捨て猫を拾った日

トウリン

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捨て猫を拾った日

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 真白ましろが身に着けているものは、そう多くなかった。実用一点張りのフリースの長袖Tシャツと、同じ素材のボトム。
 ウェストにゴムが入ったジャージのようなボトムは、軽く引っ張っただけで彼女の細い腰に引っかかることなくするりと抜ける。それをベッドから放り投げると、真白は落ち着かなさそうに脚をもぞもぞと動かした。
 はにかんでいるかのようなその様子に孝一は眉をひそめながら、今度はTシャツに手をかける。

 一瞬、真白が身を硬くした。目が微かに見開かれ、浅い呼吸はずいぶん緊張しているようだ。
 それを宥めるように孝一は頭を下げて口づける。固く閉じている唇を舌先でくすぐり彼を受け入れるように促すと、それはためらいがちにわずかに開かれた。
 舌で真珠のような歯をなぞり、更に先へと侵入する。奥に引っ込められていた彼女の舌を探り当てて入念に弄んだ。

「……ふっぅん、ん……」
 鼻から抜けるような吐息を漏らし、真白の舌と唇が柔らかくなる。

 キスは単なる前戯に過ぎない筈なのに、孝一はなかなか先に進めない。懸命に口を開いてキスに応えようとする真白に対して胸の中に湧き起こるこの感覚を何というのか、彼には判らなかった。
 孝一は甘い蜜ででもあるかのように真白の唾液をすくい取りながら、小さな舌に絡めてきつく吸い上げる。ビクビクと震える小さな身体が彼の中に強烈な何かを掻き立てて、彼女を抱き潰してしまわないように孝一は理性を総動員させた。

 やがて荒い息をつきながらぐったりと力の抜けた真白の両腕から素早くシャツを抜き取り、ボトムと同じく投げ捨てる。その下には何も着けておらず、小振りな胸がむき出しになった。ハッとそれに気付いて隠そうとした真白の腕を捉えると、孝一は両手首を一まとめにして掴み、彼女の頭の上で固定する。

 少し身体を離して見下ろすと、小さな布きれ一枚だけを残した真白の身体は、やはり華奢だった。
 注がれる孝一の視線の中で、真白の頬が朱に染まる。その全身はガチガチに固まっていた。

「息、止めるなよ」
 彼女の耳元に口を寄せてそう囁くと、ビクリと肩が震える。

(それほど経験豊富というわけではないのか……?)
 そんなふうに自分の推測を修正しながら、孝一はトクトクと脈打つ真白の首筋に唇で触れた。

「ッ!」
 柔らかな皮膚を甘噛みし、舌を這わせると、真白が背筋を引きつらせる。
 孝一の唇はそのまま彼女の胸元を辿り、喉のくぼみに、鎖骨に、幾度も同じ刺激を与えていく。
 やがて行き着いたのは、小さなふくらみだった。

 孝一はその先端で頬よりも淡い色合いに染まって震えている突起を口の中に含む。
「ゃあ……んッ!」
 真白の喉からこぼれた仔猫の鳴き声のようなその声に、孝一の背筋を快感と高揚感が入り混じったものが走り抜けた。
 彼は固くしこったそれを舌先で転がし、吸い、そっと歯を立てる。
「や……やめ……」
 身をよじる真白を抑え込み、孝一はもう片方のふくらみには空いている手を伸ばした。
 直接刺激していないそこはまだ柔らかかったが、親指の腹でこねてやると見る見るうちにふっくらと立ち上がった。はっきりと形を持ったそこを、孝一は爪の先で優しくひっかいてやる。

「んぁ」
 漏れた声は途中で止まり、目を上げると真白はきつく歯を食いしばっていた。
「我慢しないで声出せよ」
 こらえる姿も可愛らしいが、声も聞かせて欲しいものだ。
 だが、孝一のその台詞に、ギュッと目を閉じた真白は頭《かぶり》を振った。彼のことを見もしない彼女に、何となく孝一も意地になる。

 先端を離れ、ふくらみのすぐ下を強く吸い上げた。

「ッふぅん」
 鼻から抜けるような声に孝一が顔を上げると、大きく見開かれた真白の目と行き合う。その目を見返して小さく笑い、吸った場所にできたうっ血の痕を舌でなぞってやると、彼女の身体にさざ波が走った。
 皮膚の薄い所を狙った口づけに、真白は時にこらえきれない微かな喘ぎを漏らして全身を震わせる。
 そうしていくつもの紅い印を残していくと、やがて彼女の全身が完全に力が抜けた。

 孝一は捉えていた真白の手首を放して彼女に覆い被さり、再び唇を重ねながら最後に残された小さな布きれに手をかける。真白はもそもそと抵抗らしきものを見せたが、彼女の舌を吸い上げ優しく食んでやると、それも消え失せた。

 何もかもを取り去った真白は、目を両手の甲で覆って息を乱している。
 露わになった彼女の全てを、孝一は隅々まで目で辿った。
 濡れた小さな唇も、先端をピンと立たせた豊かとはいえない胸も、両手で掴めそうなほどの腰も、そしてその下の密やかな和毛も、孝一の中に荒々しく貪ってしまいたいような、優しく包み込んでやりたいような、相反する様々な気持ちを掻き立てる。

 孝一は手早く服を脱ぎ捨てると、すでに痛いほどに張りつめている身体に避妊具を着けた。今すぐにでもそれを真白の中に埋めてしまいたい。彼女との距離をゼロにしてしまいたい。
 ――だが、真白にほんのわずかな苦痛も与えたくない。

 孝一は懸命に暴れ出しそうな渇望の手綱を引き締めながら弛緩した真白の膝を割り、その間に彼の身体を差し入れる。
 大きく脚を開かれ、真白は怯んだように孝一を見上げてきた。

「怖がるなよ」
 囁いて、彼はついばむように真白の唇にキスを落とす。軽いキスで緊張を和らげながら、片手を彼女の下腹に置いた。おののきを宥めるようにさすり、ゆっくりと下に滑らせていく。
 柔らかな茂みを掻き分けそこに隠されているものを探り当てると、孝一の腰を挟んでいる真白の腿にビクリと力が入った。

「大丈夫、力を抜いて」
 言いながら孝一は手のひら全体でやわやわと丸いふくらみを撫で、指先で温かな蜜を滲ませている場所をくすぐる。
「や……ぁ……」
 か細い声を上げて潤んだ目を再び手で隠そうとする真白の仕草に、孝一の中には抑えられない嗜虐心が生まれた。
「ちゃんと俺を見ろよ」

 掴み取った彼女の手を口元に近付け、爪の一つ一つにキスをしながら、孝一はツプリと彼女の中に長い指を挿し入れていく。蜜で潤んだ襞は抵抗なくそれを受け入れ、絡み付くように包み込んできた。
 真白が、ハッと大きく目を見開いて孝一を見つめてくる。彼女は彼のその行為がまるで思いも寄らない事であるかのように息を詰めていた。

 真白の奇妙な反応を訝しく思いながらも、孝一はわざと水音が立つように彼女の中の浅いところを刺激しながら親指で茂みの中を探った。ふっくらと柔らかく膨れた芯を見つけ出し、押し上げるように刺激してやる。

「やッ」
 途端、真白の身体がビクンと跳ね、悲鳴に近い嬌声を上げた。ろくに愛撫も受けたことがないのか、彼女の目には狼狽が浮かんでいる。
 眉をひそめてその様子を見つめながら、孝一は慎重に指を動かした。
「ダメ、それ、やめ――ッ」

 やはり、慣れていない。
 孝一は身をよじって逃げようとする彼女の腰を片腕で抱え込み、笑いを含んだ声で囁く。
「『ダメ』、じゃないだろ。これは『イイ』っていうんだよ」
 溢れ出た蜜をすくい取り、滑らかな動きで円を描くように花芯を愛撫する。

「ひぅッ」
 真白は喉をひくつかせ、漏れてしまう声を抑えようと手の甲に歯を立てた。
 懸命にこらえようとする彼女の姿には、たまらなくそそられる。だが、その為に彼女に傷が付くのは受け入れられない。

 孝一は真白の手を外させ、身を乗り出して口づける。今度は舌には触れず、彼女の頬の内側や口蓋をなぞった。

 口を封じられ、真白の喉の奥ですすり泣くようなくぐもった声が響く。
 孝一は涙の滲んだ眦にキスをし、そして囁く。
「自分を噛むなよ。どうせなら、俺を噛め」
 その為に真白の唇に親指を当て、孝一は溶けきった蜜壺にもう一本、指を挿入しようとした。

 が。

「い……たッ」

 感じられたのは、明らかな抵抗。そして、真白の口から洩れた小さな悲鳴。
 その二つに、真白の服を脱がした時に感じた孝一の疑念は確かなものになる。
 見開いた大きな目の中に微かな怯えが見えて、孝一はそっと指を引き抜いた。
 わずかな間、彼の中に迷いが生じる。処女を相手にするのは、これが初めてだった。

 真白の為には、ここで止めるべきなのかもしれない。だが彼女を欲しいと思ってしまった彼の身体は、それを許しそうもない。今すぐにでも彼女の全てを奪い尽くしてしまいそうなほどに彼は昂ぶっていた。

 真白の眼差しは不安そうに揺れている。
 頼りなさそうな女など、まったく好みではなかった筈だ。それなのに、真白のその心許なげな眼差しに、孝一は一層惹き付けられる。
 思わず彼女をきつく抱き締め、孝一は衝動に駆られた噛み付くようなキスを何度も繰り返した。
 そうして、息も絶え絶えになった真白と唇を触れ合わせたまま、囁きかける。

「もっと、何も判らなくさせてやるよ」
「え……?」

 愛撫とキスの余韻で涙を浮かばせた目をしばたたかせて、真白が訝しげな声を漏らす。
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