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エリート青年はベッドの上でひざまずく

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 苦しい。自分は、どうなってしまったのだ? あの時のことが、頭をはなれない。忘れたいのに、忘れようとしても、毎晩夢にみる。あの時にいた少年たちは、どうしているだろうか? こんな苦しみをなめているのは、自分だけなのだろうか? アダンは独房のとらわれびとのような、ひとしれぬ苦しみに、昼となく夜となく、責めさいなまれていた。
 ああ、身を焼くような熱いセックスがしたい。そしてこの苦しみから逃れたい。ハサン、おのれをこの苦しみから解放してくれるのは、あなただけだ。あなただけなのに、あなたは、どうして、私をこばむのだ。

 アダンは、カーテン越しの朝のすがすがしい白い光りがみちた部屋の清らかなベッドの上に、朝の祈りをささげる敬虔な人のように、あるいは、孤高で気高いこころをもった虜囚のようにひざをついた。

 アダンは、濃紺のパジャマを、ひざまでさげた。パジャマの下に身につけていたのは、ハサンからもらった、同色のTバックだった。局所をかくすだけの、ほんの小さな三角の布きれ。ありのとわたりから、アナルにかけては、細くかたい布地一本だ。その細い布地部分が、アダンの敏感な部分にくいこんで刺激し、ときに、たまらない快感をよびおこすのだった。

 きついTバックの下着のもたらす快感に、この若い切れ者の男が、仕事中に、あるいはトラムでの通勤中に、勃起しているなどと、だれが知れよう。

 鉄面皮で四角い銀縁メガネの男が、スーツの下に、こんな恥ずかしい下着をつけているなどと、だれが思うだろう。

 アダンはTバックの腰ひもを、ぐいとひっぱり、ほどいた。小さな布は、はらりと、白いシーツのうえに落ち、アダンの局部はあらわになった。
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