イケメン教師陵辱調教

リリーブルー

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第三章 生徒編

イケメン教師、宮本を呼び出す

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 一時限目が空き時間だった小坂は、相談室のソファで、二人の担任の生徒、村田と宮本のことを、ぼんやり考えていた。
 不良の村田と、級長の宮本。二人の性質には、何の似通った点もなかった。
 二人の接点といえば席が近いということくらいだ。教室の席順は、アイウエオ順の出席番号で決まっていた。だから、宮本の後ろの席は村田だった。

 先日の校内見回りの時のことだった。放課後の教室で二人が重なる影を見た。あの二人、つきあっているんだろうか。まさか、な。二人の性質には、なんの共通点もなかった。

「先生、小坂先生」
優しく呼ぶ声がする。
 小坂は目を開けた。ソファの脇に、宮本が立っていた。

「先生、寝てたんですか?」
宮本の無邪気な笑顔があった。
 いつのまにか、うとうとしていたようだった。

「ごめん。サボりだな」
小坂は、あわてて座り直した。

「呼び出されて、何かと思ったら、先生、眠ってるんですもん」
宮本はクスクス笑った。

「まいったな、寝不足で……」
小坂は照れ笑いした。

「まあ、座って」
小坂は宮本に、向かいのソファに座るよううながした。

「失礼します」
宮本は会釈をしてから座ると、
「テスト、できてなかったですか?」
と、真顔になって心配そうに聞いてきた。

「いや、今回も、よくできていたよ」
小坂は答えた。

「よかった。ありがとうございます」
宮本は、にっこりと、余裕の笑みを浮かべた。
「じゃあ、進路のことですか? 確かに今の僕の成績では無理ですが……」

「いや、無理ではないよ」
小坂は宮本の話をさえぎった。
「進路のことでもなくて、ちょっと、宮本に聞きたいことがあるんだ」
小坂は、言いにくいことを切り出した。

「何のことですか?」
宮本は、怪訝そうな顔をした。
「生徒協議委員会のことですか?」
宮本は、言いだしかねている小坂のようすに首をかしげた。

  小坂は、自分で自分の膝をさすりながら、あえて鼓舞して、口を開いた。
「いや、そうではなくて、村田のことだ」
沈黙が流れた。小坂が顔をあげると、こわばった宮本の顔があった。
 先ほどまで流麗だった宮本の返事がない。
「何か、隠していることがあるのか?」
小坂は、宮本の目を覗きこんだ。宮本は、小坂から視線をはずした。

 宮本はうつむいたまま、しばらく何も答えなかった。

 時計の針の音だけがした。窓の外で小鳥の声がする。木々がざわめいて大きく枝をよじり揺れるのが窓から見えた。

「先生……」
宮本は、そう言いかけて、ももの上に置いたこぶしを握りしめた。

 何日か前、小坂は宮本と村田のただならぬ現場を、夕暮れの教室で目撃した。村田は逃げたが、宮本は小坂に捕まった。問いただしたが、宮本は、
「何でもありません」
と小坂の手を振りきって走り去った。

 宮本は、小坂の向かいのソファに座ったまま、泣きじゃくり始めた。
「先生ごめんなさい。ぼく、村田君に……」
宮本は、こぶしで涙をぬぐった。ぬぐってもぬぐっても、宮本の大きな目からは涙があふれ出てきて、なめらかな頬の上をつたって濡らした。嗚咽と恥ずかしさが邪魔するせいか、宮本は、その続きが、どうしても言えないようだった。小坂はうながすようにたずねた。

「村田に、いじめられてたのか?」
小坂は聞いた。

「……キスされました」
宮本は、そう答えると、我慢の糸が切れたように、わっと泣きだした。
 ああ、やっぱりそうか。あれは見間違いではなかったのか。
 小坂は、宮本の方ににテーブル上のティッシュの箱を押しやると、宮本が泣き止むまで待った。宮本の嗚咽がおさまった頃、
「無理やりされたのか?」
と小坂は問いかけた。宮本は、コクリとうなずいた。
「そうか。それはよくないな。村田に注意しておこう」
小坂はなにげなく言った。

 すると、
「やめてください」
と宮本は拒否した。
「どうして?」
「先生に告げ口したと思われたくないんです」
「なるほど」
 下手に注意したら、村田は、告げ口したと宮本を恨むかもしれない。そして、宮本に、もっと酷いことをしかねない。
「わかった。今は言わない」
小坂は、ため息をついた。宮本は、しばらく泣き続けていた。
 宮本の言うように、ほんとうに、キスだけなんだろうか。この様子では、それだけとは思えない。小坂は、自分が村田にされたことを思い出して、目の前がぐらぐらした。

 だいぶ経ってから、宮本はやっと泣きやんだ。
 宮本は、顔をあげて小坂に聞いた。
「先生、ひとつだけ、ぼくも聞いていいですか?」
宮本の目は涙で赤くなっていたが、小坂の目を、真っ直ぐに見ていた。
 後ろ暗い小坂には、宮本の真っ直ぐな眼差しがまぶしかった。
「先生、昨日の放課後、何かあったんですか?」
昨日の放課後。
 いつの、どの時点のことだろう。
 落ち着け。
 こんなところで、間違った答えをうっかり口にしてはいけない。せっかくうまく隠しおおせているのだ。慎重に答えねば。
 小坂は冷静に答えを探そうとした。
 まさか、宮本を家に送ったあと麓戸の店に行ったこと? いや、そんなことを宮本が知っているはずがない。
 宮本が知りたいのは、学校でのことだろう。
 校長室で長時間、何をしていたのかということか。ずっと待っていたのだから、きっとそうだ。なんと言いわけしよう。まさか声が聞こえていたわけではなかろう。適当に仕事だと言おうか。実際、本当のことだ。
 答えるまでに長く時間がかかりすぎていた。
「外の手洗い場で……」
と宮本が小坂に思い出させるように言った。

「あ、ああ、そのことか。そういえば、宮本と、外の手洗い場で会ったな」
よかった。
 麓戸にSM調教されていることも、校長に触られて喘いでしまったことも、ごまかす必要はなかった。
 ただ単に、手洗い場で顔を洗っていただけだ。

「何かあったんですか?」
宮本は心配そうに聞いた。

「何もないよ」
小坂は微笑みをつくった。自分では、うまく笑えていると思っていた。

 だが、生徒は、なおも心配そうに小坂の顔を見つめた。
 小坂は不穏なものを感じた。
「そうですか……」
宮本は納得のいかない様子だった。
 いけない。宮本は、何かを疑っている。ここは慎重に返事をせねば。

「顔を洗っていたんだ。倉庫の整理をして、汗をかいたんでね。ほこりっぽくてかなわなかったよ」
小坂は、微笑みを浮かべながらもっともらしいうまい嘘をすらすら言えたと思った。

「そう、なんですか……。僕は、てっきり、先生も村田君に何かされたのじゃないかと思って……。それで心配になったんですが……」
小坂はどきりとした。
「先生も、村田君におどされていますよね?」
まさか。まさか宮本は、なにもかも知っていて聞いているのだろうか? 小坂は、この賢い、だが幼い級長を、おそれた。賢さと、幼さは、欺瞞を許さない。
「……もしかして、村田君におどされていることって、前に、先生が、見回りの時にあったっていうことですか?」
なぜ、宮本は、自分が村田におどされていると知っているのだろうか。そうか、今朝の廊下だ。ただそれだけのはずだ。落ち着け。落ち着くんだ。宮本が、そんなに知っているはずがないのだ。
「ほら、四月頃、先生が長く休まれたでしょう?」
小坂の頭はガンガンしてきた。けして忘れていたわけではない。むしろそれが、歯車の狂いはじめた、小坂がおかしくなった、直接の原因だった。
「うわさでは、小坂先生が、他校の生徒に暴力を受けたって……」
やめてくれ。それ以上、そんな話はしないでくれ。ただでさえ、昨日のことで頭がいっぱいなのだ。やめてくれ!
「あのとき、そんなうわさを聞きましたけど」
うわさ話。小坂がもっとも恐れるものの一つだ。どんなうわさ話があったというのだ。昨日のこともいずれ……。
「それって、本当ですか?」
級長の率直な眼差しに、小坂は、ひとことも答えられなかった。

 宮本は、再びうつむいて、エッ、エッと嗚咽を漏らしながら泣き出した。
「え? 宮本? どうした?」
小坂は、生徒の涙に我に返り、うろたえた。

 宮本は顔をあげた。大きな目にいっぱい涙を浮かべ、宮本は震える唇を開いた。
「……ぼく、見ちゃったんです」
え、なにを!?
小坂には、見られたら困るものがありすぎた。
「……せ、先生の……動画」
動画? え? どの動画? 麓戸に毎回撮影されているいやらしく恥ずかしいプレイの数々が頭をよぎった。
「せ……先生の酷い動画を……」
ウッ、といって、宮本は、口を押さえた。何を見たのだろう。吐き気がするほど酷い動画。失禁プレイだろうか、食便プレイだろうか、乱交か、鞭か、縄か、磔か、野外か? 小坂の心臓はバクバクと鳴った。
「……村田君に、見せられて」
村田? 村田が持っている動画?

 予鈴が鳴った。小坂にとっては、救いの鐘だった。
「もう時間か」
小坂は立ち上がった。
「ありがとう、話してくれて。悪かったな。嫌な気持ちにさせてしまって」
小坂は、教師の顔をとりつくろって、宮本の肩に手を置いて言った。

「いいんです……」
宮本は、首を左右に振った。
「僕は、先生のことが心配なんです……あんな酷いこと……」
村田の持っている動画。それが何を指しているか小坂はわかった。だが大丈夫だ。宮本は言いふらしたりしないだろう。
 小坂は、事態を甘くみていた。
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