20 / 28
罪業深重
20. ひだまり園 -1 ※
しおりを挟む
※虐待・残虐なシーンがあります。
ある日、園庭で走っていた累は、足を取られて転んだ。
砂利に擦れた膝が熱を持ち、遅れて血が滲む。泣くほどではないが、立ち上がるたびに鈍い痛みが走った。
肇の姿は見えず、澪もいない。
呼ぼうとして喉が詰まり、視界がにじんだ、その時だった。
「どうした?」
駆け寄ってきたのは、佐々木大地だった。
「ちょっと見せて」
そう言って、累の肩に手を置き、保健室へ連れて行く。
消毒液の匂いが広がり、ガーゼが当てられた。
「痛くないか?」と気遣うような優しい手つきに、累は小さく頷くのが精一杯で、心臓の音だけが急にうるさくなった。
その時、保健室の入口で、追いかけっこをしていた子どもたちが、勢い余って佐々木の背中にぶつかった。
身体が前へ押し出され、距離が一気に詰まる。
累の膝から滲んでいた血が、佐々木の唇の端に触れた。
ほんの一瞬。
佐々木ははっと身を引き、慌てて口元を拭う。
「……大丈夫。これで終わりだよ」
そう言って、笑窪を浮かべた。
それからだった。
佐々木の様子が、少しずつ変わった。
視線が長く留まる。
不気味な笑顔のまま、瞳だけがどこか遠い。
一週間が過ぎると、些細なことで苛立ち、声を荒げることが増えた。園児に手を上げる彼の姿が日常に混じり始めていた。
ある夜。累は重い尿意で目を覚ました。
隣では肇と澪が深い眠りについている。二人を起こすのをためらい、累は一人、静まり返った廊下へ出た。
窓の外は嵐だった。不気味な雷鳴が轟くたび、闇が白く切り裂かれる。
ふと見れば、職員室の明かりが点いていた。
累は足を止め、恐る恐る、薄暗い部屋の主へ声をかける。
「……佐々木先生。トイレ、行きたい……」
返事はすぐには来なかった。
書類を捲る手が止まり、椅子が軋む音だけが響く。
「……一人で行けないのか」
吐き出された低い呟きには、隠しきれない不機嫌さが混じっていた。
だが、こちらを向いた時の顔は、笑窪を滲ませるいつもの「優しい先生」だった。
「いいよ。行こうか」
促されて歩く廊下。近くで巨大な落雷の音が響いた。
心臓が跳ね、身体が強張る。極限の緊張に耐えきれず、我慢していたものが無惨に溢れ、パジャマを濡らした。
「先生……っ、ごめんなさい……!」
謝罪の言葉を口にした瞬間、周囲の空気が凍りついた。
佐々木はあからさまな舌打ちをすると、苛立ちを隠そうともせず前髪を掻き上げる。
直後、累の視界が激しく揺れた。
太い指が累の髪を掴み、問答無用で壁に叩きつける。
「あがっ……!」
視界が白く爆ぜた。鼻の奥が焼けるように熱くなり、温かい血が止めどなく溢れ出す。
震えながら見上げた先。
そこには、今まで誰も見たことのない佐々木の貌があった。
獲物を狙う獣のような、飢えた、爛々とした視線。
佐々木はゆっくりと顔を寄せると、累の鼻から伝う血を、恍惚とした表情で舐め取った。
累はあまりの恐怖に、悲鳴すら上げられず青ざめる。
血を啜り終えた佐々木の表情が、ふっと緩んだ。
その後は、まるで何事もなかったかのようだった。
汚れを洗い、乾いた服を渡し、優しく寝室まで送り届ける。
「内緒だよ。僕と累くんだけの、秘密だ」
耳元で囁かれた声は、以前よりもずっと甘く、穏やかだった。
累は、その日一日、震えが止まらなかった。
肇にも、澪にも、何も言えなかった。
翌日、佐々木はまた「元の優しい先生」に戻っていた。
周囲の大人たちは、昨日は少し疲れが溜まっていたのかしらと首を傾げるだけで、誰も彼の本性を疑わなかった。
それからだ。三日に一度、夜になると累が呼び出されるようになったのは。
無機質なテーブルの上に、強制的に手を置かされ、腰を突き出すような姿勢を取らされる。
太ももに走る鋭い痛み。刃物が肉を裂き、血が滲むまで、何度も、何度も。
恐怖に耐えかね、逃げようと身体を強張らせると、頭上から鉛のような声が落ちる。
「逃げるの? ……いいよ。でも、君が逃げたら、次は肇くんや澪ちゃんがここに呼ばれて、代わりに痛いことされるんだよ?」
佐々木は累の髪を愛おしそうに撫でながら、静かに、言い聞かせるように続けた。
「二人の肌が血で滲むの、見たい? 累くんが我慢しさえすれば、あの子たちは痛い思いをしなくて済むんだ。……ね、わかるだろう?」
累は、声を失った。
その言葉は、どんな暴力よりも深く、幼い心を縛りつけた。
佐々木は満足げに目を細めると、まるで極上の獲物を検分するように、血の滲んだ累の太ももに顔を寄せた。
熱い舌が、傷口をなぞる。
鉄の匂いと、男の重苦しい体温。生々しい感触が肌を伝うたび、累の全身に鳥肌が立った。
佐々木は恍惚とした表情で累の血を啜りながら、もう片方の手で自身のスラックスを割り、膨張した逸物を露わにした。それを自身の手で扱きながら累の剥き出しの太もも、血の滲む傷口のすぐ傍へと、熱を帯びたまま押し付けた。
「……っ……」
背後から迫る異様な硬さと熱量に、累の身体が拒絶反応で震える。すると佐々木は、累の後頭部の髪をぐいと掴み、無理やり自分の方へと顔を向けさせた。
累の視界に、すぐ間近で脈打つ、暴力的なまでに巨大な男の象徴が飛び込んでくる。それが自分に向けられている欲望そのものであると理解した瞬間、累は顔を真っ青にした。
「怖い? ……大丈夫。累くんがもう少し大きくなったら、これを君の中に挿れてあげようね。きっと、今の痛みなんて忘れるくらい、気持ちいいよ」
声にならない悲鳴を飲み込み、累は強く、強く瞳を閉じた。
今、目の前で起きていることから意識を切り離すように。
ただひたすらに、このおぞましい行為が、一秒でも早く終わることだけを祈りながら。
佐々木はまた累の太ももに顔を埋めた。
喉を鳴らして血を啜る音だけが、静まり返った部屋に、いつまでも響き続けていた。
ある日、園庭で走っていた累は、足を取られて転んだ。
砂利に擦れた膝が熱を持ち、遅れて血が滲む。泣くほどではないが、立ち上がるたびに鈍い痛みが走った。
肇の姿は見えず、澪もいない。
呼ぼうとして喉が詰まり、視界がにじんだ、その時だった。
「どうした?」
駆け寄ってきたのは、佐々木大地だった。
「ちょっと見せて」
そう言って、累の肩に手を置き、保健室へ連れて行く。
消毒液の匂いが広がり、ガーゼが当てられた。
「痛くないか?」と気遣うような優しい手つきに、累は小さく頷くのが精一杯で、心臓の音だけが急にうるさくなった。
その時、保健室の入口で、追いかけっこをしていた子どもたちが、勢い余って佐々木の背中にぶつかった。
身体が前へ押し出され、距離が一気に詰まる。
累の膝から滲んでいた血が、佐々木の唇の端に触れた。
ほんの一瞬。
佐々木ははっと身を引き、慌てて口元を拭う。
「……大丈夫。これで終わりだよ」
そう言って、笑窪を浮かべた。
それからだった。
佐々木の様子が、少しずつ変わった。
視線が長く留まる。
不気味な笑顔のまま、瞳だけがどこか遠い。
一週間が過ぎると、些細なことで苛立ち、声を荒げることが増えた。園児に手を上げる彼の姿が日常に混じり始めていた。
ある夜。累は重い尿意で目を覚ました。
隣では肇と澪が深い眠りについている。二人を起こすのをためらい、累は一人、静まり返った廊下へ出た。
窓の外は嵐だった。不気味な雷鳴が轟くたび、闇が白く切り裂かれる。
ふと見れば、職員室の明かりが点いていた。
累は足を止め、恐る恐る、薄暗い部屋の主へ声をかける。
「……佐々木先生。トイレ、行きたい……」
返事はすぐには来なかった。
書類を捲る手が止まり、椅子が軋む音だけが響く。
「……一人で行けないのか」
吐き出された低い呟きには、隠しきれない不機嫌さが混じっていた。
だが、こちらを向いた時の顔は、笑窪を滲ませるいつもの「優しい先生」だった。
「いいよ。行こうか」
促されて歩く廊下。近くで巨大な落雷の音が響いた。
心臓が跳ね、身体が強張る。極限の緊張に耐えきれず、我慢していたものが無惨に溢れ、パジャマを濡らした。
「先生……っ、ごめんなさい……!」
謝罪の言葉を口にした瞬間、周囲の空気が凍りついた。
佐々木はあからさまな舌打ちをすると、苛立ちを隠そうともせず前髪を掻き上げる。
直後、累の視界が激しく揺れた。
太い指が累の髪を掴み、問答無用で壁に叩きつける。
「あがっ……!」
視界が白く爆ぜた。鼻の奥が焼けるように熱くなり、温かい血が止めどなく溢れ出す。
震えながら見上げた先。
そこには、今まで誰も見たことのない佐々木の貌があった。
獲物を狙う獣のような、飢えた、爛々とした視線。
佐々木はゆっくりと顔を寄せると、累の鼻から伝う血を、恍惚とした表情で舐め取った。
累はあまりの恐怖に、悲鳴すら上げられず青ざめる。
血を啜り終えた佐々木の表情が、ふっと緩んだ。
その後は、まるで何事もなかったかのようだった。
汚れを洗い、乾いた服を渡し、優しく寝室まで送り届ける。
「内緒だよ。僕と累くんだけの、秘密だ」
耳元で囁かれた声は、以前よりもずっと甘く、穏やかだった。
累は、その日一日、震えが止まらなかった。
肇にも、澪にも、何も言えなかった。
翌日、佐々木はまた「元の優しい先生」に戻っていた。
周囲の大人たちは、昨日は少し疲れが溜まっていたのかしらと首を傾げるだけで、誰も彼の本性を疑わなかった。
それからだ。三日に一度、夜になると累が呼び出されるようになったのは。
無機質なテーブルの上に、強制的に手を置かされ、腰を突き出すような姿勢を取らされる。
太ももに走る鋭い痛み。刃物が肉を裂き、血が滲むまで、何度も、何度も。
恐怖に耐えかね、逃げようと身体を強張らせると、頭上から鉛のような声が落ちる。
「逃げるの? ……いいよ。でも、君が逃げたら、次は肇くんや澪ちゃんがここに呼ばれて、代わりに痛いことされるんだよ?」
佐々木は累の髪を愛おしそうに撫でながら、静かに、言い聞かせるように続けた。
「二人の肌が血で滲むの、見たい? 累くんが我慢しさえすれば、あの子たちは痛い思いをしなくて済むんだ。……ね、わかるだろう?」
累は、声を失った。
その言葉は、どんな暴力よりも深く、幼い心を縛りつけた。
佐々木は満足げに目を細めると、まるで極上の獲物を検分するように、血の滲んだ累の太ももに顔を寄せた。
熱い舌が、傷口をなぞる。
鉄の匂いと、男の重苦しい体温。生々しい感触が肌を伝うたび、累の全身に鳥肌が立った。
佐々木は恍惚とした表情で累の血を啜りながら、もう片方の手で自身のスラックスを割り、膨張した逸物を露わにした。それを自身の手で扱きながら累の剥き出しの太もも、血の滲む傷口のすぐ傍へと、熱を帯びたまま押し付けた。
「……っ……」
背後から迫る異様な硬さと熱量に、累の身体が拒絶反応で震える。すると佐々木は、累の後頭部の髪をぐいと掴み、無理やり自分の方へと顔を向けさせた。
累の視界に、すぐ間近で脈打つ、暴力的なまでに巨大な男の象徴が飛び込んでくる。それが自分に向けられている欲望そのものであると理解した瞬間、累は顔を真っ青にした。
「怖い? ……大丈夫。累くんがもう少し大きくなったら、これを君の中に挿れてあげようね。きっと、今の痛みなんて忘れるくらい、気持ちいいよ」
声にならない悲鳴を飲み込み、累は強く、強く瞳を閉じた。
今、目の前で起きていることから意識を切り離すように。
ただひたすらに、このおぞましい行為が、一秒でも早く終わることだけを祈りながら。
佐々木はまた累の太ももに顔を埋めた。
喉を鳴らして血を啜る音だけが、静まり返った部屋に、いつまでも響き続けていた。
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる