25歳、終電後の元カノは俺の知らない匂いがした

どえろん

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第二話

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 俺の唇を塞ぐ栞のそれは、思い出の中の甘酸っぱさとは違う、熟れた果実のような味がした。
 知らない男に教えられたキス。その事実が、俺の独占欲に鈍い痛みと熱を同時に与える。

 ベッドに倒れ込み、俺は彼女のバスローブを完全に剥ぎ取った。
 月明かりに照らされた、記憶よりもずっと大人びた曲線。
 柔らかそうな胸の膨らみも、くびれた腰のラインも、滑らかな太ももも、すべてが俺の知らない四年間を雄弁に物語っていた。

「……きれいだ、栞」

 それは本心だった。
 俺は吸い寄せられるように、その白い丘に顔を埋める。
 ホテルのソープの香りと、栞自身の甘い匂いが混じり合って、脳を蕩かすように麻痺させた。

 ちゅ、と朱色の実を吸い上げると、栞の喉から「ひゃんっ♡」と猫のような声が漏れる。
 その反応は昔のままで、どうしようもなく愛おしい。
 指を絡め、彼女の熱を探るように下へと滑らせていく。すでにそこは、再会の喜びに濡れていた。

「だめ……湊、そんなとこ……いきなり……っ♡」

 嫌がっているのに、身体は正直だ。
 俺の指使いに、栞の腰がびくん、と艶めかしく跳ねる。
 ぬちゅり、と湿った音が、部屋の静寂に溶けていった。

 もう、我慢の限界だった。
 俺は自分の昂りを、ゆっくりと彼女の入り口に押し当てる。

「……栞。入れるぞ」
「……うん」

 涙で潤んだ瞳が、俺をじっと見つめている。
 その眼差しに射抜かれながら、俺はゆっくりと腰を進めた。

「……あっ♡」

 熱く、狭い。
 きゅう、と締め付ける内壁が、俺の理性を焼き切っていく。
 忘れていた感覚。いや、これは俺の知っている栞じゃない。もっとずっと、官能的で、深く、俺を受け入れてくれる。

「……っ、は……湊……おっきい……♡」
「うるさい……お前のせいだろ……」

 トントン、と小気味よく肌のぶつかる音が響く。
 最初は浅く、様子を窺うように。やがて深く、四年分の空白を埋めるように。

 俺の腰の動きに合わせて、栞の豊かな胸がたぷん、たぷんと揺れていた。
 長い髪がシーツに散らばり、汗ばんだ肌が月明かりにきらめく。
 その光景は、どんな芸術品よりも、ひどく扇情的で、神聖だった。

 しばらく突き上げていると、ふと、彼女がまた静かに涙を流していることに気づいた。
 快感からじゃない。もっと、心の奥から溢れ出すような、悲しい涙だった。

 俺は動きを止め、そっとその涙を指で拭う。

「……なんで、泣くんだよ」
「わかんない……わかんないの……っ。でも、湊が優しいから……っ、奥、突かれるたびに、なんか、全部……どうでもよくなっちゃって……ひっく……♡」

 嗚咽交じりに、彼女が言う。
 その言葉に、俺の中の何かが、ぷつりと切れた。
 ああ、そうか。こいつはずっと、一人で泣いてたんだ。俺のいない四年間、誰にも見せずに、こうやって心を殺して、泣いてきたんだ。

「……なあ、湊」

 栞が、俺の首に腕を回し、耳元で囁いた。
 吐息が、甘く俺を痺れさせる。

「……お願いがあるの」
「なんだよ」

「……あいつのこと、消して……っ♡ 湊で、ぜんぶ……上書き、して……?」

 その言葉は、呪いであり、祈りだった。
 俺の知らない“あいつ”の存在を、俺の快感で塗りつぶしてくれという、魂の叫びだった。

「……ッ、上等だッ!!」

 俺は吠えるように答え、そこから先はもう、獣だった。
 優しさなんてかなぐり捨てて、ただ激しく、深く、彼女を求めた。
 栞の奥の、一番熱くて敏感な場所。そこに俺の存在を刻みつけるように、何度も、何度も、突き上げる。

「あっ、ああっ♡ そこ、だめぇっ♡ いっちゃ、うからぁっ♡♡」
「いいからイけよ! 俺ので、めちゃくちゃになれ、栞ッ!!」

 じゅぷっ、ぐチュ、と粘着質な水音が、俺たちの絶頂が近いことを告げていた。
 びくん、びくん、と彼女の内壁が激しく痙攣し、俺のモノを締め上げる。

「いく、いぐぅぅうううッ♡♡♡」

 栞の絶叫と同時だった。
 俺の腹の底から、熱い奔流がほとばしる。
 それは、ただの精液じゃなかった。四年分の後悔と、未練と、そしてどうしようもないほどの“好き”という感情のすべてだった。

「……栞ッ!!」

 彼女の奥深くに、俺のすべてを注ぎ込む。
 一度、二度、三度……。もう空っぽになるまで、何度も。
 彼女を“俺”で満たすことだけが、今の俺にできる唯一の救済だと信じて。

 長い、長い絶頂の嵐が過ぎ去る。
 はあ、はあ、とお互いの荒い息遣いだけが部屋に響いていた。

 俺は、繋がったままの身体で、汗ばんだ彼女の額にキスをした。
 そして、髪を優しく撫でる。

「……栞」

 名前を呼ぶと、彼女は疲れ切った瞳で俺を見上げ、そして……ふわりと、花が綻ぶように笑った。
 それは、今夜初めて見た、心からの笑顔だった。

「……ただいま、湊」

 その一言に、俺はもう、何も言えなくなった。
 ただ、壊れ物を抱きしめるように、彼女の小さな身体を、強く、強く抱きしめた。

 窓の外が、少しだけ白み始めている。
 長くて、濃密な夜が、もうすぐ終わろうとしていた。

【続く】
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