最強魔導師は不毛の大地でスローライフを送る ~凶悪な魔物が跋扈し瘴気漂う腐界でも、魔法があれば快適です~

えぞぎんぎつね

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39 みんなでご飯

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 モラクスとペロはお乳を吸った後、母にくっついてすやすやと寝始めた。

『ティル、ありがとう。我が子モラクスから話しは聞いた』
『ペロからも聞いた。ありがと!』『ありがとありがと』

 どうやら、お乳を飲みながらモラクスとペロは親と会話をしていたようだ。

「俺の方こそ、モラクスとペロには助けられたよ。ありがとう。勝手に名付けてすまない」

 俺が頭を下げると、モラクス母とペロ両親は首を振る。

『いい。名付けは人のもの』
『狼同士はなまえでよばないからね!』『ひつようない!』
『そして、人に名付けられることは名誉』
「そうであるぞ! 我も、大昔に人に名付けてもらったのである。超強かったゆえな!」
「そっか、そういうものか」

 それから俺は村の皆のことを紹介していく。
 それが終わると、俺はモラクスとペロからはぐれた後のことを尋ねた。

『激しい戦いだった』
『しぬかとおもった』『おもった』

 モラクス母とペロ両親たちは別々の場所で凶悪な魔物と戦い、それぞれ子供を逃がした。
 その後、犠牲を出しながらも、魔物を追い詰めたが逃げられてしまった。

『その魔物は魔王種の側近だったから、逃すわけにはいかなかった』

 それぞれ魔王の元に逃げた側近の魔物を追うことで、あの場に集ったのだ。

「今回の魔王種はまれに見る強い個体だったのである」
『魔王種が強ければ、側近も強くなる』
『ずっとたたかった!』『たたかった!』
「ずっとって、どのくらい?」

 俺が尋ねると、ペロ両親は首をかしげた。

『いっぱい?』『いっぱい』
「だいたい~。三週間であるな!」
「え? その間食事とかは?」
「そんなもの、食べられるわけないのである!」

 どや顔でジルカが言う。

「なんだって? ミ、ミア!」
「わかってる! パンの実とご飯の実と、肉と……」
「肉は俺が焼こう。他に魔苺と魔檸檬も頼む」
「わかった! ティルはお昼のあまりのご飯と唐揚げも出してやってくれ」
「ああ、他にも魔法の鞄に入れておいた食料をどんどん出していこう」

 ミアが動き出すと同時に、静かに話しを聞いていた子供たちとコボルトたちも動き出す。
 俺は器を出して、魔法で水を入れる。

「本当に気が利かなくてすまない。すぐに食事を作るから水を飲みながら待っていてくれ」
「そんな、気を遣わなくてもいいのである。数か月ぐらいなら食べなくても平気なのである」
「そんなに? とりあえず、水を飲んでくれ」

 ジルカ、モラクス母、ペロ両親の前にたっぷり水の入った器を置いた。

「うまいのであるな!」
『この水はうまい』『うまいうまいうまい』『ごくごくごく』
「魔法で出しているから汚染されてないし、ここは瘴気が無いからね」
「我が魔法で出した水よりうまいのである。さすがはティルであるなー」

 そして、魔法の鞄からお昼のあまりのご飯と唐揚げを出す。
 ジルカとペロ両親には魔鳥の唐揚げ、モラクス母には魔ジャガイモの唐揚げだ。
 魔法の鞄に入っていたので、熱々なままだ。

「余り物で悪いんだが、料理ができるまでこれでも食べてくれ」
「助かるのである! でも……そんな申し訳ないのである」

 そういいながらも、ジルカの口からはよだれが垂れていた。

『何から何まで……申し訳が……』
『わ、わるい』『がまん』

 モラクス母とペロ両親もよだれを垂らしながら我慢していた。

「本当に気にするな、どうしても気になるなら、後で色々手伝ってくれればいい」
「ありがとうなのである」
『感謝する』
『ありがと』『てぃるだいすき』

 うまいうまいと言いながら食べるジルカたちを見ながら、俺は肉を焼いていく。
 今回使うのは魔猪の肉だ。
 魔法の鞄から魔猪の肉を取り出して、大胆に三センチ角にカットして焼いていく。

 ペロ両親は口も大きいのでこのぐらい大きい方が良いだろう。

 同時に醤油とニンニク、生姜を混ぜてタレを作っていく。

「……甘めの方が良いかな?」

 ジルカたちは疲れているのだ。砂糖も少し多めに入れていく。
 複雑で繊細な料理より、濃いめの味付けで、素早く作れる料理の方が良かろう。

 だが、ペロ両親の肉にはタレを付けない方が良いだろう。

「疲れたときはニンニクとか生姜とか、ガツンとくる濃いめの料理がいいからな!」
「うまそうな匂いなのである!」
『うまそううまそう!』『これもうまい』

 魔鳥の唐揚げ定食をバクバク食べながら、ジルカとペロ両親が言う。

「ところで、ジルカ、後で来ると言っていた二頭の聖獣は?」
「卵から子が孵ったら行くといっていたのである」

 二頭の聖獣は、どうやら哺乳類ではないらしい。竜だろうか。
 会ってからのお楽しみだ。

「そっか。こっちから迎えに行かなくていいのか?」
「いいであろ。強い聖獣であるからなー。それにしてもうまいのである」
『うまいうまい』

 本当にジルカとモラクス母、ペロ両親の食べっぷりは良い。

「……ところで、ジルカ、断食後に急に食べて大丈夫なのか?」

 聖獣だから大丈夫だろうと思いつつも念のために尋ねておく。
 人族の場合は断食の後に急に食べると命に関わるほど重篤になる場合もある。

「大丈夫に決まっているのだ。三百年前は半年食べなかったのであるが……」
『余裕』『平気!』『うまいうまい』

 三百年前の魔王種も強かったという。
 飲まず食わずで、なんとか倒した後、直後に魔猪を三頭丸呑みしたそうだ。

「あれはうまかったのである。やっぱり空腹が一番の調味料であるからなー」
「たしかにな。腹が減っていると何でもうまいよな」

 そんなことを話しながら、どんどん魔猪の肉を焼いていく。
 モラクス母のために魔芋や魔玉葱、魔トマトも焼いていく。

 特製タレを絡めると、生姜とニンニクの混じった甘辛い匂いが周囲に漂う。

「ジルカ、竜は肉食のイメージがあるんだが、狼と同じでいいのか?」
「竜によるのであるが、我は人族に近いのである! もちろん肉も大好きなのである!」
「そっか。それは助かる。お、焼けたぞ。どんどん食べるといい」
「ありがとうである。このご恩はいつか……」
『うまいうまい』『ありがとありがと』

 焼いた肉をどんどんジルカとペロ両親のお皿に載せていく。
 ジルカもペロ両親も尻尾を勢いよく振っている。

「モラクス母も食べてくれ、魔芋と魔玉葱と魔トマトなんだが……」
『ありがと。とてもおいしい』

 俺が残り物と簡単な料理で時間を稼いでいる間に、咖喱の良い匂いが漂ってきた。

「むむ? 不思議な匂いなのである。しかしうまそうな匂いなのである!」
『これは咖喱?』
『うまそううまそう!』『うまそう』
『かれー』「わふ?」

 咖喱の匂いにつられて、寝ていたモラクスとペロが起き、

「咖喱ができたよ! みんなで食べよう!」

 ミアの大きな声が周囲に響いた。
 料理を手伝っていた子供たちとコボルトたちが、手分けして大きな鍋を運んでくる。
 そして、みんなでご飯を食べることになった。

「これはうまいのである! 単純にうまいのに、複雑な味である」
「ジルカ、難しいこと言うね?」『うまいわんね?』
「モラクスのママとモラクス。おいしい? 肉抜いたけど……少し入っているかも」
『おいしい。ありがと』『うまい』
「やったー」『やったわんね!』

 子供たちもコボルトたちも、ジルカたちに馴染むのが早い。
 きっとモラクスとペロに馴れているからだろう。

『でかいわんねー、かっこいいわん』
『なでていいわん?』
『いいよ』『なでて』

 コボルトたちはペロ両親に興味津々だ。
 ペロ両親もコボルトたちに撫でられまくって、ご満悦な表情だった。


 みんなで少し早めの夕食を楽しく食べおわり、後片付けをする。
 後片付けの間、ジルカたちは、モラクス、ペロや子供たちとコボルトたちと遊んでいた。
 もちろん、手伝ってくれる子供たちもいるが、お客さんの相手をすることも大切な仕事なのだ。


 後片付けを終えて、ジルカたちの元に戻ると、眠そうにしていた。
「ジルカ、疲れているだろう。もう眠ると良いよ」
「いやいや、そこまでご迷惑をかけるわけには……」
「まあ、気にするなって。ちょっと狭いかもだが……入れるだろ」


 ジルカが落ちてきたときに俺の家が壊れてしまった。
 だから、今使えるのはミアたちの新居だけだ。
 だが、元々広いので、モラクス母とペロ両親が入る余裕は充分ある。

「ねね、一緒に寝よう」『ねるわん!』
「そ、そうであるか? じゃあ、一緒に寝るのである」
『寝る』『いっしょいっしょ!』『ねる!』

 子供たちとコボルトたちに誘われて、ジルカたちは新居へと向かっていった。
 もちろん、モラクスとペロも一緒だ。

「ちょっとまて、清浄プリフィカチオ魔針アクス。これでよし」
「おお、すっきりしたのである! む? ちょちょ、ちょっと待て」
『さっぱり。ありがと』『ありがとありがと!』『ありがと』

 お礼を言いながらモラクス母とペロ両親、ペロとモラクスが俺の元に来る。

「どした?」
『てぃるもいっしょにねる』『ねる』『ねよねよ!』「わふ」「も」
「そうだね。後片付けも終わったし……」

 家を建て直すことを含めた仕事は、明日で良いだろう。

「俺も寝るか! 勅許魔法で疲れたしな」
「わふわふ」
「ちょっと待つのである!」
「どした? ジルカ、何かおかしなことあったか?」
「今の何であるか? 清浄はわかるのである。我らも使うし。だが次の魔針はなんであるか!」
『気になった』『てぃるはすごい』『すごいすごい』

 ジルカとモラクス母とペロ両親は魔針が気になって仕方ないらしい。

「あー、あれは大した魔法ではないよ」
「そんなわけないのである! それにご飯が美味しすぎて聞かなかったのであるが――」
『かばんもきになった』
「あー、魔法の鞄か。あれはだな――」

 そんなことを話しながら、俺は新居へと入る。

『てぃる、てぃる、ここ、ここ』『いっしょいっしょ』
「わかったわかった」
 ペロ両親に促されるまま横になるとペロ一家が俺にぴったりとくっつく。
 ペロの両親は俺の左右に、ペロは俺の頭にくっついて横になる。

「もっも」
 そして、モラクスは俺のお腹に頭を乗せた。
 モラクス母は俺の足元の方で横たわる。ジルカはそんなモラクス母にもたれていた。

「魔法の鞄の仕組みっていうのは――」
「ほほ~、つまり時空魔法を使っているのであるな? ということは――」
「魔法の鞄を作ったのは師匠だよ。俺も作れないことは無いとは思うんだけど……って」
「……むにゃむにゃ。ちょっきょ……、まほ……すぅ」

 ジルカは会話の途中で寝落ちした。
 モラクス母もペロ両親も、すやすやと眠っている。

「……やっぱり疲れていたんだろうな」

 長い間、何も食わずで戦っていたのだ。
 いくら強力な聖獣たちでも、疲れないわけがない。

「寝かせてあげてね」

 ペロの両親やモラクス母と遊んで欲しそうな子供たちに小さな声で言う。
 子供たちとコボルトたちは静かに頷いて、新居の外に出て行った。

 まだ時刻は夕方。まだまだ子供たちは遊びたいのだろう。

「みんなお休み」

 色々お話するのは後でいい。

「…………も」「ぁぅ」
「モラクスとペロもおやすみ」

 モラクスとペロを優しく撫でる。

 新居の外からは子供たちの声が聞こえる。
 一応、起こさないよう気を遣ってくれてはいるが、子供たちが遊んでいるのだ。
 全くの無音になるわけがない。

「さみしくなくていいな」

 モラクスと二人で腐界に来たが、あっという間に仲間が増えた。

「…………明日は……何を作ろうかな」

 作りたい物は一杯あるし、やりたいことも沢山ある。
 ペロの匂いを嗅ぎながら、明日やりたいことを考えている間に、俺は眠りについたのだった。
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