ボクらは魔界闘暴者!

幾橋テツミ

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第一章 妖術鬼の愛娘

【覇闘】の掟③

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 この思わせぶりな台詞に気が立ったままの“備前の覇王”がすかさず反応した。

黎輔おまえに限って…だと?

 すると、テメエはオレが光城玄矢アイツに敗けると思ってるってことか!?」

 やれやれ…という表情で500ミリリットル缶から残りのサワーを錫のグラスに注いだ星愁は隣の巨漢を見ようともせず返答する。

「頼むからツバを飛ばさんでくれよ…。

 …決してそういう意味で言ったんじゃない、

 だが、まがりなりにも奴は、現在は三派しか確認されていない妖術鬼シャザラ直系の戦闘勢力の長だ…。

 何度も名前を出して申し訳ないが、広島の牧浦氏は二年前、覇闘初戦デビューのアイツにたった1分で心身に殆ど再起不能のダメージを負わされた…。

 ここにいる人間でそれを目撃したのはこのオレだけだが、視力に自信のあるオレが確認出来た光城の攻撃はわずかに七発…いずれも拳による顔面殴打だったが、最初の三発では崩れ落ち、続くマウントによる四発で五日間意識が戻らず死線をさまよったんだぜ…。

 …もちろん至近距離による44マグナム弾の直撃にも僅かに凹むだけで、数秒後には傷一つなく再生する“超形状記憶合金”で鎧われた錬装磁甲を身に着けていながら…それを飴細工みてえにグシャグシャに砕かれてな…。

 なあ、自称・覇王さんよ…、

 玄矢と経験キャリアにおいてはたった一ヶ月遅れのであるおまえに、果たして同じ芸当が出来るか?」

 怒りの興奮で全身を紅潮させた剛駕嶽仁は砲丸の如き拳を分厚い樫材のテーブルに叩き付けて咆哮する。

「テメエは一体どっちの味方なんだ、エエッ!?

 第一、あん時のマキさんの状態を理解してたのかよっ!?

 釣ってきたフグをテメエで刺し身にして死にかけた福山の阿部のオヤジとバイクで遊び呆けた挙句、遠征先の峠でコーナー曲がりきれずにガードレールからすっ飛ぶ空中ダイブやらかして全身骨折した明石の栗原の[PWプロキシウォリアー]を一月以内に立て続けに押し付けられた結果…しかも見事に連勝した後の悲劇なんだぜ!!

 特に他所の支部の助っ人までホイホイ引き受けちまうなんて…人が良いのにもほどってもんがあらあな!

 まあ、それはあの人の信念に基づく行動だからこっちがとやかく言うことじゃねえが…。

 だが、誰がどう考えても一月に三連戦するなんて正気の沙汰じゃねえ…どんな強者ツワモノだって最終戦ラストマッチにゃバッテリー切れ起こしてるに決まってるだろうがッ!!」

「…しかも、それにストップどころか注意喚起すらしなかった聖団上層部のずさんな管理体制にも大いに疑問を呈したいが、実際に敗けたら敗けたで中国支部こっちだけにキツイお咎めがあったのは未だに納得出来んところではあるな…。

 もちろん阿部のオヤジの永久追放は擁護の余地すら無いとしてもな…」

 星愁の指摘に嶽仁は憤然と頷き、更に咆え立てた。

「そうだろッ!全くふざけてやがる!!

 結局、この失態しくじりで誰よりも聖団を愛し、尽くしてきたマキさんはを凍結されて実に四年間の活動停止処分を食らっちまった…。

 だが、栗原の野郎はどうだ、完治後にわずか“三ヶ月の謹慎処分”食らっただけで今もバリバリの現役じゃねえか…しかも出る度に敗けてるくせによ!!

 オレは今でも、こりゃ榊(絆獣聖団〈九氏族〉関西支部【首督】)の陰謀だと確信してるぜ!

 敵が三つのグループにまとまってる以上、こっちも統合してテメエがそのうちの一つを仕切りてえのさ!!」

「…もし〈指導部〉もそう考えてるとしたら、ボクら”弱小支部“はまさに岐路に立たされてるといえますね…。

 大都市エリアを預かる“有力氏族”に奴隷扱いされるのがイヤなら勝ち続けるしかない…!」

 思い詰めた冬河少年の呟きに宗青年が深く相槌を打つ。

「そういうことだ…!

 まあ、連中が欲しがってるのは我々の身柄じゃなくてあくまで〔覇闘札カード〕だけだという説もあるがな…。

 事実、所属する錬装者の数に応じて枚数を振り分けるべきだという要望は最大勢力の月中つきなか(南関東支部【首督】)から、この方式システムが導入されてすぐに提出されてるらしい…幸いにも未だ実現しちゃいねえが…」

「当ったりめえよ!

 肝心の実力じゃなくてたかが住んでる場所の違いだけでに差をつけられてたまるかっての!

 大体よ、我が中国支部は何といっても“No.1美人操獣師”の萩邑りさら嬢を輩出してるんだぜ!!

 〈広報〉の神田口によると、彼女のラージャーラにおける活躍ぶりはまさに飛ぶ鳥を落とす勢いで、滞在三年目の現在、名実ともに〈本隊〉(聖団では“異世界常駐部隊”をこう呼ぶ)のエース格に堂々君臨してるっていうじゃねえか!

 まあ、あの天下一品の美貌と、それにふさわしい麗しい性格の持ち主だからあっと言う間にマドンナ的存在に昇りつめるとは思ってたが、あそこまでの凄腕とは…まさに、

 “天響神エグメドは彼女に二物を与えた”

 といったところだな。

 …弟の崇景にしたって、喜んでとはいわねえまでも覚悟と希望を抱いて異世界ラージャーラに飛び込めた最大の原動力は、

“向こうでりさらさんが待っててくれてる”

 っていうただ一点にあったといっていいくらいだしな…ある意味羨ましいぜ…。

 もちろんオレもそうだが、お二人さんも萩邑嬢には当然、好意以上の感情を抱いてたクチだろ?」

「…まあ、りさらさんの御実家は岡山じゃなくて山口ですけどね…。

 もちろん、あの女性ひとに惹かれない野郎なんてまず存在しないでしょうよ…。

 尤もボクがお目にかかったのはたった二回だけだから偉そうなことは言えませんけど…、

 あ、でも以前まえにも言いましたけど、此処にも一度来られましたよ…まさにラージャーラに旅立つ直前に!

 噂通り物凄く綺麗な方で、めちゃくちゃ品があった…まさにどこかの国の王女様って感じ。

 食事のリクエストを聞くと意外にも?〈焼肉〉だったんで親父も張り切ってなるべく最高の物をご用意したらしいんですが(もちろん今日よりも上等の肉で、普段はもたっぷり用意して)…。

 え?…りさらさんの食べっぷりですか?

 へへへ、それがねえ…これも意外というか、思ったより豪快だったなあ…。

 でも、食べ方がまさに芸術的にキレイで、全然イヤらしくないどころか見とれてしまうくらいなんですよね…。

 むしろ緊張して箸の進まないボクの方が、

“黎輔クン、強くなるにはしっかり食べなきゃダメよ”

 ってアドバイスされちゃうくらいで…エヘヘ。

 …まあ、何ていうか、月並みな感想でアレですけど、まず全身から発する霊光オーラが凄かったですね…、

 おそらくトップクラスの女優やアーティストってあんな感じなのかなぁ…もちろん逢ったことないけど」

 と冬河黎輔が憧憬あこがれの桂城聖蘭を念頭に置いて発言すると、イケメン整体師が待ってましたとばかりに続いた。

「ふん…まあ、あのマドンナとってのはおまえの短い人生においては最大のエポックの一つだろうが、オレのに比べりゃまだまだだぜ…!

 おっ?生意気にも不満そうな顔をしやがったな…大一番の前にこのオレと一戦交えようってのかよ?
 
 …いつでも受けて立つぜ。
 
 だが、今日はじめて打ち明けるを聞きゃあ納得せざるを得んだろうよ…、

 何しろこの宗 星愁さまは!!」

「な、何ィいいいッ!?」

「ええーッ!?マジですか!?」

 晩夏の午後七時、白いシーリングファンが天井で気怠げに回る十五畳のロフトリビングに、剛駕嶽仁と冬河黎輔の悲鳴が同時に轟きわたった…!

 



 

 



 
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