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第5章

5-7 あいつら山の『石虎』と街の『石虎』の区別も知らないようだな

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 ヒロシたち4人は観光客で混雑している9番街の通りを歩いていた。途中で男たちがミサエさんとダリナに襲いかかろうとしたが幻影魔法でやっつけたのだった。

「エンチャント・インハベーション」
 4つのペンダントが光って認識阻害魔法が付与された

「おい、あの魔女見てみろよ。それにしても二人共醜女ブスだよな」
「それにしても貧乳ちっパイだな」

「ああ、男二人もゴブリンみたいに顔が悪いしお似合いのカップルだな」
「そうだな」

(ミサエさん、ダリナ、認識阻害は一応成功だね)
(そうね、貧乳ちっパイって言われるのはしゃくだけどね)

(ミサエさん、私は貧乳ちっパイでも気にしませんよ)
(ミサエさん、僕もゴブリンで気にしていません)

「ヒロシさん、認識阻害インハベーションは要研究ね」
「ハイ、善処します」

「ラファエル、認識阻害の最適化をお願い」
「了解しました。顔の作りをモブに設定します」

「ヒロシさん凄いですね。ラファエルはモブって言葉をよく知っていましたね」
「サブロー、モブって何だ?」

「ヒロシさん、モブとは群衆のことですよ」
「ドラマで言うところのエキストラ役、その他大勢の役ですよ」

 サブローは生前に読んだラノベの知識を引っ張ってきてヒロシに伝えた。
「ああ、なるほどよく分かった」
「ミサエさん、俺たちはその他大勢の役で決まりだね」

「そうじゃないけど、強盗に絡まれないのならいいわ」

 船から降りた観光客たちは露店や店の商品を見ながら自由行動を楽しみながら9番街の教会に参拝して帰るツアー客だった。

「ヒロシさん、タイバン国の冒険者ギルドだね」
「ミサエさん、ダリナ、サブロー、認識阻害のテストを兼ねてタイバン国の冒険者ギルドに寄っていこうか?」

「ヒロシさん、そんなに心配しなくて大丈夫ですよ」
「ミサエさんも大丈夫です」

 ダリナとサブローはいつの間にか忍者が使うクナイとマキビシを用意していた。

「ダリナ、サブロー、この武器はどうしたんだ?」
「はい、先程のドレス店の横の露店で買ったのです」

「そうね、忍者の武器は貴女たちに任せるわ」

 4人は入り口でチンピラに絡まれる事も無く冒険者ギルドに入っていった。時間は昼過ぎの時間だったので空いていた。

 ヒロシは依頼ボードに張り出された依頼書を漠然と眺めているだけで特に依頼を受ける事もなかった。

「ミサエさん、ここの冒険者は高い山に入るようだね」
「そうね、それと『石虎』関連の依頼が多いわね」

「絵から想像するとヤマネコの魔物だと思うよ」
「そうね」

「それと大黒角ウサギだ」
「大きい角ウサギみたいだから初心者には難しいかもね」
「そうね」

「おい、あいつら山猫の『石虎』と街の『石虎』の区別も知らないようだな」
「ああ、そうだな」

「あいつら、市場で本物の『石虎』と出会って酷い目に遭うのと違うのか?」
「身ぐるみ剥がされて、女は犯されてご愁傷さまだな」

「それにしても、オーク顔の魔女オバンでは立つものも立たないから俺はパスだな」
「そうだな」

(ミサエさん、認識阻害は成功だよ)
(ヒロシさん、私たちがオーク顔の魔女オバンって言われてたから絶対に駄目よ)
(今直ぐ認識阻害を外して)

(ハイ)

 ミサエさんとダリナは気付いていなかったが、冒険者たちの噂話から他人から見えていたのはミサエさんもダリナもオークのように丸顔になって鼻ぺちゃでペチャパイの醜いオバサンに見えていたのだった。

 同じようにヒロシとサブローも顔の作りはオークのように丸顔になって鼻ぺちゃになっていたが、ゴブリンのように貧相な体のオッサンに見えて弱々しかったのだった。

 オーク顔のオバサンとゴブリンのように貧相なオッサンでは誰も絡む事なく相手にしなかったのだった。
この事にミサエさんとダリナが直ぐに気付いたので認識阻害を外して絶対防御魔法をペンダントに付与したのだった。

「ヒロシさん、認識阻害魔法はよ」

「ミサエさん、ダリナ、サブローごめんなさい。モブはこりごりです」

「ミサエさん、絡んできたら容赦なく『ココラリホー』です」
「そうね、汚くてもそうしましょう」

 ◇ ◇ ◇ ◇

 9番街の通りは港から延々と露店が続いており商店も含めると1000店舗以上が営業していた。

「ダリナさん、アレですよ、アレ」
「サブロー、待って」

 サブローとダリナは屋台の方に走っていった。ヒロシとミサエさんも直ぐにダリナたちを追いかけたが、二人は唐揚げ屋さんの前で大きな唐揚げをかぶりついていた。

「ダリナさん、ウマー」
「サブロー、ほっぺについているよ」
 二人は夢中で大人の顔ほど大きい巨大唐揚げにかぶりついていた。


「ミサエさん、ダリナとサブローが巨大唐揚げを食べているのを見ているだけで胸焼けしてきたので遠慮しておくよ」

「ヒロシさんにしては珍しいわね」

「うん、あの巨大唐揚げの大きさは食べた後で絶対に胸焼けしそうだと思ったの」
「ヒロシさん大丈夫よ、胸焼けしたときは私が『ヒール』をかけてあげるわ」

「あっ、そっか~ミサエさんのヒールがあったか」
「それなら食べられるね」

「ヒロシさん、向かいの屋台のエビの天ぷらを食べましょうよ」
「うん、これなら大丈夫そうだね」

「ミサエさん、ズルイです。私たちもエビの天ぷら食べます」
「ダリナ、貴女たち、お腹は大丈夫なの?

「はい、二人でお互いにヒールをかけたから平気です」
「まぁ、ダリナったら」

 ヒロシとミサエさんは微笑んだのだった。観光客たちは縁結びの老人神が祀られる教会に続く参道を歩いていたが、ヒロシたちはオリンポスの神々に遠慮して縁結びの教会に入らずもと来た道を戻ったのだった。


「ダリナ、サブロー、来た道を戻って港に戻ろうよ」
「は~い」

「ミサエさん、かき氷の屋台です」
「おじさん、マンゴーかき氷4つ」

「あいよ、マンゴーかき氷4つ、鉄貨4枚だ」

 ダリナとサブローは鉄貨4枚を払ってマンゴーがのったかき氷を受け取った。

「ヒロシさん、他に緑豆のかき氷もあるね」
「そうだね、タピオカに赤豆も入っているね」

「ダリナ、タピオカを買っていくわよ」
 ミサエさんとダリナは乾燥したタピオカと緑豆、赤豆に黒糖を爆買いして店員にタピオカの戻し方と作り方のレクチャーを受けていた。かき氷の氷は4人が氷魔法でいつでも出来るし、かき氷器はヒロシとサブローがラファエルの解析で昔ながらのレトロなかき氷器を作ったのだった。

 ミサエさんとダリナは果物屋さんでかき氷のトッピングするパイナップル、マンゴー ライチ、バンレイシを爆買いしたのだった。

(話終わり)
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