囚われの姫は嫌なので、ちょっと暴走させてもらいます!~自作RPG転生~

津籠睦月

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第5部 新魔王と結婚なんて、お断り!

第41章 アリーシャ、透明人間になる

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 創君には雑学マニアのがあった。
 
 学校のテストにはまるで役立たない知識を集めて、一人喜んでいる所があった。
 
 そしてその雑学趣味は、当たり前のように自作ゲーム――特に技名のネーミングなどに影響していた。
 
 
「 "色無き風" は秋の季語フォール・カラーズ・ウィンド!」
 
 アフロ中尉が拳で空を切ると、ブワッと風が巻き起こる。
 
 風は幾筋いくすじにも分かれて私たちにぶつかり、それぞれの色を吹き飛ばす・・・・・・・
 
「相手の色を無きものとし、無色透明に変えてしまう魔法……本当にあったのね」
 
 一見何も無い空間から、ヴィヴィアンヌの声が聞こえる。
 
 
 ……それにしても創君、俳句好きなわけでもないのに、謎な知識が豊富だったな。
 
『ちなみに "猫の恋" は春の季語なんだぜ』
 
 ……なんて、さらなる豆知識まで披露ひろうしてくれてたし……。
 
 
「気をつけろ。透明になったら、互いの姿も見えないからな。うかつに動くと味方にぶつかるぜ」
 
 アフロ中尉の注意に、私はウンウンとうなずく。
 
 そうだよね。気をつけないと。
 ……って言っても、何をどう気をつけたらいいんだろう?
 
「……んピャッ!? 今、誰か、私のお尻さわった!?」
 
「す、す、すみません!ぶつからないようにと手探てさぐりしていたら、偶然ぐうぜん……。わざとではありませんので!」
 
 ……その声は、レッドか。
 
 真面目なレッドなら、本当に偶然だったんだろうな。
 
「……チッ。物語の "主役" にラッキースケベが起こりやすいのはお約束か……っ」
 
 近くから、舌打ちとひとり言が聞こえる。
 どうやら創君ユースもそばにいるようだ。
 
「ラブコメしてる場合じゃないわよ!魔法の効果が切れる前にヤるわよ!」
 
 怒声とともに、け出していく足音が聞こえる。
 あの声は、シトリーンだ。
 
「私たちも行こう!」
 
 レッドと創君ユースに呼びかけ、ブラン目がけて走り出す。
 
 
「てぇい!」
 
 気合いとともに剣を振る。
 
 さっきの総攻撃の時、何割かの攻撃は防御されてしまったけど……さすがに透明人間の見えない攻撃は防ぎようがないらしい。
 
「……クッ」
 
 ブランの服は見る間にボロボロになっていき、その下の肌にも血がにじむ。
 
「……見えないからと調子に乗るな!攻撃されれば、そこにいると嫌でも分かるぞ!」
 
 見えない誰かが攻撃した直後、ブランはその攻撃が来た方へ向け反撃カウンターした。
 
「ぅあ……ッ!」
 
 短い悲鳴が上がる。
 
 そして、何も無いように見えた空間に、突然レッドの姿が現れた。
 
「気をつけな!俺の魔法は、相手の攻撃を一撃でも喰らうと解けちまうぜ!」
 
 アフロ中尉が叫ぶ。
 
「ちょっとぉ~!そういうコトは、もっと早く言って欲しいわ~……って、きゃっ!?」
 
 今度はヴィヴィアンヌが攻撃されて姿を現す。
 
「お前ら、うかつに声出すんじゃねぇ!声の方向で居場所がバレるぞ!」
 
 アフロ注意は叫びながらも、ひらりひらりとブランの攻撃をかわしているようだ。
 
 さすがは軍団長レベルの伝説の中尉……。実力は本物なんだな。
 
 
「……全く、まだるっこしい。姿が見えずとも、これならけられまい」
 
 ブランは動きを止め、すっと右手を上げた。
 
 あの体勢は、まさか……
 
千の十字サウザンド・クロス
 
 幻の南十字星が輝いたかと思うと、再び私たちを無数の光が襲った。
 
「ぅきゃ……っ」
 
 思わず悲鳴を上げ、うずくまるが……
 
 ……アレ?さっき受けた時よりは、痛みが少ないような……?
 
 
「こんな攻撃、奈落の底にはじき落としてやるぜェ」
 
 おそるおそる顔を上げると、無数の傷を負い、姿もあらわとなったアフロ中尉が、獰猛どうもうな笑みで拳を振るっているのが見えた。
 
 その拳に当たった十字の光は、花火のように光り弾けて消えていく。
 
「攻撃を、相殺そうさいしてる……?そんなことまでできちゃうの?」
 
「一度受けた攻撃は、ある程度見切れるからな。だが、全部を防ぐのは無理だったな」
 
 アフロ中尉の視線を追って辺りを見渡すと、シトリーンも創君ユースも攻撃が当たって透明化が切れてしまっている。
 
 もちろん、私もだ。
 
「そして、すまねぇ。力を使い過ぎたようだ。もっと暴れたかったのによ……」
 
 最後まで戦闘への未練をのぞかせながら、アフロ中尉の姿が消えていく。
 
「あ……っ」
 
 お礼を言うひまも無かった。
 
 しいけど、彼の言う通り "力を使わせ過ぎた" から、仕方がないのかも知れない。
 
 
「頼みの綱は消えてしまったようだな。これでもう、お前たちの勝機は……」
 
 ブランが勝利を確信して高笑いしようとする。
 
 ……が、途中で何かに気づいたのか、いぶかしげな顔で私たちの人数を数え始めた。
 
「……数が足りんな。お前たち、エクスカイゼル・キングフィッシャーはどこに……」
 
「僕ならここだ。SHIRO!ブラックを拘束こうそくしろ!」
 
《了解だワン!》
 
 ブランの背後から声がする。
 
 そして、あやしげな機械音とともに、ブランの四肢が "見えない何か" にいましめられていく。
 
「クッ……何をする!放せ!」
 
「大天使様の極大攻撃も、飛ばせる方向は限られているようだな。おかげで、後ろにいた僕は全くの無傷だ」
 
 透明魔法の効果が切れてきたのか、スカイと白兵衛の姿が徐々じょじょに現れてくる。
 
 ……って言うかブラン、なかなか見た目にエグい拘束のされ方してるな……。
 
 まさか、手足をつかまえているマジックハンドが、白兵衛の口から出ているなんて……。
 
「SHIRO、ブラックを座らせろ」
 
 白兵衛に命じ、ブランを床に座らせると、スカイはブランの正面に回り、持っていた竜血酒のコルクせんを口で開けた。
 
 片手でブランのあごを固定し、だまって身を寄せていくその様には、言いようのない独特な空気が漂っていて……私は何だか、見てはいけないものを見ているようなドキドキを感じてしまった。
 
 ……え?まさか、口移しで飲ませるとかじゃ、ないよね……?
 
 
「ホラ飲め!さっさと元に戻るんだ!……全く、僕より年上なくせに、世話の焼ける王様だな!」
 
 …………違った。
 
 コレは、アレだ。"飲み会で絶対やっちゃいけない強引な飲ませ方" の方だ。
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