HEAVEN B HELL【BL短編集】

野瀬 さと

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第一章 遠別

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翌朝起きたら、身体が言うことを聞かなかった。
腿は痛いし、膝には力が入らない。
おまけに起き上がろうとしたら、腰には激痛が走る。

「…どういうことだ…?」

なんとか布団の中で寝返りを打って、腕の力で体を起こした。
起こした瞬間、布団の中から精液の濃い匂いが漂った。

昨日…ヤリ過ぎた…な…

「う…わ…」

布団のシーツが…見事に、精液でカピカピ…
身体もカピカピ…
なんだか知らないけど、髪の毛も…?

恐る恐る触ってみたら、ちょっとカピってた。

「もお…なんだよ…顔射でもされたか…?俺…」

なんとか起き上がって、部屋の中を見渡した。
昨晩は吹雪だったから、窓から入ってくる光は、ごくごく鈍いもので。
まだ窓が凍りついているようだった。
薄暗い中、石油ストーブのオレンジの灯りが、やけにくっきりと見えた。

ストーブの上には、やかんが掛かってて。
小さくシューシューと音を出しながら、湯気を吐き出してる。

その向こうの小さな小さなキッチンでは、電子レンジがブウンと音を立てて稼働してるのが見える。

「…風呂かな…」

洗面所の向こうから、物音が聞こえてる。
こんだけカピカピだから、風呂に入ってしまったんだろう。

「俺も入れてくれよな…」

立てない…

布団の中でうーうー唸ってたら、君が洗面所から顔を出した。

「あ、起きた?おはよ」
「おはよ…ねえ、立てない」
「だろうね…」

クスクス笑いながら君はこちらに歩いてきた。
体に何も纏っていない、生まれたままの格好だった。

無駄な肉がどこにもついていない、靭やかな体躯に見とれてしまった。

「…なんで服着てないの…?」
「風呂入ろうと思って、準備してた」
「まだ入ってないの?」
「一緒に入ろうと思ったんだもん」
「風邪…引いちゃうよ…?」

布団まで歩いてきた君に腕を伸ばすと、君は跪いて体を俺の方に倒してくれた。
体を抱きしめると、冷たい。

「ほら…こんな冷えてる…」
「ふふ…大丈夫。すぐにお風呂入るから…」

その声が、ふわふわしあわせで…
ぎゅっと抱きしめようとしたら、電子レンジがチンと鳴った。

「あ、お腹空いたから、ブリトー温めてたんだ。食べよ?」
「ああ…ありがと…」
「食べたらすぐに風呂入ろうね」

俺の腕から離れていくと、まっすぐに電子レンジまで行って。
中から袋を取り出すと、あちちって言いながら摘んで持ってきた。

「開けてよ」
「って、おい!」

ぽいって、アチアチの袋を投げられて、受け取りそこねて腹に乗っかった。

「めっちゃ熱い!」

腹、やけどした。






「ぶぶ…ぶぶぶっ…」

風呂に入っても、まだ君は笑ってる。

「んだよ…笑いすぎ…」
「だあって…鈍すぎ…」
「仕方ないだろ…俺の体力電池ゼロだぞ…」

昨日の夕方から、何発したと思ってんだ…

「この年で、ありえない回数したんだぞ…もっともっとって言ったの、誰だっけ?」
「えー…?俺ぇ…?」
「そう、正解。あなたです」

ぶうっとほっぺたを膨らますと、少し湯の中に沈んだ。

「いーじゃん…今日、休みなんだし…」
「いいけど、だったら笑うんじゃないよ…」

ブリトーは旨かったけどね。
腹はヒリヒリしてる。

ぷうと膨らんでるほっぺを指で突いたら、ぷしゅっと萎んでいった。

「今日は、俺が料理当番するね」
「当たり前だ。俺、立てないもん」

久しぶりに後ろの口使ったからか、腰も痛いし…
腿も膝もガクガクだから、真っすぐ立ってる自信がない。

「あ、ねえ…そういや、俺、髪の毛までカピってたんだけど…」
「あ」

そう言って、頭までお湯に潜り込んだ。

「おい…」

どうやら、俺が気絶してから顔射かましたらしい。

「…なにやってんだよ…」

お湯の中でわかめみたいになってる髪の毛をガシッと掴んだ。
引っ張り上げると、気まずそうな君が収穫できた。

「コラ…」
「ごめんなさい…」

びちょびちょの顔面をさっと手で拭うと、最上級の笑顔を見せた。

「だって、初めてドライでイカせたんだよ!?すっごく興奮しちゃって…」
「だからって、顔射?」
「う……」

ほらああ…俺の予想通りじゃねえか…

「…したんだ…?顔射…」
「う…うん…」
「もしかして、気絶してんのに挿れた…?ケツに…」

なんか、痛いんだよね。
腰もだけど、ケツの穴も…
指くらいじゃこんなにならないから…もしかして。

「…挿れた…解れてたし…」
「とんだ鬼畜だな、オイ」
「だって久しぶりに、中に挿れたかったんだもん…」
「…なにも気絶中にするこたなくね?」
「だって起きないんだもん…」

またぷうっと頬が膨らんだ。

「なんで、あなた様が拗ねるんですか?」

また頬を突いたら、ぷうっと音を出して萎んだ。

「拗ねてないです。ごめんなさい」
「あ。なにその言い方」
「ごめんなさいは、ごめんなさいですう」

上目遣いに俺を見ると、ぶーって吹き出して。

「もお…反省してないだろ…」
「してるよ…今度は起きてるときにするから…」

いや、顔射はヤメロ…
俺だってしたことねえだろうが…

ふたりで浴槽に浸かりながら笑ってたら、外からやけに景気のいい『森のくまさん』が聞こえてきた。

「あっ…灯油やさん来た!」

君がジャバっと立ち上がった。
俺の顔の真正面に、君のブツ…

「おー…マグナム…」

君はガラッと風呂場の窓を開けた。

「灯油やさーん!ヤバいっ…行っちゃう!」

俺の目の前で、君のプリケツが踊っている…


この地域では、灯油の販売車が定期的に回ってくる。
石油を備蓄しておく大きなタンクが備え付けになっている戸建てが多いから、こうやって巡回してくるんだ。

うちみたいな小さな借家にまで付いてるから、びっくりする。

初めのうちはなんだかわからなくて。
外から聞こえてくる、やたらポップな爆音の童謡に怯えたもんだが…


「ちょっと捕まえてくる!」

君は窓をスパーンと閉めると、浴槽から出ていく。

「えっ…ちょ!風邪引くって!」
「平気!」

そう言って君は、風呂場を飛び出していった。

「だいじょおぶかよお…」

何も考えずに、本能で飛び出していったよ…

思わず苦笑いした。

「本当に…考えなしなんだからなあ…」


…だから、こんなとこまで…

ふたりで来てしまったんだ


「俺も大概…考えなし、か…」

独りごちて、立ち上がろうとした。


無理だった


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