イセカン!?〜異世界の空き缶に転生した我だけれど、諦めずに魔王に成ってみせるカァアン!〜

イチ力ハチ力

文字の大きさ
80 / 99

第80話 音もなく移動させられます

しおりを挟む
『実際、詠唱とかしないといけないと言われても、恥ずかしいよね。ましてや、見た目に反して真面目な男子学生にはさ』

 事実、かっちゃんは詠唱の照れ隠しに、顔を普段以上に顰めていた。
  
「直った!? 直ったカァン!? 我のボディーがふっかぁあああっつカァアアン!?」
  
『よかったね、これでボコボコと復元のコンボで快感アップ……ひくわぁ』
  
「それ単なる拷問カァアァアン!?」
  
 カンは、かっちゃんのチート能力により、ボコボコだったアルミボディが完全に元の状態に復元されていた。
  
「かっちゃん……え? 何? 何それ!?」 
  
「蜜柑、落ち着け。女神って奴が、俺達に力を与えるって言ってたろ。どうやらそれみたいだな」
  
「かっちゃんは、もっと攻撃的な能力っぽい顔だが、癒し系なのカァン」
  
「顔は関係ねぇだろ」
  
 かっちゃんは、王の間へと歩きながら蜜柑に〝復元〟を覚えた時の事を伝えた。
  
「じゃぁ、急にかっちゃんの頭の中に、力の使い方が思い浮かんだって事?」
  
「そうだ。きっと、個人差があるんだろう。クラスの連中でも、ボチボチと力に目覚めたっぽい奴がいる」
  
「ほほう、わかるのカァン?」
  
「表情を見れば、わかるさ」
  
「主人公っぽい事を、言いおってぇえええ! 我なんて、全く分からんと言うのに! 言うのにぃいカァアァン!」
  
『完全に、かっちゃんの主人公力に嫉妬してるけどさ、空き缶の嫉妬は何とも見苦しいよ』
  
「しょうがあるまい! 我と関わる者達が、ことごとく主人公力をもっておるのが、悔しいカァン! 存在の特異性で言えば、我に主人公特性が宿っていても不思議であるまいカァアァン!」
  
「カンちゃん、ちょっとうるさ……きゃっ!? 何!? 頭に何かが!?」
  
「蜜柑も、力に目覚めたみたいだな。どうだ?」
  
「うん……私の力は〝闘神〟だって。どんな武器でも使いこなせて、徒手空拳においても右に出るものはいないと言う状態になったみたい」
  
「……は? なった?」
  
「……え? 今もということカァン?」
  
「うん、常時発動というか、私の存在自体が〝闘神蜜柑〟みたいな感じかな」
  
「闘神女子高生カァアァン!?」

「お……おう。まぁ、それなら安心と言えば安心だから、いいのか」
  
「我は〝やや浮く〟だが? 〝やや〟浮く事ができるだけだが? 何じゃ、その同情の眼差しは? 同情するなら、スキルをくれカァアァン!?」

 聞かれてもいないのに、自分の能力を述べるカンの姿は、痛々しいことこの上なかった。

 そうこうしているうちに、召喚者の一行は、再び玉座に座る王の前に到着したのだった。

 そして、そこで王の口から語られた言葉に、召喚者達は言葉を失うしかなかった。

『真実というのは、救いがあるものばかりではないんだよね』
  
「かっちゃんや蜜柑達の帰還方法が分からない……カァン?」
  
 王の間で、クラス全員が聞かされた事実は、空き缶ですら驚くものだった。

 クラス全員を召喚した術は、第一王女のワリアが何者かに操られていた状態で成されたものだった。

 そして、その召喚術は本来この国が持っていない術だったのだ。

 召喚者の代表者として、王の前に一歩出ている葉桜は、少し考えこんだが、すぐに口を開いた。
  
「王様、この国には持っていないと言う事は、他の国には召喚術自体があると言う事でしょうか?」
  
「うむ、葉桜殿の言葉通りだ。この世界は、何百年に一度の頻度で魔王と呼ばれる者が現れる。その都度、女神様より授けられたという異世界人を召喚する術を用いて来たのだ。そして、その召喚術を管理している国というのは、一国のみなのだ」
  
「何やら、雲行きがあやしいカァン」
  
「……何故、空き缶が足元に?」

 葉桜と並び立つかの様に、いつの間にか足元にカンが立っていた。
  
「かっちゃんにカーリングの要領で、床を滑らせて、我をおぬしの横にまで、静かに移動したのカァン」
  
「……ツッコミどころ満載なんだけど、それはいいや。代表者は僕なんだから、引っ込んでなよ」
  
「クラス枠の代表者はお主で決まったのだろうが、我は空き缶枠の代表者なのカァン」
  
「えっと……空き缶枠?」
  
「何か問題でもあるカァン?」

『堂々とそれを言ってのけるカンのメンタルは、結構問題を抱えてそうだけれども?』
  
「葉桜殿、まぁ良いではないか。見たところ、種族と言って良いか分からぬが、そもそもの形態が違うのだ。別でも問題あるまい」
  
「王様が、そう仰るなら」
  
「同じ代表者として、よろしくカァン」
  
「……空き缶と同格……資源ゴミと間違えて、踏み潰したら申し訳ない」
  
「清々しい程に、明らさまな敵意カァン」

 空き缶と睨み合っている葉桜だったが、一つ嘆息を付き、カンから視線を外すと、王に向かって疑問を口にした。
  
「……王様、話を戻しますが、召喚術を用いて異世界人を召喚していた国というのは、所謂この世界の大国という事なのでしょうか?」
  
「いや、女神様が守護する中立国でな。召喚の儀を護り、他国にその術が広まらぬように監視する国というか、そういう機関だと言うた方が正しいな」
  
「ということは、その機関以外で召喚されたということは、この国の立場は不味いのではないカァン?」
  
「そうなのだ。自分で言うのも何だが、我が国は小国だ。その小国に、強力な戦力となりうる異世界人が三十三人も現れたというのは、非常にまずい。そして、早急に調べねばならぬ事がある」
  
「他国にも、同じ様に召喚された者たちがいるかどうかと言う事ですね」
  
「うむ、その通りだ。我が国は、そこの空き缶のお陰で正気を取り戻したが、他国でも同じ事が起きているやも知れぬ」
  
「ナチュラルに空き缶呼びだが、今更ながら我の名前はカンなのカァン」
  
「最悪の場合は……」
  
「うむ、戦争が起きる」
  
「さらっと無視した上に、勝手に話が重くなっていくカァン!?」

 〝戦争〟という言葉に、召喚者達のみならず、この国の重鎮達でさえ、緊張した面持ちとなったのだった。
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!

ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。 ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!? 「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」 理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。 これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!! スティールスキル。 皆さん、どんなイメージを持ってますか? 使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。 でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。 スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。 楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。 それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。 2025/12/7 一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

処理中です...