異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト

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六十五話 【牢屋】

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「子供達にはばれない様に地下の牢に入れておいてくださいね」

 大魔王に指示された通り悪魔たちは気絶した竜人族達を
 ウルエ達の部屋がある更に地下深くにある牢屋に運ぶ。
 そこには本当に牢屋しか無く一直線の通路の左右びっしりと牢屋が設置されている。
 その牢屋に一人一人別々に竜人族を入れていく。

 この牢屋は只の牢屋ではなく、中に入った者を洗脳する牢屋なのである。
 正確には中に洗脳を得意とする魔物が生息しており、
 本人が気付かない間に洗脳が完了しているというものだ。
 
 仕事を終えた悪魔たちは静かに地上へと帰っていく
 ウルエ達を起こさない様に――だが、そもそも誰かがウルエ達が寝ている事を確認したのだろうか?
 誰も確認していないのである。何時もなら寝ている時間だと判断しているだけだ。
 当然ウルエ達も成長する。大魔王達の何時もは彼彼女にとっては過去であり、
 何時もの時間帯はまだ起きているのだ。

 実際に悪魔たち全員が城をあけた時間帯にウルエとフェルは起きており、
 ウルエはエミやケインと会話をしてフェルは風呂に入っていた。
 そして悪魔たちが帰ってきた時間帯は丁度寝る時間帯だったのだ。
 だが、何かを担いでこっそりと地下に降りる悪魔たちの姿を見てしまった
 ウルエはそれが何なのか気になってしまいどうしても寝ることが出来ずにいた。

「気になるの?」

「うん、多分知らない方が良い事かもしれないけど」

 悪魔たちが地上に行ったのを確認してフェルはウルエの気配を戻して声を掛けた。
 実はウルエが起きているという事がばれない様にフェルはウルエの気配を消してあげていたのだ。
 この姉実に気が利くのである。
 
「捕虜だと思うわ」

「捕虜……それにあんなところに地下あったんだね」

 地上に上がる螺旋階段の下に隠し扉があり、
 その先に更に地下へと行ける階段があるのだ。
 十年間暮らしてきて初めて知った瞬間だった。

「あの地下に行けばあいつらの本性が分かると思うわ、行きましょ」

「え、うん……」

 悪魔の本性と言えばなんとなく想像が付き、
 魔王に拾われた時点でそういった事は覚悟はしているウルエだったが、
 いざ、その実態を目で確認しようとなると抵抗がある。
 半強制的にフェルに手を引っ張られなければ行くことはなかっただろう。

 地下への階段を下った先には衝撃的な光景が広がっていた。

「うわ……」

 左右どちらを見てもあるのは牢屋、遥か奥まで牢屋が続いている。
 あまりにも平和な日常とはかけ離れた光景を前に思わず声をもらす。
 牢屋の中からは何かが犇めく音が聞こえてきて本能的に後退ってしまう。
 だが、フェルはそれを許さなかった。
 
 悪魔と言う種族が如何に残酷な事をしているのか
 その事を知ってもらい早く魔王たちとの縁を切ってもらおうという根端だ。
 後退るウルエの手を引っ張り奥へと進んでいく。

「っ……」

 牢屋の中では気絶した竜人族に無数のワーム型の魔物が覆い被さっており、
 蠢き合い思わず寒気をしてしまうほど気味の悪い音を発している。
 
「ウルエ、これが現実よ」

「……」

 悪魔、それも魔王と大魔王に育てられている以上は、
 こういった事がある事は覚悟していた。
 例えお義父さんとお義母さんそれに皆がどんだけ非人道的な事をしようとも
 命を救ってくれたことには変わりはなく、家族である事も変わりはない。
 だから、ウルエはこの出来事の全てを受け入れる。

「うん、覚悟はしてたよ。大丈夫、人間だって同じような事をしているよ」

 悪魔だけがこういった非人道的な行為をしている訳では無い。
 人間だってほかの種族だってこういった道は歩んできている。
 そのことを微かに覚えているウルエは力強くそういった。

「そう……」

 その発言にフェルは素直にこの作戦は失敗だと判断した。
 何年間も一緒にいる為、ウルエの声の調子によってそれが本気なのかどうかもわかってしまうのだ。
 
「お姉ちゃん、あれ見て」

 牢屋の中には沢山の魔物がいるはずなのだが、
 ウルエの指さす牢屋にはワームが一匹たりとも存在しておらず、
 代わりに無残に切り裂かれた魔物の残骸が転がっていた。

「あら、まだまだ元気の良いのがいたのね」

 牢屋の中には身体の彼方此方から血を流し、
 今にも倒れてしまいそうな一人の男がいた。
 男にしては長い黒髪で鋭い眼はフェルの事を睨み付けていた。

「幾ら頑張ってもそこから出る事は出来ないけど、暇だし殺しておこうかな」

「え、ちょっと!待ってくれ!!」

 フェルが敵意丸出しで男の方に手のひらを向けると
 急に態度が変わり正座をして真剣な眼差しを向けてきた。

「黙れ、弱者に生きる資格は――」

「お姉ちゃん、待って。殺すのはダメ。話を聞こう」

 今すぐにでも殺してしまいそうな勢いのフェルを止めたウルエ。
 前々から決めていた救える命は救おうという決意がそうさせたのだ。

「ウルエ、こいつは敵なのよ?
 遅かれ早かれ洗脳されて死んだ方がマシと思うようになるのよ。
 だったらここで今殺してあげた方が良いと思わない?」

 フェルの本心はどうなのかは知らないが、
 洗脳され操り人形のようになるのならば殺してしまった方が相手の為にもなる。
 その発言の裏を返せばフェルはこの竜人族に慈悲をかけているということになる。
 
「それは違うと思う。どのみち洗脳されてしまうのならば、
 それをうまい事利用した方が良いとは思わない?
 例えば、護衛となるようにするとか?」

 どうせ慈悲を掛けるならなんとしてでも生かそうというのがウルエの考えだ。
 例え悪魔たちの敵だったとしても、人間であるウルエは中立なのだから。

「護衛ね……そんなの私が居れば十分じゃない?」

「でも、お姉ちゃんが学園を卒業した後はどうなるの?
 ……正直に言って怖いよ」

 学園を卒業してしまえばウルエは一人で通うことになる。
 その際フェルが同伴するという訳には行かないだろう。
 そこで、この竜人族を利用するというのだ。

「確かにそうかもしれないわね……わかったわウルエ。
 感謝しろ、弱者よ、ウルエのお蔭で命拾いしたわね」

「あ、ありがとうございます!」
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