職も住処もなくした私が訳ありアパートの管理人にスカウトされました。何やら事情があるようです。

ピヨピヨ

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偶然? の出会い

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 また、おかしな相談者が社長の元に来たらどうしようと、一週間ほど気をもんだが、その気配もなく葵はあっさりとあの恐怖を忘れた。
 よく考えてみたら、怖かったのは襲われた時だけだった。後は美玖と語らっただけ。

 そんな順調な生活が、ひと月ほど続いたあと、亜子と一緒にランチに出た。勤め始めて二か月が過ぎると葵の懐も潤い、週に一度は外でランチを食べる。会社の周りには安くて美味しい身でがたくさんあった。

「お客様からいい店を聞いたんだ」

という女子社員水町亜子に連れられて、お茶屋ふうの店に入って行く。

「ここ居酒屋さんですよね」
「そう、この間のみに来たんだけれど、料理がおいしくてね。ランチも期待できるよ」

 葵はサバの味噌煮定食で、亜子は生姜焼き定食だった。
「水町さん、これ美味しいです。自分ではこの味はだせません!」

 葵が感激して言う。二人はいつの間にか「亜子さん」「葵」と呼び合う仲になった。

「この生姜焼き定食も最高! これで午後の取り立ても頑張れる!」
「え? 取り立てって、なんですか?」

 まさかこの不動産や金貸しもやっていたのだろうか? ぞくりとする。

「ああ、家賃の取り立て。滞納している奴らがいてね」

 葵はどきりとした。自分も家賃を滞納して追い出されたのだ。もちろん踏み倒すことなく、いまは少しずつ返している。

「大変なお仕事ですね。でも家賃滞納している人って払えるお金がないんじゃないんですか?」
 
 亜子はどうやって払わせるつもりなのだろう。

「まさか! あいつら、うなるほど金をもっているのよ。絶対に払わせる」

 亜子がキリリとまなじりを上げる。なまじ美人なので迫力があって怖い。家賃回収業務など自分には無理だ。雑用係でよかったとほっとする。

 店を出た後、そのまま仕事に行くと言う亜子と別れ、一人コンビニにはいる。食後のちょっとしたデザートが欲しかった。

「葵」

 出し抜けに声をかけられた。

「え? 慎吾……」

 にこにこと笑って、葵の横に佐々木慎吾が来る。彼は葵を捨てた元彼だ。よくこんなふうに声をかけられるものだと呆れてしまう。

「どうしたんだ。探したんだぞ? アパートからいつの間にかいなくなってるし、今どこに住んでいるんだ。それ、どこかの会社の制服だよな? 今つとめているのか」

 久しぶりに会った元カレにイラっときた。確かに顔はいい。だが、本性は最悪だ。馬鹿にするにもほどがある。あそこまでひどい目に合わされたら、すっかり愛も醒めてしまうというものだ。 
 瀧崎に拾われなければ、間違いなく凍死か餓死していた。

「あなたには関係ないでしょ? さようなら」

 葵がそのまま去って行こうとすると圭吾に腕を掴まれた。

「ちょっと待てよ。久しぶりにあったんだから、お茶でも飲もうよ」
「さわらないで!」

 葵は圭吾の腕を振り払う。

「今忙しいなら、就業後に会おうよ。どこに勤めているの」
「どうして、そんな事、あなたに言わなきゃいけないの? じゃあね」

 
 二股男などごめんだった。しかも金まで奪い取られた。今ならわかる、騙されたのだと。あの頃信じていた自分が馬鹿だった。

 会社の場所など知られたら大変だ。葵は彼の元から走り去った。
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