11 / 65
第1章
1-10 冒険者初級講習
しおりを挟む
オカロダ町の冒険者ギルドで紹介してもらった髭の酒蔵亭は名前のとおり酒場も兼ねており宿屋の店主が仕込んだオーク肉の腸詰めを揚げたオクタ揚げは店の看板メニューだった。
ポヤティラ山の伏流水で仕込まれたエールはまろやかな風味のアロゴエールとしてオカロダ町と周辺の村では有名なエールだった。ヒロシとミサエさんは夕食のボアファングのシチューの他に追加でエールと山ぶどう酒を注文してどちらも1杯が鉄貨3枚、オクタ揚げは大盛りで鉄貨5枚の値段だった。宿代は二人で銀貨2枚だったので20000円として計算をして銀貨1枚が元の世界の10000円の価値で落ち着いたのだった。
翌日、ヒロシとミサエさんはギルド主催の冒険者初級講習を受けた。冒険者になるには初級講習と中級講習の2つのコースが設定されており、受講料金は初級講習は無料、中級講習は一人銀貨2枚だった。初心者講習は義務なのでどうしても受ける必要があったが、中級講習は一定の実力が有れば免除された。
「それでは只今から、冒険者初級講習を始めます」
「私は講師のエレーナです。どうぞよろしくお願いします」
「「「「エレーナ先生、よろしくお願いします」」」」
受講者全員で元気よく挨拶をした。受講生はヒロシとミサエさんの他に6人の少年少女がいたが、他の受講生はヒロシたちよりもかなり年下で12歳から15歳までの少年少女たちだった。6人の少年少女はオカロダ町の近隣の村々から冒険者に憧れて稼ぎに出てきたと言っていた。
冒険者初級講習とは、一般的な社会生活やルールついての講義に始まり冒険者レベルに応じた依頼の受け方、屋外活動する上でのキャンプ方法、緊急時の怪我の対処方法や野生動物から身を守る方法までサバイバル術のイロハを教えてもらえた。それと、この世界では魔法が主になるので生活魔法の復習が繰り返し行われた。
生活魔法とは掃除《クリーン》灯火《ライト》清潔《ボデイ・クリーン》飲料水《ウォータ》などの基本的な魔法だが応用すれば攻撃魔法に使えると教わった。ヒロシとミサエさんは世界辞書のインストールのお陰で生活魔法は全て習得出来ていたのだった。
講習の最後に武器の扱い方を教わり、狩猟ナイフを使ったスライムとゴブリンの倒し方を教わって冒険者初級講習は夕方に終了したのだった。
「「「「エレーナ先生、ありがとうございました」」」」
7人の少年少女は一目散に帰って行ったが、エレーナ先生の話では冒険者ギルドに横に併設された未成年者向けの簡易宿泊所で男女別に寝泊まりしながら一流冒険者になるためのお金を稼いでいるらしかった。簡易宿泊所の料金は一泊が鉄貨5枚で2日以上の前払い制だった。
エレーナ先生が帰る時に教えてくれたのは、未成年の子どもでも初心者講習を受ければダンジョンの1階と2階までは潜ることが出来るのでそこで実力をつけると教わった。
◇ ◇ ◇ ◇
「ミサエさん、一緒に受講した子どもたちは何処で食事をしているのだろうね」
「そうね、まかない食のような安いご飯を提供するお店が有るのと違うかしら」
「そうかも知れないね」
「おい、聞いたか、ダニヤ村ダンジョンの1階で子どもが死んだそうだ」
「そうなのか、ダンジョンの1階はスライムとホーンラビットだけだろ」
「そのホーンラビットが突進して角が子どもの腹に刺さったのさ」
「そうだったのか、監視の職員に落ち度は無いらしいから気の毒としか言いようがないな」
「不憫だが運が無かったとしか言いようがないな」
「そうだな」
二人の冒険者はしんみりとエールを飲んでいた。
「そう言えば、オカロダ町に新しいグループが誕生するって噂だな」
「その話、詳しく教えてくれよ」
「ああ、ダニヤ村から来た男女2組のグループだそうだ」
「そうなのか」
「この話はまだ内密にな」
「ああ、分かっているよ」
ヒロシとミサエさんは隅のテーブルが空いていたので椅子に座って店内の様子を伺っていた。
「ヒロシさん、グループって何なの?」
「ミサエさん、急に聞かれても俺も分からないよ」
「そう言えば、昨日、壁際で大声で笑っていた男女二人がいたわね」
「そうだったかな」
「兄さんと姉さんたち、その話は人前では言っちゃいけないよ」
「ああ、壁に耳ありって言うからね」
「すみません、気をつけます」
「すみません、お二人にエール二つ」
「は~い」
「兄さん、たかったようで悪いな」
「いいえ、気にしないで下さい、俺たちソタイン村から出てきたので何も知らないので」
「それと、兄さんたち、ソタイン村から出てきた事も絶対に言わないほうがいいな」
「人によっちゃ村人は差別対象になるからな」
「そうなんですか」
「分かりました、ご忠告ありがとうございます」
「いいってことよ、気にするな」
流れの冒険者のアレクとエドマンは2年前に王都ケトマスからキント市に越してきて1年前にオカロダ町に流れ着いたと教えてくれた。来月にはナニサカ市に移ると教えてくれたのだった。
「兄さんと姉さんも早いこと他の町に引っ越しをしたほうがいいかもな」
「ここでは壁に耳が有るから迂闊な事は言えないし余所者には窮屈な場所だからさ」
「まぁ、そういう事だ」
「エールごちそうさん」
オカロダ町ではクランが幅を利かせているのでクランを批判するような言動は影で冒険者が制裁を受けても誰も文句は言えなかったのだった。またクランに属さない冒険者は亜人として低く見られ影では軽蔑対象となっていた。
クランの事を何も知らないヒロシとミサエさんはオカロダ町の貴族至上主義を冒険者のアレクとエドマンに教わったのだった。
(話終わり)
ポヤティラ山の伏流水で仕込まれたエールはまろやかな風味のアロゴエールとしてオカロダ町と周辺の村では有名なエールだった。ヒロシとミサエさんは夕食のボアファングのシチューの他に追加でエールと山ぶどう酒を注文してどちらも1杯が鉄貨3枚、オクタ揚げは大盛りで鉄貨5枚の値段だった。宿代は二人で銀貨2枚だったので20000円として計算をして銀貨1枚が元の世界の10000円の価値で落ち着いたのだった。
翌日、ヒロシとミサエさんはギルド主催の冒険者初級講習を受けた。冒険者になるには初級講習と中級講習の2つのコースが設定されており、受講料金は初級講習は無料、中級講習は一人銀貨2枚だった。初心者講習は義務なのでどうしても受ける必要があったが、中級講習は一定の実力が有れば免除された。
「それでは只今から、冒険者初級講習を始めます」
「私は講師のエレーナです。どうぞよろしくお願いします」
「「「「エレーナ先生、よろしくお願いします」」」」
受講者全員で元気よく挨拶をした。受講生はヒロシとミサエさんの他に6人の少年少女がいたが、他の受講生はヒロシたちよりもかなり年下で12歳から15歳までの少年少女たちだった。6人の少年少女はオカロダ町の近隣の村々から冒険者に憧れて稼ぎに出てきたと言っていた。
冒険者初級講習とは、一般的な社会生活やルールついての講義に始まり冒険者レベルに応じた依頼の受け方、屋外活動する上でのキャンプ方法、緊急時の怪我の対処方法や野生動物から身を守る方法までサバイバル術のイロハを教えてもらえた。それと、この世界では魔法が主になるので生活魔法の復習が繰り返し行われた。
生活魔法とは掃除《クリーン》灯火《ライト》清潔《ボデイ・クリーン》飲料水《ウォータ》などの基本的な魔法だが応用すれば攻撃魔法に使えると教わった。ヒロシとミサエさんは世界辞書のインストールのお陰で生活魔法は全て習得出来ていたのだった。
講習の最後に武器の扱い方を教わり、狩猟ナイフを使ったスライムとゴブリンの倒し方を教わって冒険者初級講習は夕方に終了したのだった。
「「「「エレーナ先生、ありがとうございました」」」」
7人の少年少女は一目散に帰って行ったが、エレーナ先生の話では冒険者ギルドに横に併設された未成年者向けの簡易宿泊所で男女別に寝泊まりしながら一流冒険者になるためのお金を稼いでいるらしかった。簡易宿泊所の料金は一泊が鉄貨5枚で2日以上の前払い制だった。
エレーナ先生が帰る時に教えてくれたのは、未成年の子どもでも初心者講習を受ければダンジョンの1階と2階までは潜ることが出来るのでそこで実力をつけると教わった。
◇ ◇ ◇ ◇
「ミサエさん、一緒に受講した子どもたちは何処で食事をしているのだろうね」
「そうね、まかない食のような安いご飯を提供するお店が有るのと違うかしら」
「そうかも知れないね」
「おい、聞いたか、ダニヤ村ダンジョンの1階で子どもが死んだそうだ」
「そうなのか、ダンジョンの1階はスライムとホーンラビットだけだろ」
「そのホーンラビットが突進して角が子どもの腹に刺さったのさ」
「そうだったのか、監視の職員に落ち度は無いらしいから気の毒としか言いようがないな」
「不憫だが運が無かったとしか言いようがないな」
「そうだな」
二人の冒険者はしんみりとエールを飲んでいた。
「そう言えば、オカロダ町に新しいグループが誕生するって噂だな」
「その話、詳しく教えてくれよ」
「ああ、ダニヤ村から来た男女2組のグループだそうだ」
「そうなのか」
「この話はまだ内密にな」
「ああ、分かっているよ」
ヒロシとミサエさんは隅のテーブルが空いていたので椅子に座って店内の様子を伺っていた。
「ヒロシさん、グループって何なの?」
「ミサエさん、急に聞かれても俺も分からないよ」
「そう言えば、昨日、壁際で大声で笑っていた男女二人がいたわね」
「そうだったかな」
「兄さんと姉さんたち、その話は人前では言っちゃいけないよ」
「ああ、壁に耳ありって言うからね」
「すみません、気をつけます」
「すみません、お二人にエール二つ」
「は~い」
「兄さん、たかったようで悪いな」
「いいえ、気にしないで下さい、俺たちソタイン村から出てきたので何も知らないので」
「それと、兄さんたち、ソタイン村から出てきた事も絶対に言わないほうがいいな」
「人によっちゃ村人は差別対象になるからな」
「そうなんですか」
「分かりました、ご忠告ありがとうございます」
「いいってことよ、気にするな」
流れの冒険者のアレクとエドマンは2年前に王都ケトマスからキント市に越してきて1年前にオカロダ町に流れ着いたと教えてくれた。来月にはナニサカ市に移ると教えてくれたのだった。
「兄さんと姉さんも早いこと他の町に引っ越しをしたほうがいいかもな」
「ここでは壁に耳が有るから迂闊な事は言えないし余所者には窮屈な場所だからさ」
「まぁ、そういう事だ」
「エールごちそうさん」
オカロダ町ではクランが幅を利かせているのでクランを批判するような言動は影で冒険者が制裁を受けても誰も文句は言えなかったのだった。またクランに属さない冒険者は亜人として低く見られ影では軽蔑対象となっていた。
クランの事を何も知らないヒロシとミサエさんはオカロダ町の貴族至上主義を冒険者のアレクとエドマンに教わったのだった。
(話終わり)
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
11
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる