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第3部 電脳機神兵の花嫁になんてならない!
第1章 アリーシャ、例の塔へ向かう
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制作者が複数いれば、ゲームの設定や方針を巡ってモメることもよくある。
私と創君の場合も例外ではなかった。
『だから、この塔の名前は絶対 "カーリダーサの塔" だって言ってんだろ』
『何でそうなるの!? 天へ届くほど高い塔って言ったら "バベルの塔" 一択でしょ!?』
『それじゃありきたりでテンプレ過ぎるだろうが』
『じゃあ "天空の…』
『それはダメだ。パクりになる』
『じゃあ "カリンと…』
『だからパクリはすんなって言ってんだろうが!』
『それを言うなら創君のだってパクリじゃん?その何とかダーサって塔の名前、何とかっていうSF小説のパクリでしょ?』
『パクリって言うな!俺のはオマージュでリスペクトなんだよ!』
『そのビミョウな匙加減、私には分からないよっ!』
……なんて感じでモメにモメて、結局名前が決まらずじまいだったメトロポラリスの中心にそびえる塔……。
名前が無いので結局いつも "例の塔" と呼んでいたわけだが……
「姫様!見えました!あれが、かの有名なメトロポラリスの "レイの塔" です!」
……まさかソレがまんま名前として採用されているとは思わなかった……。
「か……変わった名前じゃない?」
思わず護衛騎士に訊いてみると、騎士は当たり前のように名前の由来を語り始める。
「神様の御言葉ですからね。何でも創世の二神が命名で揉めに揉めた末、この名に落ち着いたそうですよ。意味は分かりませんが、よほど良い名前なのでしょう」
……ゴメン。意味なんてほぼ無い、間に合わせの仮名なんだけど……。
それにしても、やっぱり "創世の二神" って、私と創君のことなんだろうな……。
「こんなデタラメな世界にしちゃって、本当ゴメンナサイ……」
周囲に聞こえないようコッソリと、私はこの世界中の人々へ向けて謝った。
機巧帝国メトロポラリス。
"機巧帝国" というのはいわゆる二つ名で、実態は "王様" の治める、ちょっとかなりいろいろ斬新な形態の王国だ。
私がこの国へ向かうことになったのは、前回のガルトブルグと同じく父王の命令によるものなのだが……
『我がシェリーロワールも、世界の流れに取り残されぬよう、女性の活躍推進に力を入れようと思っておってな。ついては一番進んでおると噂のメトロポラリスの取り組みを、お前に見て来て欲しいのだ。これからの未来を担う女性としての視点でな』
一応毎度それなりに、ソレっぽい "目的" が設定されているのだな、と感心して聞いていたのだが……
今回私はそういうわけで、メトロポラリスの働き方改革の "視察" をするために来ている。
もちろん、すぐに素直にメトロポラリス行きを受け入れたわけではない。
だが、ガルトブルグの時と同じで、何を言っても父王には通じないし、それに……
「メトロポラリスにはヴァルキュリエ・ソードや究極の鍵があるからなぁ……」
メトロポラリスのダンジョンであるレイの塔は、上の階層へ行けば行くほど敵が強くなっていく仕組みで、最上階に至っては、ラスボスを倒せるレベルにならないと挑めないほどの難易度になっている。
そしてところどころの階に重要アイテムが隠されているのだ。
ヴァルキュリエ・ソードもそのひとつ。
シェリーロワールの王女が装備できる数少ない専用武器だ。
ゲットしなくてもストーリー上問題はないが、手に入れられなければ、非力な王女は戦闘では他メンバーのサポートしかできない。
「囚われ回避のためには、ゼッタイ入手しておきたいよね。……で、ゲットしたらすぐにトンズラしたいところだけど……」
私は馬車の窓越しに、まだ遠いレイの塔を睨む。
それはシェリーロワール城と同じく、デコボコと歪に出っ張ったり凹んだりしている。
現実世界出身の私の目から見たら、いつ倒れるかとヒヤヒヤするような外観の塔だ。
そしてその塔の先は、雲の中に隠れて見えない。
「あれ……本当に宇宙に到達してたりしないよね……?」
現実世界ならあり得ないが、ファンタジーな世界観にいきなりSFをブッ込んで来るような、このデタラメなゲームなら、 "宇宙まで届く塔" があったとしても不思議ではない。
「……って言うか、今回の囚われ回避、至難の業過ぎない……?」
ゲーム制作者の一人である私は、当然メトロポラリス編のシナリオもある程度は知っている。
……だが、シナリオを知っているからと言って、攻略法が分かるわけではない。
「街中の監視カメラ網から逃れる方法なんて……分からないよ……っ」
……そう。メトロポラリスでの "囚われ" は、鍵のかかった扉や牢獄によるものではない。
カメラや人工知能や情報通信網を使って、実質的に街から出られなくされてしまうのだ。
私と創君の場合も例外ではなかった。
『だから、この塔の名前は絶対 "カーリダーサの塔" だって言ってんだろ』
『何でそうなるの!? 天へ届くほど高い塔って言ったら "バベルの塔" 一択でしょ!?』
『それじゃありきたりでテンプレ過ぎるだろうが』
『じゃあ "天空の…』
『それはダメだ。パクりになる』
『じゃあ "カリンと…』
『だからパクリはすんなって言ってんだろうが!』
『それを言うなら創君のだってパクリじゃん?その何とかダーサって塔の名前、何とかっていうSF小説のパクリでしょ?』
『パクリって言うな!俺のはオマージュでリスペクトなんだよ!』
『そのビミョウな匙加減、私には分からないよっ!』
……なんて感じでモメにモメて、結局名前が決まらずじまいだったメトロポラリスの中心にそびえる塔……。
名前が無いので結局いつも "例の塔" と呼んでいたわけだが……
「姫様!見えました!あれが、かの有名なメトロポラリスの "レイの塔" です!」
……まさかソレがまんま名前として採用されているとは思わなかった……。
「か……変わった名前じゃない?」
思わず護衛騎士に訊いてみると、騎士は当たり前のように名前の由来を語り始める。
「神様の御言葉ですからね。何でも創世の二神が命名で揉めに揉めた末、この名に落ち着いたそうですよ。意味は分かりませんが、よほど良い名前なのでしょう」
……ゴメン。意味なんてほぼ無い、間に合わせの仮名なんだけど……。
それにしても、やっぱり "創世の二神" って、私と創君のことなんだろうな……。
「こんなデタラメな世界にしちゃって、本当ゴメンナサイ……」
周囲に聞こえないようコッソリと、私はこの世界中の人々へ向けて謝った。
機巧帝国メトロポラリス。
"機巧帝国" というのはいわゆる二つ名で、実態は "王様" の治める、ちょっとかなりいろいろ斬新な形態の王国だ。
私がこの国へ向かうことになったのは、前回のガルトブルグと同じく父王の命令によるものなのだが……
『我がシェリーロワールも、世界の流れに取り残されぬよう、女性の活躍推進に力を入れようと思っておってな。ついては一番進んでおると噂のメトロポラリスの取り組みを、お前に見て来て欲しいのだ。これからの未来を担う女性としての視点でな』
一応毎度それなりに、ソレっぽい "目的" が設定されているのだな、と感心して聞いていたのだが……
今回私はそういうわけで、メトロポラリスの働き方改革の "視察" をするために来ている。
もちろん、すぐに素直にメトロポラリス行きを受け入れたわけではない。
だが、ガルトブルグの時と同じで、何を言っても父王には通じないし、それに……
「メトロポラリスにはヴァルキュリエ・ソードや究極の鍵があるからなぁ……」
メトロポラリスのダンジョンであるレイの塔は、上の階層へ行けば行くほど敵が強くなっていく仕組みで、最上階に至っては、ラスボスを倒せるレベルにならないと挑めないほどの難易度になっている。
そしてところどころの階に重要アイテムが隠されているのだ。
ヴァルキュリエ・ソードもそのひとつ。
シェリーロワールの王女が装備できる数少ない専用武器だ。
ゲットしなくてもストーリー上問題はないが、手に入れられなければ、非力な王女は戦闘では他メンバーのサポートしかできない。
「囚われ回避のためには、ゼッタイ入手しておきたいよね。……で、ゲットしたらすぐにトンズラしたいところだけど……」
私は馬車の窓越しに、まだ遠いレイの塔を睨む。
それはシェリーロワール城と同じく、デコボコと歪に出っ張ったり凹んだりしている。
現実世界出身の私の目から見たら、いつ倒れるかとヒヤヒヤするような外観の塔だ。
そしてその塔の先は、雲の中に隠れて見えない。
「あれ……本当に宇宙に到達してたりしないよね……?」
現実世界ならあり得ないが、ファンタジーな世界観にいきなりSFをブッ込んで来るような、このデタラメなゲームなら、 "宇宙まで届く塔" があったとしても不思議ではない。
「……って言うか、今回の囚われ回避、至難の業過ぎない……?」
ゲーム制作者の一人である私は、当然メトロポラリス編のシナリオもある程度は知っている。
……だが、シナリオを知っているからと言って、攻略法が分かるわけではない。
「街中の監視カメラ網から逃れる方法なんて……分からないよ……っ」
……そう。メトロポラリスでの "囚われ" は、鍵のかかった扉や牢獄によるものではない。
カメラや人工知能や情報通信網を使って、実質的に街から出られなくされてしまうのだ。
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