イケメン教師陵辱調教

第二十一章 麓戸の追憶（麓戸視点）

麓戸、イケメン教師を心で罵る

「ふうん。そうですか」
小坂は、不満気な表情のまま言った。
「でも僕、神崎先生や水瀬君とは、麓戸さんと出会う前からの付き合いですし」
麓戸にどうこう言われる筋合いはないということだろうか。

「水瀬君？」
「生徒会長のことです」
小坂が答えた。
「へえ……」
麓戸はよく知らない。
「付き合いって……」
どういう意味だろうか。
「好きってことです」
小坂は麓戸の言葉を引き継いでそう言うと、麓戸の表情を確かめるようにちらっと目を上げた。
　そんな風に小坂の口から、他の人間をはっきり「好き」などと言われると胸が痛んだ。

　しかも俺の前でよくも「神崎先生が好き」などと、さらっと言いやがったな。

　麓戸は悔しく思う。

　神崎校長にあんなにセクハラで助平なことをされてまだ好きだとかぬかしやがってオデトは相当な変態だな。高校時代の夢をみたままなのか。

　悔しまぎれに麓戸は小坂を心で罵る。
「あ、そう……なんだ」
麓戸はかろうじて冷静を装ってそう答えるのがやっとだった。

「でも水瀬君って、今は伊東君と付き合ってるんですよね」
小坂は一人ごとのようにつぶやいた。

「伊東君？」
「風紀委員長のことです」
開き直っているのか、麓戸の知らない生徒の名前を小坂は平気でぽんぽん出してきた。

「別にいいんですけど」
小坂は拗ねたようにプイと横を向いた。

　あきらかに、その生徒たちに嫉妬してるんじゃないか。そんなに、その水瀬君とかいう生徒会長の少年が好きだったのか？　

　麓戸の心は不安の雲でもやもやした。

「後で、その生徒会長の水瀬君との恋話をじっくり聞かせてもらわないといけないな」
麓戸は余裕があるように見せるために笑顔で小坂の肩を優しく叩いた。
　余裕は見せかけだ。内心は穏やかでない。

　そんな話、聞いてないぞ。

と思う。

　生徒と付き合っていただって？　神崎とも付き合っていたというのか！？　本当か？　そんな話、知らなかったぞ？

腹立たしいことこの上ない。

　

「そんなことより麓戸さんの話が聞きたいです」
小坂が、話題を麓戸に転じ、じっと麓戸を見つめてきた。

そんなこと！？　重大なことじゃないか！　このままうやむやにして、ごまかす気か？

　矛先を向けられたが、さっきの話題が気になりすぎて麓戸は黙ったままでいた。話題を蒸し返すのも嫉妬しているようで、執着しているようで見苦しいだろうか。
　すると、
「昔のことを思い出したって、僕のことだけですか？」
と小坂はさらに聞いてきた。

「あ、いや」
誤魔化そうとしたが、小坂の追及するような眼差しから逃れることはできなかった。

「昔、好きだった人のこと？」
小坂が可愛らしく小首をかしげながら聞いた。

　くそう。こいつ、なんでそんなに可愛い表情をするんだ。あざといやつめ！

　麓戸は心で罵りながら仕方なく答えた。
「うん。そうだな」
可愛らしく聞かれれば白状せざるを得ない。

　すると、
「聞きたい。聞かせて。大丈夫だから」
と小坂は食いついてきた。が、聞かせて大丈夫な話かどうか麓戸は迷った。
　小坂が動揺し精神的に具合が悪くなったら後でなだめるのが大変だ。
　答えをはぐらかしたい。
　だが小坂は麓戸の顔から目を離さない。麓戸のごまかしを見逃すまいと見守っているように見えた。
「神崎先生とも、何か関係あるんでしょう？」
小坂はなかなか勘が鋭い。話さなければ引き下がらないだろうと麓戸は観念した。