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第二十四章 校長の家で
イケメン教師、校長室で校長に尋問される
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校長室の机の前に小坂は立っていた。
椅子に座ったまま校長が尋ねた。
「小坂先生は、まだ例の男と会っているのかね?」
「例の男とは……?」
と小坂が尋ね返すと、校長は、
「とぼけても無駄だよ」
と鼻白らんだ。
「いかがわしい店を経営している男のことだよ。君の可愛い生徒たちが訴えてきたから、調べたんだがね」
と言って椅子から立ち上がり小坂の側に歩いてきた。
麓戸のことだ。
小坂は身構えて身体を固くした。
そんな小坂の肩に手を置いて校長は再び尋ねた。
「あの男とは、どういう関係なんだ?」
「どういうって……別段、僕は何も……」
小坂は口ごもった。
「見回り以外の目的で店に出入りしたことはない、そうだな?」
校長が断定するように聞いた。
「えっと……」
ここは何と答えれば正解なのかと、小坂は戸惑った。
「玩具を買ったことはあるが、それは、覆面で見回り調査をしている際に、店員にすすめられ、あやしまれないために購入した。と、そういうことだったな?」
そんな言い訳をした覚えはないが、校長は、もっともらしい言い訳を述べた。
「はい……」
小坂は、コクコクと何度も頷いた。校長の意図は、そういうことにしておけということだろう。
「教育委員会の調査が入ってね」
校長が渋面を作った。
「えっ……」
小坂はドキッとした。麓戸が危ない。自分も罪に問われるかもしれない。もう何もかもバレているのかも。
小坂は動悸がしてフラついて気分が悪くなってきた。
校長は、苦悩する小坂の様子をじっくりと観て楽しんでいたのだろうか。校長の手にがっしりと肩をつかまれ、うつむけていた顔を上げると、校長の顔は嬉しそうに、ほくそ笑んでいた。
「安心したまえ。調べに入ったら、もう廃業した後だったらしい。あの建物自体も店主のものだし、公安委員会にも確認してもらったが、そもそもあの場所は保全対象区域外で営業区域内なので違法ではなく問題ではないそうだ」
「あ、そうなんですか……」
そもそも警察に調べられたわけじゃないのだから、罪に問われるということはないのか、とホッとした。
しかし不適切な行動として教育委員会から懲戒処分を受ける可能性はあるから、まだ安心はできない。
「ちゃんと風営法に基く届出や廃業届も出ていたらしい」
「へえ……」
さすが麓戸、抜かりがない。ひょっとして店をやめたのも、調査が入ることを察してだったのかもしれない。オデトのため、と言っていたのは、やっぱり嘘じゃないかと思った。
「しかし、大人のおもちゃ販売だけでなく、なんでも、会員制のSM倶楽部もあったそうじゃないか」
校長が耳元で囁く。
「え、えす……へえ……そうなんですか……」
小坂は棒読みになって応じた。冷や汗が出る。
「そういうところでは、密かに売買春が行われていた可能性もあると思うんだが……」
「ばいばい……」
実際、売買春まがいのことをやっていた麓戸と小坂……。そんなことがバレたら人生おしまいだ。いや、あれは、自由恋愛であって、お金もとっていないし……。小坂は必死で頭の中で言い訳を考えるのに忙しい。
「ははは、バイバイ、そうだな。店はバイバイだ」
親父ギャグを思いついて校長は高らかに笑った。
「まあ、廃業したとなれば、そこまで調べるのもね。そういう店を経営するような男を、そういったやり方で追い詰めるのもよくない。それよりももっと効果的な方法があると思うよ、私はね」
よかった。免れた。もうこれ以上調べないでほしい。
「はっ。そうでありますか」
緊張のあまり軍体調になりながら小坂は答えた。
「それよりもっと効果的な方法」と言いながら、校長が悪い顔でほくそ笑んでいたことを、この時、小坂は気付いていなかった。
椅子に座ったまま校長が尋ねた。
「小坂先生は、まだ例の男と会っているのかね?」
「例の男とは……?」
と小坂が尋ね返すと、校長は、
「とぼけても無駄だよ」
と鼻白らんだ。
「いかがわしい店を経営している男のことだよ。君の可愛い生徒たちが訴えてきたから、調べたんだがね」
と言って椅子から立ち上がり小坂の側に歩いてきた。
麓戸のことだ。
小坂は身構えて身体を固くした。
そんな小坂の肩に手を置いて校長は再び尋ねた。
「あの男とは、どういう関係なんだ?」
「どういうって……別段、僕は何も……」
小坂は口ごもった。
「見回り以外の目的で店に出入りしたことはない、そうだな?」
校長が断定するように聞いた。
「えっと……」
ここは何と答えれば正解なのかと、小坂は戸惑った。
「玩具を買ったことはあるが、それは、覆面で見回り調査をしている際に、店員にすすめられ、あやしまれないために購入した。と、そういうことだったな?」
そんな言い訳をした覚えはないが、校長は、もっともらしい言い訳を述べた。
「はい……」
小坂は、コクコクと何度も頷いた。校長の意図は、そういうことにしておけということだろう。
「教育委員会の調査が入ってね」
校長が渋面を作った。
「えっ……」
小坂はドキッとした。麓戸が危ない。自分も罪に問われるかもしれない。もう何もかもバレているのかも。
小坂は動悸がしてフラついて気分が悪くなってきた。
校長は、苦悩する小坂の様子をじっくりと観て楽しんでいたのだろうか。校長の手にがっしりと肩をつかまれ、うつむけていた顔を上げると、校長の顔は嬉しそうに、ほくそ笑んでいた。
「安心したまえ。調べに入ったら、もう廃業した後だったらしい。あの建物自体も店主のものだし、公安委員会にも確認してもらったが、そもそもあの場所は保全対象区域外で営業区域内なので違法ではなく問題ではないそうだ」
「あ、そうなんですか……」
そもそも警察に調べられたわけじゃないのだから、罪に問われるということはないのか、とホッとした。
しかし不適切な行動として教育委員会から懲戒処分を受ける可能性はあるから、まだ安心はできない。
「ちゃんと風営法に基く届出や廃業届も出ていたらしい」
「へえ……」
さすが麓戸、抜かりがない。ひょっとして店をやめたのも、調査が入ることを察してだったのかもしれない。オデトのため、と言っていたのは、やっぱり嘘じゃないかと思った。
「しかし、大人のおもちゃ販売だけでなく、なんでも、会員制のSM倶楽部もあったそうじゃないか」
校長が耳元で囁く。
「え、えす……へえ……そうなんですか……」
小坂は棒読みになって応じた。冷や汗が出る。
「そういうところでは、密かに売買春が行われていた可能性もあると思うんだが……」
「ばいばい……」
実際、売買春まがいのことをやっていた麓戸と小坂……。そんなことがバレたら人生おしまいだ。いや、あれは、自由恋愛であって、お金もとっていないし……。小坂は必死で頭の中で言い訳を考えるのに忙しい。
「ははは、バイバイ、そうだな。店はバイバイだ」
親父ギャグを思いついて校長は高らかに笑った。
「まあ、廃業したとなれば、そこまで調べるのもね。そういう店を経営するような男を、そういったやり方で追い詰めるのもよくない。それよりももっと効果的な方法があると思うよ、私はね」
よかった。免れた。もうこれ以上調べないでほしい。
「はっ。そうでありますか」
緊張のあまり軍体調になりながら小坂は答えた。
「それよりもっと効果的な方法」と言いながら、校長が悪い顔でほくそ笑んでいたことを、この時、小坂は気付いていなかった。
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