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第五章 あまのじゃくからの手紙
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「な、何で僕ばっかりっ…」
「あ?」
やばい。また天の邪鬼発動しそうになった。
そうじゃない。
そうじゃないんだ。
ちゃんと、大樹と向き合わないと。
「え…いや…だって…僕は…あの時勇気を出して…言ったんだよ…?」
がんだって…
そりゃステージは浅かったけど、若い人は進行が早いからすぐ死んじゃうって聞いたことがある。
抗がん剤の副作用で、別の病気になって死ぬことだってあるって…
だから、本当の事を言ったのに…
「死ぬかもしれないって…」
僕の家族みたいに、ある日突然居なくなるかもしれない…
死って、ある日突然なにもかも無くなることなんだ
「それだけだろ?」
「え?」
大樹はふうっと息を吐き出すと、じっと僕を見た。
冷たいくらいの視線を僕に向けてる。
でも、多分これは少し冷静じゃないときの顔。
冷静じゃないから言葉を選んでるときの顔だ。
考え込むと、大樹はちょっと怖い顔になってしまうんだ。
「直人は、事実を言っただけだろ?直人の気持ちは、一言だって言ってない」
「そんなこと言うなら、大樹だってっ…」
大樹だって何も言ってない。
何も僕には伝わってない。
「ぼ…僕にはなんにもわかんなかったもんっ…」
あの日の大樹の顔が鮮明に脳裏に蘇る。
今の大樹もあの時と同じ顔をしてる。
ちょっと困った顔して、目が潤んでた。
それだけで、なんにも僕には言ってない。
「…ごめん…」
ハの字に下がった眉が、ぼやけてくる。
「…泣くなよ…直人…」
「泣いてないもん」
「泣いてるだろうが……」
ぽたり、机の上に雫が落ちた。
「…好きだ」
ぎゅっと手を握られた。
「直人が好きだ」
増々ぼやけて顔が見えない。
「…おまえは…?」
「うっ…うえぇ…」
「ああ…もうほら…」
ぐいっと手のひらが伸びてきて、僕の顔を拭っていった。
「ぼくも…好き…」
気がついたら、大樹の腕に抱きくるまれてた。
あ…庭で松にいが見てるのに…
「…いいや…」
「え?」
「いや…見られてるの。宿の人に…」
「えっ…」
大樹が驚いて腕を外そうとした瞬間、僕から抱きついた。
「いいもん」
きっと…
あの人達はこんなことで僕のこと嫌いにはならないだろう。
だって、こんな素性もわからない僕を受け入れてくれた人たちだから。
僕の恋人が男だからって、嫌いにはならないだろう。
「直人…」
「いいんだ…こんなことくらいじゃ、あの人達驚かないよ。きっと」
「そう、なの…?」
「だって、僕が天の邪鬼発動できないんだもん」
「…そりゃ…すごく、いい人達なんだな…」
ぎゅっと僕を抱きしめる腕に力が入った。
僕も、背中に回した腕に力を入れた。
ふふっと大樹は笑った。
「とても、いい人たちだよ…」
大樹の腕に抱かれながら、庭の植栽を見た。
にゅっと葉っぱの間から腕が出てきて、親指を立てた。
それきり、その部屋には誰もこなかった。
「へえ…会社、辞めてきたの?」
ノリコさんが食堂で夕飯を出しながら大樹に話しかけてる。
今日は僕の部屋に一緒に泊まることになったんだ。
松にいとノリコさんがうるさくて…
恥ずかしいから別々の部屋でいいって言ってるのに、僕の部屋に既にお布団がもう一組運び込んである。
もう本当に…もう…ぷらいばしー…
そんなこんなで、なんだかバタバタと午後の時間は過ぎていった。
大樹は目を白黒させながらも、なんだか楽しそうに宿の人達を眺めている。
お昼ごはんを食べる時は猛烈に恥ずかしかったけど、夕飯になる頃にはだいぶ落ち着いていた。
「はい。直人も会社辞めちゃったし…それに絵の方で仕事が来そうだし」
「そうなんだ。凄いね」
ノリコさんの口に蓋のない言葉は、大樹には素直に入ってくるようで。
見たこともない朗らかな顔で笑ってる。
「いや…これからです」
そう言って僕を見て笑った。
「じゃ、直人と一緒に暮らすの?」
「あ?」
やばい。また天の邪鬼発動しそうになった。
そうじゃない。
そうじゃないんだ。
ちゃんと、大樹と向き合わないと。
「え…いや…だって…僕は…あの時勇気を出して…言ったんだよ…?」
がんだって…
そりゃステージは浅かったけど、若い人は進行が早いからすぐ死んじゃうって聞いたことがある。
抗がん剤の副作用で、別の病気になって死ぬことだってあるって…
だから、本当の事を言ったのに…
「死ぬかもしれないって…」
僕の家族みたいに、ある日突然居なくなるかもしれない…
死って、ある日突然なにもかも無くなることなんだ
「それだけだろ?」
「え?」
大樹はふうっと息を吐き出すと、じっと僕を見た。
冷たいくらいの視線を僕に向けてる。
でも、多分これは少し冷静じゃないときの顔。
冷静じゃないから言葉を選んでるときの顔だ。
考え込むと、大樹はちょっと怖い顔になってしまうんだ。
「直人は、事実を言っただけだろ?直人の気持ちは、一言だって言ってない」
「そんなこと言うなら、大樹だってっ…」
大樹だって何も言ってない。
何も僕には伝わってない。
「ぼ…僕にはなんにもわかんなかったもんっ…」
あの日の大樹の顔が鮮明に脳裏に蘇る。
今の大樹もあの時と同じ顔をしてる。
ちょっと困った顔して、目が潤んでた。
それだけで、なんにも僕には言ってない。
「…ごめん…」
ハの字に下がった眉が、ぼやけてくる。
「…泣くなよ…直人…」
「泣いてないもん」
「泣いてるだろうが……」
ぽたり、机の上に雫が落ちた。
「…好きだ」
ぎゅっと手を握られた。
「直人が好きだ」
増々ぼやけて顔が見えない。
「…おまえは…?」
「うっ…うえぇ…」
「ああ…もうほら…」
ぐいっと手のひらが伸びてきて、僕の顔を拭っていった。
「ぼくも…好き…」
気がついたら、大樹の腕に抱きくるまれてた。
あ…庭で松にいが見てるのに…
「…いいや…」
「え?」
「いや…見られてるの。宿の人に…」
「えっ…」
大樹が驚いて腕を外そうとした瞬間、僕から抱きついた。
「いいもん」
きっと…
あの人達はこんなことで僕のこと嫌いにはならないだろう。
だって、こんな素性もわからない僕を受け入れてくれた人たちだから。
僕の恋人が男だからって、嫌いにはならないだろう。
「直人…」
「いいんだ…こんなことくらいじゃ、あの人達驚かないよ。きっと」
「そう、なの…?」
「だって、僕が天の邪鬼発動できないんだもん」
「…そりゃ…すごく、いい人達なんだな…」
ぎゅっと僕を抱きしめる腕に力が入った。
僕も、背中に回した腕に力を入れた。
ふふっと大樹は笑った。
「とても、いい人たちだよ…」
大樹の腕に抱かれながら、庭の植栽を見た。
にゅっと葉っぱの間から腕が出てきて、親指を立てた。
それきり、その部屋には誰もこなかった。
「へえ…会社、辞めてきたの?」
ノリコさんが食堂で夕飯を出しながら大樹に話しかけてる。
今日は僕の部屋に一緒に泊まることになったんだ。
松にいとノリコさんがうるさくて…
恥ずかしいから別々の部屋でいいって言ってるのに、僕の部屋に既にお布団がもう一組運び込んである。
もう本当に…もう…ぷらいばしー…
そんなこんなで、なんだかバタバタと午後の時間は過ぎていった。
大樹は目を白黒させながらも、なんだか楽しそうに宿の人達を眺めている。
お昼ごはんを食べる時は猛烈に恥ずかしかったけど、夕飯になる頃にはだいぶ落ち着いていた。
「はい。直人も会社辞めちゃったし…それに絵の方で仕事が来そうだし」
「そうなんだ。凄いね」
ノリコさんの口に蓋のない言葉は、大樹には素直に入ってくるようで。
見たこともない朗らかな顔で笑ってる。
「いや…これからです」
そう言って僕を見て笑った。
「じゃ、直人と一緒に暮らすの?」
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