職も住処もなくした私が訳ありアパートの管理人にスカウトされました。何やら事情があるようです。

ピヨピヨ

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只今業務中3

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 瀧崎がワンコールでる。

「社長! 大変です。お札を貼ったのに人形が」

 そう報告している間にビスクドールはベランダの方にやって来る。葵は慌てて、サッシを閉めた。

 するといったんはガラスに張り付いて葵に歯を剥きだしたビスクドールが、サッシの鍵に飛びついた。まさかと思う間もなく。かちゃりとうち鍵を閉められる。

 真冬の真夜中にベランダに締め出された。

「どうしましょう。社長、ベランダに……」

 電話が通じていない。震える手でかけなおす。結果は一緒で、何度かけても電話が通じることはなかった。霊障にはつきものの電波障害だ。

「嘘でしょう?」

 
 コートも来ていない状態で夜明けを迎えるとしたら、凍死してしまうかもしれない。
 一瞬慌てたが、いざという時は緊急避難用のベランダのパネルを割ればいい事に思い至り、何とか気持ちを落ち着かせる。

 しかし、それでは依頼人に迷惑がかかる。だから、隣室とのパネルを壊すのは最終手段として、社長が来てくれるのを待つことにした。

 「あんな要領を得ない電話で、しかも途中で途切れたら、社長来てくれるよね?」

 葵はがたがたと寒さに震えながら独りごちた。

 そして、こわごわとサッシの向こうの温かい部屋にいるビスクドールの動きを探るが、暗くて良く見えない。また水を出してまわっているのだろうか? これが水ではなく火をつけるようになったらどうなるのだろう。
 葵は寒さと恐怖で体を震わせた。
 
 これ以上目を凝らしても見えそうにないので、葵は冷たい夜風を避けるようにベランダの隅に蹲った。

♢♢♢


 どれくらい待っただろうか。手がかじかんで動きが鈍くなってきたころ部屋の電気がつけられた。瀧崎だ。ベランダの方に近づいて来る。

「君は、こんなところで何をやっているんだ」
「社長!」

 地獄に仏とはこのことだ。葵は瀧崎に縋りつく。

「まったく、お札は丁寧に扱ってください」

 早速お小言を貰う。

「え?」
「破けていましたよ」

 そういえば覚えがあるビスクドールに噛みつかれた時だ。あの時破けたのだろう。

「社長、私、ビスクドールに噛みつかれたんです。そこから、呪われて手が腐るかもしれません。人面瘡とかできたらどうしましょう」

「全く君は呆れるほど想像力豊かだね。ビスクドールに歯なんてあるわけないだろう」

 呆れたように社長は端整な顔をしかめる。

「いえ、でも本当に口を開いて」
「それはビスクドールに宿った魂が見せたイメージだ」

「え?」
「君が噛みつかれたと思い込んだから、こうやって傷ができたんです」
 社長が葵の右腕をとる。たしかに、親指に小さいが歯型がついている。


「社長、やっぱり無理です。怖い、怖すぎです」
「そうは言ってもね、君以上の適任者を見つけるのは大変なんだ」
「でも今回も失敗してしまったし」

 しかし、瀧崎は葵の弱音をあっさりと流す。

「いえいえ、あなたは霊を活発にさせることに関しては優秀です。素晴らしい才能です」
「そんな才能いりません」
 
 どおりでついうっかり霊現象を目撃してしまうはずだ。だが、葵はもっと他の事に秀でたかった。
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