囚われの姫は嫌なので、ちょっと暴走させてもらいます!~自作RPG転生~

津籠睦月

文字の大きさ
150 / 162
第5部 新魔王と結婚なんて、お断り!

第37章 アリーシャ、新魔王の "変化" に驚愕する

しおりを挟む
「ミクトラース・ベルドラント、ですよ。アリーシャ様」
 
 いつの間にかそばに来ていた創君ユースが、横からコソッと耳打ちしてくる。
 
「ああ、そんな苗字なんだっけ。何か、スカイの "おまけ" みたいな感じで魔王軍に入ってきた、黒幕かと思ったら、そうでもなかった人……?」
 
「大魔道士ですよ。今回のクーデターにも大きな役割を果たした、新魔王軍の幹部ですよ」
 
「そうなんだっけ。今までロクに顔合わせなかったし、黒幕は別の人だって言うし、影が薄いから、すっかり設定 "うろ覚え" だよ」
 
「ソレ、思ってても口に出さないでくださいよ!相手に聞こえますよ!」
 
 創君ユースのツッコミの方が、明らかに大きな声になってるんだけど……。
 
 ミクトラースは、何も気にしていない態度で笑う。
 
「いえ、良いのですよ。私はあくまで影にてっする身。記憶からこぼれ落ちるくらいで丁度ちょうど良いのです」
 
 ……聞こえてないから笑ってるのかと思ったら、しっかり聞かれてた。
 
 なかなかのメンタルだな、この人。
 
 
「それよりも、魔王陛下。まさか、お義母はは上にさとされたからと言って、改革の理想を途中放棄とちゅうほうきしたりなど、なさいませんよね?」
 
 ミクトラースはブランに向かい、め息混じりに問いかける。
 
 何だか "お義母上" というあたりに、やけに力を込めて言ってたけど……もしかして、ブランのシトリーンに対するこじれた感情に、気づいているのかな?
 
「ブラン!耳を貸さないで!コイツら、どうせ自分の利益しか考えてないわ!話し合いで解決するなら、双方とも被害が少なくてむわよ!」
 
 シトリーンが訴える。
 
 ブランはしばらく冷徹れいてつな瞳で、ミクトラースとシトリーンを見比べていた。
 そのうちに、自分の中で結論を出したようだ。
 
「ベルドラント、心配せずとも、魔界の改革をここで終わらせたりはせぬ」
 
 その言葉に、シトリーンがあわてて口を開こうとする。
 だが、それよりも早く、ブランがさらに言葉を続けた。
 
「だが、その手段は武力のみではない。まずは交渉し、それが決裂したなら、再び武を使う。兄が『魔王の座を返せ』と言うなら、結局は戦うことになろう」
 
 言いながら、ブランはちらりとシトリーンに目をやる。
 
 ……さては、本当にシトリーンに弱いんだな。
 
 
「……困りますね。あなたには、魔王として戦っていただかねばならないのですが……」
 
 少しも困っていなさそうな声音で、ミクトラースは言う。
 
「貴様の都合つごうなど知らぬ。クーデターでは世話になったが、貴様はあくまで私の臣下。魔王が臣下のげんに従ういわれは無い」
 
 だが、ブランのきびしい答えにも、ミクトラースは飄々ひょうひょうとした態度をくずさない。
 
「いえいえ。従っていただかなければ困ります。これは、の定めた筋書シナリオなのですから……」
 
「……え?」
 
 台詞せりふの後半、ミクトラースが意味ありげに、私と創君ユースを見た気がした。
 
「従わぬとおっしゃるなら、いたかたありません。あなたの中に流れるを、利用させていただきます」
 
 そう言った直後、ミクトラースの全身が白金の光をび始める。
 
 その光は、彼の身体からだ沿って上へ上へとのぼっていき……その頭上に光のリングを生み出した。
 
 ……まるで、天使の輪のようだ。
 
「ベルドラント!貴様、一体……ただの人間ではないな!?」
 
「ええ。そしてあなたも、ただの魔界人ではない。その身に流れる血の半分は、我らと同じものです」
 
 ミクトラースがブランへ向け、手を差し伸べる。
 
 すると、今度はブランの全身が白金に輝きだした。
 
「ぅ…………っ、うぅぅ……ッ!? これは……何だ……?」
 
 ブランは苦悶くもんの声を上げ、その場にくずおれる。
 
 その長い髪が、見る間に色を変えていく。
 
 漆黒から、白銀へ……。
 
 身に着けた衣服の色さえ、黒から白へと変わっていく。
 
 そして、うずくまったその背が、奇妙にボコボコふくらみだした。
 
「グ……グオォォオォァァォッ……」
 
 ブランは、もはや白目をき、意味ある言葉も発さない。
 
 ボコボコした背の隆起りゅうきは、さらに激しさを増し……ついには皮膚ひふと肉とをき破り、何かが外へと飛び出してくる。
 
 飛び散る鮮血の間から現れ、大きく広がったそれは……
 
「これって…………翼?何でブランさんの背中に、羽根が……?」
 
「まさか……あの子の中に眠る堕天使の血が目覚めたの?」
 
 シトリーンが震える声でつぶやくと、ミクトラースが笑ってそれを否定した。
 
「その言い方は、正確ではありませんね。目覚めた・・・・のではなく、私が目覚めさせた・・・・・・のです。堕天使としてではなく、そのさらに源たる天使・・として」
 
 ブランは、一旦いったん閉じていた瞳を、ゆっくりと開く。
 
 その瞳の色も、血のような深紅から、空のような紺碧こんぺきへと変わっていた。
 
 白銀の長髪を揺らし、純白の衣をまとい、背に大きな翼を負ったブランは、どう見ても魔王ではなく "大天使" のたたずまいだ。
 
 その "大天使" が、おごそかに唇を開く。
 
「……なるほど。今、全てを理解した。私のすべきことは、天命に従うこと。前魔王および、人界の勇者と戦うことだ」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

男装して過ごしてたら、学園内でも札付きの悪で有名な男子に顔面殴られて、更に女だとバレて責任取るって土下座された話

一樹
ファンタジー
タイトル=あらすじ、です。 つまりはそういう内容です。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」 魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。 ――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。 「ここ……どこ?」 現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。 救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。 「ほら、食え」 「……いいの?」 焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。 行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。 旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。 「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」 「ウチの子は天才か!?」 ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。 これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。 ※若干の百合風味を含みます。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...