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38 聖獣たち
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◇◇◇◇
「よいか? ティル。これから教える勅許魔法は、軽々に使ってはいけないよ」
大賢者は十二歳のティルに優しく言う。
「わかったけど、そもそも勅許魔法ってなに?」
「祈祷を捧げて神の許しを得なければ発動できない魔法だ」
「治癒魔法みたいな?」
「違うな。いいかい? 治癒魔法は神にお願いして、神に治してもらうんだ」
「あ、つまり、勅許魔法は許可をもらったあと、自分でやるってことだね」
「そういうことだ。例えばこれ」
次の瞬間、大賢者の指先に黒い球体が出現した。
「なにそれ? 見たことない魔法だ。でもものすごい魔力密度……時空を操ってる?」
「一目で見抜くか。才能が恐ろしいな。まあ、そうでなければ勅許魔法は使えぬだろうが……」
そう言った後、大賢者はにこりと笑う。
「その通り。時空を操る魔法だ。これを使えば転移も可能だし、魔法の鞄を作る事もできる」
「あ、この前、師匠がくれた魔導図書館もそれの応用?」
「そう、その通りだ。このような世界自体を大きく歪める魔法は神の許可がいる」
「なるほど~。……ちょっとまって? 師匠、許可のための祈祷を捧げた? 捧げてないよね?」
「私は良いんだよ。私は神の愛し子、どちらかというと許可を出す神側に近い」
また始まったとティルは思った。
師匠はティルに対して、よく冗談でそういうことを言うのだ。
「へー、すごいねー」
「信じてないな? まあよい。だが、ティルは必ず許可を取らねばならないぞ?」
「わかった」
ティルは、基本的に師匠の言うことをよく聞く素直な子だった。
「普通は祈祷を捧げた程度では許可は下りぬ」
「じゃあ、だめじゃない?」
「安心しろ。私が神に頼んでおいたから、ティルは祈祷を捧げれば使えるよ。感謝するといい」
そんな感じで始まった勅許魔法の練習は、ティルがこなした修業の中でも特別に厳しかった。
毎日、血反吐を吐いて、何度も気絶したほどだった。
◇◇◇◇
ずいぶんと昔の夢を見ていた気がする。
久しぶりに勅許魔法を使って、気絶したからかもしれない。
とてもだるくて、もっと眠っていたい。目を開けるのも面倒だ。
「もっもっも!」
近くでモラクスの声が聞こえる。
「む? つまりこの実を搾って汁を飲ませればよいのであるな?」
「も~」
ぼんやりとした意識の中、モラクスに加えてジルカの声も聞こえてくる。
(モラクス、立派になって……)
いつもよりモラクスの声が大人、いや成牛の声に聞こえる。
小さな子供たちと過ごすことで、モラクスに兄としての自覚が生まれたのかもしれない。
「わかったのである。我に任せるがよい!」
次の瞬間、唇に柔らかい何かが触れて、口の中に生温かい果実の汁が流れ込んできた。
ほどよい酸味と甘さがあって、とても美味しい。
だが、量が多い。どんどんと流れ込んでくる。
「ごほごほごほっ!」
飲みきれずにむせてしまった。上体を起こすと、
「おー、起きたのであるなー。さすがは知恵者! 効果てきめんであるな!」
「もっもー」
人型で全裸のジルカが楽しそうにいって、牛が嬉しそうに尻尾を振った。
「もっもっも」
その牛が俺の顔をベロベロ舐めてくる。
「…………モラクス? じゃないよね?」
俺はその牛の頭を撫でる。
その牛は、毛皮の柄こそモラクスそっくりだが、体高が三メートルほどあった。
頭には一メートル近い大きな角が生えている。
大きさは全然違うが、モラクスは姿を変化させられるジルカと同じ聖獣なのだ。
モラクスも体の大きさを変化させることができても不思議ではない。
「でも、モラクスとは魔力が違うか」
魔力はそっくりだが違う。つまりモラクスとは別牛だ。
俺は牛を撫でながら周囲を観察する。
俺が寝ているのは幹の太さの直径が二十メートル近い巨大な木のうろの中らしい。
近くには凶悪な魔物の気配もないし、慌てる必要はなさそうだ。
「ジルカ、とりあえず服を着ろ。あれからどのくらい経って、何があった?」
「服などないのである! おーい、ティルが起きたのであるぞー」
全裸のジルカはうろの外に向かって呼びかけている。
「そっか。服がないなら仕方ないな。これを巻いておくといい」
俺は魔法の鞄から毛布を出してジルカに手渡す。
「いいかい? ジルカ。ミアが言っていたように人の姿になったら、全裸は良くない」
「ええ、非常時でもあるか」
「非常時なら仕方ないけど、なるべくはだめだ」
「なるほどー。勉強になるのであるなー」
「今後、人の姿になってもいいように、服を用意するとか、そもそも魔法で服は作れないのか?」
「また難しいことをー。でも、できるかもしれぬのである。えっと、基本的な考えは……」
ジルカは毛布を体に巻きながら、ぶつぶつと呟いている。
「がうがうがうがうがうがう」「がうがうがうがうがうがう」
すると、興奮した大きな狼が二頭、全速力で走ってきた。
「おお、凄い勢いだな!」
「がうがうがうがうがうがう」「がうがうがうがう」
狼は上体を起こした俺に飛びついて、顔をベロベロ舐める。
まるでペロを相手にしているみたいだ。
「落ち着け落ち着け。……ペロに似てるな」
毛皮の柄はペロそっくりだ。
だが、大きさが違う。二頭とも体高三メートルを超えた立派な成狼だ。
ペロとは魔力が違うが、とても似ている。
「もう話が進まないのである! ティルが気絶してから今はだいたい三十分後である!」
「三十分か、思ったより短いな」
「うむ。そして気絶してからの話しであるが――」
俺は気絶する直前に魔槍を放って、強そうな魔物を五頭ほど倒しておいた。
「ティルが数を減らしてくれたおかげで、残りの魔物を倒すのは簡単だったのである」
『魔王種が倒れると、側近は弱くなる。ありがと』
牛がそう言うと、狼二頭が、
『ぼくつよい。数がへったら、たおせる。ありがと』『ティルすごいすごい。ありがと』
嬉しそうに尻尾を振った。
『治癒ポーションもありがと。傷ふさがった。こことか』
牛がお尻を俺に向けて見せてくれる。確かに傷のあとはあるが、完全に塞がっていた。
「おお、牛も狼も話せるのか。すごいね」
「も~」
モラクスが話せるのだ。もっと成長している牛は話せても当然だろう。
「おお、お尻以外の傷も完全に塞がっているね。あとも残らないと思うよ。良かった良かった」
俺は牛の全身を調べる。傷は全て塞がっていた。
雌牛で、お乳が張っているが、これは病気でも怪我でもないだろう。
『ぼくも! ここふさがった! みてみて! ティルみて! ありがと』
『ここも、ここも! みてみて! ありがとありがと』
狼二頭も傷があった場所をアピールして押しつけてくる。
もふもふで犬臭くて最高だ。
「おお、もう治ったのか。すごいね」
ペロはまだ話せないが、きっと成長したら話せるようになるのだろう。
俺は狼二頭の体も調べる。傷は全て塞がっていた。
「よかったよかった。でもね、傷は塞がっても魔力と体力は戻ってないからね」
『うん。ありがと』
『わかった! でもげんき!』『あそぶ? ティルあそぶ?』
「あとでねー」
嬉しそうに尻尾を振っている牛と狼二頭は、体こそ大きいが、モラクスとペロに似ている。
魔力の形も似ているし、同種族どころか、いや同じ血族でもおかしくない。
「……説明続けて良いであるか?」
「あ、すまない。魔物を倒した後、治癒ポーションを使ったところからだな」
「うむ、近くに丁度いい場所があったからティルを寝かせて、これの絞り汁を飲ませたのである」
ジルカが指さしたのは魔苺と魔檸檬だ。
『魔力枯渇の症状には、魔苺と魔檸檬の絞り汁が効果的』
どうやら牛が治療法を知っていたらしい。
「助かったよ。それに勉強になった。ありがとう」
「も~」
そして、ジルカは深く頭を下げた。
「ティル。助かったのである。我も聖獣たちも、ティルがいなかったら死んでいたのである」
『ありがと』『ありがとありがと』
「気にしないでくれ。ジルカには言ったが、魔物を倒すのは俺の仕事でもあるからな」
「命の恩人なのである。ありがとう」『ありがと』「わふ」
「ジルカも、聖獣のみんなも、今後とも協力してくれたら嬉しいよ」
そういって、俺は牛と狼二頭を撫でまくった。
「そういえばジルカ。聖獣は五頭いるって言ってたけど、残りの二頭は?」
「子供を見に行ったのである。子供を残して戦っていたゆえなー」
「そっか、今度ご挨拶したいな」
「うむ、ティルの拠点の場所を教えておいたから、すぐに会えるであろ! 事後報告ですまぬ」
「問題ないよ。みんなもどうだ? 俺たちの拠点で一休みするといい」
俺が渡した治癒ポーションの効果で、傷は塞がってはいる。
だが、魔力も体力も失われているし、回復する必要があるだろう。
「俺の拠点には瘴気がないからな。回復も早いだろう。それに……」
牛と狼が、モラクスとペロの一族の可能性もあるし、会わせてあげたい。
だが、何の確証もないので、何も言うべきではないだろう。
モラクスとペロが魔物との戦いで親を失ったように、牛と狼も家族を失っているかもしれない。
行方不明になった家族がいるかもと聞かされたら、希望を持ってしまう。
そして、家族ではないとなったら、がっかりしてしまうだろう。
「それに? なんであるか?」
「いや、なんでもない」
俺がちらりと牛と狼二頭を見ると、ジルカも見る。
「なるほど。まだ確証はないから我も何も言わぬのである」
「助かる」
ジルカも察してくれたようだ。
それほど、牛とモラクス、狼二頭とペロは似ているのだ。
「さあ、みんな! ティルの拠点に行くのである。付いてくるのである!」
「もっも」「がうがう」「わふ!」
そして、俺たちは、皆が待つ拠点に向かって移動を開始した。
俺を背中に乗せたジルカは、牛と狼を気にしながら、ゆっくりと飛んで行く。
ゆっくりといっても、行きに比べてである。時速三十キロぐらいは出ている。
行きの際は三分で移動した距離を、二十分かけて飛び、俺たちの拠点が見えてくる。
コボルトの魔法は健在で、魔樹がうっそうと茂っているようにしか見えない。
コボルトたちが頑張ってくれたのだろう。
ジルカは静かに地面に着陸し、俺がその背中から降りると、
「も」「がう」「がう」
牛と狼二頭もすぐに追いついた。
「牛も狼たちも速いね。無理はしてない?」
『余裕。あの程度の速さは散歩みたいなもの』
『さんぽ? さんぽする?』『いく! さんぽいく!』
牛の散歩という言葉に狼たちが反応する。
「今は散歩はしないよ。しばらく休まないとだからね」
「ぁぅ~」「ぁぅ」
散歩はしないというと、狼の尻尾がへなへなと垂れ下がった。
「元気になったら散歩に行こうね。じゃあ、ついて……おお?」
俺は人型になったジルカを見て驚いた。なぜなら、服を着ていたからだ。
「服を魔法で作ってみたのである。どうであるか?」
ジルカが身に付けているのは、極めて単純な構造の赤褐色の貫頭衣だった。
「素晴らしい! 似合ってるぞ。すぐに魔法で服を作れるようになるとは流石はジルカだな」
「そうであろ、そうであろ! 我は偉大なる竜、天星のジルカゆえな? このぐらいは容易い」
「ふんふんふんふんふん」「ふんふんふんふん」「ふんふんふん……クシュ」
牛と狼たちも気になるらしく、ジルカの服の匂いを嗅ぎまくっている。
「それじゃあ、行くよ。みんな付いてきてくれ」
「行くのである!」
「も」「わう」「がう」
俺はみんなを引きつれて、結界の範囲内へと入り、歩いて行く。
三メートルほど歩いて、急に視界が開けると、子供たちとコボルトたちが勢揃いしていた。
「ティル! 無事なようでなによりだが、魔物はどうなった?」
ミアが心配そうに尋ねてきて、
「おかえり!」「はやかったね!」「いや、遅かった! 一時間ぐらい待ったもん!」
『ぶじでよかったわんねぇ』『ねね、ティルなでてわん』
元気にはしゃぐ子供たちとコボルトたちに囲まれ、
「もおおおおおお!」
「がうがうがうがうがう」
モラクスとペロが興奮して駆けてきて、
『ママ! ママ!』「わふわふわふわふ」
牛と狼たちに飛びついた。
『無事だったのね。可愛い坊や』
『もらくすがんばった。がんばった』
モラクスは母牛に体をくっつけて「もおおもおお」と鳴いている。
「わふわふ」
『我が子よ! よくぞ生きてた』『我が誇り。立派になったな』
ペロは狼二頭にベロベロと舐められている。
「ふむ。やはりモラクスの母であったか」
「狼の方は?」
「狼もペロの両親であるな?」
甘えん坊の犬といった雰囲気だったペロの両親は、今は威厳ある大狼という雰囲気だ。
親としての振るまいといち狼としての振る舞いが違うらしい。
「そっか。よかったなぁ」
きっと、ペロの群れの大半は悲しいことになったのだろう。
それでも、無事生き延びた者がいたことは良かった。
「むぎゅむぎゅむぎゅむぎゅ」
「むぎゅむぎゅむぎゅちゅぱ」
モラクスとペロは嬉しそうに母のお乳を吸いはじめた。
モラクスもペロもまだ乳離れしていない赤ちゃんなのだ。
そんなモラクスとペロの様子を、子供たちとコボルトたちは優しく見守っていた。
「よいか? ティル。これから教える勅許魔法は、軽々に使ってはいけないよ」
大賢者は十二歳のティルに優しく言う。
「わかったけど、そもそも勅許魔法ってなに?」
「祈祷を捧げて神の許しを得なければ発動できない魔法だ」
「治癒魔法みたいな?」
「違うな。いいかい? 治癒魔法は神にお願いして、神に治してもらうんだ」
「あ、つまり、勅許魔法は許可をもらったあと、自分でやるってことだね」
「そういうことだ。例えばこれ」
次の瞬間、大賢者の指先に黒い球体が出現した。
「なにそれ? 見たことない魔法だ。でもものすごい魔力密度……時空を操ってる?」
「一目で見抜くか。才能が恐ろしいな。まあ、そうでなければ勅許魔法は使えぬだろうが……」
そう言った後、大賢者はにこりと笑う。
「その通り。時空を操る魔法だ。これを使えば転移も可能だし、魔法の鞄を作る事もできる」
「あ、この前、師匠がくれた魔導図書館もそれの応用?」
「そう、その通りだ。このような世界自体を大きく歪める魔法は神の許可がいる」
「なるほど~。……ちょっとまって? 師匠、許可のための祈祷を捧げた? 捧げてないよね?」
「私は良いんだよ。私は神の愛し子、どちらかというと許可を出す神側に近い」
また始まったとティルは思った。
師匠はティルに対して、よく冗談でそういうことを言うのだ。
「へー、すごいねー」
「信じてないな? まあよい。だが、ティルは必ず許可を取らねばならないぞ?」
「わかった」
ティルは、基本的に師匠の言うことをよく聞く素直な子だった。
「普通は祈祷を捧げた程度では許可は下りぬ」
「じゃあ、だめじゃない?」
「安心しろ。私が神に頼んでおいたから、ティルは祈祷を捧げれば使えるよ。感謝するといい」
そんな感じで始まった勅許魔法の練習は、ティルがこなした修業の中でも特別に厳しかった。
毎日、血反吐を吐いて、何度も気絶したほどだった。
◇◇◇◇
ずいぶんと昔の夢を見ていた気がする。
久しぶりに勅許魔法を使って、気絶したからかもしれない。
とてもだるくて、もっと眠っていたい。目を開けるのも面倒だ。
「もっもっも!」
近くでモラクスの声が聞こえる。
「む? つまりこの実を搾って汁を飲ませればよいのであるな?」
「も~」
ぼんやりとした意識の中、モラクスに加えてジルカの声も聞こえてくる。
(モラクス、立派になって……)
いつもよりモラクスの声が大人、いや成牛の声に聞こえる。
小さな子供たちと過ごすことで、モラクスに兄としての自覚が生まれたのかもしれない。
「わかったのである。我に任せるがよい!」
次の瞬間、唇に柔らかい何かが触れて、口の中に生温かい果実の汁が流れ込んできた。
ほどよい酸味と甘さがあって、とても美味しい。
だが、量が多い。どんどんと流れ込んでくる。
「ごほごほごほっ!」
飲みきれずにむせてしまった。上体を起こすと、
「おー、起きたのであるなー。さすがは知恵者! 効果てきめんであるな!」
「もっもー」
人型で全裸のジルカが楽しそうにいって、牛が嬉しそうに尻尾を振った。
「もっもっも」
その牛が俺の顔をベロベロ舐めてくる。
「…………モラクス? じゃないよね?」
俺はその牛の頭を撫でる。
その牛は、毛皮の柄こそモラクスそっくりだが、体高が三メートルほどあった。
頭には一メートル近い大きな角が生えている。
大きさは全然違うが、モラクスは姿を変化させられるジルカと同じ聖獣なのだ。
モラクスも体の大きさを変化させることができても不思議ではない。
「でも、モラクスとは魔力が違うか」
魔力はそっくりだが違う。つまりモラクスとは別牛だ。
俺は牛を撫でながら周囲を観察する。
俺が寝ているのは幹の太さの直径が二十メートル近い巨大な木のうろの中らしい。
近くには凶悪な魔物の気配もないし、慌てる必要はなさそうだ。
「ジルカ、とりあえず服を着ろ。あれからどのくらい経って、何があった?」
「服などないのである! おーい、ティルが起きたのであるぞー」
全裸のジルカはうろの外に向かって呼びかけている。
「そっか。服がないなら仕方ないな。これを巻いておくといい」
俺は魔法の鞄から毛布を出してジルカに手渡す。
「いいかい? ジルカ。ミアが言っていたように人の姿になったら、全裸は良くない」
「ええ、非常時でもあるか」
「非常時なら仕方ないけど、なるべくはだめだ」
「なるほどー。勉強になるのであるなー」
「今後、人の姿になってもいいように、服を用意するとか、そもそも魔法で服は作れないのか?」
「また難しいことをー。でも、できるかもしれぬのである。えっと、基本的な考えは……」
ジルカは毛布を体に巻きながら、ぶつぶつと呟いている。
「がうがうがうがうがうがう」「がうがうがうがうがうがう」
すると、興奮した大きな狼が二頭、全速力で走ってきた。
「おお、凄い勢いだな!」
「がうがうがうがうがうがう」「がうがうがうがう」
狼は上体を起こした俺に飛びついて、顔をベロベロ舐める。
まるでペロを相手にしているみたいだ。
「落ち着け落ち着け。……ペロに似てるな」
毛皮の柄はペロそっくりだ。
だが、大きさが違う。二頭とも体高三メートルを超えた立派な成狼だ。
ペロとは魔力が違うが、とても似ている。
「もう話が進まないのである! ティルが気絶してから今はだいたい三十分後である!」
「三十分か、思ったより短いな」
「うむ。そして気絶してからの話しであるが――」
俺は気絶する直前に魔槍を放って、強そうな魔物を五頭ほど倒しておいた。
「ティルが数を減らしてくれたおかげで、残りの魔物を倒すのは簡単だったのである」
『魔王種が倒れると、側近は弱くなる。ありがと』
牛がそう言うと、狼二頭が、
『ぼくつよい。数がへったら、たおせる。ありがと』『ティルすごいすごい。ありがと』
嬉しそうに尻尾を振った。
『治癒ポーションもありがと。傷ふさがった。こことか』
牛がお尻を俺に向けて見せてくれる。確かに傷のあとはあるが、完全に塞がっていた。
「おお、牛も狼も話せるのか。すごいね」
「も~」
モラクスが話せるのだ。もっと成長している牛は話せても当然だろう。
「おお、お尻以外の傷も完全に塞がっているね。あとも残らないと思うよ。良かった良かった」
俺は牛の全身を調べる。傷は全て塞がっていた。
雌牛で、お乳が張っているが、これは病気でも怪我でもないだろう。
『ぼくも! ここふさがった! みてみて! ティルみて! ありがと』
『ここも、ここも! みてみて! ありがとありがと』
狼二頭も傷があった場所をアピールして押しつけてくる。
もふもふで犬臭くて最高だ。
「おお、もう治ったのか。すごいね」
ペロはまだ話せないが、きっと成長したら話せるようになるのだろう。
俺は狼二頭の体も調べる。傷は全て塞がっていた。
「よかったよかった。でもね、傷は塞がっても魔力と体力は戻ってないからね」
『うん。ありがと』
『わかった! でもげんき!』『あそぶ? ティルあそぶ?』
「あとでねー」
嬉しそうに尻尾を振っている牛と狼二頭は、体こそ大きいが、モラクスとペロに似ている。
魔力の形も似ているし、同種族どころか、いや同じ血族でもおかしくない。
「……説明続けて良いであるか?」
「あ、すまない。魔物を倒した後、治癒ポーションを使ったところからだな」
「うむ、近くに丁度いい場所があったからティルを寝かせて、これの絞り汁を飲ませたのである」
ジルカが指さしたのは魔苺と魔檸檬だ。
『魔力枯渇の症状には、魔苺と魔檸檬の絞り汁が効果的』
どうやら牛が治療法を知っていたらしい。
「助かったよ。それに勉強になった。ありがとう」
「も~」
そして、ジルカは深く頭を下げた。
「ティル。助かったのである。我も聖獣たちも、ティルがいなかったら死んでいたのである」
『ありがと』『ありがとありがと』
「気にしないでくれ。ジルカには言ったが、魔物を倒すのは俺の仕事でもあるからな」
「命の恩人なのである。ありがとう」『ありがと』「わふ」
「ジルカも、聖獣のみんなも、今後とも協力してくれたら嬉しいよ」
そういって、俺は牛と狼二頭を撫でまくった。
「そういえばジルカ。聖獣は五頭いるって言ってたけど、残りの二頭は?」
「子供を見に行ったのである。子供を残して戦っていたゆえなー」
「そっか、今度ご挨拶したいな」
「うむ、ティルの拠点の場所を教えておいたから、すぐに会えるであろ! 事後報告ですまぬ」
「問題ないよ。みんなもどうだ? 俺たちの拠点で一休みするといい」
俺が渡した治癒ポーションの効果で、傷は塞がってはいる。
だが、魔力も体力も失われているし、回復する必要があるだろう。
「俺の拠点には瘴気がないからな。回復も早いだろう。それに……」
牛と狼が、モラクスとペロの一族の可能性もあるし、会わせてあげたい。
だが、何の確証もないので、何も言うべきではないだろう。
モラクスとペロが魔物との戦いで親を失ったように、牛と狼も家族を失っているかもしれない。
行方不明になった家族がいるかもと聞かされたら、希望を持ってしまう。
そして、家族ではないとなったら、がっかりしてしまうだろう。
「それに? なんであるか?」
「いや、なんでもない」
俺がちらりと牛と狼二頭を見ると、ジルカも見る。
「なるほど。まだ確証はないから我も何も言わぬのである」
「助かる」
ジルカも察してくれたようだ。
それほど、牛とモラクス、狼二頭とペロは似ているのだ。
「さあ、みんな! ティルの拠点に行くのである。付いてくるのである!」
「もっも」「がうがう」「わふ!」
そして、俺たちは、皆が待つ拠点に向かって移動を開始した。
俺を背中に乗せたジルカは、牛と狼を気にしながら、ゆっくりと飛んで行く。
ゆっくりといっても、行きに比べてである。時速三十キロぐらいは出ている。
行きの際は三分で移動した距離を、二十分かけて飛び、俺たちの拠点が見えてくる。
コボルトの魔法は健在で、魔樹がうっそうと茂っているようにしか見えない。
コボルトたちが頑張ってくれたのだろう。
ジルカは静かに地面に着陸し、俺がその背中から降りると、
「も」「がう」「がう」
牛と狼二頭もすぐに追いついた。
「牛も狼たちも速いね。無理はしてない?」
『余裕。あの程度の速さは散歩みたいなもの』
『さんぽ? さんぽする?』『いく! さんぽいく!』
牛の散歩という言葉に狼たちが反応する。
「今は散歩はしないよ。しばらく休まないとだからね」
「ぁぅ~」「ぁぅ」
散歩はしないというと、狼の尻尾がへなへなと垂れ下がった。
「元気になったら散歩に行こうね。じゃあ、ついて……おお?」
俺は人型になったジルカを見て驚いた。なぜなら、服を着ていたからだ。
「服を魔法で作ってみたのである。どうであるか?」
ジルカが身に付けているのは、極めて単純な構造の赤褐色の貫頭衣だった。
「素晴らしい! 似合ってるぞ。すぐに魔法で服を作れるようになるとは流石はジルカだな」
「そうであろ、そうであろ! 我は偉大なる竜、天星のジルカゆえな? このぐらいは容易い」
「ふんふんふんふんふん」「ふんふんふんふん」「ふんふんふん……クシュ」
牛と狼たちも気になるらしく、ジルカの服の匂いを嗅ぎまくっている。
「それじゃあ、行くよ。みんな付いてきてくれ」
「行くのである!」
「も」「わう」「がう」
俺はみんなを引きつれて、結界の範囲内へと入り、歩いて行く。
三メートルほど歩いて、急に視界が開けると、子供たちとコボルトたちが勢揃いしていた。
「ティル! 無事なようでなによりだが、魔物はどうなった?」
ミアが心配そうに尋ねてきて、
「おかえり!」「はやかったね!」「いや、遅かった! 一時間ぐらい待ったもん!」
『ぶじでよかったわんねぇ』『ねね、ティルなでてわん』
元気にはしゃぐ子供たちとコボルトたちに囲まれ、
「もおおおおおお!」
「がうがうがうがうがう」
モラクスとペロが興奮して駆けてきて、
『ママ! ママ!』「わふわふわふわふ」
牛と狼たちに飛びついた。
『無事だったのね。可愛い坊や』
『もらくすがんばった。がんばった』
モラクスは母牛に体をくっつけて「もおおもおお」と鳴いている。
「わふわふ」
『我が子よ! よくぞ生きてた』『我が誇り。立派になったな』
ペロは狼二頭にベロベロと舐められている。
「ふむ。やはりモラクスの母であったか」
「狼の方は?」
「狼もペロの両親であるな?」
甘えん坊の犬といった雰囲気だったペロの両親は、今は威厳ある大狼という雰囲気だ。
親としての振るまいといち狼としての振る舞いが違うらしい。
「そっか。よかったなぁ」
きっと、ペロの群れの大半は悲しいことになったのだろう。
それでも、無事生き延びた者がいたことは良かった。
「むぎゅむぎゅむぎゅむぎゅ」
「むぎゅむぎゅむぎゅちゅぱ」
モラクスとペロは嬉しそうに母のお乳を吸いはじめた。
モラクスもペロもまだ乳離れしていない赤ちゃんなのだ。
そんなモラクスとペロの様子を、子供たちとコボルトたちは優しく見守っていた。
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彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~
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神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。
しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
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「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
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不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
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S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
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元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
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様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
小さな小さな花うさぎさん達に誘われて、異世界で今度こそ楽しく生きます!もふもふも来た!
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気がついたら何かに追いかけられていた。必死に逃げる私を助けてくれたのは、お花?違う⋯小さな小さなうさぎさんたち?
突然森の中に放り出された女の子が、かわいいうさぎさん達や、妖精さんたちに助けられて成長していくお話。どんな出会いが待っているのか⋯?
☆。.:*・゜☆。.:*・゜
『転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました。もふもふとも家族になります!』の、のどかです。初めて全く違うお話を書いてみることにしました。もう一作、『転生初日に~』の、おばあちゃんこと、凛さん(人間バージョン)を主役にしたお話『転生したおばあちゃん。同じ世界にいる孫のため、若返って冒険者になります!』も始めました。
よろしければ、そちらもよろしくお願いいたします。
*8/11より、なろう様、カクヨム様、ノベルアップ、ツギクルさんでも投稿始めました。アルファポリスさんが先行です。
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