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ママとの決別。そして、本当の“家族”のかたちへ「名前で、呼んで」
しおりを挟む週刊誌の見出しは、思った以上に大きかった。
> 『人気女優・城崎レナ、年下イケメン俳優と深夜密会!』
ツーショット写真。
腕を絡ませて歩く、ママと、二十代の俳優。
その誌面を見つめたまま、アユムはしばらく言葉が出なかった。
隣でソファに座っていた亜樹人も、何も言わなかった。
沈黙が長くて、重たくて――苦しかった。
---
その夜。
ママからの連絡は、LINEひとつだけだった。
> 『ごめんなさい。ちゃんと話がしたいです』
会ったのは、数日後のことで。
アユムも亜樹人も、同席していた。
---
「……ほんとに、ごめんなさい」
ママは頭を下げた。
化粧はきちんとしていて、相変わらず綺麗だったけど――
どこか憔悴していて、昔の“強さ”が少しだけ消えていた。
「私、みんな欲しかったの。仕事に、恋に、自由に。
でも家族って、ちゃんと向き合わなきゃいけなかったのに。
……アユムも、亜樹人さんも、ごめんね」
その声は震えていて、でも、きっと本音だった。
「私……みんな、欲しかったの」
そう言ったママの目は、泣きそうだった。
愛されたい。自由でいたい。母でいたい。女優でいたい。
欲しがったその手の中で、一番大事なものを落としてしまったことに、ようやく気づいたのかもしれない。
アユムは黙っていた。
でも、亜樹人が先に口を開いた。
「俺は、もう大丈夫です。アユムがいてくれるから」
その言葉に、ママが目を見開いた。
アユムは、少し迷って、でも言った。
「ママのこと、嫌いになってた。
でも……謝ってくれて、ありがとう」
ママは泣いた。
---
そして――
離婚届は、穏やかに交わされた。
記者たちの関心は、“年下俳優との熱愛”のほうに向いていて、
離婚自体は静かに済んだ。
---
それから、〇年が経った。
アユムはモデルとしてのキャリアを築き、ドラマにも出るようになっていた。
今は、初主演映画の撮影中。
そして亜樹人は、社長職を退き、別の小さなベンチャーを立ち上げていた。
仕事はそこそこに、自分のペースで暮らしている。
二人は、一緒に住んでいた。
周囲には“元義父と息子が同居している”と思われていたけれど――
実際の関係は、もう少しだけ、あたたかくて、深かった。
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ある夜、アユムは仕事帰りに亜樹人の肩にもたれかかって言った。
「ねえ、パパって呼ぶの、やめてもいい?」
「……ん?」
「なんか、もう“パパ”じゃない気がするから」
亜樹人は、少しだけ驚いたようだったけど――やがて、ふっと笑った。
「じゃあ、なんて呼ぶ?」
アユムは少し照れたように、でもまっすぐに言った。
「亜樹人さん」
その名前を呼ぶと、胸の奥がくすぐったくなった。
「……ああ。いいね、それ」
そして、二人はそのまま、ソファに身を預ける。
名前を呼び合える距離が、
何よりも幸せな“家族”のかたちだった。
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Epilogue(ほんの少しの未来)
初主演映画の舞台挨拶。
アユムが壇上で笑う姿を、
客席でそっと見守る男がいた。
誰も知らない――でも、誰よりも深く愛してくれている、
たったひとりの“家族じゃない恋人”。
大人になったアユムは、もう迷わない。
あの日、あの夜――
あの人を選んだことに、後悔なんて一度もなかった。
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これにて本編・完結です!✨
ありがとうございました✨
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