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罪業深重
26. 白苑会開祖 -4
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大学の卒業と同時に、久世累は宗教法人『白苑会』を立ち上げた。
開祖にあたり、彼は自らを「久世はじめ」と名乗ることに決めた。「累」という名は、彼にとって忌まわしい過去の連鎖や、支配されていた頃の自分を想起させる重荷でしかなかったからだ。
「……はじめ、か。本当にその名前でいくんだね」
澪は、かつて児童養護施設で慕っていたもう一人の「はじめ」――累の兄である肇を思い出し、複雑な表情で戸惑いを見せた。けれど、累の決意が固いことを知ると、最後には静かに受け入れた。
「わかったよ。でも、私は……今まで通り『累』って呼ばせて。私にとっては、どんな名前になっても累は累だから」
累はそんな彼女の頑固さに微笑み、許した。
白苑会は、瞬く間に社会現象となった。開祖・久世はじめの神々しいまでの美貌と、人心を掌握する話術。既存の宗教にはない洗練された教義は、不安を抱える現代人の心を鷲掴みにし、またたく間に強固な教団へと膨れ上がった。
組織の体制は盤石だった。
表向きは、理論的支柱として信者を導く導師の恒一郎と、累の言葉を慈悲の記録として編纂する記録官の澪が脇を固める。
だがその裏では、真壁稔と高上慧嗣が地下の保管庫で恩寵供与を精製し続け、財務担当の鷹宮ひさしが、薬を餌に上位献金者から巨額の富を吸い上げるシステムを構築していた。
教団の顔である累の一日は、多忙を極めた。
次々に面会を求める有力者たちの対応、説法、そして組織の意思決定。救いを求める者たちの熱気に晒され続け、神経を摩耗させる時間が過ぎていく。
ようやくすべての予定を終え、夜の帳が下りた頃。
累は本部の中庭へと足を運んだ。
そこには、開祖を記念して植えられたばかりの泰山木が一本、静かに佇んでいた。
その枝はまだ驚くほど細く、風に吹かれれば折れてしまいそうなほどに頼りない。四方を数本の竹の支柱で厳重に支えられ、ようやく自立を保っていた。
累は、その傍らに置かれたベンチへと腰を下ろした。
周囲は閑静な住宅街だ。塀の向こうからは、どこか遠い世界の出来事のように、生活の気配を孕んだ車の走行音が微かに響いてくる。累は、泰山木のまだまばらな葉が夜風に擦れる音を聴きながら、肺の奥まで冷たい空気を吸い込んだ。
「……やっと、静かな夜を過ごせる」
唇から零れた独り言は、夜の静寂に溶けて消えた。
自分を縛っていた血も、名前も、過去も。今ではすべてが、この若き泰山木がいつか巨木へと成長するように、この「白苑会」を繁栄させるための糧へと変わった。
累は、支柱に守られた細い枝を慈しむように見つめ、誰にも侵されない絶対的な安堵を噛み締めた。
◆
白苑会が開祖して3年。
久世はじめの名は救済の象徴として知れ渡り、教団は順調に繁栄を極めていた。しかし、その栄華の裏側で、最初の亀裂は音もなく走り始めていた。
「教祖、お願いです……。どうか、娘に恩寵供与を……!」
教団本部の一室。教義責任者である真壁稔が、床に額を擦り付けていた。彼には十歳になる一人娘がいたが、重い心臓病で日に日に衰弱していた。
「……真壁教義長、顔を上げてください」
累は、氷のように冷徹な、しかし表面上は穏やかな声で告げた。
「ドナーは見つかり、移植手術の日程も決まっている。そうでしょう? 待てば彼女は助かる。それなのに、なぜ私が禁じたはずの薬に頼ろうとするんです」
「ですが、あの子はもう、食事も喉を通らないほど弱っているんです! 手術の日まで持つかどうかも分からない……! 貴方の薬があれば、あの子は苦しまずに済むんです!」
真壁稔の訴えは、一見すれば親心ゆえの慈悲に見えた。だが、累の目にはそれが、自分の焦燥感から逃れたいだけの、浅ましく愚かな執着にしか見えなかった。
「以前も話したはずです。あの薬は子供に使うべきではない。依存性が強すぎる上に、容量を誤れば私自身から血を定期的に摂取し続けなければ生きていけない体になる。
かつて、致死量を摂取した資産家がどうなったか……あなたも知っているでしょう?
二日目で狂ったように私の血を求め、放置した結果、三日目には自ら命を絶った。手術の日まで、あとわずかな辛抱もできないというのですか」
「そんな……っ」
「真壁教義長、冷静になりなさい」
累の言葉は至極真っ当であり、唯一の正解だった。しかし、目の前の絶望に耐えきれない真壁の耳には、その正論さえも残酷な拒絶に聞こえていた。
それから一週間、真壁稔は姿を消した。彼が保管庫から恩寵供与を盗み出したことが発覚したのは、その翌日のことだった。
一週間後、真壁稔は幽霊のように青褪めた顔で本部へと戻ってきた。
「……教祖様……助けてください、あの子が、あの子が……」
真壁の娘は、恩寵供与によって心臓こそ奇跡的に回復した。しかし、代償はあまりに大きかった。二日目にして彼女は激しい禁断症状に襲われ、十歳の少女とは思えぬ力で暴れ、喉を掻きむしりながら血を求めて泣き叫んだのだ。
移植手術を待つどころか、彼女はもはや人間としての精神を維持することさえ困難になっていた。変わり果てた娘の姿に正気を失った真壁は、彼女の四肢をベッドに縛り付け、世間の目から隠すように精神病院へと強制入院させるしかなかった。
累は、縋り付く真壁の汚れた手を冷ややかに見下ろした。
「……真壁教義長、私にはどうすることもできません」
累の声には、怒りさえもなかった。ただ、自らの手で希望を握り潰した愚か者への、救いようのない軽蔑だけが漂っていた。
「私の血を欲するようになれば、最低でも三日に一度は私自身が血を与え続けなければならない。だが、それをしたところで精神汚染は止まらない。血を与え続けても、彼女の心は早晩、壊れて廃人になる。……あなたが、手術まで待てなかった結果です」
「そんな……っ、ああぁぁ……!」
真壁は獣のような慟哭を上げ、床に崩れ落ちた。娘を救いたいという親心が、娘を永遠の地獄へと突き落とした事実に、彼の精神もまた崩壊の縁にあった。
「真壁稔。……三ヶ月の謹慎を命じます。その間、自分の犯した罪の重さを、誰にも邪魔されずに反芻するといい」
累は冷たく一瞥をくれると、縋り付く手を振り払い、背を向けて部屋を出た。
背後からは、いつまでも真壁の、地を這うようなすすり泣きが響いていた。
累は冷ややかな足取りで中庭へと向かった。
夜風が火照った頬を撫でるが、胸の中に澱んだ不快感は消えない。
だが、建物の隅に立つ人影を捉えた瞬間、その思考は止まった。
そこにいたのは、沈慈恩だった。
数年前、名古屋湾大震災で路地裏で蹲っていたのを久世はじめ自身が拾った孤児。
彼は左目が潰れており、白い包帯が痛々しく巻かれている。今は残された右目で、累の仕事が終わるのをじっと待っていたのだろう。彼は別の方向を見ていたため、累の接近にはまだ気づいていないようだった。
そのひたむきで無垢な佇まいを目にした途端、累の心を満たしていたどす黒いものが、嘘のように引いていった。
「慈恩、来なさい」
累は、先ほどまでの冷徹さが嘘のような、柔らかく慈愛に満ちた笑みを浮かべて声をかけた。
「教祖様!」
声に気づいた慈恩が、パッと顔を輝かせる。
それは、暗い廃墟に咲いた向日葵のような、一点の曇りもない笑顔だった。慈恩は弾むような足取りで、累のもとへと駆け寄ってくる。
「待っていたのかい」
「はい! あの、ご飯、作っておきました。教祖様、今日はお忙しそうだったから……冷めないように、ずっと温めてたんです」
「そうか。……お腹が空いていたんだ。ありがとう、慈恩」
はじめは慈恩の頭を優しく撫でた。
すると慈恩は、飼い主の手を求める子犬のように、愛おしそうに目を細めてはじめの手のひらに自分の頭を擦り寄せた。
はじめその様子に微笑み、慈恩の小さな手を引き、ゆっくりと歩き出した。
開祖にあたり、彼は自らを「久世はじめ」と名乗ることに決めた。「累」という名は、彼にとって忌まわしい過去の連鎖や、支配されていた頃の自分を想起させる重荷でしかなかったからだ。
「……はじめ、か。本当にその名前でいくんだね」
澪は、かつて児童養護施設で慕っていたもう一人の「はじめ」――累の兄である肇を思い出し、複雑な表情で戸惑いを見せた。けれど、累の決意が固いことを知ると、最後には静かに受け入れた。
「わかったよ。でも、私は……今まで通り『累』って呼ばせて。私にとっては、どんな名前になっても累は累だから」
累はそんな彼女の頑固さに微笑み、許した。
白苑会は、瞬く間に社会現象となった。開祖・久世はじめの神々しいまでの美貌と、人心を掌握する話術。既存の宗教にはない洗練された教義は、不安を抱える現代人の心を鷲掴みにし、またたく間に強固な教団へと膨れ上がった。
組織の体制は盤石だった。
表向きは、理論的支柱として信者を導く導師の恒一郎と、累の言葉を慈悲の記録として編纂する記録官の澪が脇を固める。
だがその裏では、真壁稔と高上慧嗣が地下の保管庫で恩寵供与を精製し続け、財務担当の鷹宮ひさしが、薬を餌に上位献金者から巨額の富を吸い上げるシステムを構築していた。
教団の顔である累の一日は、多忙を極めた。
次々に面会を求める有力者たちの対応、説法、そして組織の意思決定。救いを求める者たちの熱気に晒され続け、神経を摩耗させる時間が過ぎていく。
ようやくすべての予定を終え、夜の帳が下りた頃。
累は本部の中庭へと足を運んだ。
そこには、開祖を記念して植えられたばかりの泰山木が一本、静かに佇んでいた。
その枝はまだ驚くほど細く、風に吹かれれば折れてしまいそうなほどに頼りない。四方を数本の竹の支柱で厳重に支えられ、ようやく自立を保っていた。
累は、その傍らに置かれたベンチへと腰を下ろした。
周囲は閑静な住宅街だ。塀の向こうからは、どこか遠い世界の出来事のように、生活の気配を孕んだ車の走行音が微かに響いてくる。累は、泰山木のまだまばらな葉が夜風に擦れる音を聴きながら、肺の奥まで冷たい空気を吸い込んだ。
「……やっと、静かな夜を過ごせる」
唇から零れた独り言は、夜の静寂に溶けて消えた。
自分を縛っていた血も、名前も、過去も。今ではすべてが、この若き泰山木がいつか巨木へと成長するように、この「白苑会」を繁栄させるための糧へと変わった。
累は、支柱に守られた細い枝を慈しむように見つめ、誰にも侵されない絶対的な安堵を噛み締めた。
◆
白苑会が開祖して3年。
久世はじめの名は救済の象徴として知れ渡り、教団は順調に繁栄を極めていた。しかし、その栄華の裏側で、最初の亀裂は音もなく走り始めていた。
「教祖、お願いです……。どうか、娘に恩寵供与を……!」
教団本部の一室。教義責任者である真壁稔が、床に額を擦り付けていた。彼には十歳になる一人娘がいたが、重い心臓病で日に日に衰弱していた。
「……真壁教義長、顔を上げてください」
累は、氷のように冷徹な、しかし表面上は穏やかな声で告げた。
「ドナーは見つかり、移植手術の日程も決まっている。そうでしょう? 待てば彼女は助かる。それなのに、なぜ私が禁じたはずの薬に頼ろうとするんです」
「ですが、あの子はもう、食事も喉を通らないほど弱っているんです! 手術の日まで持つかどうかも分からない……! 貴方の薬があれば、あの子は苦しまずに済むんです!」
真壁稔の訴えは、一見すれば親心ゆえの慈悲に見えた。だが、累の目にはそれが、自分の焦燥感から逃れたいだけの、浅ましく愚かな執着にしか見えなかった。
「以前も話したはずです。あの薬は子供に使うべきではない。依存性が強すぎる上に、容量を誤れば私自身から血を定期的に摂取し続けなければ生きていけない体になる。
かつて、致死量を摂取した資産家がどうなったか……あなたも知っているでしょう?
二日目で狂ったように私の血を求め、放置した結果、三日目には自ら命を絶った。手術の日まで、あとわずかな辛抱もできないというのですか」
「そんな……っ」
「真壁教義長、冷静になりなさい」
累の言葉は至極真っ当であり、唯一の正解だった。しかし、目の前の絶望に耐えきれない真壁の耳には、その正論さえも残酷な拒絶に聞こえていた。
それから一週間、真壁稔は姿を消した。彼が保管庫から恩寵供与を盗み出したことが発覚したのは、その翌日のことだった。
一週間後、真壁稔は幽霊のように青褪めた顔で本部へと戻ってきた。
「……教祖様……助けてください、あの子が、あの子が……」
真壁の娘は、恩寵供与によって心臓こそ奇跡的に回復した。しかし、代償はあまりに大きかった。二日目にして彼女は激しい禁断症状に襲われ、十歳の少女とは思えぬ力で暴れ、喉を掻きむしりながら血を求めて泣き叫んだのだ。
移植手術を待つどころか、彼女はもはや人間としての精神を維持することさえ困難になっていた。変わり果てた娘の姿に正気を失った真壁は、彼女の四肢をベッドに縛り付け、世間の目から隠すように精神病院へと強制入院させるしかなかった。
累は、縋り付く真壁の汚れた手を冷ややかに見下ろした。
「……真壁教義長、私にはどうすることもできません」
累の声には、怒りさえもなかった。ただ、自らの手で希望を握り潰した愚か者への、救いようのない軽蔑だけが漂っていた。
「私の血を欲するようになれば、最低でも三日に一度は私自身が血を与え続けなければならない。だが、それをしたところで精神汚染は止まらない。血を与え続けても、彼女の心は早晩、壊れて廃人になる。……あなたが、手術まで待てなかった結果です」
「そんな……っ、ああぁぁ……!」
真壁は獣のような慟哭を上げ、床に崩れ落ちた。娘を救いたいという親心が、娘を永遠の地獄へと突き落とした事実に、彼の精神もまた崩壊の縁にあった。
「真壁稔。……三ヶ月の謹慎を命じます。その間、自分の犯した罪の重さを、誰にも邪魔されずに反芻するといい」
累は冷たく一瞥をくれると、縋り付く手を振り払い、背を向けて部屋を出た。
背後からは、いつまでも真壁の、地を這うようなすすり泣きが響いていた。
累は冷ややかな足取りで中庭へと向かった。
夜風が火照った頬を撫でるが、胸の中に澱んだ不快感は消えない。
だが、建物の隅に立つ人影を捉えた瞬間、その思考は止まった。
そこにいたのは、沈慈恩だった。
数年前、名古屋湾大震災で路地裏で蹲っていたのを久世はじめ自身が拾った孤児。
彼は左目が潰れており、白い包帯が痛々しく巻かれている。今は残された右目で、累の仕事が終わるのをじっと待っていたのだろう。彼は別の方向を見ていたため、累の接近にはまだ気づいていないようだった。
そのひたむきで無垢な佇まいを目にした途端、累の心を満たしていたどす黒いものが、嘘のように引いていった。
「慈恩、来なさい」
累は、先ほどまでの冷徹さが嘘のような、柔らかく慈愛に満ちた笑みを浮かべて声をかけた。
「教祖様!」
声に気づいた慈恩が、パッと顔を輝かせる。
それは、暗い廃墟に咲いた向日葵のような、一点の曇りもない笑顔だった。慈恩は弾むような足取りで、累のもとへと駆け寄ってくる。
「待っていたのかい」
「はい! あの、ご飯、作っておきました。教祖様、今日はお忙しそうだったから……冷めないように、ずっと温めてたんです」
「そうか。……お腹が空いていたんだ。ありがとう、慈恩」
はじめは慈恩の頭を優しく撫でた。
すると慈恩は、飼い主の手を求める子犬のように、愛おしそうに目を細めてはじめの手のひらに自分の頭を擦り寄せた。
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