壁乳

リリーブルー

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出張の朝〜スーツ姿の彼氏〜

 ホテルの朝は、妙に静かだった。

 カーテンの隙間から差し込む光に目を細めると、
 隣のベッドにいた涼真が、すでに支度を始めていた。



 「……ん……もう起きてたのか……」

 「あ、先輩、おはようございます。
 ……って、まだ寝癖ついてますよ」

 「うるせぇ……」

 「言ったでしょ? 俺、絶対起こすって。
 先輩、ぐっすりすぎて笑っちゃいました。あんなにぐにゃぐにゃしてるの、初めて見ましたよ」

 「だって……お前が、いろいろしたからだろ……」

 「ふふっ♡」



 支度を終えた涼真は、白シャツにネイビーのスーツ姿。

 襟元を直す仕草、腕まくりする指の動き――
 いつもオフィスで見てるはずなのに、
 “いまだけの彼氏感”に、胸がきゅっとなる。



 「……なに見てるんですか、先輩。もしかして……惚れ直しました?」

 「調子乗んな」

 「でも、先輩こそ色気すごいですよ? ネクタイ緩めたまま髪乱れてるの、ずるいです」

 「出張で色気褒めてどうすんだ……」



 ホテルの1階、朝食会場のビュッフェへ。

 他にもビジネスマン風の客が何人かいて、ふたり並んでいても目立たない。

 それで、安心だった。



 「パン派ですか? ご飯派ですか?」

 「こういうとこだと、いつもパン取っちまうけど、ほんとは味噌汁飲みたいんだよな」

 「じゃあ俺、ご飯で行きます。味噌汁取ってきますね」

 「気ぃきくな」

 「彼氏ですから♡」



 テーブルに向かい合って座っても、話す内容は普段通りの仕事の確認。

 だけど、足の先が、テーブルの下でふいにふれて――

 「……わざとだろ、それ」

 「気のせいです♡」



 チェックアウトの直前。
 スーツ姿で荷物を持ち、ドアの前でふたり並んだとき。

 「なあ、りょうま」

 「はい?」

 「……また、こうして一緒に来たいな」

 「……先輩、そういうの、反則です」

 「ん?」

 「“次”を想像しちゃうじゃないですか」
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