25歳、終電後の元カノは俺の知らない匂いがした

どえろん

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第八話

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 玄関のドアが閉まり、外の世界の喧騒が完全に遮断された瞬間、俺たちは磁石のように引き寄せられていた。
 唇が重なり、舌が絡み合う。
 さっきまでの緊張と疲労が嘘のように、身体の奥から熱い衝動が突き上げてくる。
 これは、ただの性欲じゃない。
 地獄を共に乗り越えた同志が、お互いの生存を確かめ合うような、切実で、純粋な欲求だった。

「ん……っ、みなと……」

 栞が、俺の名前を呼ぶ。
 俺はその声に応えるように、彼女の身体を軽々と抱き上げた。

「わっ……!」

 驚く彼女をそのまま寝室に運び、ベッドの上にそっと降ろす。
 俺が着せたパーカーとジーンズが、今はひどくもどかしい。
 一枚、また一枚と、お互いの衣服を剥ぎ取っていく。それは儀式めいた、厳かな行為だった。

 やがて、すべての衣類から解放され、二つの裸体が重なり合う。
 窓から差し込む午後の柔らかな光が、栞の白い肌を聖なる光輪のように照らしていた。

「……きれいだ」

 俺は、恍惚と呟きながら、彼女の髪を、頬を、そして涙の跡が残る瞼を、慈しむように撫でた。
 栞は気持ちよさそうに目を閉じ、俺の手にすり、と頬を寄せてくる。
 まるで、飼い主の愛情を確かめる猫のように。

 俺の指が、ゆっくりと彼女の身体をなぞっていく。
 首筋から、鎖骨へ。そして、柔らかく膨らんだ胸の谷間へ。
 朱色の先端に触れると、栞の身体が「びくっ♡」と愛らしく震えた。

「……湊の、指……あったかい……」
「お前が冷たいだけだろ」

 軽口を叩きながら、俺は彼女の全身に、俺の温もりを刻みつけるように、優しく、丁寧に愛撫を続けた。
 昨夜の、互いの傷を探り合うようなセックスとは違う。
 これは、肯定だ。
 お前は一人じゃない、俺がいる、という無言のメッセージだった。

 やがて、彼女の秘裂から、愛の蜜がとろりと溢れ出すのが分かった。
 俺を受け入れる準備ができた、という甘い合図。
 俺は自分の昂りを、ゆっくりとその入り口に導く。

「……栞。お前を、俺のものにしてもいいか?」

 それは、確認であり、誓いだった。
 もう、一夜限りの関係じゃない。俺の人生のすべてを懸けて、お前を守り、愛し抜くという、覚悟の表明だった。

 栞は、潤んだ瞳で俺をまっすぐに見つめ返し、そして……これまでで一番美しい笑顔で、はっきりと頷いた。

「……うん。……私を、あなたのものにして、湊」

 その言葉を合図に、俺はゆっくりと、しかし確かな意志を持って、彼女の最奥へと進んだ。
 熱く、濡れた内壁が、優しく俺を迎え入れる。
 寸分の隙間もなく、一つに結ばれる感覚。
 ああ、俺の居場所は、ここにあったんだ。
 この温もりの中に、俺の魂の片割れは、ずっと昔から存在していたんだ。

「……あっ……♡ みなと……好き……っ♡」

 俺の動きに合わせて、栞が甘く喘ぐ。
 その「好き」という言葉が、俺の最後の理性を焼き切った。

「俺もだ……栞ッ! 愛してる……っ!」

 四年間、心の奥底に封印してきた言葉が、堰を切ったように溢れ出す。
 俺はもう、何も考えられなかった。
 ただ、目の前の愛しい存在を、俺のすべてで満たしたかった。

 トントン、と肌がぶつかる音だけが、部屋に響く。
 それは、二つの心臓が奏でる、愛の鼓動だった。
 深く、激しく、一つになるたびに、俺たちは過去の傷から解放され、新しい未来へと生まれ変わっていく。

「いく……っ! 湊、いっしょに、いってぇぇええっ♡♡♡」

 栞の絶叫と、俺の咆哮が重なる。
 腹の底から、熱い生命の奔流が、彼女の奥深くへと注ぎ込まれていく。
 それは、俺たちの新しい未来を祝福する、聖なる洗礼だった。

 長い、長い絶頂の余韻の中、俺たちは固く抱きしめ合ったまま、動けずにいた。
 汗ばんだ肌と肌が、ぴたりと吸い付いている。
 心臓が、まだどくどくと高鳴っていた。

「……湊」
「……ん?」
「……おかえり」

 俺の胸に顔をうずめたまま、栞がくぐもった声で言った。
 今度は、俺が「ただいま」と返す番だった。

「……ああ。ただいま、栞」

 俺たちは、顔を見合わせて笑い合った。
 もう、言葉は必要なかった。
 四年間という遠回りを経て、俺たちはようやく、本当の意味で結ばれたのだ。

 窓の外では、太陽が西の空に傾き始め、世界を優しいオレンジ色に染め上げていた。
 それは、俺たちの新しい人生の始まりを告げる、美しい夕焼けだった。

【続く】
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