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三話 【限界突破した姉】
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あれから数年が経ち、ウルエは五歳になった。
流石に五年間も此処で育ってきた為、
ウルエはすっかり今の生活に溶け込んでいた。
初めは魔王が親とか絶対平和に暮らせないじゃんと思っていたが、
実際そんな事は無く、この五年間平和そのものだった。
だが、この生活にも唯一問題点がある。
それはウルエのお姉ちゃんフェルの事だ。
重度なブラコンの姉。
昔はお義父さんやお義母さんにも優しく接していたのだが、
ここ数年で何があったのか分からないがお姉ちゃんのブラコン度数が限界突破し、
ウルエ以外には物凄く冷たく厳しく接する様になったのだ。
ウルエが何かをしようとすると必ずと言っていいほどお姉ちゃんが付きまとってくる。
現に今もそうだ。
ウルエは今部屋にある本棚から面白そうな本を探しているのだが、
横には暑苦しい位くっ付いている姉がいる。
別に嫌という訳ではないが、もう少し離れて欲しい。
「お姉ちゃん、少し離れて欲しいな。」
「どうして?私の事嫌いなの?」
「いや、そう言う訳じゃ――」
「じゃあ、いいじゃない!」
そういって腕を組みルンルンと鼻歌を歌い、
ウルエの顔を見つめて来るお姉ちゃん。
「うん……」
心の中では暑苦しいから離れてくれないか。
と言おうとしているのだが、
どうしてもお姉ちゃんを目の前にすると言葉が出てこない。
恐るべしお姉ちゃんパワー。
言葉を話せる様になり、
ウルエはエミから授かった能力、コールを使おうとしているのだが、
どうしてもお姉ちゃんがウルエを一人にさせてくれない為、
使うにも使えない状況だ。
「あっ、この本……」
本棚を眺めていると物凄く興味をそそるタイトルの本が目に入った。
そのタイトルは、スケルトンでも分かる生活魔法入門。
ウルエはその本に手に取った。
スケルトンでも分かると言うのは、
脳みそが無い奴でも理解できるという事なのだろうか。
「ウルエ、魔法に興味があるの?」
「んー、ちょっとだけ。」
何方かと言うと魔法には興味がある方だ。
だが、ウルエが興味がある魔法と言うのは限られていて、
自分が楽出来る魔法などだ。
その点この生活魔法というのはウルエにとって丁度良いのだ。
生活魔法というのは、
その名の通り生活に使える魔法。
例えば水を出したり軽い風を出したり……
というのがウルエの知っている生活魔法なのだが、
「なにこれ……」
「ん?どうしたの?」
その本にはウルエが知っている生活魔法とは違う生活魔法の事がかかれていた。
生活魔法とは、生活を快適にする魔法。
ここまではウルエの知っている通りだ。
だが、この次からおかしなことが書かれているのだ。
生活魔法種類は主に三種類ある。
一、相手の弱点を見極められる魔法。
二、相手を効率的に無力化する魔法。
三、相手の記憶を消去する魔法。
(うん、おかしいよね。
きっとこの本を書いた人は、
それはそれは厳しい生活を送っていたのだろう)
ウルエはそっと本を閉じて本棚に戻した。
「あれ、もう良いの?」
「うん、俺には早すぎたよ。」
「そんな事無いと思うけど……
でも、ウルエは魔法なんて覚える必要ないよ!」
「え?」
「だって、私がいるんだもの。」
えっへんと、胸を張ってそう言い放った。
どや顔をして此方を見て来る姿がなんとも可愛らしい。
これだけ見たら普通の良いお姉ちゃんなんだけどな。
「ウルエが困った時は私がどうにかしてあげる。
ウルエが泣いた時は私が慰めてあげる。
ウルエが傷つけられたら私が復讐してあげる。
ウルエが何も望まなくても私の体を捧げてあげる。
ウルエが――」
「お、お姉ちゃん落ち着いて!」
「あっ、ごめんなさい。」
一度変なスイッチが入ってしまうと、
お姉ちゃんは周りの事が見えなくなり自分の世界に入り込んでしまう。
今のは結構軽い方だったが、酷い時は本当に手に負えない程酷い。
ウルエが四歳の時にお姉ちゃんが自分の世界に入り込んでしまい、
ウルエの事を押し倒しそのまま襲い掛かろうとしていたが
そこにお義母さんが駆けつけて来てくれた為、ウルエは無事だった。
(きっと悪気は無いんだろうけど、
身の危険を感じるのでどうにかしてほしい。
割と本気で)
「あ、そうだウルエ。」
何かを思い出した様でお姉ちゃんは
物凄い笑みを浮かべた。
ウルエからしてみれば、
この笑みは死刑宣告でしかない。
「ん?」
「今度上に行こう!」
(あら、意外と普通だった)
上と言うのは、魔王城一階の事だろう。
此処は地下にある部屋であってウルエはこの五年間ずっと此処で育てられて来た。
そのため一階に行ったことは赤子のあの時を除いて一度もないのだ。
ウルエは何時になったら此処から出られるのだろうか、
と時折思っていたが、自分から行きたいと言った事は無かった。
何故なら、ウルエは出来るだけ平和に暮らしたいからだ。
このまま一生この地下に居ればきっと平穏な日々を送れるだろう。
だが、そんなウルエにお姉ちゃんは機会を与えてくれた。
流石にずっと地下って言うのも精神的に病んじゃいそうだから助かったな。
ありがとうお姉ちゃん。
「そして、皆にウルエの事を紹介するのよ!」
皆というのが一体誰の事を指しているのかは
分からないが、何となく予想は出来る。
何て言ったってここは魔王城なのだから
悪魔やら何やらの事を指しているのだろう。
まだお義父さん以外の悪魔を見た事が無いが、
ほぼ人間に近い姿の為、怖がることは無い。
「私の弟のウルエ、私と結婚する予定なの
もう子作りの約束もしてるのよ!ってね。」
(あぁ、やっぱり変な事言いやがりましたよ。
そうだよな、お姉ちゃんだもん)
・・・・
お姉ちゃんと上に行く約束をして数日が経ち、
遂に上に行ける日が訪れた。
ウルエはたった今、上へと繋がる螺旋状の階段を上っているいる最中だ。
初めは初めて自分の足で上る螺旋階段に興奮して
ひょいひょいと上っていたのだが、思った以上に階段は続いており、
ウルエは半分も上りもせずにばてていた。
「うぅ……疲れた。」
はぁ、はぁと息を上げ、螺旋階段に座り込んだ。
良くもこんなに長い階段をつくりやがったなとウルエは
この城を建てた何者かを恨んだ。
「全く、本当に可愛らしいウルエ。
私がおぶって上まで連れて行ってあげる!」
「え、良いよ、頑張って自分で上るから。」
「駄目よ。お姉ちゃんの言う事聞きなさい。
ウルエは私におんぶされないと行けないの。」
「……分かった。お願い。」
強がって頑張って上ると言ってしまったが、
よくよく考えてみれば今の体力じゃ絶対無理な事だった。
ここは素直にお姉ちゃんに任せよう。
お姉ちゃんがしゃがんでくれて、
ウルエはお姉ちゃんの方に腕を置き、
両足を腕で固定して貰らった。
一応落ちない様に抱き着くように力を入れる。
「よいしょっ、うん、ウルエは軽いね。」
「そう、なのかな?」
(確りと出された料理は食べて、
大して運動もしていないけどそんな軽いのかな?)
「うん、私よりも軽いよ。」
お姉ちゃんはそう言って螺旋階段を上りだした。
ウルエの事をおんぶしているにも関わらず
一歩一歩がとても軽い。
本当に自分が痩せすぎなのではないかと不安になるほどに。
三歳年上と言うだけで此処まで差が出るのだろうか、
身長は確かにお姉ちゃんの方が大きいが、
体力や力の差が圧倒的に違いすぎている。
これが種族の差と言うものなのか。
(そう言えばお義父さん達は俺の事をどうするつもりなのだろうか)
ウルエの種族は人間であり、
そんなウルエとは違ってお義父さん達は悪魔で
いずれかはこの事をウルエに打ち明けて来るだろう。
ウルエとしては初めから知っている事なのでどうでも良いのだが。
(このまま俺を普通に人間の子として育ててくれるのか、
魔王の息子として育ててくれるのか、
何方からと言うと普通に平和に育ててくれるのを望む)
「ねぇ、ウルエ」
そんな事を考えていると、
お姉ちゃんが話しかけて来た。
「ん、何?」
「私はもう八歳になったんだよね。」
「うん、そうだね。
俺はお姉ちゃんの三つ下だから五歳だね。」
一体いきなりどうしたのだろう。
ウルエはまた変な事を言い出すのか、それとも真面目な話なのか、
半分期待しつつ半分不安な気持ちで次の言葉を待った。
「あのね、私が十歳になったら学園って所に行かなくちゃならないの。」
「が、学園……」
異世界に来ても勉強をしに行かないといけない、
分かっていたけどやっぱり勉強は嫌い。
(でも、まぁ平和に過ごせるなら良いんだけどね)
「学園に行っている暫くの間はウルエと離れ離れにならないと行けないの、
私としてはウルエを寮に連れて行きたいんだけどそう言う訳には行かない、
ウルエが十歳になるまで三年間、ウルエと合えない……」
「うん……」
三年間と言うのはウルエが十歳になって
学園に行くまでの間。
(……三年間か、流石に今までずっと一緒に居たから寂しくなりそうだ)
「私は耐えらないかも知れないけど、頑張るから。ウルエも頑張ってね。
お姉ちゃんが居なくても確りとご飯たべるんだよ、
確りと寝て朝起きて……一人でお風呂入れる?
お姉ちゃんが居なくても……」
おんぶされているため、
お姉ちゃんの顔を見る事は出来ないけど、
鼻を啜り涙声から察した。
お姉ちゃんは少し大げさかも知れないけど、
確かにウルエも寂しい、何時も朝は一緒に寝て居る
お姉ちゃんが起こしてくれるため、朝起きれるかも不安で。
暇な時はお姉ちゃんが遊んでくれたから何とかなったけど、
居なくなったら何をしていけばいいんだ。
(……何だかんだ言って俺も相当お姉ちゃんに依存してる
シスコンなのかも知れないな)
「俺は大丈夫だよ、次お姉ちゃんと合う時には
物凄く立派に成長して驚かせるんだから!
だからお姉ちゃんは楽しみに待ってて。」
「ウルエ……
うん……お姉ちゃん楽しみに待ってる、待ってるからね。」
まだ別れは二年も先なのにどうして今こんなにも盛り上がっているのだろう、
ウルエは冷静にそんな事を考えてしまったが、
心の奥底に閉まっておくことにした。
・・・・
気が付けば螺旋階段の終わりまで着ており、
目の前には絵画の裏側が広がっている。
絵画の真ん中には隙間があり、
その隙間に体を入れて絵画から抜ける。
「うわぁ!」
「到着っと!」
久しぶりに見る光景にウルエは感嘆の声を上げた。
それから直ぐにウルエはお姉ちゃんに連れられ、
移動し大きな扉の前に着くとそこでおんぶをやめた。
「この先で皆が待ってるんだよ。」
「皆……」
初めて会う人だらけだから当然緊張する。
ウルエは自分の顔を軽く叩き気合を入れた。
「よし。」
「じゃあ、行こうか。」
お姉ちゃんはそう言って手を伸ばして来た。
ウルエは何の迷いも無く手を取った。
そして手を繋ぎながらお姉ちゃんが扉を片手で開けた。
流石に五年間も此処で育ってきた為、
ウルエはすっかり今の生活に溶け込んでいた。
初めは魔王が親とか絶対平和に暮らせないじゃんと思っていたが、
実際そんな事は無く、この五年間平和そのものだった。
だが、この生活にも唯一問題点がある。
それはウルエのお姉ちゃんフェルの事だ。
重度なブラコンの姉。
昔はお義父さんやお義母さんにも優しく接していたのだが、
ここ数年で何があったのか分からないがお姉ちゃんのブラコン度数が限界突破し、
ウルエ以外には物凄く冷たく厳しく接する様になったのだ。
ウルエが何かをしようとすると必ずと言っていいほどお姉ちゃんが付きまとってくる。
現に今もそうだ。
ウルエは今部屋にある本棚から面白そうな本を探しているのだが、
横には暑苦しい位くっ付いている姉がいる。
別に嫌という訳ではないが、もう少し離れて欲しい。
「お姉ちゃん、少し離れて欲しいな。」
「どうして?私の事嫌いなの?」
「いや、そう言う訳じゃ――」
「じゃあ、いいじゃない!」
そういって腕を組みルンルンと鼻歌を歌い、
ウルエの顔を見つめて来るお姉ちゃん。
「うん……」
心の中では暑苦しいから離れてくれないか。
と言おうとしているのだが、
どうしてもお姉ちゃんを目の前にすると言葉が出てこない。
恐るべしお姉ちゃんパワー。
言葉を話せる様になり、
ウルエはエミから授かった能力、コールを使おうとしているのだが、
どうしてもお姉ちゃんがウルエを一人にさせてくれない為、
使うにも使えない状況だ。
「あっ、この本……」
本棚を眺めていると物凄く興味をそそるタイトルの本が目に入った。
そのタイトルは、スケルトンでも分かる生活魔法入門。
ウルエはその本に手に取った。
スケルトンでも分かると言うのは、
脳みそが無い奴でも理解できるという事なのだろうか。
「ウルエ、魔法に興味があるの?」
「んー、ちょっとだけ。」
何方かと言うと魔法には興味がある方だ。
だが、ウルエが興味がある魔法と言うのは限られていて、
自分が楽出来る魔法などだ。
その点この生活魔法というのはウルエにとって丁度良いのだ。
生活魔法というのは、
その名の通り生活に使える魔法。
例えば水を出したり軽い風を出したり……
というのがウルエの知っている生活魔法なのだが、
「なにこれ……」
「ん?どうしたの?」
その本にはウルエが知っている生活魔法とは違う生活魔法の事がかかれていた。
生活魔法とは、生活を快適にする魔法。
ここまではウルエの知っている通りだ。
だが、この次からおかしなことが書かれているのだ。
生活魔法種類は主に三種類ある。
一、相手の弱点を見極められる魔法。
二、相手を効率的に無力化する魔法。
三、相手の記憶を消去する魔法。
(うん、おかしいよね。
きっとこの本を書いた人は、
それはそれは厳しい生活を送っていたのだろう)
ウルエはそっと本を閉じて本棚に戻した。
「あれ、もう良いの?」
「うん、俺には早すぎたよ。」
「そんな事無いと思うけど……
でも、ウルエは魔法なんて覚える必要ないよ!」
「え?」
「だって、私がいるんだもの。」
えっへんと、胸を張ってそう言い放った。
どや顔をして此方を見て来る姿がなんとも可愛らしい。
これだけ見たら普通の良いお姉ちゃんなんだけどな。
「ウルエが困った時は私がどうにかしてあげる。
ウルエが泣いた時は私が慰めてあげる。
ウルエが傷つけられたら私が復讐してあげる。
ウルエが何も望まなくても私の体を捧げてあげる。
ウルエが――」
「お、お姉ちゃん落ち着いて!」
「あっ、ごめんなさい。」
一度変なスイッチが入ってしまうと、
お姉ちゃんは周りの事が見えなくなり自分の世界に入り込んでしまう。
今のは結構軽い方だったが、酷い時は本当に手に負えない程酷い。
ウルエが四歳の時にお姉ちゃんが自分の世界に入り込んでしまい、
ウルエの事を押し倒しそのまま襲い掛かろうとしていたが
そこにお義母さんが駆けつけて来てくれた為、ウルエは無事だった。
(きっと悪気は無いんだろうけど、
身の危険を感じるのでどうにかしてほしい。
割と本気で)
「あ、そうだウルエ。」
何かを思い出した様でお姉ちゃんは
物凄い笑みを浮かべた。
ウルエからしてみれば、
この笑みは死刑宣告でしかない。
「ん?」
「今度上に行こう!」
(あら、意外と普通だった)
上と言うのは、魔王城一階の事だろう。
此処は地下にある部屋であってウルエはこの五年間ずっと此処で育てられて来た。
そのため一階に行ったことは赤子のあの時を除いて一度もないのだ。
ウルエは何時になったら此処から出られるのだろうか、
と時折思っていたが、自分から行きたいと言った事は無かった。
何故なら、ウルエは出来るだけ平和に暮らしたいからだ。
このまま一生この地下に居ればきっと平穏な日々を送れるだろう。
だが、そんなウルエにお姉ちゃんは機会を与えてくれた。
流石にずっと地下って言うのも精神的に病んじゃいそうだから助かったな。
ありがとうお姉ちゃん。
「そして、皆にウルエの事を紹介するのよ!」
皆というのが一体誰の事を指しているのかは
分からないが、何となく予想は出来る。
何て言ったってここは魔王城なのだから
悪魔やら何やらの事を指しているのだろう。
まだお義父さん以外の悪魔を見た事が無いが、
ほぼ人間に近い姿の為、怖がることは無い。
「私の弟のウルエ、私と結婚する予定なの
もう子作りの約束もしてるのよ!ってね。」
(あぁ、やっぱり変な事言いやがりましたよ。
そうだよな、お姉ちゃんだもん)
・・・・
お姉ちゃんと上に行く約束をして数日が経ち、
遂に上に行ける日が訪れた。
ウルエはたった今、上へと繋がる螺旋状の階段を上っているいる最中だ。
初めは初めて自分の足で上る螺旋階段に興奮して
ひょいひょいと上っていたのだが、思った以上に階段は続いており、
ウルエは半分も上りもせずにばてていた。
「うぅ……疲れた。」
はぁ、はぁと息を上げ、螺旋階段に座り込んだ。
良くもこんなに長い階段をつくりやがったなとウルエは
この城を建てた何者かを恨んだ。
「全く、本当に可愛らしいウルエ。
私がおぶって上まで連れて行ってあげる!」
「え、良いよ、頑張って自分で上るから。」
「駄目よ。お姉ちゃんの言う事聞きなさい。
ウルエは私におんぶされないと行けないの。」
「……分かった。お願い。」
強がって頑張って上ると言ってしまったが、
よくよく考えてみれば今の体力じゃ絶対無理な事だった。
ここは素直にお姉ちゃんに任せよう。
お姉ちゃんがしゃがんでくれて、
ウルエはお姉ちゃんの方に腕を置き、
両足を腕で固定して貰らった。
一応落ちない様に抱き着くように力を入れる。
「よいしょっ、うん、ウルエは軽いね。」
「そう、なのかな?」
(確りと出された料理は食べて、
大して運動もしていないけどそんな軽いのかな?)
「うん、私よりも軽いよ。」
お姉ちゃんはそう言って螺旋階段を上りだした。
ウルエの事をおんぶしているにも関わらず
一歩一歩がとても軽い。
本当に自分が痩せすぎなのではないかと不安になるほどに。
三歳年上と言うだけで此処まで差が出るのだろうか、
身長は確かにお姉ちゃんの方が大きいが、
体力や力の差が圧倒的に違いすぎている。
これが種族の差と言うものなのか。
(そう言えばお義父さん達は俺の事をどうするつもりなのだろうか)
ウルエの種族は人間であり、
そんなウルエとは違ってお義父さん達は悪魔で
いずれかはこの事をウルエに打ち明けて来るだろう。
ウルエとしては初めから知っている事なのでどうでも良いのだが。
(このまま俺を普通に人間の子として育ててくれるのか、
魔王の息子として育ててくれるのか、
何方からと言うと普通に平和に育ててくれるのを望む)
「ねぇ、ウルエ」
そんな事を考えていると、
お姉ちゃんが話しかけて来た。
「ん、何?」
「私はもう八歳になったんだよね。」
「うん、そうだね。
俺はお姉ちゃんの三つ下だから五歳だね。」
一体いきなりどうしたのだろう。
ウルエはまた変な事を言い出すのか、それとも真面目な話なのか、
半分期待しつつ半分不安な気持ちで次の言葉を待った。
「あのね、私が十歳になったら学園って所に行かなくちゃならないの。」
「が、学園……」
異世界に来ても勉強をしに行かないといけない、
分かっていたけどやっぱり勉強は嫌い。
(でも、まぁ平和に過ごせるなら良いんだけどね)
「学園に行っている暫くの間はウルエと離れ離れにならないと行けないの、
私としてはウルエを寮に連れて行きたいんだけどそう言う訳には行かない、
ウルエが十歳になるまで三年間、ウルエと合えない……」
「うん……」
三年間と言うのはウルエが十歳になって
学園に行くまでの間。
(……三年間か、流石に今までずっと一緒に居たから寂しくなりそうだ)
「私は耐えらないかも知れないけど、頑張るから。ウルエも頑張ってね。
お姉ちゃんが居なくても確りとご飯たべるんだよ、
確りと寝て朝起きて……一人でお風呂入れる?
お姉ちゃんが居なくても……」
おんぶされているため、
お姉ちゃんの顔を見る事は出来ないけど、
鼻を啜り涙声から察した。
お姉ちゃんは少し大げさかも知れないけど、
確かにウルエも寂しい、何時も朝は一緒に寝て居る
お姉ちゃんが起こしてくれるため、朝起きれるかも不安で。
暇な時はお姉ちゃんが遊んでくれたから何とかなったけど、
居なくなったら何をしていけばいいんだ。
(……何だかんだ言って俺も相当お姉ちゃんに依存してる
シスコンなのかも知れないな)
「俺は大丈夫だよ、次お姉ちゃんと合う時には
物凄く立派に成長して驚かせるんだから!
だからお姉ちゃんは楽しみに待ってて。」
「ウルエ……
うん……お姉ちゃん楽しみに待ってる、待ってるからね。」
まだ別れは二年も先なのにどうして今こんなにも盛り上がっているのだろう、
ウルエは冷静にそんな事を考えてしまったが、
心の奥底に閉まっておくことにした。
・・・・
気が付けば螺旋階段の終わりまで着ており、
目の前には絵画の裏側が広がっている。
絵画の真ん中には隙間があり、
その隙間に体を入れて絵画から抜ける。
「うわぁ!」
「到着っと!」
久しぶりに見る光景にウルエは感嘆の声を上げた。
それから直ぐにウルエはお姉ちゃんに連れられ、
移動し大きな扉の前に着くとそこでおんぶをやめた。
「この先で皆が待ってるんだよ。」
「皆……」
初めて会う人だらけだから当然緊張する。
ウルエは自分の顔を軽く叩き気合を入れた。
「よし。」
「じゃあ、行こうか。」
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