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第二十一章 麓戸の追憶(麓戸視点)
麓戸、イケメン教師を追いかけて
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麓戸は警察から被害者捜索を請け負ったがあてがあるわけではなかった。あてなどなかった。なぜこんな厄介ごとを引き受けたのか。と問われれば返事に窮す。
だが、あの青年の姿。忘れられない。彼をどうしても助けたい。
苦い過去が思い出される。
麓戸は闇雲に探した。
一つ一つ個室のドアを開ける。驚いた顔の客の顔。どこにもいない。
トイレも見た。いない。
ひょっとして、もうビルの外に出てしまったのか?
いやそんなはずはない。まだこのビル内にいるはずだ。階段やエレベーターは警察が見張っていた。
階段?
鉄扉の向こうに従業員用の階段を見つけた。
業務用にしか使わない裏階段だ。壁は灰色で薄汚れている。薄暗く狭い階段を昇っていく足音が上の方で聞こえる。麓戸は足音を追いかけた。足音はどこまでも昇っていく。
待って!
麓戸は校舎の屋上を思い出す。
待って!
恋人を追いかけて間に合わなかった日を。
腕の中からすり抜けて屋上の柵を越えていってしまった後輩。池井慶(いけい けい)。
自分も追いかけようとして取り押さえられた。
神崎先生に。
「お前が元凶だろ!お前のせいであいつは!」
麓戸は神崎に食ってかかった。
「待ちなさい、電話が先だ、救急車を」
神崎は職員室の電話で救急車を呼んだ。
麓戸は、他の教師たちが止めるのも聞かず、血だらけの池井にすがって泣いた。
「一人で行くな!俺を一人にしないでくれ!」
担架で運ばれる池井にとりすがった。
麓戸の恋人、池井慶が鬼界の人となった後も、麓戸は神崎をなじった。
「お前があいつを弄ぶからあいつは絶望して」
「麓戸君、誤解だ。私は生徒を弄んでなどいない」
「嘘だ。お前があいつを……」
麓戸は怒りのあまり最後まで言うことができない。
「私は池井君の話をきいていただけだ」
教師の神崎は麓戸に終いまで言わせず遮るように答える。
「あいつは、あんたのことが好きだった。俺はあいつが好きだったのに!」
神崎が麓戸の後輩の池井を抱きしめていたのを麓戸は見たのだ。
「神崎先生、好きです」
池井がそう言っていた声も聞こえた。
しかも一度や二度ではないのだ。
だが、あの青年の姿。忘れられない。彼をどうしても助けたい。
苦い過去が思い出される。
麓戸は闇雲に探した。
一つ一つ個室のドアを開ける。驚いた顔の客の顔。どこにもいない。
トイレも見た。いない。
ひょっとして、もうビルの外に出てしまったのか?
いやそんなはずはない。まだこのビル内にいるはずだ。階段やエレベーターは警察が見張っていた。
階段?
鉄扉の向こうに従業員用の階段を見つけた。
業務用にしか使わない裏階段だ。壁は灰色で薄汚れている。薄暗く狭い階段を昇っていく足音が上の方で聞こえる。麓戸は足音を追いかけた。足音はどこまでも昇っていく。
待って!
麓戸は校舎の屋上を思い出す。
待って!
恋人を追いかけて間に合わなかった日を。
腕の中からすり抜けて屋上の柵を越えていってしまった後輩。池井慶(いけい けい)。
自分も追いかけようとして取り押さえられた。
神崎先生に。
「お前が元凶だろ!お前のせいであいつは!」
麓戸は神崎に食ってかかった。
「待ちなさい、電話が先だ、救急車を」
神崎は職員室の電話で救急車を呼んだ。
麓戸は、他の教師たちが止めるのも聞かず、血だらけの池井にすがって泣いた。
「一人で行くな!俺を一人にしないでくれ!」
担架で運ばれる池井にとりすがった。
麓戸の恋人、池井慶が鬼界の人となった後も、麓戸は神崎をなじった。
「お前があいつを弄ぶからあいつは絶望して」
「麓戸君、誤解だ。私は生徒を弄んでなどいない」
「嘘だ。お前があいつを……」
麓戸は怒りのあまり最後まで言うことができない。
「私は池井君の話をきいていただけだ」
教師の神崎は麓戸に終いまで言わせず遮るように答える。
「あいつは、あんたのことが好きだった。俺はあいつが好きだったのに!」
神崎が麓戸の後輩の池井を抱きしめていたのを麓戸は見たのだ。
「神崎先生、好きです」
池井がそう言っていた声も聞こえた。
しかも一度や二度ではないのだ。
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