要石の巫女と不屈と呼ばれた凡人

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第三章 冒険者

流れ星に願いを

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 ときは俺が商隊と別れ、一人召喚陣を破壊しに魔物の群れに突っ込んだ所まで遡る。

「おらぁあああ! 邪魔だぁあああ! 『十指テンフィンガー』『極炎ヘルフレイム大円球グレイトサークル』『収束コンバージェンス』『形状変化デフォルマシオン』『巨人のギガント投球ボーリング』『自動操縦オートパイロット』! ストラァアアアアイクウウウ!」

 極炎で創り出した巨大なボーリングの球を、俺の進行方向に自動で転がしながら進んだ。魔物を吹き飛ばし、轢き殺しながら進む。獄炎を形状変化デフォルマシオンで、硬く圧縮している様な状態にしているので、森は破壊しても燃やしていない。被害を最小限に抑えた自然に優しい設計である。

「「「ギャァアアアアアア!?」」」

 魔物の断末魔を聞きながら進み、いよいよ魔物の勢いが増してきた中心に行き着いた。淡く光る魔法陣から続々と魔物が溢れ出ている。

「わらわら出てきやがって! 『巨人のギガント黒炎投球ボーリング』『形状変化デフォルマシオン』『巨人のギガント黒炎槌ハンマー』! 砕けろぉおおお!」

 魔法陣から湧き出る魔物ごと、『巨人のギガント黒炎槌ハンマー』で叩き潰した。

「「「グギャアアアア!」」」

「……これは不可抗力だな……うん」

 地面にでかい陥没を作ってしまったが、見て見ぬ振り知らないっとをした。そして新しい魔物が出てこないことを確認して、もう一箇所の魔物の気配が湧き出している場所へと駆け出した。

 同じ様に魔物を転がり潰しながら進み、先ほどと全く同じ様に見える魔法陣を発見した。

「こいつで終いだぁあ! 『巨人のギガント黒炎槌ハンマー』!」

 轟音共に地面が割れ、魔法陣を地面ごと叩き割った。

「よし! これでもう、大丈夫だろうっ!? ぬあぁ!?」

 急に『死神の危険/気配慟哭自動感知』が警告が発せられ、突然発動した『生への渇望致命傷回避』により、首元へと迫る剣戟をギリギリ交わした。首筋には、若干血が流れていた。

「ほう、完全な死角からだったんだがな、避けるとは中々やるじゃないか」

 さっき迄俺が立っていた所に、貴族の様な青年が立っていた。

「……貴族の様な格好をしているが、お前は魔族か」

「一目で俺を魔族とわかるか。人族の偉い奴の格好してきたんだがなぁ。似合うだろ?」

「そういうのをバッタモン程度の低い偽物て言うんだよ。本物の偉い奴は、そんな汚ねぇ瘴気なんぞ纏ってねぇよ」

「言うじゃないか。ガルガロイを殺して、調子に乗ってるのかなぁ? んぅ?」

 目の前の魔族は、ニヤニヤと嗤いながら喋りだす。

「知っているぞ? ヤナと言ったな。お前の様なゴミに殺られるガルガロイは、とんだカスだな」

「あん? 彼奴は魔族四公爵とか言っていたが、まさか『奴は四公爵の中でも最弱!』とか言い出すのか?」

「なんだそりゃ! ギャハハ! 公爵だ何だのってのは、遊びだ遊び。名乗りたい奴が勝手に名乗ってるだけだ。因みに俺はラオライン男爵・・だぞ? ガルガロイ公爵殿は使えねぇ公爵殿だったが、俺は公爵より偉い男爵だぁ。強いのが偉いんだろ? ギャハハ!」

 何だかうるさい奴だなと思っていると、ある事に思い至る。

「おい、お前はガルガロイより強いといったな」

「あぁ、あんなカスよりも数段強い……なんで貴様、笑っている」

 俺は思わず嗤ってしまっていた。何故って?

「だってな、鍛錬に丁度いいじゃないか。お前を今のままで斬ることって、結構な『冒険』なんじゃないかなと思ってな。レベル上げに丁度いい」

「貴様……俺を斬ってレベル上げだとぉお!」

「ガルガロイは斬って三つ上がったからな。お前は幾つ上がるかな? 逃げるなよ? 『狂喜乱舞ヤナ流二刀剣術』『青嵐』!」

「ぐぬおおお! 風魔法でもない癖に……ぐぅ!」

 二刀による連続の鎌鼬を放ち、全方位からの斬撃の鎌鼬でその場に押しとどめる。

「『双子ツイン』『極炎のヘルフレイム大円絶壁サークルウォール』『形状変化デフォルマシオン』『黒炎鳥籠金網オオニタデスマッチ』っと」

「何だこれは!?」

「何だ知らないのか? お前も漢なら……魔族に男も女もあるのか? まぁいいや、兎に角かかってこいやぁああああ!」

 と言いつつ、俺からラオラインに斬りかかる。

「ぐぬ! 貴様! 自分の仲間がどうなっているか……知らないだろう? クックック、ぐあ! ギャアアアア!」

 取り敢えず鍔迫り合いから、黒炎の金網に蹴り飛ばしてやった。

「笑うか悲鳴か、どっちかにしろ」

「お前は、鬼か……何故、本来の野営地が荒らされていたと思う? 何故、一方向だけ残して魔物の大群を襲わせたと思う? クックック、お前らは俺に狩られているんだよぉ!」

 何となく嫌な予感がしていたのは、魔族の悪巧みらしい。

「獲物を追い込んだ先には、全方位・・・の隔離結界の罠が張ってある。逃げられたと思った所で、ぜぇえええんめつっとぉ! ギャハハ!」

「あんな魔物程度なら、俺の仲間なら屁でもないぞ? 魔法陣も壊したしな」

「ばぁかめぇ! これなぁんだ?」

 ラオラインは、見覚えのある瘴気が染み込んでいる腕輪を俺に見せつけてきた。

「お前……それをどうした」

「ハァアハッハッハ! 漸く嗤うのをやめたな? 想像してる通り、俺ら魔族が作ってばらまいてるんだよぉ! さて問題、獲物を追い込んだ先には逃げられない柵を用意しました。その可愛い獲物ちゃんに何が・・襲いかかるでしょう? ギャハハ!」

「なら、さっさとてめぇを斬って、俺がそいつらを斬るだけだ!」

 俺は瘴気纏いになった人間・・が、商隊を待ち伏せしている事を確信した。その為、多少地形が変わっても仕方がないと諦め、腕輪と指輪を外そうとした瞬間だった。

 足元に、新たな魔法陣が出現したのだ。

「なんだ!? 身体が浮いていく!?」

 魔法陣から俺は浮び上らされ、四方を結界の様なものに囲まれた。

「俺は、人間共を狩る狩人だぞ? 罠も仕掛けず魔法陣だけ置いとく訳ねえだろうがぁ!」

 俺は既に、森の上まで浮かび上がっていた。

「先ずお前は、仲間を見殺して城に戻ってな! 沢山仲間でも連れてこいよぉ? みんなで仲良く仲間の死骸を取りに来て、何でお前が城に居たのか説明するんだなぁ! 魔物に食い散らかされて、誰が誰だか分からん死骸を見ながら、言い訳でもするんだなぁ! ギャァハッハッハ!」

 俺は上からラオラインを見下ろしながら、腕輪と指輪を外し全力の殺気と威圧を込めて、ラオラインに語りかける。

「お前が人間の狩人なら、俺はてめぇらクソ野郎わるもんを狩る狩人ヒーローだよ。待っとけよ? 直ぐ戻るぞ」

「……捨て台詞はそれだけか? 自分が何も出来ずに、仲間が蹂躙される様を想像して絶望するんだな……『強制移動テレポート』発動!」

 そして俺は物凄い速さで、城のある方向に飛ばされた。この強制移動中は俺の通信魔法も強制的に切れるみたいで、何度呼出コールしても駄目だった。

 腕輪と指輪を外した状態の全力で結界を斬りつけたが、未だ今の俺の実力では斬れる類のものでは無いらしい。次は絶対斬ってやると心に誓いながら、心を落ち着かせ全身に『神火の鎧』を形状変化デフォルマシオンで纏い、二刀の大太刀『烈風』『涼風』に神火を付与エンチャントさせる。

「そろそろ城の真上だな……今は仲間のピンチだぞ……俺にとっての窮地ピンチだ……今が窮地ピンチだと言わずに、何が『起死回生窮地能力増幅増強』だぁああ!」

 俺は無理矢理に『起死回生窮地能力増幅増強』を発動した。

「『神殺し限界超越』『天下身体能力/魔力無双増幅増強』『疾風迅雷早く速く疾く』!」

 そして俺の周りから結界が消え、王都の上空に放り出された。

「『神火のセイクリッド断崖クリフ』『形状変化デフォルマシオン』『神火の発射台ローンチパッド』!」

 俺は空中に、浮かぶ発射台を形状変化デフォルマシオンで作り出した。

「『神火の鎧』『部分的パーシャル』『形状変化デフォルマシオン』『神火の大翼』からのぉ!『神火の大翼』『形状変化デフォルマシオン』『神火俺込誘導弾ヤナミサイル』『対象:ラオライン』!ミサイル発射ぁああああ!」



 その日の王都では、突然爆音と神々しい光が夜の街を照らした。そして、一筋の神の炎が北に向かって線を引いている姿をみた人々は、流れ星に願いをかける様に、それヤナに願いを掛けた。

「チンケな罠なぞ、全部吹き飛ばしてやるわぁああああ!」

 そして夜空に、ヤナ脳筋の叫びがこだました。
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