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第二十一章 麓戸の追憶(麓戸視点)
麓戸と池井 2
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「そしたら性奴隷解放してやる」
麓戸は後輩の池井に言った。
「ほんと?」
池井は目を丸くする。
「ああ。だから俺に投票しろよ」
美形下級生の尊敬の眼差しを受けて照れ臭さに相手から顔をそむけた。ニヤニヤした顔をして舐められては困る。最初が肝心だ。
「やめられるかなあ」
池井は小声で言った。
まあ、会ったばかりの男の言うことが信じられないのは当然だろう。むしろ信じたら危険だ。それに池井は散々今までに騙されているのだ。人を信じられないのは当然だろう。麓戸はそんな池井を安心させようと力強く励ますように言った。
「やめられるさ。俺が絶対こんな酷い制度を廃止してやるんだ。安心したまえ」
まだ立候補もしていないのに、自分も不安はあった。しかし強固な決意だけはあったのだ。
せっかく性奴隷制度をなくしてやろうと言っているのに美少年の池井はうかない顔だった。
「制度がなくなっても、僕、やめられないかも……」
池井は恥ずかしそうに顔を真っ赤にして言った。
麓戸が自分と同じ境遇だったと知って安心したのだろう。今まで他の人と、そのことについて話せなかっただろうから。
生まれ持った美少年としての才能なのか、池井はドキドキさせるような表情をしている。
麓戸は、動揺する気持ちを抑え、冷静さをよそおって落ち着いた態度で尋ねた。
「性奴隷の仕事を、最初は無理やりやらされていたけど、いざそれがなくなったら、急にやめられるだろうか、そういうことだね?」
「だいたい、そんな感じのことです……」
池井は、うつむいて恥ずかしそうにそう答えた。
麓戸は提案した。
「それなら俺が相手をしてやるよ」
言ったあと、しまった、と思った。これでは変態ではないか。はやまった。好みのタイプだからと、順序をすっとばして告白みたいなことをしてしまった。こんな申し出、相手を好きと言っているようなものじゃないか。
いや、それより怖がらせてしまったか? さっき他の人間のように池井を傷つけるような暴力はふるわないと宣言したばかりなのに。池井に性的な暴力をふるう輩となんの変りもないことを言ってしまっていた。
麓戸は自己嫌悪でいっぱいの気持ちになった。「ごめん! 今のは、聞かなかったことにしてくれ」そう言おうとした矢先のことだった。
「ほんと?」
と池井が顔をあげ返事をした。
怒ってはいないようだった。麓戸はほっとした。
「その代わりもう、俺以外の他のやつらとはするな」
麓戸がそう言うと、池井は、
「そんなの無理です」
と言う。それでも麓戸は、
「俺がかばってやるから。他のやつらは断れ」
と説得した。
「本当に?」
池井は疑わしそうに麓戸を見た。麓戸は、とりたててガタイのいい方ではなかった。大柄な運動部員たちから、どうやってかばってくれるのかと思ったのだろう。
屋上で麓戸と池井は会うようになった。救ってやる代わりに相手を自由にするのは、やはり卑怯な気がして実際には池井に手を出せなかった。少しずつ親しくなるのが大切で、池井のためになる、と思っていた。
池井は麓戸と話をするだけで満足しているように見えた。前より元気が出てきた池井を見るだけで麓戸は嬉しかった。
麓戸は池井を庇ってやった。
裏でラグビー部の連中と取り引きしたのだ。
麓戸とSMプレイをしたいというものがラグビー部にも生徒会執行部や委員長の中にいたせいだ。麓戸は彼らを縛ったり叩いたりしてサービスしてやった。
なのに何も知らない池井は言うのだ。
「僕、神崎先生が好きなんですよね。ラグビー部の人たちから僕をかばってくれて。僕もう嫌なことしなくってよくなったんです。普通にみんなと練習できて。もう性奴隷とかじゃないんです。先生が、みんなを叱ってくれたおかげです」
麓戸の性的サービスのことは秘密だった。
だから仕方ない。
麓戸は、無神経な池井の言動に黙って耐えていた。
麓戸は後輩の池井に言った。
「ほんと?」
池井は目を丸くする。
「ああ。だから俺に投票しろよ」
美形下級生の尊敬の眼差しを受けて照れ臭さに相手から顔をそむけた。ニヤニヤした顔をして舐められては困る。最初が肝心だ。
「やめられるかなあ」
池井は小声で言った。
まあ、会ったばかりの男の言うことが信じられないのは当然だろう。むしろ信じたら危険だ。それに池井は散々今までに騙されているのだ。人を信じられないのは当然だろう。麓戸はそんな池井を安心させようと力強く励ますように言った。
「やめられるさ。俺が絶対こんな酷い制度を廃止してやるんだ。安心したまえ」
まだ立候補もしていないのに、自分も不安はあった。しかし強固な決意だけはあったのだ。
せっかく性奴隷制度をなくしてやろうと言っているのに美少年の池井はうかない顔だった。
「制度がなくなっても、僕、やめられないかも……」
池井は恥ずかしそうに顔を真っ赤にして言った。
麓戸が自分と同じ境遇だったと知って安心したのだろう。今まで他の人と、そのことについて話せなかっただろうから。
生まれ持った美少年としての才能なのか、池井はドキドキさせるような表情をしている。
麓戸は、動揺する気持ちを抑え、冷静さをよそおって落ち着いた態度で尋ねた。
「性奴隷の仕事を、最初は無理やりやらされていたけど、いざそれがなくなったら、急にやめられるだろうか、そういうことだね?」
「だいたい、そんな感じのことです……」
池井は、うつむいて恥ずかしそうにそう答えた。
麓戸は提案した。
「それなら俺が相手をしてやるよ」
言ったあと、しまった、と思った。これでは変態ではないか。はやまった。好みのタイプだからと、順序をすっとばして告白みたいなことをしてしまった。こんな申し出、相手を好きと言っているようなものじゃないか。
いや、それより怖がらせてしまったか? さっき他の人間のように池井を傷つけるような暴力はふるわないと宣言したばかりなのに。池井に性的な暴力をふるう輩となんの変りもないことを言ってしまっていた。
麓戸は自己嫌悪でいっぱいの気持ちになった。「ごめん! 今のは、聞かなかったことにしてくれ」そう言おうとした矢先のことだった。
「ほんと?」
と池井が顔をあげ返事をした。
怒ってはいないようだった。麓戸はほっとした。
「その代わりもう、俺以外の他のやつらとはするな」
麓戸がそう言うと、池井は、
「そんなの無理です」
と言う。それでも麓戸は、
「俺がかばってやるから。他のやつらは断れ」
と説得した。
「本当に?」
池井は疑わしそうに麓戸を見た。麓戸は、とりたててガタイのいい方ではなかった。大柄な運動部員たちから、どうやってかばってくれるのかと思ったのだろう。
屋上で麓戸と池井は会うようになった。救ってやる代わりに相手を自由にするのは、やはり卑怯な気がして実際には池井に手を出せなかった。少しずつ親しくなるのが大切で、池井のためになる、と思っていた。
池井は麓戸と話をするだけで満足しているように見えた。前より元気が出てきた池井を見るだけで麓戸は嬉しかった。
麓戸は池井を庇ってやった。
裏でラグビー部の連中と取り引きしたのだ。
麓戸とSMプレイをしたいというものがラグビー部にも生徒会執行部や委員長の中にいたせいだ。麓戸は彼らを縛ったり叩いたりしてサービスしてやった。
なのに何も知らない池井は言うのだ。
「僕、神崎先生が好きなんですよね。ラグビー部の人たちから僕をかばってくれて。僕もう嫌なことしなくってよくなったんです。普通にみんなと練習できて。もう性奴隷とかじゃないんです。先生が、みんなを叱ってくれたおかげです」
麓戸の性的サービスのことは秘密だった。
だから仕方ない。
麓戸は、無神経な池井の言動に黙って耐えていた。
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