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第三章 箱庭編
箱庭ⅩⅩⅢ 落椿
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「これが、貴女の知りたがってた事件の全貌とわたくしの強化魔法の秘密よ。なにか質問あるかしら。」
時は戻り現代。クリステラの独白が終わりその凄惨な内容に青ざめるガステイルとアムリス。
「質問も何も……人間のすることじゃねえって……」
「あらぁ、わたくしは正真正銘人間ですわよ。それに、女一人に寄って集って兵隊を差し向けるのは人道に即しているとでも?エルフだからって図に乗っているのか知らないけれど、あまり人間を分かった風に語るのはやめた方がいいわよ。」
「許さない……」
アムリスは支えにしていた剣を抜き、クリステラに向けて構える。鋭い眼光でクリステラを睨みつけ、歯をギリギリを食いしばり、今にも襲いかかりそうな態度のアムリスを、ガステイルは制止する。
「落ち着けアムリス!返り討ちに遭うだけだ!」
「分かってる!このままじゃ勝てないのは分かってるから、必死で堪えているの。でも、死んだ修道女と孤児たちのことを思うと……。それに、仲の良かった妹がアタラクシアの悪魔って呼ばれるようになったなんて、お兄さん達もあまりにかわいそうで……。」
「あら、その点なら心配ご無用ですわよ。お兄様はわたくしが責任をもって殺しましたので。」
「は……?」
「教会から差し向けられた追手の騎士達の中にいましたの……ああ、でも大兄様だけは少し手こずりましたわ。大兄様ったら、あんなことが起きてもわたくしを信じ対話を試みようとするものですから、素の身体能力で戦わないといけなくて……。」
「それで、どうなったんだ?」
「あらあら、流石に強化魔法無しで大兄様には勝てませんよ。でも大兄様ったら、満身創痍のわたくしの前で剣を捨て、『共にアタラクシアを出て逃げよう』と言ったのです。既に大司教にまで上り詰め聖騎士長も兼任する大兄様の、一切の悪意のない本心からの売国の言葉でしたわ。」
「貴女は……なんて答えたの?」
「実際、魅力的な提案でした。何より昔から大好きだった大兄様が地位を捨てる覚悟でわたくしを誘ったことにとても感激いたしましたの……なので、従うふりをして背後から心臓を刺しました。」
下卑た笑いでアムリスをバカにするクリステラ。アムリスは全身を戦慄かせ唇を噛み締める。クリステラを睨みつける目からは涙が溢れ始めていた。
「うふふ……思った通りの反応をしてくれて助かるわ、田舎娘。」
「アムリス、抑えろ。」
「……ガステイル」
「なんだよ。」
「なんで貴方は平気なのよ。あんな話を聞いて、あんな惨たらしい拷問を聞いたのに、なんで平然としていられるのよ!」
「あのなぁ、相手はこっちの感情を読み取って強くなるんだぞ。お前が怒っている分俺が冷静でいなきゃダメだろうが。」
「私が怒っているのが悪いって言うの!?」
「悪いとは言ってねえだろ。気持ちは分かるけど今はこいつを倒すために落ち着けって言ってんだよ。俺だって……なんとかしてやりたいから今は耐えてるんだ。」
歯を食いしばるガステイルを見て、アムリスは言いがかりをつけたことに少し反省を見せる。しかしそこへクリステラがわざとらしい口調で爆弾を投下した。
「あら、その割にはそっちのボウヤからの負の感情、話の前後から全く変わってないのよねぇ。普通の人間なら多少抑えても負の感情は漏れ出るものなのに、それすら全くないの。だから……なんとかしてやりたいなんて本当は思ってないんじゃないのぉ?所詮知らない人間が死んだだけ、エルフの自分には何も関係がないって思ってるんじゃない?」
クリステラの言葉に慌ててガステイルはアムリスを見る。先程まで凄まじい形相と共にクリステラの方に向けられていた憎悪がそのまま自分の方へ向けられ、ガステイルは気圧され一歩下がる。
「ガステイル……そうなの?」
「馬鹿!そんなわけないだろ!」
「あっそう。」
アムリスはふいとそっぽを向く。ガステイルは慌ててアムリスに向けて叫ぶ。
「お前……どっちを信じるんだよ!たった今会ったばかりの女の言うことばかり聞きやがって!俺たちの旅はなんだったんだよ!その女の言うことが大事なのかよ!!」
「あははっ、馬鹿は貴方よぉ。たとえ一緒に旅をしても貴方はエルフ、その子は人間。倫理観に埋まらない溝がある以上、貴方がどんなに足掻こうと同族という信頼には勝てないのよぉ。」
「そんな……」
ガステイルは絶望し、膝からどさりと崩れ落ちる。アムリスはそのガステイルを後目に、再びクリステラに向けて剣を構える。
「ようやく、負の感情を見せてくれたわね……さて、そろそろ頃合いかしら。」
クリステラはそう呟くと、アムリスに急接近し拳を繰り出そうとする。アムリスはまるで反応できず、クリステラの右ストレートが完璧に決まった……かのように思えた。
「危ないッ!!!」
ガステイルがアムリスに飛びつき、アムリスはバランスを崩し倒れる。クリステラの拳は空を裂き、衝撃波がガステイルを傷つける。クリステラはガステイルの横槍に激昂し、
「なぁにしてんのよぉぉぉぉ!!!」
「ぐはぁぁっ!」
と目の前に転んでいるガステイルの腹部を踏みつける。クリステラの接近から状況が飲み込めていないアムリスだったが、ガステイルの悲鳴で我に返る。
「ガステイル!!」
「アムリス、にげ……」
「黙れぇぇぇ!!!」
「うぎゃぁぁぁ!!!」
クリステラが足に力を込め、つま先を捩じ込むようにぐりぐりと押し付ける。ガステイルはついに血を吐いてしまう。
「ガステイル!!もうやめて……」
「おい……早く、に……げ……」
「アーハッハッハ!最高の気分よ!!絶望しろ!恐怖しろ!!憎悪しろ!!!二人とも、もっともぉっと負の感情をわたくしに寄越すのよ!!!!」
悦に入ったクリステラの叫びが轟き、ガステイルを踏みつける足にさらに力を加えようとした瞬間、どすりという音とともにクリステラの胸から黒い塊が生える。
「は?」
クリステラの背後から左の肺を貫いた黒い刀身。その答えを知るべくクリステラはゆっくりと振り向いた……が、叶うことなく首は地面にどさりと落ちた。続いて胴体も崩れ落ちるように倒れ伏す。
「ロマリアの仇がこうもあっさりと……くだらんな。」
クリステラの遺体の奥から現れた一人の魔族……ラムディア・ストームヴェルンは刀を納め、アムリスをじっと見つめた。
時は戻り現代。クリステラの独白が終わりその凄惨な内容に青ざめるガステイルとアムリス。
「質問も何も……人間のすることじゃねえって……」
「あらぁ、わたくしは正真正銘人間ですわよ。それに、女一人に寄って集って兵隊を差し向けるのは人道に即しているとでも?エルフだからって図に乗っているのか知らないけれど、あまり人間を分かった風に語るのはやめた方がいいわよ。」
「許さない……」
アムリスは支えにしていた剣を抜き、クリステラに向けて構える。鋭い眼光でクリステラを睨みつけ、歯をギリギリを食いしばり、今にも襲いかかりそうな態度のアムリスを、ガステイルは制止する。
「落ち着けアムリス!返り討ちに遭うだけだ!」
「分かってる!このままじゃ勝てないのは分かってるから、必死で堪えているの。でも、死んだ修道女と孤児たちのことを思うと……。それに、仲の良かった妹がアタラクシアの悪魔って呼ばれるようになったなんて、お兄さん達もあまりにかわいそうで……。」
「あら、その点なら心配ご無用ですわよ。お兄様はわたくしが責任をもって殺しましたので。」
「は……?」
「教会から差し向けられた追手の騎士達の中にいましたの……ああ、でも大兄様だけは少し手こずりましたわ。大兄様ったら、あんなことが起きてもわたくしを信じ対話を試みようとするものですから、素の身体能力で戦わないといけなくて……。」
「それで、どうなったんだ?」
「あらあら、流石に強化魔法無しで大兄様には勝てませんよ。でも大兄様ったら、満身創痍のわたくしの前で剣を捨て、『共にアタラクシアを出て逃げよう』と言ったのです。既に大司教にまで上り詰め聖騎士長も兼任する大兄様の、一切の悪意のない本心からの売国の言葉でしたわ。」
「貴女は……なんて答えたの?」
「実際、魅力的な提案でした。何より昔から大好きだった大兄様が地位を捨てる覚悟でわたくしを誘ったことにとても感激いたしましたの……なので、従うふりをして背後から心臓を刺しました。」
下卑た笑いでアムリスをバカにするクリステラ。アムリスは全身を戦慄かせ唇を噛み締める。クリステラを睨みつける目からは涙が溢れ始めていた。
「うふふ……思った通りの反応をしてくれて助かるわ、田舎娘。」
「アムリス、抑えろ。」
「……ガステイル」
「なんだよ。」
「なんで貴方は平気なのよ。あんな話を聞いて、あんな惨たらしい拷問を聞いたのに、なんで平然としていられるのよ!」
「あのなぁ、相手はこっちの感情を読み取って強くなるんだぞ。お前が怒っている分俺が冷静でいなきゃダメだろうが。」
「私が怒っているのが悪いって言うの!?」
「悪いとは言ってねえだろ。気持ちは分かるけど今はこいつを倒すために落ち着けって言ってんだよ。俺だって……なんとかしてやりたいから今は耐えてるんだ。」
歯を食いしばるガステイルを見て、アムリスは言いがかりをつけたことに少し反省を見せる。しかしそこへクリステラがわざとらしい口調で爆弾を投下した。
「あら、その割にはそっちのボウヤからの負の感情、話の前後から全く変わってないのよねぇ。普通の人間なら多少抑えても負の感情は漏れ出るものなのに、それすら全くないの。だから……なんとかしてやりたいなんて本当は思ってないんじゃないのぉ?所詮知らない人間が死んだだけ、エルフの自分には何も関係がないって思ってるんじゃない?」
クリステラの言葉に慌ててガステイルはアムリスを見る。先程まで凄まじい形相と共にクリステラの方に向けられていた憎悪がそのまま自分の方へ向けられ、ガステイルは気圧され一歩下がる。
「ガステイル……そうなの?」
「馬鹿!そんなわけないだろ!」
「あっそう。」
アムリスはふいとそっぽを向く。ガステイルは慌ててアムリスに向けて叫ぶ。
「お前……どっちを信じるんだよ!たった今会ったばかりの女の言うことばかり聞きやがって!俺たちの旅はなんだったんだよ!その女の言うことが大事なのかよ!!」
「あははっ、馬鹿は貴方よぉ。たとえ一緒に旅をしても貴方はエルフ、その子は人間。倫理観に埋まらない溝がある以上、貴方がどんなに足掻こうと同族という信頼には勝てないのよぉ。」
「そんな……」
ガステイルは絶望し、膝からどさりと崩れ落ちる。アムリスはそのガステイルを後目に、再びクリステラに向けて剣を構える。
「ようやく、負の感情を見せてくれたわね……さて、そろそろ頃合いかしら。」
クリステラはそう呟くと、アムリスに急接近し拳を繰り出そうとする。アムリスはまるで反応できず、クリステラの右ストレートが完璧に決まった……かのように思えた。
「危ないッ!!!」
ガステイルがアムリスに飛びつき、アムリスはバランスを崩し倒れる。クリステラの拳は空を裂き、衝撃波がガステイルを傷つける。クリステラはガステイルの横槍に激昂し、
「なぁにしてんのよぉぉぉぉ!!!」
「ぐはぁぁっ!」
と目の前に転んでいるガステイルの腹部を踏みつける。クリステラの接近から状況が飲み込めていないアムリスだったが、ガステイルの悲鳴で我に返る。
「ガステイル!!」
「アムリス、にげ……」
「黙れぇぇぇ!!!」
「うぎゃぁぁぁ!!!」
クリステラが足に力を込め、つま先を捩じ込むようにぐりぐりと押し付ける。ガステイルはついに血を吐いてしまう。
「ガステイル!!もうやめて……」
「おい……早く、に……げ……」
「アーハッハッハ!最高の気分よ!!絶望しろ!恐怖しろ!!憎悪しろ!!!二人とも、もっともぉっと負の感情をわたくしに寄越すのよ!!!!」
悦に入ったクリステラの叫びが轟き、ガステイルを踏みつける足にさらに力を加えようとした瞬間、どすりという音とともにクリステラの胸から黒い塊が生える。
「は?」
クリステラの背後から左の肺を貫いた黒い刀身。その答えを知るべくクリステラはゆっくりと振り向いた……が、叶うことなく首は地面にどさりと落ちた。続いて胴体も崩れ落ちるように倒れ伏す。
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