66 / 88
最終章 願わくば花の下にて恋死なむ
4
しおりを挟む
椎葉教授のよくない噂は、今までたくさん聞いた。
だけどそれを証明するヤツなんて居なかった。
多分、椎葉教授は凄く遊んでたんだろうとは思う。
女子学生とも、男子学生ともよく飲みに行く姿を見かけたし。
でもいつもひっそりと影みたいに一緒にいる兼高准教授は、そんなこと関係ないみたいに清らかだった。
強引で押しが強く、それでいて繊細なところもある椎葉教授。
そんな教授をフォローして、しっかりと教授との共同研究を進める兼高准教授。
まるで小説の中の登場人物みたくて…
あの二人から目が離せなかったのに。
それから兼高准教授は、教授になって。
椎葉教授の持っていた研究室やらゼミやら、そのまま引き継いだ。
やっていたことは、同じ研究だったからどれもスムーズにいった。
年が若いと言われてたけど、椎葉教授と二人三脚でやってたものだから、誰もそれを阻止することはできなかったようだ。
夏期休暇の前には、だいぶ研究室も落ち着いていた。
「遠ちゃんは夏休みどうするの?」
「ああ…どうしよっかな…」
俺は実家が都心だったから、帰省するってこともなくて。
青木くんは千葉が実家だったし、中島さんちも東京の西の方だし。
結局3人でつるむことになりそうだな…
「バイトとかしないの?」
「え…そうだな…」
でも肉体労働なんて嫌いだし…向いてない。
接客業なんて面倒だ。
「いい話がある」
「おーい、そっち持ってくれー!」
青木くんのでかい声が響く。
「あーい!」
これじゃ肉体労働と変わらないじゃないか…
バイトというのは、夏休みに兼高教授の手伝いをすることだった。
あんまり拘束される日はないから、時給は凄く良かった。
だから中島さんと青木くんと3人でそれを引き受けたんだけど…
「やること結構あるんだな…」
研究室の掃除やらなにやら、手始めにやらされた。
「すまないね。これが終わったら、教授室の方も頼むよ」
兼高教授に変わってから、椎葉教授が姿を現すことはなかった。
だから、部屋の片付けは兼高教授が少しずつやっていたようだけど、これを機会にいろいろと整理するようだった。
午前の作業を終えて、お昼ご飯を学食に食べに行った。
作業がしんどかったから学食のテーブルに突っ伏していたら、青木くんが奢ってくれた。
中島さんは笑って遠慮してたけど、結構クタクタになってた。
「ごめんねぇ…しんどいの数日だけだと思うからさぁ…」
「青木くんはいいよね。馬鹿力だから…」
「ええっ!?そんなことないよ?」
「え…青ちゃん、気づいてなかったの?力加減、いつも馬鹿だよ?」
「力加減馬鹿…」
中島さんにまで言われて、青木くんは凹んでいた。
食べ終わって少し休憩してから教授室に顔を出すと、兼高教授が来客用のソファで横になってた。
「あ…邪魔しちゃ悪いかな…」
青木くんが言うから、俺達は研究室で片付けの続きをしてた。
1時間ほどして教授室にそっと様子を見に行くと、ソファで起き上がって兼高教授は電話をしていた。
「…だから…行けないってば…」
険しい顔をしている。
「どうしてそんな勝手なことばかり言うの…?」
声が震えてて…
聞くつもりはなかったんだけど、思わずドアの外で固まってしまった。
だけどそれを証明するヤツなんて居なかった。
多分、椎葉教授は凄く遊んでたんだろうとは思う。
女子学生とも、男子学生ともよく飲みに行く姿を見かけたし。
でもいつもひっそりと影みたいに一緒にいる兼高准教授は、そんなこと関係ないみたいに清らかだった。
強引で押しが強く、それでいて繊細なところもある椎葉教授。
そんな教授をフォローして、しっかりと教授との共同研究を進める兼高准教授。
まるで小説の中の登場人物みたくて…
あの二人から目が離せなかったのに。
それから兼高准教授は、教授になって。
椎葉教授の持っていた研究室やらゼミやら、そのまま引き継いだ。
やっていたことは、同じ研究だったからどれもスムーズにいった。
年が若いと言われてたけど、椎葉教授と二人三脚でやってたものだから、誰もそれを阻止することはできなかったようだ。
夏期休暇の前には、だいぶ研究室も落ち着いていた。
「遠ちゃんは夏休みどうするの?」
「ああ…どうしよっかな…」
俺は実家が都心だったから、帰省するってこともなくて。
青木くんは千葉が実家だったし、中島さんちも東京の西の方だし。
結局3人でつるむことになりそうだな…
「バイトとかしないの?」
「え…そうだな…」
でも肉体労働なんて嫌いだし…向いてない。
接客業なんて面倒だ。
「いい話がある」
「おーい、そっち持ってくれー!」
青木くんのでかい声が響く。
「あーい!」
これじゃ肉体労働と変わらないじゃないか…
バイトというのは、夏休みに兼高教授の手伝いをすることだった。
あんまり拘束される日はないから、時給は凄く良かった。
だから中島さんと青木くんと3人でそれを引き受けたんだけど…
「やること結構あるんだな…」
研究室の掃除やらなにやら、手始めにやらされた。
「すまないね。これが終わったら、教授室の方も頼むよ」
兼高教授に変わってから、椎葉教授が姿を現すことはなかった。
だから、部屋の片付けは兼高教授が少しずつやっていたようだけど、これを機会にいろいろと整理するようだった。
午前の作業を終えて、お昼ご飯を学食に食べに行った。
作業がしんどかったから学食のテーブルに突っ伏していたら、青木くんが奢ってくれた。
中島さんは笑って遠慮してたけど、結構クタクタになってた。
「ごめんねぇ…しんどいの数日だけだと思うからさぁ…」
「青木くんはいいよね。馬鹿力だから…」
「ええっ!?そんなことないよ?」
「え…青ちゃん、気づいてなかったの?力加減、いつも馬鹿だよ?」
「力加減馬鹿…」
中島さんにまで言われて、青木くんは凹んでいた。
食べ終わって少し休憩してから教授室に顔を出すと、兼高教授が来客用のソファで横になってた。
「あ…邪魔しちゃ悪いかな…」
青木くんが言うから、俺達は研究室で片付けの続きをしてた。
1時間ほどして教授室にそっと様子を見に行くと、ソファで起き上がって兼高教授は電話をしていた。
「…だから…行けないってば…」
険しい顔をしている。
「どうしてそんな勝手なことばかり言うの…?」
声が震えてて…
聞くつもりはなかったんだけど、思わずドアの外で固まってしまった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
21
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる