待夜駅と碧翠堂

リリーブルー

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王子と海賊

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 愛し合った王子と海賊の長は髑髏の杯で美酒を分かちあった。むせた王子の唇から血のような葡萄酒が流れ落ちる。

 故郷の岸辺に近づいたとき王子は援軍を呼んだ。婚約者が岸辺で贈り物の絹のスカーフを振っていたからだ。裏切られた海賊の長は王子の喉を突いて捕らえられ、火あぶりにされた。


 でも本当は二人とも生きていた。

 それは王子が海賊と愛し合うなどという醜聞をもみ消すために作られた作り話で、そんな話が流布されるのは二人にとっても都合がよかった。

 王子と海賊は、いつまでも幸せに暮らしました、とさ。



 微笑みを浮かべ、そんな、旅で聞いた話をしながら、碧翠堂は、待夜駅の身体を、ぎちぎちと麻縄で磔の十字架に縛りあげた。
 それは、甲板で王子を帆柱に縛りつけたのと同じ麻縄だった。
 磔の十字架はゴルゴダの丘で使われたと同じ由緒正しき木材だった。
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