巨大触手に襲われる生徒と教師

リリーブルー

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1、教室

逃げましょう

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 北欧の伝説に、クラーケンという海の怪物がいるが、それがダイオウイカだとも言われている。しかし、それは伝説で、しかも、こんな風に性的に襲うわけではない。性的に……。確かにこれは性的だ。
  やはり、これは、近年の温暖化による海水温度上昇、異常気象のせいなのか? それとも放射能汚染による影響? ホルモンを撹乱する化学物質による環境汚染?
   あやしく不安になるような材料には、事欠かず、理由は、いくつも安田の脳裏に思い浮かんだ。だが、どの想像も確証のもてるものではなく、推測の域を出るものではなかった。
 「先生、逃げましょう」
 思案する安田の腕を、西島がつかんで言った。 
「だめだ。僕はここに残る。西島は、一人で逃げなさい。僕がここから離れたら、被害者が増えるだけだから、その方がいい」
 安田は、答えた。 
「いやです。これ以上、先生が、怪物にやられるのを、僕は、とても見ていられやしません」
 と西島は、泣きだしそうな顔で訴えた。 
「そうか。ありがとう。そんなに心配してくれて。君の思いやりは、嬉しいよ。でも、それは、僕も同じなんだ。西島が怪物に襲われている姿など見たくないんだ。だから、お願いだから、ここは、心を鬼にして、一人で逃げてくれ」
 安田は頼んだ。だが、しかし、 
「いやです。先生、このままでは、死んでしまいます」
 と、西島は食いついた。 
「平気だ。その前に、きっと助けがくる」
 安田は、西島をなだめた。
 「助けなんて、すぐには来ません。誰かが連絡したのかしていないのかも、わからないじゃないですか。僕は、行政の遅さを知っています。なぜかと言うと、なんでも紙の書類で処理されていて、係長や課長にハンコウをいっぱい押してもらわないと決まらないせいなんです」
 西島は、そう主張した。やけに具体的だ。西島の父が、家庭で晩酌しながらボヤいてでもいるのか。
  そうは言うが、緊急時は、また別かもしれないじゃないか。別でなければ困る。 
「西島、電話は持っているか?」
 安田は聞いた。 
「持っていません。だって、規則では、学校に持ってきてはいけないじゃないですか」
 それはそうだが、実際、学校にスマホを持ってきている生徒は多かった。安全のために持たせたいという保護者も多かったので、学内で使用しなければよいということになっていた。なのに、こんなときは、西島の真面目さが裏目に出た。
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