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第3章
教会職員記録──シスター・マリアの日誌より
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(アウレリア暦・渡航前年、春の終わり)
第1日:召喚者たち、倉庫にて目覚める
朝、倉庫にて異常あり。
召喚魔法の光が収束した直後、体育館のような匂いが漂う。
神々しい旋律が流れていたが、彼らは全員寝ていた。
聖なる儀式において、これほど無礼な態度は初めて見た。
男子生徒の一人、タカシ・マルコス・ヤマモトが「ここ、教会っぽくね?」と呟いた。
その言葉に、私は言葉を失った。
神の御前にて“ぽい”とは何事か。
---
第5日:助司祭、殴打される
午前、掃除中に助司祭アダムが男子生徒に注意を促す。
「そこは聖具の保管棚だ。触れてはならぬ」
その瞬間、ケンジ・ルイス・サトウが立ち上がり、アダムの胸ぐらを掴んだ。
「うるせぇ、俺の仲間に触れんなよ」
拳が振るわれ、アダムは壁に叩きつけられた。
その後、床に崩れ、意識を失う。
医療班の診断では、肋骨にヒビ、左眼に打撲、前歯2本欠損。
神の寵児にしては、あまりに粗暴。
私は祈った。
「ルミナス様、なぜこのような者をお選びになったのですか」
---
第7日:おやつ係、正式任命
司祭より命令あり。
「彼らは神の寵児である。もてなすことを怠るな」
以降、私たちは“ポップコーン係”と“ジュース係”に任命された。
毎朝、彼らが暴れる前に菓子を与える。
まるで狂犬の調教のようだ。
ユウナ・クラリッサ・カワムラは、クッキー缶を強奪し、職員を蹴り飛ばした。
「お菓子がないなら戦争よ!」
その言葉に、私は背筋が凍った。
聖女とは、かくも糖分に支配されるものなのか
---
第10日:白い粉の導入
司祭より、スープに“白い粉”を加えるよう指示あり。
詳細は不明。
以降、召喚者たちの動きが鈍くなり、暴力の頻度が減少。
ケンジは腕立て伏せの途中で息切れし、ユウナはクッキー缶を持ち上げるのに苦戦。
私はモップで彼らを牽制できるようになった。
その夜、職員たちは休憩室で静かに喜びを分かち合った。
「ウレピー」と誰かが言った。
私はその言葉の意味を知らないが、心が少しだけ軽くなった。
---
第60日:ラーメン騒動、始まる
朝の祈祷後、勇者ケンジが突然叫んだ。
「俺、ラーメン食いたい!」
聖女ユウナも続けて言った。
「異世界に来てまでラーメンがないとか、マジありえないんだけど?」
私は耳を疑った。
神の寵児が、神の食卓ではなく、ラーメンを求めるとは。
職員たちは困惑した。
教会の厨房には、塩肉と硬いパンしかない。
「スープに白い粉を入れるのは得意ですが、麺は…」と調理係が呟いた。
その日、召喚者たちは食事を拒否し、床に座り込んで「ラーメン断食」を始めた。
ユウナは「神の祝福が足りない」と言いながら、クッキー缶を抱えて泣いた。
ケンジは「筋肉が乾いていく…」と壁に向かって腕立て伏せをしていた。
---
第70日:解決策:ヌードー開発
司祭は頭を抱え、我々に命じた。 「ニューヨーキに“ヌードー”という麺料理を扱う店があると聞いた。交渉せよ」
私は副司祭と共にニューヨーキへ派遣された。 図書館司書ロミンの協力により、現地の“ヌードー店”を発見。 店主は「聖女割引はないけど、支店なら出せる」と快諾。
帰還後、教会の裏庭に“ヌードー支店”が建設された。 魔石で湯を沸かし、乾麺を茹で、スープには白い粉を加えた。 ユウナは「これ、異世界の味がする!」と叫び、ケンジは「俺の筋肉が潤っていく…」と涙を流した。
---
第75日:解決策:ヌードー開発
司祭は頭を抱え、我々に命じた。
「ニューヨーキに“ヌードー”という麺料理を扱う店があると聞いた。交渉せよ」
私は副司祭と共にニューヨーキへ派遣された。
図書館司書ロミンの協力により、現地の“ヌードー店”を発見。
店主は「聖女割引はないけど、支店なら出せる」と快諾。
第80日:帰還後、教会の裏庭に“ヌードー支店”が建設された。
魔石で湯を沸かし、乾麺を茹で、スープには白い粉を加えた。
ユウナは「これ、異世界の味がする!」と叫び、ケンジは「俺の筋肉が潤っていく…」と涙を流した。
---
第120日:浴場の拡張工事
本日、召喚者たちより「湯船が狭い」「泡風呂がない」「露天風呂が欲しい」との要望が届く。
昨日までは「湯船に浸かれるだけで幸せ」と言っていたはずだが、記憶とは都合よく改ざんされるらしい。
司祭は「神の寵児の願いを叶えよ」と命じ、浴場の拡張工事が始まった。 裏庭の木造湯屋は二階建てとなり、魔石加熱式の泡風呂、露天風呂、冷水浴槽が追加された。 水の魔石による温度調整は、召喚者たちの「ぬるめ」「熱め」「ちょっと冷たい」などの要望に応じて毎日調整される。
私は祈った。 「ルミナス様、なぜ彼らに“快適さへの執着”だけを強く与えたのですか」
その夜、ユウナ・クラリッサ・カワムラは泡風呂で「神の祝福が泡になった」と叫び、ケンジ・ルイス・サトウは冷水浴槽で「筋肉が引き締まる」と感動していた。 職員たちは湯屋の裏で静かにため息をついた。
---
第180日:無気力で帰ってきた勇者と聖女
本日、召喚者たちがオランドの遊戯施設『ねずみの国』から6組が帰還。西海岸から4組が帰還した。
全員、顔に覇気がなく、目は虚ろ。 「昨日、何してたっけ?」 「ポップコーン食べた」 「俺、寝てた」 「私は観覧車でぐるぐるしてた」 「ティムは?」 「ぷるぷる~」
ケンジは「俺、筋肉鍛えるから」と言って腕立て伏せを始めた。
私は祈った。 「ルミナス様、なぜ彼らに“自覚”という概念を与えなかったのですか」
その夜、ユウナは布団を濡らし、「これは神の祝福よ」と言い張った。
私は布団を干しながら、静かに空を見上げた。
---
第200日:本日、司祭より「召喚者たちの適性を再評価せよ」との命令が下る。
理由は「最近、勇者と聖女の行動に精彩がない」「布団の祝福頻度が高すぎる」など。
職員たちは内心「今さら?」と思ったが、神の命令には逆らえない。
召喚者20名、全員が魔力レベル5。
スキル反応はゼロ。
職員たちは休憩室で静かに集まり、誰からともなく言った。
「……これ、もうただの高校生では?」
私は祈った。
「ルミナス様、なぜ彼らに“神の寵児”という肩書きだけを与えたのですか」
---
後にこのシスター・マリアの日誌は出版され、「無能な寵児たちに振りまわされた日々」はベストセラーになった。
市民たちは、元勇者と聖女たちを軽蔑し、最終的にはどうなったかはルミナス様だけが知ることとなった。
第1日:召喚者たち、倉庫にて目覚める
朝、倉庫にて異常あり。
召喚魔法の光が収束した直後、体育館のような匂いが漂う。
神々しい旋律が流れていたが、彼らは全員寝ていた。
聖なる儀式において、これほど無礼な態度は初めて見た。
男子生徒の一人、タカシ・マルコス・ヤマモトが「ここ、教会っぽくね?」と呟いた。
その言葉に、私は言葉を失った。
神の御前にて“ぽい”とは何事か。
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第5日:助司祭、殴打される
午前、掃除中に助司祭アダムが男子生徒に注意を促す。
「そこは聖具の保管棚だ。触れてはならぬ」
その瞬間、ケンジ・ルイス・サトウが立ち上がり、アダムの胸ぐらを掴んだ。
「うるせぇ、俺の仲間に触れんなよ」
拳が振るわれ、アダムは壁に叩きつけられた。
その後、床に崩れ、意識を失う。
医療班の診断では、肋骨にヒビ、左眼に打撲、前歯2本欠損。
神の寵児にしては、あまりに粗暴。
私は祈った。
「ルミナス様、なぜこのような者をお選びになったのですか」
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第7日:おやつ係、正式任命
司祭より命令あり。
「彼らは神の寵児である。もてなすことを怠るな」
以降、私たちは“ポップコーン係”と“ジュース係”に任命された。
毎朝、彼らが暴れる前に菓子を与える。
まるで狂犬の調教のようだ。
ユウナ・クラリッサ・カワムラは、クッキー缶を強奪し、職員を蹴り飛ばした。
「お菓子がないなら戦争よ!」
その言葉に、私は背筋が凍った。
聖女とは、かくも糖分に支配されるものなのか
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第10日:白い粉の導入
司祭より、スープに“白い粉”を加えるよう指示あり。
詳細は不明。
以降、召喚者たちの動きが鈍くなり、暴力の頻度が減少。
ケンジは腕立て伏せの途中で息切れし、ユウナはクッキー缶を持ち上げるのに苦戦。
私はモップで彼らを牽制できるようになった。
その夜、職員たちは休憩室で静かに喜びを分かち合った。
「ウレピー」と誰かが言った。
私はその言葉の意味を知らないが、心が少しだけ軽くなった。
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第60日:ラーメン騒動、始まる
朝の祈祷後、勇者ケンジが突然叫んだ。
「俺、ラーメン食いたい!」
聖女ユウナも続けて言った。
「異世界に来てまでラーメンがないとか、マジありえないんだけど?」
私は耳を疑った。
神の寵児が、神の食卓ではなく、ラーメンを求めるとは。
職員たちは困惑した。
教会の厨房には、塩肉と硬いパンしかない。
「スープに白い粉を入れるのは得意ですが、麺は…」と調理係が呟いた。
その日、召喚者たちは食事を拒否し、床に座り込んで「ラーメン断食」を始めた。
ユウナは「神の祝福が足りない」と言いながら、クッキー缶を抱えて泣いた。
ケンジは「筋肉が乾いていく…」と壁に向かって腕立て伏せをしていた。
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第70日:解決策:ヌードー開発
司祭は頭を抱え、我々に命じた。 「ニューヨーキに“ヌードー”という麺料理を扱う店があると聞いた。交渉せよ」
私は副司祭と共にニューヨーキへ派遣された。 図書館司書ロミンの協力により、現地の“ヌードー店”を発見。 店主は「聖女割引はないけど、支店なら出せる」と快諾。
帰還後、教会の裏庭に“ヌードー支店”が建設された。 魔石で湯を沸かし、乾麺を茹で、スープには白い粉を加えた。 ユウナは「これ、異世界の味がする!」と叫び、ケンジは「俺の筋肉が潤っていく…」と涙を流した。
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第75日:解決策:ヌードー開発
司祭は頭を抱え、我々に命じた。
「ニューヨーキに“ヌードー”という麺料理を扱う店があると聞いた。交渉せよ」
私は副司祭と共にニューヨーキへ派遣された。
図書館司書ロミンの協力により、現地の“ヌードー店”を発見。
店主は「聖女割引はないけど、支店なら出せる」と快諾。
第80日:帰還後、教会の裏庭に“ヌードー支店”が建設された。
魔石で湯を沸かし、乾麺を茹で、スープには白い粉を加えた。
ユウナは「これ、異世界の味がする!」と叫び、ケンジは「俺の筋肉が潤っていく…」と涙を流した。
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第120日:浴場の拡張工事
本日、召喚者たちより「湯船が狭い」「泡風呂がない」「露天風呂が欲しい」との要望が届く。
昨日までは「湯船に浸かれるだけで幸せ」と言っていたはずだが、記憶とは都合よく改ざんされるらしい。
司祭は「神の寵児の願いを叶えよ」と命じ、浴場の拡張工事が始まった。 裏庭の木造湯屋は二階建てとなり、魔石加熱式の泡風呂、露天風呂、冷水浴槽が追加された。 水の魔石による温度調整は、召喚者たちの「ぬるめ」「熱め」「ちょっと冷たい」などの要望に応じて毎日調整される。
私は祈った。 「ルミナス様、なぜ彼らに“快適さへの執着”だけを強く与えたのですか」
その夜、ユウナ・クラリッサ・カワムラは泡風呂で「神の祝福が泡になった」と叫び、ケンジ・ルイス・サトウは冷水浴槽で「筋肉が引き締まる」と感動していた。 職員たちは湯屋の裏で静かにため息をついた。
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第180日:無気力で帰ってきた勇者と聖女
本日、召喚者たちがオランドの遊戯施設『ねずみの国』から6組が帰還。西海岸から4組が帰還した。
全員、顔に覇気がなく、目は虚ろ。 「昨日、何してたっけ?」 「ポップコーン食べた」 「俺、寝てた」 「私は観覧車でぐるぐるしてた」 「ティムは?」 「ぷるぷる~」
ケンジは「俺、筋肉鍛えるから」と言って腕立て伏せを始めた。
私は祈った。 「ルミナス様、なぜ彼らに“自覚”という概念を与えなかったのですか」
その夜、ユウナは布団を濡らし、「これは神の祝福よ」と言い張った。
私は布団を干しながら、静かに空を見上げた。
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第200日:本日、司祭より「召喚者たちの適性を再評価せよ」との命令が下る。
理由は「最近、勇者と聖女の行動に精彩がない」「布団の祝福頻度が高すぎる」など。
職員たちは内心「今さら?」と思ったが、神の命令には逆らえない。
召喚者20名、全員が魔力レベル5。
スキル反応はゼロ。
職員たちは休憩室で静かに集まり、誰からともなく言った。
「……これ、もうただの高校生では?」
私は祈った。
「ルミナス様、なぜ彼らに“神の寵児”という肩書きだけを与えたのですか」
---
後にこのシスター・マリアの日誌は出版され、「無能な寵児たちに振りまわされた日々」はベストセラーになった。
市民たちは、元勇者と聖女たちを軽蔑し、最終的にはどうなったかはルミナス様だけが知ることとなった。
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