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第五章 あまのじゃくからの手紙
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今…なんか凄いいいこと言ったみたいなのに…台無しだ…
「直人。あんた本土に好きな人でも居るの?」
「ぶふぉっ…」
飲みかけてたシークヮーサージュースを吹き出してしまった。
「は、はーん…さては、振られたな?」
「ちょっとは遠慮ってもんしてよっ!」
笑いながら僕にティッシュの箱を差し出してくれた。
でも動きが止まって、じっとティッシュの箱を見てる。
「…一晩に二回…」
「も、もうっ!忘れてくれよっ!!」
ノリコさんはいい意味でも悪い意味でも口に蓋がない。
それに勘がいいのか、弱いところを的確に突いてくるというか…
だから僕の天の邪鬼が発動されても、さらっと流されて。
なかったことになってしまうから、もう今じゃこの宿の人には発動もしなくなっちゃった。
あんなにいかついのに、松にいは多分一生頭が上がらないんだろう。
多分、僕も一生勝てないと思う。
面白そうにニヤニヤしてたノリコさんは、突然真面目な顔をした。
「私も…本土に思い残したことぐらい、あるのよ?」
「え…?」
「それでもここには愛する人たちが居る。だから私はこの島に残った」
松にいの去った庭の方を眺めると、ノリコさんは見たこともない優しい目をした。
「直人は…心を本土に置いたままなんだよ。だからあの人、あんなこと言ったのよ?」
深夜、布団に寝転がりながら、天井を見つめてた。
昼間はまだ夏みたいだけど、夜は過ごしやすい。
タオルケットを掛けたお腹に手を当てて、ぼーっとしていた。
テーブルの上には、書きかけの便箋と鉛筆。
一生懸命書いたけど、結局最初の挨拶のとこまでしか書けなかった。
なにから書けばいいか、わからなかった。
静か過ぎるほど静かな夜には、もう慣れた。
だけど時々来る、この胸のもやもやは一向に取れることがない。
本土に思い残すことなんて殆どなかったけど…
ひとつだけ、どうしても引っかかってることがある。
「はぁ…」
わかってるんだよ
諦めきれない僕が悪いって
本当は、ちゃんと会って伝えればよかったんだ。
はっきり答えを聞いて来ればよかったんだ。
そしたら、こんなに引きずることなんてなかったのかもしれない。
「直人ーっ!」
「うわわっ…なにっ!?」
目が覚めたら、目の前にノリコさんの顔があった。
布団に寝ている僕を、真上から至近距離で見下ろしている。
「ちっ…近いんだって!なんだよっ!?一体っ!?」
起き上がりながら、ノリコさんの肩を押して遠ざけた。
時々こういういたずらで起こされるんだから、堪ったもんじゃない。
「あんた、友達いないって言ってたよね?」
押し退けられたノリコさんは、僕の部屋の畳に横座りに座り込んでいる。
眉間にシワを寄せて、テーブルの上の便箋を見てる。
「え…?うん…」
「でもさ、あんたの友達って人が来てんだけど…」
「はあっ!?」
朝の光が眩しい。
ノリコさんに引っ張られて一階に降りていくと、食堂に松にいとお父さんとお母さんが集まってた。
一様に目をキラキラさせて廊下で突っ立ってる僕を見ている。
「な…なに?」
胡座をかいて座っている松にいは僕の顔を見ると、くいっと顎で隣の部屋を指した。
どんっとノリコさんに背中を押されて隣の部屋の前まで飛んでしまった。
食堂から3人が顔を出してこっちを見てる。
ノリコさんは仁王立ちになって、親指でふすまを指している。
嫌な予感しかしない…
もしかしてこんな遠くまで知り合いが投資やらなにやらの話にでも来たか…?
でも誰も、僕がここに居ることなんて知らないはずなんだけど…
渋々ふすまを開けると、そこに居たのは大きめのボストンバッグと猫背の男…
「え…?」
猫背の男は、白いTシャツの背中をよじって僕の方に向いた。
少し茶色い髪が、庭から入ってくる光を反射して柔らかく光ってる。
「…久しぶり」
タレ気味の目でニッコリ笑うと、僕の方に身体を向けた。
「大樹…なんで…?」
唯一の俺の友達…というか同僚だった大樹。
…と、言うかなんと言うか…
唯一ちゃんと、病気になる前まで人間づきあいができた人だった。
大金が入った後の僕に、全く態度が変わらなかったのは、大樹だけだった。
嘘のつけるほど器用な男じゃないから、大金を狙って演技してた訳でもない。
大体こいつは普段は無口で…好きな事の話をする時以外は、ほとんど黙っていたし。
好きな事になると、別人かってほど喋ったけども。
絵を描くことが好きで、それ以外にはあまり興味がないようだった。
だから僕に大金が入ったって知っても、本当になんにも変わらなかったんだ……
「探したから…」
「え…?」
「おまえ、何も言わずに居なくなるんだもん…探偵雇っちまった」
「はっ…はあっ!?」
「しょうがねえだろ。それしか方法がなかったんだから」
ちょっと拗ねたように口を尖らせると、ふいっと横を向いた。
「まったく…手間掛けさせやがって…」
「た…頼んでないもんっ…」
「ああ!?」
しまった…
また天の邪鬼発動しちゃった
せっかく大金叩いてここまで来てくれたのに
せっかく探偵使ってまで、僕を探して会いに来てくれたのに
嬉しいって…泣きたいくらい嬉しいって
なんで言えないんだろう
案の定、大樹は怒った顔してる。
どうしよう。どう言い訳したらいいんだろ。
大樹はすくっと立ち上がると、いきなり僕の胸ぐらをつかんだ。
「直人。あんた本土に好きな人でも居るの?」
「ぶふぉっ…」
飲みかけてたシークヮーサージュースを吹き出してしまった。
「は、はーん…さては、振られたな?」
「ちょっとは遠慮ってもんしてよっ!」
笑いながら僕にティッシュの箱を差し出してくれた。
でも動きが止まって、じっとティッシュの箱を見てる。
「…一晩に二回…」
「も、もうっ!忘れてくれよっ!!」
ノリコさんはいい意味でも悪い意味でも口に蓋がない。
それに勘がいいのか、弱いところを的確に突いてくるというか…
だから僕の天の邪鬼が発動されても、さらっと流されて。
なかったことになってしまうから、もう今じゃこの宿の人には発動もしなくなっちゃった。
あんなにいかついのに、松にいは多分一生頭が上がらないんだろう。
多分、僕も一生勝てないと思う。
面白そうにニヤニヤしてたノリコさんは、突然真面目な顔をした。
「私も…本土に思い残したことぐらい、あるのよ?」
「え…?」
「それでもここには愛する人たちが居る。だから私はこの島に残った」
松にいの去った庭の方を眺めると、ノリコさんは見たこともない優しい目をした。
「直人は…心を本土に置いたままなんだよ。だからあの人、あんなこと言ったのよ?」
深夜、布団に寝転がりながら、天井を見つめてた。
昼間はまだ夏みたいだけど、夜は過ごしやすい。
タオルケットを掛けたお腹に手を当てて、ぼーっとしていた。
テーブルの上には、書きかけの便箋と鉛筆。
一生懸命書いたけど、結局最初の挨拶のとこまでしか書けなかった。
なにから書けばいいか、わからなかった。
静か過ぎるほど静かな夜には、もう慣れた。
だけど時々来る、この胸のもやもやは一向に取れることがない。
本土に思い残すことなんて殆どなかったけど…
ひとつだけ、どうしても引っかかってることがある。
「はぁ…」
わかってるんだよ
諦めきれない僕が悪いって
本当は、ちゃんと会って伝えればよかったんだ。
はっきり答えを聞いて来ればよかったんだ。
そしたら、こんなに引きずることなんてなかったのかもしれない。
「直人ーっ!」
「うわわっ…なにっ!?」
目が覚めたら、目の前にノリコさんの顔があった。
布団に寝ている僕を、真上から至近距離で見下ろしている。
「ちっ…近いんだって!なんだよっ!?一体っ!?」
起き上がりながら、ノリコさんの肩を押して遠ざけた。
時々こういういたずらで起こされるんだから、堪ったもんじゃない。
「あんた、友達いないって言ってたよね?」
押し退けられたノリコさんは、僕の部屋の畳に横座りに座り込んでいる。
眉間にシワを寄せて、テーブルの上の便箋を見てる。
「え…?うん…」
「でもさ、あんたの友達って人が来てんだけど…」
「はあっ!?」
朝の光が眩しい。
ノリコさんに引っ張られて一階に降りていくと、食堂に松にいとお父さんとお母さんが集まってた。
一様に目をキラキラさせて廊下で突っ立ってる僕を見ている。
「な…なに?」
胡座をかいて座っている松にいは僕の顔を見ると、くいっと顎で隣の部屋を指した。
どんっとノリコさんに背中を押されて隣の部屋の前まで飛んでしまった。
食堂から3人が顔を出してこっちを見てる。
ノリコさんは仁王立ちになって、親指でふすまを指している。
嫌な予感しかしない…
もしかしてこんな遠くまで知り合いが投資やらなにやらの話にでも来たか…?
でも誰も、僕がここに居ることなんて知らないはずなんだけど…
渋々ふすまを開けると、そこに居たのは大きめのボストンバッグと猫背の男…
「え…?」
猫背の男は、白いTシャツの背中をよじって僕の方に向いた。
少し茶色い髪が、庭から入ってくる光を反射して柔らかく光ってる。
「…久しぶり」
タレ気味の目でニッコリ笑うと、僕の方に身体を向けた。
「大樹…なんで…?」
唯一の俺の友達…というか同僚だった大樹。
…と、言うかなんと言うか…
唯一ちゃんと、病気になる前まで人間づきあいができた人だった。
大金が入った後の僕に、全く態度が変わらなかったのは、大樹だけだった。
嘘のつけるほど器用な男じゃないから、大金を狙って演技してた訳でもない。
大体こいつは普段は無口で…好きな事の話をする時以外は、ほとんど黙っていたし。
好きな事になると、別人かってほど喋ったけども。
絵を描くことが好きで、それ以外にはあまり興味がないようだった。
だから僕に大金が入ったって知っても、本当になんにも変わらなかったんだ……
「探したから…」
「え…?」
「おまえ、何も言わずに居なくなるんだもん…探偵雇っちまった」
「はっ…はあっ!?」
「しょうがねえだろ。それしか方法がなかったんだから」
ちょっと拗ねたように口を尖らせると、ふいっと横を向いた。
「まったく…手間掛けさせやがって…」
「た…頼んでないもんっ…」
「ああ!?」
しまった…
また天の邪鬼発動しちゃった
せっかく大金叩いてここまで来てくれたのに
せっかく探偵使ってまで、僕を探して会いに来てくれたのに
嬉しいって…泣きたいくらい嬉しいって
なんで言えないんだろう
案の定、大樹は怒った顔してる。
どうしよう。どう言い訳したらいいんだろ。
大樹はすくっと立ち上がると、いきなり僕の胸ぐらをつかんだ。
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