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第9話 先輩、朝からキスって反則です
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引っ越しした次の日も、1日中荷物整理でバタバタし、二人ともソファで寝落ちしてしまった。
翌朝、窓から差し込む光で佐倉が目を覚ますと、すぐ横に真壁の寝顔があった。
「……っ! せ、先輩……」
距離は数センチ。寝癖もあるのに、やたらかっこいい。
佐倉は思わずじっと見つめ、つい小声で呟いてしまった。
「ずるいなぁ……」
その瞬間、ぱちりと目が開き、真壁が低く笑った。
「……朝から人の顔じっと見んな」
「ひゃっ! 起きてたんですか!?」
「視線を感じたら起きるに決まってんだろ」
佐倉は顔を真っ赤にして飛び退く。
しかし、真壁は腕を伸ばし、そのまま引き寄せた。
「……おはよう、佐倉」
「おはようございます……」
「で、何がずるいって?」
「え!?いや、その……んっ」
真っ赤な顔して、言いよどむ佐倉に軽く唇を重ねた。
一瞬の朝のキス。
佐倉は目をまんまるにして、完全に固まってしまった。
「……っ、せ、先輩!あ、朝はダメです!」
「なんでだよ」
「僕……この後、仕事行けなくなりそうです……」
「それは困るな、じゃ、ちゃんと言えって。言わないとまた塞ぐぞ?」
「う~、寝ててもかっこいいのはずるいって言ったんですぅ!」
意地悪に笑いながらも、真壁は額に口づけた。
佐倉が支度している間に、朝食の準備をしようと、隣の自分の部屋の冷蔵庫から材料を持ってくる。
真壁が慣れた手つきでスクランブルエッグを作り始めると、佐倉が横から覗き込んできた。
「先輩、料理できるんですね!」
「一人暮らし長いからな」
「僕のお弁当も作ってください」
「お前が作るんじゃないのかよ」
「僕は味見担当で」
「役立たずか」
わいわいとじゃれ合いながらの朝食。
食卓に並んだ卵とトーストを見て、佐倉がぽつりと言った。
「……こういうの、夢みたいです」
「何がだ」
「えへへ、好きな人と同じ部屋で、朝ごはん食べて、一緒に出勤するって」
真壁は一瞬箸を止め、照れ隠しのようにパンをかじった。
「そうだな」
通勤・通学で混み合う駅前で、同僚・西條が改札口から二人で出てくるところを見て眉をひそめた。
「……おい、マジか。なんで一緒にいるんだ?」
「え!? あ、えっと……」
佐倉が慌てて言い訳しようとすると、真壁がすっと前に出て冷静に答えた。
「見りゃわかるだろ」
「いや、わかるけどよ」
西條はあの真壁が一人に決めるなんてと、なんとなく寂しいような気持ちになるのだった。
出社後、営業部のデスクに座ると、佐倉がぽそっと言った。
「先輩……電車、一緒に行くの控えた方がいいですかね」
「気にすんな」
「でもバレたら……」
「バレたらバレたでいいだろ」
「ええっ!?」
「隠す気ないぞ、俺は」
「そ、そういうとこは……か、かっこいいですけど……」
真壁が淡々とパソコンを打ち始める横で、佐倉はひとり真っ赤になって縮こまった。
「……は、恥ずかしくないですか?」
「今夜、もっと恥ずかしいことしてやろうか」
「……っ!!!」
真壁の強引な一言に、佐倉は耳まで真っ赤にしながら俯いた。
「先輩…………僕の心臓がもたないです」
「はは、悪かったよ。さあ、仕事するぞ」
真壁に切り替えろよと言われ、そんなこと言われてもなかなか簡単にできませんと嘆く佐倉に、真壁は今までしたことがないような優しい顔を見せた。
翌朝、窓から差し込む光で佐倉が目を覚ますと、すぐ横に真壁の寝顔があった。
「……っ! せ、先輩……」
距離は数センチ。寝癖もあるのに、やたらかっこいい。
佐倉は思わずじっと見つめ、つい小声で呟いてしまった。
「ずるいなぁ……」
その瞬間、ぱちりと目が開き、真壁が低く笑った。
「……朝から人の顔じっと見んな」
「ひゃっ! 起きてたんですか!?」
「視線を感じたら起きるに決まってんだろ」
佐倉は顔を真っ赤にして飛び退く。
しかし、真壁は腕を伸ばし、そのまま引き寄せた。
「……おはよう、佐倉」
「おはようございます……」
「で、何がずるいって?」
「え!?いや、その……んっ」
真っ赤な顔して、言いよどむ佐倉に軽く唇を重ねた。
一瞬の朝のキス。
佐倉は目をまんまるにして、完全に固まってしまった。
「……っ、せ、先輩!あ、朝はダメです!」
「なんでだよ」
「僕……この後、仕事行けなくなりそうです……」
「それは困るな、じゃ、ちゃんと言えって。言わないとまた塞ぐぞ?」
「う~、寝ててもかっこいいのはずるいって言ったんですぅ!」
意地悪に笑いながらも、真壁は額に口づけた。
佐倉が支度している間に、朝食の準備をしようと、隣の自分の部屋の冷蔵庫から材料を持ってくる。
真壁が慣れた手つきでスクランブルエッグを作り始めると、佐倉が横から覗き込んできた。
「先輩、料理できるんですね!」
「一人暮らし長いからな」
「僕のお弁当も作ってください」
「お前が作るんじゃないのかよ」
「僕は味見担当で」
「役立たずか」
わいわいとじゃれ合いながらの朝食。
食卓に並んだ卵とトーストを見て、佐倉がぽつりと言った。
「……こういうの、夢みたいです」
「何がだ」
「えへへ、好きな人と同じ部屋で、朝ごはん食べて、一緒に出勤するって」
真壁は一瞬箸を止め、照れ隠しのようにパンをかじった。
「そうだな」
通勤・通学で混み合う駅前で、同僚・西條が改札口から二人で出てくるところを見て眉をひそめた。
「……おい、マジか。なんで一緒にいるんだ?」
「え!? あ、えっと……」
佐倉が慌てて言い訳しようとすると、真壁がすっと前に出て冷静に答えた。
「見りゃわかるだろ」
「いや、わかるけどよ」
西條はあの真壁が一人に決めるなんてと、なんとなく寂しいような気持ちになるのだった。
出社後、営業部のデスクに座ると、佐倉がぽそっと言った。
「先輩……電車、一緒に行くの控えた方がいいですかね」
「気にすんな」
「でもバレたら……」
「バレたらバレたでいいだろ」
「ええっ!?」
「隠す気ないぞ、俺は」
「そ、そういうとこは……か、かっこいいですけど……」
真壁が淡々とパソコンを打ち始める横で、佐倉はひとり真っ赤になって縮こまった。
「……は、恥ずかしくないですか?」
「今夜、もっと恥ずかしいことしてやろうか」
「……っ!!!」
真壁の強引な一言に、佐倉は耳まで真っ赤にしながら俯いた。
「先輩…………僕の心臓がもたないです」
「はは、悪かったよ。さあ、仕事するぞ」
真壁に切り替えろよと言われ、そんなこと言われてもなかなか簡単にできませんと嘆く佐倉に、真壁は今までしたことがないような優しい顔を見せた。
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