田舎生まれの聖気士譚

尾山塩之進

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第十九話 砂漠の主

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 惑星イザナミにおける大陸のひとつ、イヨノフ大陸にあるアロード国。
その領内を西へと進み、ガリンの大森林と呼ばれる広大な森林地帯を超えて更に西に進むと、広大な砂漠地帯がある。
ここを超えればアロード国の隣国、グレプカ王国である。
ヴァルカリア陽国に分け入って陽国の中心である元帝都ガイゼルへ直接向かう最短のルートは取らず、ヴァルカリア陽国の隣国を経由しながら最もガイゼルに近い所まで着実に進み、ヴァルカリア陽国の大戦力との衝突をなるべく回避するというのが、冒険者ギルド・アースガルフのギルドマスター、リフィルの考えた進行航路であった。

 アロード国とグレプカ王国の国境にある広大な砂漠を進む移動式冒険者ギルド・アースガルフ。
高さ10メートルの汎用人型兵器”サイドアーマー”を5機も格納してもまだ余りある巨大なホバーシップである。
その大きさに見合ったサイズのジェットホバーエンジンがごうと音をたてて無限に続く灼熱の虚空と砂の大地に鳴り響く。

「うーん、ここに何かあると思うんだよねー」

 栗色の髪を二つに結い上げて、その間にギルドマスターの証のプレートを付けた小さな帽子をちょこんと乗せた、まだ幼さの残る可愛らしい少女。
リフィル=ア-スガルフは移動式冒険者ギルド・アースガルフの船内のとある区画の壁と船のマニュアルを見比べながら唸っている。

「リフィルちゃん、どうしたの?」

 長く綺麗な金髪に、愛らしい顔立ち。手足は長く全体的に引き締まりながらも女性として恵まれた身体の少女。
人が持つ潜在的な力”気”を自由自在に使いこなす存在、”気士(きし)”の中でも稀有な”聖なる気”を持つ聖気士(せいきし)、ファージア=セントニアは船内の壁の前で悩んでいる少女に話しかけた。

「あっファージアさんこれ見てください!これはこの船…ホバーシップをアイマスター通販で購入した時に同封されていた、この船のマニュアルと船内図なんですけど、ここの区画に何も書かれていないところがあるんだよねー、
機関部分でも無いし気になるんですよね、そもそもこの船、船内図よりも実寸は”ちょっと大きい”みたいなんだよー」

「前にリフィルちゃん、この船の前のオーナーさんが色々後付けしたって言ってたけどぉ、その関係という事は無いのかなぁ?」

「確かにそれはありそうですけどねー、あたし船も機械もあんまり詳しくないですからねー、詳しい人が居てくれたらなー」

「リフィルどうしたあ?何か困りごとか?」

 歴戦の戦士と思わしき顔つき、だが人情味を感じさせる明るい表情、顔に刻まれたしわからその歳は老人の域に入っているがそれを全く感じさせない筋肉隆々の巨躯。
リフィルの祖父でサイドアーマー乗りの冒険者チーム・ガイル団の団長を務めるガイル=アースガルフは孫娘に話しかける。

「ガイルお爺ちゃん!実はねー…」

 リフィルは事情を話した。

「なるほどなあ…おいエドガン?お前たしか前に軍の船に乗っていたことがあったから、わかるんじゃねえのか?ちょっと見てやってくれや」

 ガイルはガイル団の団員の一人でサイドアーマーのパイロット兼メカニックのエドガンに問いかける。

「了解だぜ団長、リフィルお嬢ちゃん、ちょっとそのマニュアル借りるよお。どうれ…ふうむ、これは…なるほどなるほど…」

 ガイルと並ぶ筋肉隆々の巨躯の爺であるエドガンは、自分の情報端末にマニュアルデータを取り込むと次に船内の壁と情報端末をコードで繋いで凄いスピードで解析を始めた。

「ようし、これだ!」

 エドガンが情報端末の決定キーを押すと船の内壁の一部が開いて隠された通路が現れた。

「何これぇ!?」

 リフィルは驚きの声を上げた。
隠された通路の先には広い空間が広がっていてそこには巨大な砲が格納されていた。

「360ミリ砲口マルチカノンだなあ…主装備は光線(ビーム)だが、徹甲弾、炎焼弾、雷撃弾にも換装可能で様々な戦況に対応出来る。リフィルお嬢ちゃん、これは正規軍の戦艦で使われている立派な主砲だぜえ」

「エドガンお爺ちゃん、こういう主砲って民間船に後付けできるものなの?」

「軍船と民間船じゃあフレームの硬さが段違いだからそれは無理だろうなあ…そもそもこの船は最初から軍船なんじゃないのかい?
儂が最初に乗った時、確かに外側も中も民間船のそれだが、軍船特有のフレームの骨太さを感じたからなあ…」

「最初から軍船!?…そういうことかー!ねえエドガンお爺ちゃん!この、船内図よりも実寸の”ちょっと大きい部分”はどうなってるかわかるー?」

「どれどれ…ふうむ、これは、ここがこうだから、ここをいじってやれば、よし、これで実際のデータが出たぜ、
中に150ミリ砲口カノンがいくつかあるなあ…これはHクラスの軍船じゃあ主砲クラス、戦艦なら副砲だねえ、他にも誘導弾発射管とかの装備もあるみたいだぜ?」

「これも民間船に後付けできるものじゃないってことになるのかなー?」

「砲の設置は船のフレームの硬さに直結するから…民間船じゃあ無理だなあ」

「エドガンお爺ちゃん、もう少し付き合ってもらってもいいかなー?船内を全部見て診たいんだー」

「ああ、儂は良いけど、団長?構いやしませんかい?」

「構やしねえよ、エドガン、仕事増やしてすまねえが、ちぃとリフィルに付き合ってやってくれやなあ」

「了解だぜえ団長!」

リフィルとエドガンはマニュアルと情報端末を見ながら船内のあちこちを調査、解析を始めた。






 砂漠の夜が明けた。夜間は停泊していた移動式冒険者ギルド・アースガルフは再びジェットホバーエンジンを噴かせて浮上、航行を開始した。

「リフィルちゃん、朝イチでアースガルフ全員集合って艦内放送が有ったから急いで来たけど、何かあったのぉ?」

「ふああああ、おいリフィル、ワシは朝はあんまり強くねえからなあ…なるべくならあ寝かしてほしいんだが」

「…リフィル=アースガルフ、何があった?」

 髪は綺麗な銀髪、端正な顔立ちに感情を見せない氷の様な表情、引き締まった長身の身体。
”聖なる気”を持つ聖気士(せいきし)とは対極の位置にある、”魔なる気”を持つ魔気士(まきし)、ユーリル=イブルクロスは自分が所属するギルドマスターの少女に問いかける。

「一体どうしたんだよお?リフィルお嬢ちゃあん?」

 ガイル団のメンバーであり、団長のガイルに並ぶ屈強な巨躯の老年の3人の男たちは自分達のリーダーの孫娘であり所属するギルドマスターの少女に一斉に問いかけた。

「アースガルフのみんな、朝早くから、移動式冒険者ギルド・アースガルフの艦橋に集まってくれてありがとう、だよー。
先日からあたしたちの新しいホームになったこの船について、重要な訂正があったのでギルドマスターとして、メンバーのみんなにお話を聞いてもらいたいと思うんだー。
ここは論より見るが易しと言う奴だよね、エドガンお爺ちゃん、アレを起動してみんなに見せてみてよー」

「了解、リフィルお嬢ちゃん、メインコンソール起動!」

 エドガンが操縦室のパネルを開けて中のスイッチを押すと、
船の操縦コントロールのいかにも民間船というシンプルでスマートなコンソールが奥に引っ込んで、替わりに複雑で無骨な感じのコンソールが飛び出してきた。
リフィルは後から出てきたほうのコンソールを操作する。

「これはねー、ぱっと見この船が民間船だと思わせるための仕掛けなんだよねー。
このがっちりした造りのコンソールでこの船の”本当の操作が”できる様になるんだよー。
アースガルフのみんな、正面のメインモニターにこの艦の外の主要部分を艦外カメラで撮って分割で表示するから見てて、エドガンお爺ちゃん、アースガルフ偽装解除!本来の姿に戻すよー!」

「リフィルお嬢ちゃん、了解だぜ」

 エドガンが自分の目の前のコンソールを迅速に操作する。

 プー!プー!という警告音とともにアースガルフの外側の民間船の形をした船腹の各所が割れて、変形し、まるで軍艦の様な形に変貌した。
そして戦艦の主砲として使われている360ミリ砲口マルチカノン、副砲として使われる150ミリカノン、そして誘導弾発射管など様々な武装が展開している。

「この船…民間のホバーシップに軍船マニアの前のオーナーが軍船の装備を色々後付けしたものが通販で格安で売られていたのを買ったと、前にあたしは言いましたけど…民間船と言うのは、あれは嘘だッ!
…あたしもすっかり騙されましたよー!
購入時に付いていた操縦マニュアルと船内図は確かに民間船のホバーシップのものだったけど、その船内図に書かれていない区画があったり外側の実寸が違ったりするんだよね…。
実際、船内の見えない所にマニュアルには無い装備がいっぱいあって、昨日一日エドガンお爺ちゃんと船内をくまなく調べてみて、この船の本当の事がわかったんだ。
つまり!この艦は民間のホバーシップに軍船の装備を後付けしたものではなく!軍船の周りに民間船の皮をかぶせてその間に軍船の装備を隠してある船だったんだよーー!!」

「な、何だってえええーーー!!!」

 驚きの声を上げるガイル団の面々。

「…なんでそんな手間がかかることしてやがるんだあ?そもそもなんでそんな船が民間の通販会社で売られているんだよお?」

「団長、この船は全体サイズをコンパクトにして小回りが利くようにして、かつアーマーを五機も収納出来て、戦艦の主砲をも設置している攻撃的な武装で、
主機関のジェットホバーも高いパワーのモノという、軍船としてはかなりマニアックで軍からはもとっくに退役している筈のヒユウガ型強襲揚陸戦艦を改造してあるみたいなんだ。
この船の前のオーナーがよっぽどヒユウガ型に思い入れがあって、廃艦になるのが忍びなくて、この様な形にして残したかったんじゃないかとメカニックの儂の目からは思えるんだよ。
何にしろこの船、端からは端まで丁寧に整備されていたぜ。隠されていた武器の弾もちゃあんと装填されていた。見えない部分まで綺麗にしておくなんて並大抵じゃねえぜ。
それに少しでも高く売りたいのなら武器はバラ売りしたほうがいいからなぁ。何らかの理由で売るはめになったけど、このままの形で誰かに使ってほしくて、こんな形で売ったんじゃないかと儂は思うぜ」

「前のオーナーさんの真意は今となっては誰にもわかりませんけど、
この船の持つ能力自体は凄いです!しかもこんな格安でですよ!そしてヴァルカリア陽国へ向かうあたしたちアースガルフにとってはまさに渡りに船と言う奴です!船だけに!
なので、前のオーナーさんの心意気と言うか、後のオーナーに託した気持ちと言うのを、あたしはありがたく受け取りたいと思います!大切に有効に使わせてもらいますよー!」

「リフィルお嬢ちゃん、それなら前のオーナーも感無量だと思うぜえ」

「それで、民間船なら自動操縦も合わせてあたし一人でも動かせると思ったんだけど、軍船だと一人じゃどうしても無理なんだよねー、
そこで船に詳しいエドガンお爺ちゃんに艦橋員として手伝って欲しいんだけど、エドガンお爺ちゃん、ガイルお爺ちゃん、ガイル団と兼任で良いんだけど駄目かな?
あ、もちろん艦橋員のお給料はあたしから別に出すよー。今から新しく人を雇うのにも、あたしたちの向かう先的には難しいからねー」

「ガハハ!兼任なんだろお、なら構やしねえんじゃねえか?エドガンはどうだ、やれそうかい?」

「儂もリフィルお嬢ちゃんよりは幼いけど孫娘がいるんで…頼まれたら引き受けるわけにはいかないですなあ。まあ団長、任しといてくださいや!」

「やったーありがとうー!ガイルお爺ちゃん!エドガンお爺ちゃん!」

 リフィルは筋肉隆々の二人の爺に抱き着いて感謝した。

 三人のやり取りを見て家族っていいなあ…と思うファージア。
お父さん、お母さん元気かなぁ…。彼女の脳裏に両親のことが思い浮かんだ。


 突如どがん!凄まじい音がして衝撃が艦全体を揺らす。

「な何っ?何なのーー!?」

「リフィルお嬢ちゃん!船底に”何かが当たった”みたいだぜえー!」

「ええー!?この船って砂漠の上を高さ10メートル浮いてレーダーで地形を確認しながら航行してるんだよー!それで船底に何かに当たるなんてことは…?
エドガンお爺ちゃん、至急ぶつかった部分の損傷確認とぶつかったモノを確認して!」

「損傷は特に無し、ぶつかった奴の画像を出すぜえ!」

 艦橋のモニターにサイドアーマーを上回る大きさの土気色の長く太い生き物が身体をうねらせて船の真下でうごめいている映像が映し出される。

「これは…砂漠に住む怪物、巨長砂虫(サンドワーム)!?航行する船に巻き付いて沈めてからその船の中の物資やエネルギーそして人といった”あらゆる水分”を吸いつくす恐ろしい怪物だよー!」

「リフィルちゃん、わたしが気鋼武装して出るよ!」

「待って下さいファージアさん!これぐらいの危機にいちいち気士の力に頼っていては、これからヴァルカリア陽国へ向かおうとするのに埒があきません!
ここはこの船の能力を試すという面でもあたしに任せてはもらえないでしょうか?」

「リフィルちゃんが自信たっぷりにそう言うのならお任せするよぉ、でも危なそうだったらすぐ助けに入るからね」


「エドガンお爺ちゃん、対怪物仕様の汎用煙幕を船底に噴射して!目が無い巨長砂虫だけど鼻が利くから煙幕の強烈な匂いで攪乱できる筈だよ!」

「了解、煙幕噴射あ!」

 アースガルフの船底からすさまじい勢いで煙幕が噴射され巨長砂虫の全身を覆った。
のたうちまわる巨大蚯蚓。

「機関のジェットホバーエンジン加速、高速航行して巨長砂虫から離脱後、そのまま船体を360度回頭して巨長砂虫を主砲の砲撃範囲に合わせるよ!
アースガルフのみんなは船内の固定ベルトを使うか手すりにしっかり捕まってねー!」

 移動式冒険者ギルド・アースガルフは、今ここに強襲揚陸戦艦アースガルフとなって戦闘機動を開始する。

「エドガンお爺ちゃん、主砲を目標に合わせー!」

 船体上部中央の360ミリマルチカノンが回頭し眼下の巨大な蚯蚓に照準を合わせる。

「リフィルお嬢ちゃん、照準セット、いつでもいいぜえ」

「360ミリ砲口マルチカノン…てえいーー!」

 大口径の光線砲が巨長砂虫に直撃、その身体を粉々に撃ち砕く。

 どごおん!と幾つも音がして船の周りに多数の土煙があがった。
先程よりは小ぶりの巨長砂虫が多数這い出してきて船の周りを取り囲む。

「団体さんでしたか!エドガンお爺ちゃん、副砲を巨長砂虫群に合わせー!」

 アースガルフの船体の左右横腹に展開する副砲が巨大な蚯蚓の群れをその照準に捉える。

「リフィルお嬢ちゃん、照準セット、いつでもいいぜ!」

「150ミリ砲口カノン一斉射!てえいーー!」

 複数の光線砲が一斉に撃たれ巨長砂虫の群れに突き刺さり、粉々に撃ち砕いていく。

 どごおおん!今迄の比ではない大きな音と共に大きな砂煙が上がり、これまでとは段違いの大きさの巨大な巨長砂虫が船の進む先に立ち塞がる。

「おいリフィル、こいつは今までの巨長砂虫より段違いにでかいぞお!?この砂漠の主かあ?」

「リフィルちゃんっ!?」

「問題ないですよ!エドガンお爺ちゃん、下部ジェットホバー最大噴射、高さ100メートルまで急速上昇して巨長砂虫の攻撃範囲の外に出ます!」

「了解だぜ!」

「アースガルフ、目標に対して急速右旋回、傾斜角度45度のまま飛行して、主砲、副砲、合わせー!」

「リフィルお嬢ちゃん、照準セット、いいぜえ!」

「360ミリ砲口マルチカノン…てえいーー!続いて150ミリ砲口カノン一斉射!てえいーー!」

 大口径の光線砲が巨大な巨長砂虫に直撃、続けて複数の光線砲が次々と突き刺さる。
しかし巨大な巨長砂虫の恐ろしく硬い皮膚はその光撃のことごとくをはじき返した。

「リフィルちゃん、わたし、出るよ!」

「…待て、ファージア=セントニア」

 ユーリルは氷の表情を崩さないまま、彼女を制止する。

「ユーリル?でも!」

「…リフィル=アースガルフには何か手がある様だ、ここは彼女に任せよう」

「ありがとうユーリルさん!エドガンお爺ちゃん、主砲の装備変更、氷結弾装填、主砲合わせー!」

「装備変更完了、装填完了、照準セット、いつでもいいぜえ!」

「まだ!充分目標を引き付けて…引き付けて…いま!360ミリ砲口マルチカノン、てえいーー!」

 白色の弾頭が巨大巨長砂虫の身体に突き刺さる。そこから凄まじい冷気が爆発的に広がって巨長砂虫の身体を氷漬けにした。

「キシャアアアアア」

 凄まじい声を上げて巨大巨長砂虫はのたうちまわるとあっと言う間に砂の中に潜り、アースガルフの前から完全に姿を消した。

「やっぱり、あの皮膚は熱に対する耐性はありそうだったけど、逆の冷気に対する耐性は無かったみたいだねー。
いきなりすごい冷たいのが来たのでびっくりしたと思うよー。
別に討伐の依頼を受けているわけでもないし、ここは追っ払うだけで大勝利だよー!」

 両腕を高々と掲げて満面の笑顔で勝利宣言をするリフィル。

「エドガンお爺ちゃんありがとうー、お爺ちゃんがいなかったら、とてもじゃないけどこんなにスムーズにこの船を動かせなかったよー」

「儂はリフィルお嬢ちゃんのいう通り動かしただけさあ、しっかしリフィル嬢ちゃんの操船の指示のセンスはすげえと思うぜ。
流石団長の孫娘というか、アースガルフのギルドマスターだけのことはあるなあ」

「そんなことはないよー、あたしは出来るだけのことを力いっぱいやっただけだし、もうひろうこんぱいヘトヘトだよー、
あっそういえばユーリルさん!さっきあたしが巨長砂虫に対抗する手だてがあるって事がよくわかりましたねー」

「…リフィル=アースガルフ、あの時の貴様の眼差しは敵の硬さを目しても全く戦意は衰えていなかった…ならばそうだろうと信じたまでだ」

「ふーん…あたしのこともよく見てるってことなんですねー、ユーリルさん女の子の気持ちは解らないけどそういうところは解るんですねー!
…そういうの女の子に勘違いをさせちゃうからあんまりしない方が良いですよ?」

「…?」

「はあ…ファージアさんの気持ちがちょっとわかった様な気がします…大変ですねーファージアさん」

「…うん?リフィルちゃん?」


「…そうだ、リフィル=アースガルフ、そしてアースガルフの皆、私は言っておきたいことがあるのだが…聞いてもらっても良いだろうか?」

「何ですかユーリルさん、急にどうしたんですー?何か改まってますね?あたしたちはアースガルフのかけがいのない仲間なんですよー。遠慮なく言って下さいね!」


「…そうか、なら遠慮なく言わせてもらおう…私はアースガルフを降りようと思っている」

彼はいつも通りの氷の表情を崩さぬまま淡々と言葉を述べた。
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