弱くてすみません~偽認定された夫婦の冒険記~

にしのみつてる

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第2章

もうかりまっか、今日もまいど!~不思議なご縁~

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 四人は転移門で借家に戻って、ナニサカの屋台村へ向かう途中── ヒカルが先頭で歩いていた時だった、道の脇からいきなり三人の男が現れた。

「おい、そこの連中。見慣れない顔だな」
  革鎧に剣、魔力感知の気配。元冒険者か、あるいは落ちぶれた傭兵か。マリオは咄嗟に叫んだ

「ヒカル、マジックバリア!」 

「マジックバリア!」
 ヒカルが展開した防御魔法が、男の魔力干渉を遮断した。バチン、男は尻もちをついて体制を立て直した。
  しかし、もう一人の男が激昂し、剣を抜いてヒカルに切りかかってきた。ガン、ガン、なまくら剣ではヒカルのマジックバリアは全く破れなかった。

 尻もちをついた男は、体勢を立て直しながらファイアーボールを詠唱し始めていた。

「マリオさん!」

  「プチ・サンダーボルト!」
 マリオが放った雷の魔法は、軽い威嚇のつもりだった……が、三人の男たちはその場で痙攣し、膝をつき、胸を押さえ、泡を吹いて倒れた。

「マリオさん、ちゃんと魔力を抑えたの?」
「ああ、威力は抑えたはずだ……」

「あんたら、正当防衛だよ。先に魔法で攻撃し、剣を抜いたのは死んだ三人の男だ。俺は屋台村の元締めのジックだ」
「こいつらは、この前から、この辺一体で市民にカツアゲをしているエラポリ市で食い詰めて流れてきた元冒険者くずれで、俺たちも困っていたんだ」

「おい、身ぐるみ剥いで、裸で川に流しておけ」
「へ~い」

「俺たちは、汚れ仕事もやっているわけさ」

「ジックさん、お世話になりました」
「いいってことよ」
 巡回中の騎士団が来た頃には裸の男が川に流されナニサカ湾で溺死体が上がるのだった。

 こうして、ナニサカの屋台村の治安は用心棒の元締めジックが全てを取り仕切っていると、マリオは思ったのだった。

 ◇ ◇ ◇ ◇
 
「もうかりまっか、今日もまいど!」
  その瞬間、団子が一本増え、店主がニヤリと笑う。

「お客さん、今日は“福串”が出ましたわ。一本サービスや」

 ミチルが驚いて振り返ると、祠の中で小判帽の神様がウィンクしていた。
「お嬢ちゃんも“福串”が出ましたわ。一本サービスや」

「リカコ、これって、まさか?土偶の仕業なのか?
「そうかも、続けて2回も福串が当たるのはおかしいわよ」

 結局、マリオとリカコはヒカルとミチルから分けてもらい無料で団子を食べたのだった。

 屋台巡りが一通り終わって、何故か吸い寄せられるように4人は奥の古道具屋の前に立っていた。
 この店は、一昨日の昼にマリオとリカコが遮光器土偶を手に入れた店だ。
   
 リカコは古道具の中から薄緑色の勾玉を見つけた。イポニアの人たちは貴族も含めてブローチ等のアクセサリーは付けても勾玉は絶対に付けない。 リカコが手に取った瞬間、指先に微かな冷たさと、奥底から心に響くような“気配”を感じた。

「これ……たぶん翡翠だわ」  
 リカコは直感でそう悟った。この世界にも宝石は有るが翡翠はイポニアでは産出しなかった。

 店主は、棚の奥から出てきた勾玉を見て、肩をすくめた。  

「よく気づいたね。誰も買わんから箱に仕舞っていたんだよ。全部で銅貨5枚でええよ」  
 気安く譲ってくれたその言葉に、マリオは少し驚いた。

「こんな綺麗な石が、そんな値段で?」  
「ああ、これも川の土手でダンジョン帰りの冒険者が持ってきたんだ。形が歪なので値段が付かなかったのだよ」

 リカコが勾玉を首にかけた瞬間──  
 ログハウスの神棚が見えたような気がした。

「……ピリ……」  
 ログハウスの神棚の土偶が青白く発光して、リカコの勾玉が淡く共鳴する。

「マリオさん、土偶が発光している姿が見えたわ」  
「勾玉とリンクしたのか?」
「そうよ」

 ヒカルとミチルも驚いて勾玉を手に取った。  
 それぞれの勾玉が、土偶の光に呼応するように、微かに震えた。

「これって……土地神のセンサーか何かかな?」  
 ヒカルが静かに呟いた。

「いや、もっと深い意味があるかも知れないぞ。これは“神力の共鳴装置”だよ」  
 マリオは、土偶の発光が示す方向を見つめながら、そう言った。

 店主に礼を言って、四人はログハウスに戻ったのだった。


 ログハウスに戻る途中、ナニサカの屋台村はいつになく賑わっていた。  
 団子屋、焼き魚屋、雷除けまんじゅう屋──どの店も行列ができている。

「今日はえらいぎょうさんの人や」  
 店主は団子を焼く手を休める暇もなく、額に汗を浮かべていた。

「……ヤ・マ・ノ・カ・ミ……」

「お客さん、何か言いはった?」  
「おっちゃん、もうかりまっかさんの方から声聞こえたで」

 屋台の店主たちは、福串が次々に出ることに驚きながらも、忙しそうに手を動かしていた。

「お客さん、今日は“福串”がようけ出るわ。もうかりまっかさん、張り切ってはるんやろな」  
「まいど! 神様も景気づけや!」


 夜の帳が下り、屋台村の喧騒も静まり始めた頃──

 古道具屋の店主は、昼間に勾玉を買っていった四人を思い出していた。
 不思議な事に、彼らが去った後で、こんな奥の店に客がどんどん流れて来て、今日一日で今年一年分の稼ぎを出していた。明日からは仕入れを強化したいので冒険者ギルドに依頼を出そうと思っていた時だった。

「おっちゃん、この不思議な石版、なんて書いてあるの」
「これは、古代文字のようじゃが儂には読めんのう。エルフの古代文字のように見えなくもないが……」

 古道具屋の店主も考え込んだ。持ち込んだ少年冒険者も薄汚れた石板には全く価値を見いだせなかった。

「銅貨1枚じゃが、どうだ?」
「それで、ええよ。これも川の土手で拾ったんや」
「そうか、なら売れるかもしれんな」

 店主は四人が来たら買ってくれると思ったのだ。店主は店を片付け奥で寝ることにした。夜は静かに更けていく

 一方、リコマ山が今夜は淡く光っていた。共鳴するように屋台村のもうかりまっかさんも薄く光っていたが、酔客の騒ぎ声にかき消され誰も気づかない。

 マリオたちは夕食を終え、それぞれの部屋で夜の瞑想をしていた。神棚の遮光土偶は、静かにカタカタと揺れていた。だが、誰もそれに気づくことはなかった。

 続く──
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