裏切りの果て、愛と嘘の行方

阿院修太郎

文字の大きさ
5 / 8

第5章 崩れゆく友情

しおりを挟む
美咲の視点

優奈が現れた瞬間、田中美咲の胸に不安が走った。彼女が何を言おうとしているのか、直感的に良くないことが起こると感じていた。優奈の目には決意が宿っており、その冷たい視線が美咲を怯ませた。

「翔太、美咲、私たち、もう嘘はつけない。涼とのことを話さなきゃいけない」

優奈の声には感情が押し殺されていたが、彼女の心の中で何かが壊れていることが明らかだった。美咲はその言葉に動揺し、どう反応すればいいのかわからなかった。翔太もまた、状況を把握しきれず、ただ黙っていた。

「涼と私は……関係を持ってしまった。でも、それは私が翔太に対する気持ちを忘れるためだったの。美咲、あなたが翔太に近づくたびに、私は耐えられなくなって……」

その告白に美咲は衝撃を受けた。優奈の苦しみが、彼女には全く見えていなかったことに気づかされ、自分の無意識の行動が親友を傷つけていたことを痛感した。

「優奈……そんなこと、私……」

美咲の目に涙が滲んだ。彼女は何も知らなかったが、それが優奈の苦しみを増幅させてしまったという事実に、胸が締め付けられるようだった。

翔太の視点

翔太は優奈の告白を聞いて、心の中で葛藤が渦巻いた。彼が美咲に対して抱いていた感情が、本当に恋愛感情なのか、それともただの仲間意識だったのか、自分でも分からなくなっていた。

「優奈、そんなことを抱えていたのか……」

翔太は優奈に対して何か言わなければならないと感じたが、言葉が出てこなかった。優奈が自分に想いを寄せていたことに気づかなかったことが、彼を悔やませた。

しかし同時に、翔太は美咲に対する気持ちが揺らいでいることにも気づいていた。彼女の存在が彼の心を強く引きつけていたが、優奈の告白によって、その感情が何であるかを再考せざるを得なくなっていた。

「優奈、美咲、俺……」

言葉に詰まる翔太は、自分がこの状況をどう解決すればいいのか分からなかった。

優奈の視点

優奈は、翔太の反応に失望した。彼がすぐに自分を慰めてくれることを期待していたが、彼の迷いが感じられた瞬間、彼女の中で何かが折れた。

「もういいよ、翔太。私はどうでもいいんでしょ? あなたは美咲が好きなんだから、私なんかただの邪魔者なんでしょ?」

優奈の言葉には、絶望と怒りが混じっていた。彼女は翔太に自分の感情を伝えることで、何かが変わることを望んでいたが、それは逆効果にしかならなかった。

「美咲、あなたが悪いわけじゃない。でも、もう私はこれ以上あなたたちの間にいることができない」

優奈はその場を去ろうとしたが、美咲が彼女の腕を掴んだ。

「優奈、待って……お願い、私たち、こんな形で終わりたくない」

美咲の言葉に、優奈は一瞬動きを止めたが、翔太に向ける視線は冷たかった。

「美咲、私たちの友情はもう壊れてる。それを認めるべきよ」

優奈は静かにその場を後にし、美咲と翔太だけが取り残された。

再構築

優奈が去った後、翔太と美咲はお互いに言葉を失ったまま立ち尽くしていた。二人の間には、これまで感じたことのない重い沈黙が流れ、どうしていいかわからないまま、時間が過ぎていった。

「翔太、私はどうすればいいの……」

美咲がようやく口を開いた時、彼女の声は震えていた。翔太は彼女の不安と混乱を理解し、どうすれば彼女を支えられるのかを考えた。

「美咲、俺もどうすればいいのか分からない。でも……俺たちは一緒に乗り越えられると思う。優奈のことを考えると辛いけど、今は君が大事だ」

翔太の言葉に、美咲は少しだけ心が救われた。しかし、彼女は自分が優奈との友情を犠牲にしてまで翔太を選んで良いのか、まだ答えが出せなかった。

一方、優奈は翔太と美咲に対する失望と裏切りを感じながらも、涼との関係を続けるかどうかで悩んでいた。彼女は自分の選択が間違っていたのではないかという思いに苛まれながらも、その感情をどう処理するかを考えていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

M性に目覚めた若かりしころの思い出 その2

kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、終活的に少しづつ綴らせていただいてます。 荒れていた地域での、高校時代の体験になります。このような、古き良き(?)時代があったことを、理解いただけましたらうれしいです。 一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...