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第80話 音もなく移動させられます
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『実際、詠唱とかしないといけないと言われても、恥ずかしいよね。ましてや、見た目に反して真面目な男子学生にはさ』
事実、かっちゃんは詠唱の照れ隠しに、顔を普段以上に顰めていた。
「直った!? 直ったカァン!? 我のボディーがふっかぁあああっつカァアアン!?」
『よかったね、これでボコボコと復元のコンボで快感アップ……ひくわぁ』
「それ単なる拷問カァアァアン!?」
カンは、かっちゃんのチート能力により、ボコボコだったアルミボディが完全に元の状態に復元されていた。
「かっちゃん……え? 何? 何それ!?」
「蜜柑、落ち着け。女神って奴が、俺達に力を与えるって言ってたろ。どうやらそれみたいだな」
「かっちゃんは、もっと攻撃的な能力っぽい顔だが、癒し系なのカァン」
「顔は関係ねぇだろ」
かっちゃんは、王の間へと歩きながら蜜柑に〝復元〟を覚えた時の事を伝えた。
「じゃぁ、急にかっちゃんの頭の中に、力の使い方が思い浮かんだって事?」
「そうだ。きっと、個人差があるんだろう。クラスの連中でも、ボチボチと力に目覚めたっぽい奴がいる」
「ほほう、わかるのカァン?」
「表情を見れば、わかるさ」
「主人公っぽい事を、言いおってぇえええ! 我なんて、全く分からんと言うのに! 言うのにぃいカァアァン!」
『完全に、かっちゃんの主人公力に嫉妬してるけどさ、空き缶の嫉妬は何とも見苦しいよ』
「しょうがあるまい! 我と関わる者達が、ことごとく主人公力をもっておるのが、悔しいカァン! 存在の特異性で言えば、我に主人公特性が宿っていても不思議であるまいカァアァン!」
「カンちゃん、ちょっとうるさ……きゃっ!? 何!? 頭に何かが!?」
「蜜柑も、力に目覚めたみたいだな。どうだ?」
「うん……私の力は〝闘神〟だって。どんな武器でも使いこなせて、徒手空拳においても右に出るものはいないと言う状態になったみたい」
「……は? なった?」
「……え? 今もということカァン?」
「うん、常時発動というか、私の存在自体が〝闘神蜜柑〟みたいな感じかな」
「闘神女子高生カァアァン!?」
「お……おう。まぁ、それなら安心と言えば安心だから、いいのか」
「我は〝やや浮く〟だが? 〝やや〟浮く事ができるだけだが? 何じゃ、その同情の眼差しは? 同情するなら、スキルをくれカァアァン!?」
聞かれてもいないのに、自分の能力を述べるカンの姿は、痛々しいことこの上なかった。
そうこうしているうちに、召喚者の一行は、再び玉座に座る王の前に到着したのだった。
そして、そこで王の口から語られた言葉に、召喚者達は言葉を失うしかなかった。
『真実というのは、救いがあるものばかりではないんだよね』
「かっちゃんや蜜柑達の帰還方法が分からない……カァン?」
王の間で、クラス全員が聞かされた事実は、空き缶ですら驚くものだった。
クラス全員を召喚した術は、第一王女のワリアが何者かに操られていた状態で成されたものだった。
そして、その召喚術は本来この国が持っていない術だったのだ。
召喚者の代表者として、王の前に一歩出ている葉桜は、少し考えこんだが、すぐに口を開いた。
「王様、この国には持っていないと言う事は、他の国には召喚術自体があると言う事でしょうか?」
「うむ、葉桜殿の言葉通りだ。この世界は、何百年に一度の頻度で魔王と呼ばれる者が現れる。その都度、女神様より授けられたという異世界人を召喚する術を用いて来たのだ。そして、その召喚術を管理している国というのは、一国のみなのだ」
「何やら、雲行きがあやしいカァン」
「……何故、空き缶が足元に?」
葉桜と並び立つかの様に、いつの間にか足元にカンが立っていた。
「かっちゃんにカーリングの要領で、床を滑らせて、我をおぬしの横にまで、静かに移動したのカァン」
「……ツッコミどころ満載なんだけど、それはいいや。代表者は僕なんだから、引っ込んでなよ」
「クラス枠の代表者はお主で決まったのだろうが、我は空き缶枠の代表者なのカァン」
「えっと……空き缶枠?」
「何か問題でもあるカァン?」
『堂々とそれを言ってのけるカンのメンタルは、結構問題を抱えてそうだけれども?』
「葉桜殿、まぁ良いではないか。見たところ、種族と言って良いか分からぬが、そもそもの形態が違うのだ。別でも問題あるまい」
「王様が、そう仰るなら」
「同じ代表者として、よろしくカァン」
「……空き缶と同格……資源ゴミと間違えて、踏み潰したら申し訳ない」
「清々しい程に、明らさまな敵意カァン」
空き缶と睨み合っている葉桜だったが、一つ嘆息を付き、カンから視線を外すと、王に向かって疑問を口にした。
「……王様、話を戻しますが、召喚術を用いて異世界人を召喚していた国というのは、所謂この世界の大国という事なのでしょうか?」
「いや、女神様が守護する中立国でな。召喚の儀を護り、他国にその術が広まらぬように監視する国というか、そういう機関だと言うた方が正しいな」
「ということは、その機関以外で召喚されたということは、この国の立場は不味いのではないカァン?」
「そうなのだ。自分で言うのも何だが、我が国は小国だ。その小国に、強力な戦力となりうる異世界人が三十三人も現れたというのは、非常にまずい。そして、早急に調べねばならぬ事がある」
「他国にも、同じ様に召喚された者たちがいるかどうかと言う事ですね」
「うむ、その通りだ。我が国は、そこの空き缶のお陰で正気を取り戻したが、他国でも同じ事が起きているやも知れぬ」
「ナチュラルに空き缶呼びだが、今更ながら我の名前はカンなのカァン」
「最悪の場合は……」
「うむ、戦争が起きる」
「さらっと無視した上に、勝手に話が重くなっていくカァン!?」
〝戦争〟という言葉に、召喚者達のみならず、この国の重鎮達でさえ、緊張した面持ちとなったのだった。
事実、かっちゃんは詠唱の照れ隠しに、顔を普段以上に顰めていた。
「直った!? 直ったカァン!? 我のボディーがふっかぁあああっつカァアアン!?」
『よかったね、これでボコボコと復元のコンボで快感アップ……ひくわぁ』
「それ単なる拷問カァアァアン!?」
カンは、かっちゃんのチート能力により、ボコボコだったアルミボディが完全に元の状態に復元されていた。
「かっちゃん……え? 何? 何それ!?」
「蜜柑、落ち着け。女神って奴が、俺達に力を与えるって言ってたろ。どうやらそれみたいだな」
「かっちゃんは、もっと攻撃的な能力っぽい顔だが、癒し系なのカァン」
「顔は関係ねぇだろ」
かっちゃんは、王の間へと歩きながら蜜柑に〝復元〟を覚えた時の事を伝えた。
「じゃぁ、急にかっちゃんの頭の中に、力の使い方が思い浮かんだって事?」
「そうだ。きっと、個人差があるんだろう。クラスの連中でも、ボチボチと力に目覚めたっぽい奴がいる」
「ほほう、わかるのカァン?」
「表情を見れば、わかるさ」
「主人公っぽい事を、言いおってぇえええ! 我なんて、全く分からんと言うのに! 言うのにぃいカァアァン!」
『完全に、かっちゃんの主人公力に嫉妬してるけどさ、空き缶の嫉妬は何とも見苦しいよ』
「しょうがあるまい! 我と関わる者達が、ことごとく主人公力をもっておるのが、悔しいカァン! 存在の特異性で言えば、我に主人公特性が宿っていても不思議であるまいカァアァン!」
「カンちゃん、ちょっとうるさ……きゃっ!? 何!? 頭に何かが!?」
「蜜柑も、力に目覚めたみたいだな。どうだ?」
「うん……私の力は〝闘神〟だって。どんな武器でも使いこなせて、徒手空拳においても右に出るものはいないと言う状態になったみたい」
「……は? なった?」
「……え? 今もということカァン?」
「うん、常時発動というか、私の存在自体が〝闘神蜜柑〟みたいな感じかな」
「闘神女子高生カァアァン!?」
「お……おう。まぁ、それなら安心と言えば安心だから、いいのか」
「我は〝やや浮く〟だが? 〝やや〟浮く事ができるだけだが? 何じゃ、その同情の眼差しは? 同情するなら、スキルをくれカァアァン!?」
聞かれてもいないのに、自分の能力を述べるカンの姿は、痛々しいことこの上なかった。
そうこうしているうちに、召喚者の一行は、再び玉座に座る王の前に到着したのだった。
そして、そこで王の口から語られた言葉に、召喚者達は言葉を失うしかなかった。
『真実というのは、救いがあるものばかりではないんだよね』
「かっちゃんや蜜柑達の帰還方法が分からない……カァン?」
王の間で、クラス全員が聞かされた事実は、空き缶ですら驚くものだった。
クラス全員を召喚した術は、第一王女のワリアが何者かに操られていた状態で成されたものだった。
そして、その召喚術は本来この国が持っていない術だったのだ。
召喚者の代表者として、王の前に一歩出ている葉桜は、少し考えこんだが、すぐに口を開いた。
「王様、この国には持っていないと言う事は、他の国には召喚術自体があると言う事でしょうか?」
「うむ、葉桜殿の言葉通りだ。この世界は、何百年に一度の頻度で魔王と呼ばれる者が現れる。その都度、女神様より授けられたという異世界人を召喚する術を用いて来たのだ。そして、その召喚術を管理している国というのは、一国のみなのだ」
「何やら、雲行きがあやしいカァン」
「……何故、空き缶が足元に?」
葉桜と並び立つかの様に、いつの間にか足元にカンが立っていた。
「かっちゃんにカーリングの要領で、床を滑らせて、我をおぬしの横にまで、静かに移動したのカァン」
「……ツッコミどころ満載なんだけど、それはいいや。代表者は僕なんだから、引っ込んでなよ」
「クラス枠の代表者はお主で決まったのだろうが、我は空き缶枠の代表者なのカァン」
「えっと……空き缶枠?」
「何か問題でもあるカァン?」
『堂々とそれを言ってのけるカンのメンタルは、結構問題を抱えてそうだけれども?』
「葉桜殿、まぁ良いではないか。見たところ、種族と言って良いか分からぬが、そもそもの形態が違うのだ。別でも問題あるまい」
「王様が、そう仰るなら」
「同じ代表者として、よろしくカァン」
「……空き缶と同格……資源ゴミと間違えて、踏み潰したら申し訳ない」
「清々しい程に、明らさまな敵意カァン」
空き缶と睨み合っている葉桜だったが、一つ嘆息を付き、カンから視線を外すと、王に向かって疑問を口にした。
「……王様、話を戻しますが、召喚術を用いて異世界人を召喚していた国というのは、所謂この世界の大国という事なのでしょうか?」
「いや、女神様が守護する中立国でな。召喚の儀を護り、他国にその術が広まらぬように監視する国というか、そういう機関だと言うた方が正しいな」
「ということは、その機関以外で召喚されたということは、この国の立場は不味いのではないカァン?」
「そうなのだ。自分で言うのも何だが、我が国は小国だ。その小国に、強力な戦力となりうる異世界人が三十三人も現れたというのは、非常にまずい。そして、早急に調べねばならぬ事がある」
「他国にも、同じ様に召喚された者たちがいるかどうかと言う事ですね」
「うむ、その通りだ。我が国は、そこの空き缶のお陰で正気を取り戻したが、他国でも同じ事が起きているやも知れぬ」
「ナチュラルに空き缶呼びだが、今更ながら我の名前はカンなのカァン」
「最悪の場合は……」
「うむ、戦争が起きる」
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私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
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