が訳ありアパートの管理人にスカウトされました。何やら事情があるようです。

ピヨピヨ

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業務終了後2

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 一面に敷かれた玉砂利を踏みしめ、手水舎にいく。柄杓で澄んだ水盤の水を掬いさっさと手を決める。本当は口も清めるらしいがどうもそれは抵抗があった。

 境内に人っ子一人いないので、さっさと済ませてしまおうと拝殿に向かう。石段を上がり、鈴を鳴らす。鈴の音に清められるような気がする。それから賽銭を投げ入れた。

 二礼二拍手一礼、これで清められたのだろうか? 

 それほど広い神社ではなく拝殿の周りに竹林というほどではないが竹があり、笹が茂る。
切り立ったビルに囲まれ、ここだけ、街の喧騒から切り離されたように、しんとして厳かな雰囲気だ。

 何となくご利益がありそうな気がする。社務所の明かりは落ちていて、お守りは買えそうにもないが、具合が悪ければそのうちここでお祓いでもしてもらおうと思った。

 石段を下り鳥居を抜ける瞬間、何か気配を感じた気がして振り返る。しかしそこには別段何もなく……。ただ切妻造りの建物はどこかで見た覚えがあるような気がした。


 今日は疲れたので晩御飯をコンビニで買って帰り、熱いコーヒーを入れる。
 会社を出る時は疲れきっていて、すぐにでも眠れそうだったのに、コーヒーを飲んだせいのもあるのか一向に眠気はやってこない。身体だけが疲れていて妙に神経が昂る。

 葵は、いつものように風呂へ行く準備をした。生活のリズムがそれぞれ違うせいかここの住人と風呂で会ったことがない。
 
 いつも貸し切り状態のうえ、タダなのだが嬉しい。風呂は温泉のように広いのに、一人で入っても怖いと感じたことはない。

 かけ湯をして湯気の立つ岩風呂に入ると疲れがさらさらと湯に溶けていくようだ。竹林の風流なペンキ絵もいい。いや実際、少しもペンキ絵にはみえないのだが。写実的というかまるで大きな窓の外に景色が広がっているようだ。

 そのときザワリと風が吹いたように竹林が揺れた。この絵について動くことがあると社長から聞いている。ペンキ絵だなんてはなはだ疑わしいが、深く考えないことにした。そう、考えのが一番だ。きっと気のせい。
 それに不思議と怖くない。
 
 しかし、竹林の奥に小さく見える拝殿に葵は「あっ」と声を上げる。

 さっきお参りした神社にそっくりだ。だが、あそこはビルに切り取られた一角で、こんな鬱蒼とした竹林などなかった。そうだ、神社などどこも同じような造りをしている。それともあの神社の昔の姿なのか。そんなふうに葵は納得した。

 ちゃぽんと今日も湯気の向こうに、髪の長い女性がみえる。ただ岩風呂は大きく、彼女までは距離があり湯気が立っているので、どんな人なのかは見えない。
 わざわざ洗い場よりもずっと奥にいることから、誰にも邪魔されたくないのだと思い葵は声をかけないことにしている。

 それに昨晩から美玖と舞香と濃い一日を過ごしたので、別に人恋しくもない。むしろ一人を所望。

 ああ、次の給料日が楽しみだ……。
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