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第5部 新魔王と結婚なんて、お断り!
第37章 アリーシャ、新魔王の "変化" に驚愕する
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「ミクトラース・ベルドラント、ですよ。アリーシャ様」
いつの間にかそばに来ていた創君が、横からコソッと耳打ちしてくる。
「ああ、そんな苗字なんだっけ。何か、スカイの "おまけ" みたいな感じで魔王軍に入ってきた、黒幕かと思ったら、そうでもなかった人……?」
「大魔道士ですよ。今回のクーデターにも大きな役割を果たした、新魔王軍の幹部ですよ」
「そうなんだっけ。今までロクに顔合わせなかったし、黒幕は別の人だって言うし、影が薄いから、すっかり設定 "うろ覚え" だよ」
「ソレ、思ってても口に出さないでくださいよ!相手に聞こえますよ!」
創君のツッコミの方が、明らかに大きな声になってるんだけど……。
ミクトラースは、何も気にしていない態度で笑う。
「いえ、良いのですよ。私はあくまで影に徹する身。記憶から零れ落ちるくらいで丁度良いのです」
……聞こえてないから笑ってるのかと思ったら、しっかり聞かれてた。
なかなかのメンタルだな、この人。
「それよりも、魔王陛下。まさか、お義母上に諭されたからと言って、改革の理想を途中放棄したりなど、なさいませんよね?」
ミクトラースはブランに向かい、溜め息混じりに問いかける。
何だか "お義母上" というあたりに、やけに力を込めて言ってたけど……もしかして、ブランのシトリーンに対するこじれた感情に、気づいているのかな?
「ブラン!耳を貸さないで!コイツら、どうせ自分の利益しか考えてないわ!話し合いで解決するなら、双方とも被害が少なくて済むわよ!」
シトリーンが訴える。
ブランはしばらく冷徹な瞳で、ミクトラースとシトリーンを見比べていた。
そのうちに、自分の中で結論を出したようだ。
「ベルドラント、心配せずとも、魔界の改革をここで終わらせたりはせぬ」
その言葉に、シトリーンがあわてて口を開こうとする。
だが、それよりも早く、ブランがさらに言葉を続けた。
「だが、その手段は武力のみではない。まずは交渉し、それが決裂したなら、再び武を使う。兄が『魔王の座を返せ』と言うなら、結局は戦うことになろう」
言いながら、ブランはちらりとシトリーンに目をやる。
……さては、本当にシトリーンに弱いんだな。
「……困りますね。あなたには、魔王として戦っていただかねばならないのですが……」
少しも困っていなさそうな声音で、ミクトラースは言う。
「貴様の都合など知らぬ。クーデターでは世話になったが、貴様はあくまで私の臣下。魔王が臣下の言に従う謂れは無い」
だが、ブランの厳しい答えにも、ミクトラースは飄々とした態度を崩さない。
「いえいえ。従っていただかなければ困ります。これは、神の定めた筋書なのですから……」
「……え?」
台詞の後半、ミクトラースが意味ありげに、私と創君を見た気がした。
「従わぬと仰るなら、致し方ありません。あなたの中に流れる血を、利用させていただきます」
そう言った直後、ミクトラースの全身が白金の光を帯び始める。
その光は、彼の身体に沿って上へ上へと昇っていき……その頭上に光の輪を生み出した。
……まるで、天使の輪のようだ。
「ベルドラント!貴様、一体……ただの人間ではないな!?」
「ええ。そしてあなたも、ただの魔界人ではない。その身に流れる血の半分は、我らと同じものです」
ミクトラースがブランへ向け、手を差し伸べる。
すると、今度はブランの全身が白金に輝きだした。
「ぅ…………っ、うぅぅ……ッ!? これは……何だ……?」
ブランは苦悶の声を上げ、その場にくずおれる。
その長い髪が、見る間に色を変えていく。
漆黒から、白銀へ……。
身に着けた衣服の色さえ、黒から白へと変わっていく。
そして、うずくまったその背が、奇妙にボコボコ膨らみだした。
「グ……グオォォオォァァォッ……」
ブランは、もはや白目を剥き、意味ある言葉も発さない。
ボコボコした背の隆起は、さらに激しさを増し……ついには皮膚と肉とを突き破り、何かが外へと飛び出してくる。
飛び散る鮮血の間から現れ、大きく広がったそれは……
「これって…………翼?何でブランさんの背中に、羽根が……?」
「まさか……あの子の中に眠る堕天使の血が目覚めたの?」
シトリーンが震える声で呟くと、ミクトラースが笑ってそれを否定した。
「その言い方は、正確ではありませんね。目覚めたのではなく、私が目覚めさせたのです。堕天使としてではなく、そのさらに源たる天使として」
ブランは、一旦閉じていた瞳を、ゆっくりと開く。
その瞳の色も、血のような深紅から、空のような紺碧へと変わっていた。
白銀の長髪を揺らし、純白の衣をまとい、背に大きな翼を負ったブランは、どう見ても魔王ではなく "大天使" の佇まいだ。
その "大天使" が、厳かに唇を開く。
「……なるほど。今、全てを理解した。私の為すべきことは、天命に従うこと。前魔王および、人界の勇者と戦うことだ」
いつの間にかそばに来ていた創君が、横からコソッと耳打ちしてくる。
「ああ、そんな苗字なんだっけ。何か、スカイの "おまけ" みたいな感じで魔王軍に入ってきた、黒幕かと思ったら、そうでもなかった人……?」
「大魔道士ですよ。今回のクーデターにも大きな役割を果たした、新魔王軍の幹部ですよ」
「そうなんだっけ。今までロクに顔合わせなかったし、黒幕は別の人だって言うし、影が薄いから、すっかり設定 "うろ覚え" だよ」
「ソレ、思ってても口に出さないでくださいよ!相手に聞こえますよ!」
創君のツッコミの方が、明らかに大きな声になってるんだけど……。
ミクトラースは、何も気にしていない態度で笑う。
「いえ、良いのですよ。私はあくまで影に徹する身。記憶から零れ落ちるくらいで丁度良いのです」
……聞こえてないから笑ってるのかと思ったら、しっかり聞かれてた。
なかなかのメンタルだな、この人。
「それよりも、魔王陛下。まさか、お義母上に諭されたからと言って、改革の理想を途中放棄したりなど、なさいませんよね?」
ミクトラースはブランに向かい、溜め息混じりに問いかける。
何だか "お義母上" というあたりに、やけに力を込めて言ってたけど……もしかして、ブランのシトリーンに対するこじれた感情に、気づいているのかな?
「ブラン!耳を貸さないで!コイツら、どうせ自分の利益しか考えてないわ!話し合いで解決するなら、双方とも被害が少なくて済むわよ!」
シトリーンが訴える。
ブランはしばらく冷徹な瞳で、ミクトラースとシトリーンを見比べていた。
そのうちに、自分の中で結論を出したようだ。
「ベルドラント、心配せずとも、魔界の改革をここで終わらせたりはせぬ」
その言葉に、シトリーンがあわてて口を開こうとする。
だが、それよりも早く、ブランがさらに言葉を続けた。
「だが、その手段は武力のみではない。まずは交渉し、それが決裂したなら、再び武を使う。兄が『魔王の座を返せ』と言うなら、結局は戦うことになろう」
言いながら、ブランはちらりとシトリーンに目をやる。
……さては、本当にシトリーンに弱いんだな。
「……困りますね。あなたには、魔王として戦っていただかねばならないのですが……」
少しも困っていなさそうな声音で、ミクトラースは言う。
「貴様の都合など知らぬ。クーデターでは世話になったが、貴様はあくまで私の臣下。魔王が臣下の言に従う謂れは無い」
だが、ブランの厳しい答えにも、ミクトラースは飄々とした態度を崩さない。
「いえいえ。従っていただかなければ困ります。これは、神の定めた筋書なのですから……」
「……え?」
台詞の後半、ミクトラースが意味ありげに、私と創君を見た気がした。
「従わぬと仰るなら、致し方ありません。あなたの中に流れる血を、利用させていただきます」
そう言った直後、ミクトラースの全身が白金の光を帯び始める。
その光は、彼の身体に沿って上へ上へと昇っていき……その頭上に光の輪を生み出した。
……まるで、天使の輪のようだ。
「ベルドラント!貴様、一体……ただの人間ではないな!?」
「ええ。そしてあなたも、ただの魔界人ではない。その身に流れる血の半分は、我らと同じものです」
ミクトラースがブランへ向け、手を差し伸べる。
すると、今度はブランの全身が白金に輝きだした。
「ぅ…………っ、うぅぅ……ッ!? これは……何だ……?」
ブランは苦悶の声を上げ、その場にくずおれる。
その長い髪が、見る間に色を変えていく。
漆黒から、白銀へ……。
身に着けた衣服の色さえ、黒から白へと変わっていく。
そして、うずくまったその背が、奇妙にボコボコ膨らみだした。
「グ……グオォォオォァァォッ……」
ブランは、もはや白目を剥き、意味ある言葉も発さない。
ボコボコした背の隆起は、さらに激しさを増し……ついには皮膚と肉とを突き破り、何かが外へと飛び出してくる。
飛び散る鮮血の間から現れ、大きく広がったそれは……
「これって…………翼?何でブランさんの背中に、羽根が……?」
「まさか……あの子の中に眠る堕天使の血が目覚めたの?」
シトリーンが震える声で呟くと、ミクトラースが笑ってそれを否定した。
「その言い方は、正確ではありませんね。目覚めたのではなく、私が目覚めさせたのです。堕天使としてではなく、そのさらに源たる天使として」
ブランは、一旦閉じていた瞳を、ゆっくりと開く。
その瞳の色も、血のような深紅から、空のような紺碧へと変わっていた。
白銀の長髪を揺らし、純白の衣をまとい、背に大きな翼を負ったブランは、どう見ても魔王ではなく "大天使" の佇まいだ。
その "大天使" が、厳かに唇を開く。
「……なるほど。今、全てを理解した。私の為すべきことは、天命に従うこと。前魔王および、人界の勇者と戦うことだ」
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