弱くてすみません~偽認定された夫婦の冒険記~

にしのみつてる

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第1章

セラーニャ村のウルフベリー

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 スタシモスダンジョンから帰ってきた翌朝、マリオとリカコは冒険の仕事を休むことにした。  
 この世界には休日の概念がないらしく、冒険者ギルドは年中無休で開いていたが、二人は自分たちのペースを大切にしたかった。

「リカコ、昨日のダンジョンで色々考えたよ」  
「マリオさん、私もよ。危険な場所に無理して行く必要はないと思うわ」  
「うん、俺たちのモットーは『安全第一』でいこうよ」

「マリオさん、工場とは違うわよ」
「そうだね……」


 マリオとリカコは、薬草採取の仕事を続けることに決めた。  
 他の冒険者からすれば、“無能”と見られていたが、その方が都合が良かった。誰にも邪魔されず、静かに生きていけるからだ。

「マリオさん、『Dランク:ウルフベリーの採取』ってどうかしら? 付近にオーク目撃情報ありって書いてあるけど」  
「うーん……リカコが薙刀で応援してくれるなら、やる価値はあるね」  
「ええ、私、あの時の感覚まだ覚えてるわ」

 受付で話を聞くと、採取地はセラーニャ村。乗り合い馬車で半日かかるので、現地で一泊が必要とのことだった。  
 二人はすぐに準備を整え、乗り合い馬車に乗り込んだ。

 車内には品の良い姉妹が乗っており、見合い話で盛り上がっていた。
「姉さんは、この見合いを絶対に受けた方が良いと思いますの」
「でも、あのハゲ頭はどうしても好きになれないですわ」
「三日も暮らせば自然と慣れますわよ、それにカツラを被せたら良いのですわ」

「ええ、私の夫は禿げていますもの」
「そうね、ゲオルク様は禿げていましたね」

「それよりも、姉さん、財産目当てですよ」
「そうかしら」

 マリオはその会話を聞きながら、禿げ頭には絶対になりたくないと密かに誓った。


 馬車は予定通り、昼過ぎにセラーニャ村に到着した。ウルフベリーの森は村の外れにあり、静かな空気が漂っていた。

「マリオさん、何かいる気配がするよ」  
「うん、俺もそう思う」

 マリオは収納からボウガンを取り出し、リカコは薙刀を構えた。  
 茂みから現れたのは、オークだった。

「リカコ、後ろに隠れて!」  
「マジック・バリアー」
 パシュッ! 矢がオークの顔面に命中。さらに2体のオークが迫ってきたが、マリオの連射で撃退。  
 二人は息を整えながら、無事を喜び合った。

「怖かったけど、マリオさんがいてくれて良かった」  
「リカコが後ろにいてくれるから、俺も踏ん張れるんだ」

 その後、二人でウルフベリーの収穫に集中した。  
 ザルで丁寧に摘み取り、具現化した麻袋に詰めていく。最終的に10袋、約50kgの収穫となった。

「マリオさん、もう十分ね」  
「うん、転移門で帰ろう」

 マリオは収納から転移門を出し、自宅と繋いだ。二人は一瞬でナニサカ市へ戻った。


 夕方、ギルドの受付で報告を済ませると、職員は驚いた様子だった。

「えっ、もう終わったのですか?」  
「たまたま、帰りの馬車に間に合ったんです」  
「それに、オークにも襲われましたが、全部倒しました」

 ウルフベリーの買い取りは1kg=銀貨5枚、合計で金貨25枚になった。  
 オーク3体の討伐報酬は金貨30枚だった。  
 合計で金貨55枚という、二人には予想以上の成果だった。

「リカコ、今日は頑張ったね」  
「ええ、マリオさん、私お腹ペコペコなの」

 二人はギルドを後にして、ナニサカ市のハリハリ鍋の店へ入った。 ダテホコ市沖で水揚げされたベラルディウスくじらは、徐々にナニサカ市の名物料理になりつつあった。ただ、ベラルディウスが本当にダテホコ産として水揚げされたのかは不明であった。300年前に板前だった転生勇者が弟子に日本料理を教えたのが始まりで、ナニサカ市の鍛冶技術は専用の日本料理専用の包丁を作り上げ独自の進化を遂げた。

「リカコ、ハリハリ鍋って、この世界にも有ったんだね」
「ほら、壁に『勇者マサキが伝えた伝統料理』と書いてあるわ」

「マサキって絶対に日本人だね」
「そうでしょうね」


 食後、二人は手を繋ぎながら瞑想を行った。  
 魔素の還流が穏やかに流れ、神々にも届いていく。  
 ピコーン、ピコーン……レベルアップの音が静かに響いた。

 マリオとリカコは、今日も一歩ずつ成長していた。
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