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必然の出会い?
しおりを挟むその日もおかしな客が来ることなく、会社の出の仕事はつつがなく終わる。
晩御飯を作ろうか、それともコンビニで買って行こうか。などと考えながら、駅の改札をでる。家までは歩いて5分だが、その前にやはりコンビニへよろう。
駅の階段を下り横断歩道に差し掛かると
「葵」
と声をかけられ心臓が止まりそうになる。
「やだ。なんでここにいるの? まさかついてきたの」
慎吾だった。もうアパートは直ぐ近くだが、住まいを知られるのは嫌だった。
「何言っているんだよ。自意識過剰だな。偶然だよ。俺もこのあたりに住んでるんだ。ところで今晩泊めてほしんだけど」
「はあ? なんで?」
実は慎吾とは最後の一線は越えていない。だから、二股かけられたうえ、騙されて金はとられたが、なんとか忘れることが出来た。
「愛美と別れたんだ」
「愛美?」
「だから、元カノだよ」
ちょっとイライラしながら、慎吾が言う。そういえば、彼が本命だと言った彼女は愛美という名前だった。そんなつまらないことを思いだす。
「そんなの知らないよ。なんで私が佐々木さんを泊めなくちゃならないんですか? 葵なんて気安くよばないで」
「そんなこと言わないで、助けてくれよ」
「はあ? 意味が分からない」
慎吾は本当に自分勝手だ。夢中になっている間は気付きもしなかった。彼は金が引き出せなくなった葵を捨てたのだ。
住んいるアパートは知られたくない。慎吾を振り切って遠回りすることにした。葵は踵を返すと駆け出した。すると彼が全力で追いかけてくる。
「やだ! ついてこないでよ!」
すぐに追いつかれて腕を掴まれた。怖い。
「ちょっと待ってくれ、あれにはいろいろ事情があったんだ。頼むよ。話だけでも聞いてくれ」
必死な表情で頼んでくる。少し心が揺れた。話を聞いてやれば気がすんでもう葵の前には現れなくなるのだろうか? 何となくつい最近出会った生霊を思い出す。
「家に連れて行くのは絶対にやだ。でも話だけなら聞いてもいいよ」
凄く嫌だったが、葵が譲歩する。
結局、駅前のコーヒーショップでという事になった。
「あ、俺ちょっといま金持ってないんだ」
彼の常とう手段だ。葵といる時、自分の金を使いたがらない。
「あっそ、じゃあ、さよなら」
「いや、やっぱり自分のぶんならあるから」
本当になんでこんな奴と付き合ったのか分からない。魅力的に思われた彼の顔も声もしぐさも今では計算されつくしているように見えてわざとらしく感じる。
一刻も早く帰りたいが、絶対に住んでいる場所だけは知られたくない。もう慎吾の本性は分かっていた。住所をしられたら、絶対に金を借りに来る。
なぜ、彼はきちんと会社勤めしているのに金遣いばかり荒いのだろう。
今もいいスーツを着てピカピカの靴を履き、葵の今の給料の三か月分はする腕時計をつけている。本当にその靴と時計をまず売れといいたい。
駅前のコーヒーショップで別々にオーダーし、同じテーブルに着く。
「で、話って何?」
「俺、愛美に騙されていたんだ」
「ふーん」
いや、だから? という話である。彼が誰に騙されようと葵には関係ない話だ。
「あいつ、他に男がいたんだ」
「それで?」
ますますどうでもいい話だ。愚痴につきあわされているのだろうか。聞いてやれば、二度と現れないでくれるのだろうか? こんなくだらない事を言い続けるつもりなら、葵は席を立つつもりだった。
話を聞くだけならとはいったが、やはり我慢できない。生霊、美玖のときのように共感できるものが何もない。
「だから、お前ともう一度やり直したい」
「はあ? なんでそうなるの?」
「いなくなってから、気付いたんだ。お前がどれだけ大切な存在だったか」
「ストーップ!」
葵が慌てて止める。いくら元さやしたいからといってもセリフが陳腐すぎ。殴ってやりたい。
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