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第5部 新魔王と結婚なんて、お断り!
第9章 アリーシャ、音楽室の怪と対面する
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「廃墟なのにピアノの音とは面妖な……。行って確かめてみようではないか」
アッシュが恐ろしいことを言い出す。
「いやいやいや、何かあるって分かってるのに、わざわざ行かなくて良くない!? 放っておこうよ!」
たぶん、行かなきゃシナリオが進まないんだろうな……と分かってはいても、行きたくない。
何でこんな、あからさまに怪しい罠に、わざわざ引っかかりに行かなきゃいけないんだろう……。
《ひょっとしたら、誰か人がいるのかも知れないワン!行ってみるワン!》
白兵衛までが、そんなことを言う。
……あぁ、コレ、行かなきゃどうにもならないパターンだ……。
「アッシュたん、白兵衛、ちゃんと一緒にいてね。急にいなくなったりしないでね!」
二匹にしっかり念押しし、おそるおそる音楽室に近づいていく。
近づくにつれ、ピアノの音がクリアになり、何の曲を弾いているのかが分かってくる。
「シューベルトの『魔王』……!? よりにもよって、何て恐ろしい選曲を……」
音楽室の怪談と言ったら、普通は『月光』とか『エリーゼのために』とか、ベートーベン系じゃないの?
一体、何者がこんな曲を弾いているのか……ドアのガラス窓から、こっそり中を窺い……私は思わず悲鳴を上げてしまった。
「ふぇえぇぇェッ!? 骸骨!? 動く骨格標本!? 何で理科室の怪談と混ざっちゃってんの!?」
薄闇の中でも白く浮かび上がって見えるソレは、どう見ても人骨だった。
頭蓋を激しく前後に振り動かし、完全に演奏に浸りきっていたソレは、私の悲鳴に気づいてか、ぴたりと動きを止めた。
「ぅひッ!? 気づかれた!? こっち来る!?」
逃げたかったが、なぜか身体がフリーズしてしまい、動けない。
骸骨が、一歩一歩、ゆっくりと歩み寄って来る。
ガラガラとドアが開き、目前に迫って来る。
ぽっかりと開いた二つの眼窩が、じっと私を凝視してくる。
「…………ッ!…………ッッ!!」
声鳴き悲鳴を上げてパニクる私の前で、骸骨は何やら手をひらひらと動かし始めた。
ただひたすらに左右の手骨を動かすばかりで、襲いかかってくる様子はない。
何かを訴えるようなその動きに、私は何となく見覚えがあった。
「……え?これって……手話?」
《『ボクは動く骨格標本じゃないよ』って言ってるワン》
白兵衛が通訳してくれる。
……そうか。声帯が無いから、手話で意思を伝えているのか。
「此奴はモンスターの一種だな。アンデッド属の "スケルトン" だ」
アッシュが解説してくれる。
……そうか。見た目が "骸骨" なモンスターって、ゲームの中じゃ普通にいるもんね。
《『驚かせてゴメン。ピアノはボクの趣味なんだ』って言ってるワン》
見た目がホラーなわりに、中身は随分親しみやすそうだな、このスケルトン……。
「あ……こ、こちらこそ、邪魔しちゃってゴメンナサイ」
そのホラーな見た目に怯えながらも、私は何とか言葉を交わす。
相手が "モンスター" なら、魔女に変装した今の私が襲われることはないはずだ。
《『気にしてないよ。確かに奴はボクとそっくりだから、見間違えても無理はないさ』って言ってるワン》
「は!? 奴って、まさか……動く骨格標本は、別にちゃんといるってこと!?」
《『そうなんだ。奴はボクと違って理性が無いから、誰彼かまわず襲って来るんだ。気をつけて』って言ってるワン》
……嫌な情報を知ってしまった。
「しかし、見た目がそっくりとなると、ちと厄介だな。また此奴と見間違いかねん」
《『そうなんだよ。ボクもすっごく困ってるんだ』って言ってるワン》
確かに、敵と味方(?)の区別がつかないのは、困るよね……。
私はスケルトンの全身を眺め、しばらく考え込む。
「……そうだ!なら、見分けられるように、目印をつければいいんじゃない?」
ふと、そんなことを思いついた。
私は髪を結んでいたリボンを解き、スケルトンの頭にカチューシャのように巻きつけた。
仕上げに大きく蝶々結びを作れば完成だ。
……何だか、ものすごく罰当たりなビジュアルになってしまった気がするけど…… "モンスター" だから、まぁいいか。
「これなら確実に見分けがつくよ!」
スケルトンは、しばらく無言でリボンをいじっていたが、やがてパタパタと手を動かした。
《『ありがとう。長年の悩みが解決されたよ。お礼に "いいもの" をあげる』って言ってるワン》
スケルトンは一旦音楽室に引き返し、ピアノの所から何かの紙片を持って来た。
「これは……」
渡されたのは、チケットの破片のようだ。
文字の部分も切れてしまっているので、何のチケットなのかは分からないが……
「このタイミングで、チケットっぽいものを入手できたってことは……」
「これは、フェアウェルランド牢獄のパスの破片だな。千切れておるから、これだけでは使えぬが」
アッシュに見せると、予想通りの答えが返ってきた。
《これは、どうやら1/7に切断されているワン。この破片を、あと6つ集めるワン》
「うわぁぁ~……。やっぱり、そういうことかー……。肝だめしを再開して、この破片を集めなきゃダメなのかー……」
《 "肝だめし" じゃないワン。廃校探索だワン》
「同じことだよー。怖いことに変わりはないよー……」
しかも、破片が全部で7つというあたりが、何ともイヤな感じだ。
その7つの隠し場所……学校の七不思議に対応してるとか言わないよね……?
アッシュが恐ろしいことを言い出す。
「いやいやいや、何かあるって分かってるのに、わざわざ行かなくて良くない!? 放っておこうよ!」
たぶん、行かなきゃシナリオが進まないんだろうな……と分かってはいても、行きたくない。
何でこんな、あからさまに怪しい罠に、わざわざ引っかかりに行かなきゃいけないんだろう……。
《ひょっとしたら、誰か人がいるのかも知れないワン!行ってみるワン!》
白兵衛までが、そんなことを言う。
……あぁ、コレ、行かなきゃどうにもならないパターンだ……。
「アッシュたん、白兵衛、ちゃんと一緒にいてね。急にいなくなったりしないでね!」
二匹にしっかり念押しし、おそるおそる音楽室に近づいていく。
近づくにつれ、ピアノの音がクリアになり、何の曲を弾いているのかが分かってくる。
「シューベルトの『魔王』……!? よりにもよって、何て恐ろしい選曲を……」
音楽室の怪談と言ったら、普通は『月光』とか『エリーゼのために』とか、ベートーベン系じゃないの?
一体、何者がこんな曲を弾いているのか……ドアのガラス窓から、こっそり中を窺い……私は思わず悲鳴を上げてしまった。
「ふぇえぇぇェッ!? 骸骨!? 動く骨格標本!? 何で理科室の怪談と混ざっちゃってんの!?」
薄闇の中でも白く浮かび上がって見えるソレは、どう見ても人骨だった。
頭蓋を激しく前後に振り動かし、完全に演奏に浸りきっていたソレは、私の悲鳴に気づいてか、ぴたりと動きを止めた。
「ぅひッ!? 気づかれた!? こっち来る!?」
逃げたかったが、なぜか身体がフリーズしてしまい、動けない。
骸骨が、一歩一歩、ゆっくりと歩み寄って来る。
ガラガラとドアが開き、目前に迫って来る。
ぽっかりと開いた二つの眼窩が、じっと私を凝視してくる。
「…………ッ!…………ッッ!!」
声鳴き悲鳴を上げてパニクる私の前で、骸骨は何やら手をひらひらと動かし始めた。
ただひたすらに左右の手骨を動かすばかりで、襲いかかってくる様子はない。
何かを訴えるようなその動きに、私は何となく見覚えがあった。
「……え?これって……手話?」
《『ボクは動く骨格標本じゃないよ』って言ってるワン》
白兵衛が通訳してくれる。
……そうか。声帯が無いから、手話で意思を伝えているのか。
「此奴はモンスターの一種だな。アンデッド属の "スケルトン" だ」
アッシュが解説してくれる。
……そうか。見た目が "骸骨" なモンスターって、ゲームの中じゃ普通にいるもんね。
《『驚かせてゴメン。ピアノはボクの趣味なんだ』って言ってるワン》
見た目がホラーなわりに、中身は随分親しみやすそうだな、このスケルトン……。
「あ……こ、こちらこそ、邪魔しちゃってゴメンナサイ」
そのホラーな見た目に怯えながらも、私は何とか言葉を交わす。
相手が "モンスター" なら、魔女に変装した今の私が襲われることはないはずだ。
《『気にしてないよ。確かに奴はボクとそっくりだから、見間違えても無理はないさ』って言ってるワン》
「は!? 奴って、まさか……動く骨格標本は、別にちゃんといるってこと!?」
《『そうなんだ。奴はボクと違って理性が無いから、誰彼かまわず襲って来るんだ。気をつけて』って言ってるワン》
……嫌な情報を知ってしまった。
「しかし、見た目がそっくりとなると、ちと厄介だな。また此奴と見間違いかねん」
《『そうなんだよ。ボクもすっごく困ってるんだ』って言ってるワン》
確かに、敵と味方(?)の区別がつかないのは、困るよね……。
私はスケルトンの全身を眺め、しばらく考え込む。
「……そうだ!なら、見分けられるように、目印をつければいいんじゃない?」
ふと、そんなことを思いついた。
私は髪を結んでいたリボンを解き、スケルトンの頭にカチューシャのように巻きつけた。
仕上げに大きく蝶々結びを作れば完成だ。
……何だか、ものすごく罰当たりなビジュアルになってしまった気がするけど…… "モンスター" だから、まぁいいか。
「これなら確実に見分けがつくよ!」
スケルトンは、しばらく無言でリボンをいじっていたが、やがてパタパタと手を動かした。
《『ありがとう。長年の悩みが解決されたよ。お礼に "いいもの" をあげる』って言ってるワン》
スケルトンは一旦音楽室に引き返し、ピアノの所から何かの紙片を持って来た。
「これは……」
渡されたのは、チケットの破片のようだ。
文字の部分も切れてしまっているので、何のチケットなのかは分からないが……
「このタイミングで、チケットっぽいものを入手できたってことは……」
「これは、フェアウェルランド牢獄のパスの破片だな。千切れておるから、これだけでは使えぬが」
アッシュに見せると、予想通りの答えが返ってきた。
《これは、どうやら1/7に切断されているワン。この破片を、あと6つ集めるワン》
「うわぁぁ~……。やっぱり、そういうことかー……。肝だめしを再開して、この破片を集めなきゃダメなのかー……」
《 "肝だめし" じゃないワン。廃校探索だワン》
「同じことだよー。怖いことに変わりはないよー……」
しかも、破片が全部で7つというあたりが、何ともイヤな感じだ。
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