義理パパと美少年のエッチ

リリーブルー

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しずかな夜にふれる指

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 その夜、家に帰ると、ママはいなかった。
 今日も撮影で、いつ帰ってくるかは不明。
 広いダイニングに、アユムとパパ――花園亜樹人だけが座っていた。

 アユムはスプーンを持ったまま、ずっと下を向いていた。
 白いシチューが、じんわり湯気を立てている。
 でも、さっきから一口も食べていない。

 それに気づいて、亜樹人が言った。

「冷めるぞ」

「……いらない」

「どうして?」

「……怒られたから」

 アユムは、小さな声で言った。
 それは昭島に怒られたことというより、
 「がんばったのに、報われなかった」ことの痛みだった。

「……」

 しばらく沈黙が流れたあと、
 パパは椅子を引いて、アユムの隣に移動してきた。

 そして、そっと、アユムの髪をなでた。

「よくやったよ。アユムのこと、俺はちゃんと見てた」

「……うそ」

「ほんとだ」

 やさしくて、深い声だった。

 アユムの喉が、きゅっと詰まった。

「……じゃあ、なんで……あんなふうに怒られて……」

「……アユムが可愛すぎるから、妬まれたんだよ」

 その言葉に、アユムは一瞬、ぱちんと目を開いた。

 え?

 なんで、そんな――

 ……“可愛い”とか。

 ドキン、と心臓が鳴った。

 パパの指が、そっとアユムの頬に触れた。

「泣き顔、似合わない」

 その手が、やけにあたたかくて。

 アユムの喉から、小さな声がもれた。

「……じゃあ、慰めてよ」

 その言葉に、パパの手がぴたりと止まる。

「……どこまで?」

「ん……わかんない。パパがしたいとこまで」

「……それ、冗談で言ってるのか?」

「……本気だったら、困る?」

 距離が一気に近づいた。
 呼吸の音が重なる。
 パパの目が、いつになく真剣だった。

「アユム……」

「なに?」

「……キス、したら、許す?」

 その問いに、アユムは顔を赤くしながら、でも――小さく、うなずいた。

「……うん」

 そして、亜樹人は、ゆっくりとアユムの頬に唇を寄せた。
 くすぐったいほど、やさしいキス。

 触れたか、触れてないか。
 それくらい、かすかな――キス。

 でも、アユムの身体の奥まで、熱が走った。

 どきどきが止まらない。
 このまま、どきどきしていたい。なのに……。

「……おやすみ、アユム」

 パパはそれだけ言って、立ち上がった。

「……え、もう?」

 アユムはびっくりして立ち上がる。

「続きは、アユムが大人になってからな」

 そう言って背中を向けたパパの耳は、ほんのり赤く染まっていた。


★ずっと続きを待っていてくださって、また読んでくださってありがとうございます!本作は、あと3話くらいで完結予定です。最後までお付き合いいただけたら幸いです。
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