弱くてすみません~偽認定された夫婦の冒険記~

にしのみつてる

文字の大きさ
21 / 28
第2章

レベリング再開 ~えっ、まさかのログハウスのカタログ発見!!~

しおりを挟む
 翌朝……

 ピピピ、ピピピ、ピピピ、タブレットのアラーム音でマリオとリカコは目覚めたのだった。

「リカコ、おはよう」
「マリオさん、おはよう」

「ウリエル、今朝は早いね」
「はい、レベリング再開ですので。ヒカルさんとミチルさんもそろそろ起きてくるはずです」

「なお、食事は転移門をこの家に固定しておいてリコマ山から移動できるようにすれば時短になります」
「ウリエル、今日は効率重視だね」

「ヒカル、ミチル、おはよう、朝の瞑想はやった?」
「マリオさん、朝も瞑想をするのですか?」
「そうだよ」

「ヒカル、当たり前よ、二人の魔力が安定するし……誰よりもミチルさんが好きでしょ?」
「リカコさん、いきなり核心ですか……」

「ヒカルとは……結婚するつもりです」
「それならいいわ」
 ミチルは真っ赤な顔でリカコの質問に答えた。

「さぁ、今日はどんな冒険が待っているかな?」
 マリオが勢いよく転移門を開けると、朝の霧がまだ尾根に残るリコマ山の空気が部屋に入ってきた。  
 木々の間から差し込む光が、湿った地面を照らしていた。マリオたちは、ウリエルから聞いた次の洞窟の前に立っていた。

「この洞窟は、コボルトの群れが出るはずです」
 ヒカルとミチルは、準備運動をしながら、互いに目を合わせた。

「ヒカル、火魔法で先制攻撃して」
「うん、まかせて、ミチルは氷魔法のアイスバレットは使える?」
「大丈夫よ」

 ──次の瞬間、茂みからコボルトの群れが飛び出した。  
 30体の小型魔物が、牙を剥きながら突進してくる。

「ストーン・バレット」
 バシュ、バシュ、バシュ、ギャン、ギャン、ギャン、
 ヒカルの土魔法の弾が、散弾銃の弾のように広がって前列のコボルトを次々と倒していった。  

 ミチルはすかさず、援護に入った
「アイスバレット」
 バシュ、バシュ、バシュ、ギャン、ギャン、ギャン……コボルトたちは次々と倒れていった。

「コボルト30体、撃破確認です」
 ウリエルの声が静かに響いた。マリオは参戦せず今回は回収役に徹していた。

「ヒカル、ミチル、隣の洞窟へ急ごう」
「「はい」」

「マリオさん、サーペントです!」
 地面が揺れ、巨大な蛇型魔物が、岩陰から姿を現した。  
 
「アイス・スピア!」
 ミチルの氷の槍が空中に浮かび、サーペントの頭を貫く。  
 動きが鈍ったところへ、ヒカルがサーペントの目にファイアーアローを放った。

 氷と火の矢を受けて、サーペントは悲鳴を上げてのたうち回った後、静かに絶命した。

「連携、完璧だったね」
「うん、コボルトも火魔法で焼かなかったし、サーペントも胴体は傷が無いからいい状態だね」
「うん、いい感じ」

 そして、最後の洞窟から現れたのは、ロックリザードだった。  
前足の鋭い爪を振りかざして襲いかかる。

「リカコ、右から回って」
「了解!」

 マリオは盾を構え、ロックリザードの攻撃を受け止める。  
 その隙にリカコが背後から回り込み、短剣で急所を突いた。

「撃破確認。ロックリザード、1体」

 ──静寂が戻ったリコマ山。  
 ウリエルが端末を操作しながら、静かに告げた。

「今日のレベリングはこれで終了です。皆さんの経験値は均等に配分されました」
「なお、これより更新作業が滞っておりますので一旦シャットダウンしてから更新になります」

 マリオのタブレットは『更新中』の表示のまま沈黙した。

「ヒカル、ミチル、マナポーションを飲みましょう」
「「は~い」」
 ヒカルとミチルは、肩で息をしながらも笑顔を見せる。  

「マリオさんも、ほら飲んで」
 マリオはリカコからマナポーションをもらって一気飲みした。

この時、マリオは何故か洞窟の奥にある木箱が気になって仕方なかった。

「リカコ、二階に長持の上にあった木箱だよな……?」
「そう、この箱よ」

 マリオはそっと木箱を開けた。 その時──土偶が、転移門を勝手に開けて、文庫箱の横で微かに光った。

「……ヒ・ミ・コ……」
 カタカタカタカタ、土偶が突然震えだした。

「マリオさん、この土偶って、カタコトをしか喋れないけど日本の神様たちと繋がっているのでは?」
「じゃぁ、土偶が本当の事を喋らないのはゲームのように『縛りプレイ』なのか?」

「案外、そうかも知れませんよ」
 ヒカルはラノベの知識から異世界から現代に転移した人たちの話もあることをマリオとリカコに教えた。

「うわ~、文語体で全く読めないな」
「リカコ読めるか?」
「駄目だわ」

「マリオさん、僕のタブレットに読ませましょう」

「賢者、現代の口語体に翻訳して画面に表示してくれ」
「了解です。口語体で表示します」
 4人はマリオの祖父が残した日記を必死に読もうとしたが、無理だったのでアップデートがまだのヒカルのタブレットにすがった。

 ****
 私が生まれたのは明治45年の頃である。

 岐阜県の海津郡大江村──今の岐阜県海津市だ。 生まれた時、枕元に土偶があったと、後になって父母から聞いた。

 父は「木曽川の土手で拾った」と言い、母は「旅人に託された」と言っていた。

 どちらが本当かは、もうわからない。けれども、それから村には不思議と豊作が続いた。

  土偶は“豊穣の神”として家の神棚とは別で祀られ、村人も春と秋に手を合わせてくれた。

 俺は昭和60年にその土偶を、長持から文庫箱に移し、静かにしまっておいた。

 もしこの日記を孫が見るようなら、この土偶を託す。 

 土偶が再び光るかどうかは、わからない。 けれど、もしまた光ることがあるなら──

 ****
「ここで文章が途切れています」

「リカコさん、マリオさんのお父さんは土偶を触らなかったのですか?」
「私が嫁いで来た時は気難しいお父さんだったわ」

「うん、確かに昭和の頑固親父だった。ワンマンでよく親父と衝突したね。」

「リカコさん、土偶はお爺さんが無くなって神力を失ったのですね」
「そうね、でも、土偶が私たちと一緒に付いてきたのは何故?」

「それは、この先直ぐに分かるかも知れないよ。問題は俺が仕舞って忘れていたこの封筒だよ」
「マリオさん、何が入っているの?」

「ログハウスのカタログだ。平屋建て、寝室二部屋、リビング、キッチン・バス トイレは二つ並びでにした」
「でも、何で寝室が二部屋なの?」
「ああ、将来、俺が寝たきりになった時のためだよ」
「マリオさん、そんな先の事を考えていたの?」

「リカコ、俺たち転生前は還暦を過ぎた爺さんと婆さんだぞ……それは当たり前だろう」
「あっ、そうだった。すっかり若い体に馴染んてたわ」 テヘペロ

「ヒカルさん、マリオさん、カタログの間取りは理解できましたので、今からログハウスを作りませんか?」
「賢者、僕たちだけでログハウスを作れるの?」

「はい、ここには直径30センチの木がかなりありますので少々切っても問題はありません」
「ヒカル、エアーカッター風刃だ」

「マリオさん、木は何本要るのですか?」
「おっと、聞くのをわすていたけど、100本?いや余分をみて200本にしておこう」

「そうですね、足りなくなって後で切るのは大変ですから」
 マリオとヒカルはそれぞれ100本づつ木を収納した。

「ヒカル、リカコたちの場所に戻ろう」
「転移」


「リカコさん、私たちはどうするのですか?」
「賢者、私たちに出来る仕事は?」
「はい、洞窟の魔鉱石をもっと集めてきて下さい。ガラスに使います」

「分かったわ。ミチル洞窟で魔石採取よ」
「はい」

「「収納」」
「もう一つの洞窟も行くわよ」
「はい」
「「収納」」

「皆んな、最後のひと踏ん張りだ、一気に建てるよ」
「「「「いっせーので」」」」

 ドドン、「マリオさん、この反則技の呪文は何ですか?」
「たぶん、チートだろうな?」

「リカコさん、大きくて素敵です」
「ほんとね、苦労したかいがあったわ」

 4人の眼の前にマリオのカタログ通りのログハウスが建っていた。

「それでは、皆さん、私も更新作業を始めます」

 ヒカルの賢者も更新が始まりそれっきり沈黙してしまった。

「転移門を回収してこのログハウスにはめ込もうよ」
「お昼はナニサカの屋台村で食べましょう」
「「「「賛成」」」」

「マリオさん、魔物の討伐はどうします?」
「タブレットが使えないから再起動後に再開だな」

「じゃぁ、今日と明日はオフの日ですね」
「そうだな、ヒカルもミチルとデートでいいだろう」

「マリオさんはリカコさんとデートですね」
「そういうことだ」

「お昼の前に遮光器土偶の神棚を作っておくよ。俺たちの新しい家族だ」
「そうね」
 


「マリオさん、本格的ですね」
「ヒカルにも分かるか? たぶん気に入ってもらえたはずだ」

「さぁ、お昼を食べに行こうよ」
「は~い」

 ----------------------------------
 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

金髪女騎士の♥♥♥な舞台裏

AIに♥♥♥な質問
ファンタジー
高貴な金髪女騎士、身体強化魔法、ふたなり化。何も起きないはずがなく…。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

処理中です...