捨て猫を拾った日

トウリン

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捨て猫を拾った日

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 孝一は軽く笑って真白の太腿を掴んで肩の上に担ぎ上げると、その内腿に軽くキスをした。

「やっ!」
 小さな悲鳴と共に真白が手を伸ばして孝一の頭を押しやろうとしたが、そんな抵抗は些細なものだ。
「こんな格好、やだ、恥ずかしいよ!」
 髪を引っ張られる痛みに少々顔をしかめつつ、孝一は構わずキスを徐々に上へと進めていく。彼の吐息が和毛を震わせたところでようやくその意図を悟ったらしい彼女が息を呑み、直後本格的に暴れ始めた。

「え……え? コウ、ちょっと、待って、そんな、ダメ」
 パニック寸前という風情の真白の声は、孝一の嗜虐心をいっそう煽る。
「リラックスしろよ」
 慌てる真白には取り合わず、彼女の太腿をガッチリと固定して、孝一はついにそこへと口づけた。密やかな茂みの中から探り当てた蕾をざらつく舌でこすり真珠か何かのように転がすと、ビクンビクンと彼女の腰が跳ね上がる。

「や……やぁあん、んんッ――ふ……ぅッ、ん」
 上がった啼き声はすぐにくぐもった。上目遣いに見やった孝一は、そこに両手できつく口を押えた真白を見る。

 孝一は右手を彼女の脚から放し、蜜を溢れさせる泉へと再び指を挿し入れた。充血し、更に質感を増した粘膜が包み込んでくる感触に、危うく彼の理性が吹き飛びそうになる。

 真白の中に深く分け入り、思う様に蹂躙したい。
 そんな身勝手な欲望を、孝一は荒く息をついてからくもやりすごした。恐らく――いや、確実に初めての経験なのであろう真白に、とにかく快楽を与えてやりたい。でき得る限り、苦痛を与えたくない、そんな気持ちがその欲望を上回った。
 彼自身の疼きを堪えながら、孝一は真白の奥まで届いた指をゆっくりと動かし、その内壁を隅々までなぞる。

「ん……んん、ん、ふぁ、ん」
 真白は両手で覆ったその隙間から、時折小さな声が漏れた。だが、そんなふうに隠されては、孝一に触れられて心地良く感じているのかいないのかが判らない。
「声、出せよ」
 真白に触れ続けながらそう言ったが、彼女はやっぱり両手をどかすことなく頭を振る。
 執拗なほどに丹念に彼女の中を探索していた孝一の指が一点をこすった時だった。

「ゃッ!」
 抑えきれなかった小さな声と共に、ヒクンと真白の身体が反応する。
 顔を上げると戸惑ったような彼女の眼差しがあって、孝一はニヤリと笑った。
「ここがイイんだな?」
「んんっ!」
 孝一が指を曲げてその場所を強めに刺激すると、ひときわ高く、真白の喉が鳴る。理性で彼女が自分の感じているものを隠そうとしても、身体は鋭敏に反応した。

 やわやわと蠕動する中に、孝一は慎重にもう一本指を侵入させる。そうして、その二本の指で中を、舌と歯を使って小さな花芽を攻め立てた。肩に担いだままの真白の右の腿ががくがくと痙攣し、自由なもう一方の脚はシーツを掻く。

「あ……あ……、ダメ、それ、ヤダ、何か、ヘン――ッ!」
 切羽詰まった声を上げる真白の四肢も背中も強張っているのに、孝一の指を包み込む襞はもっと奥へと引き入れようとしているかのようにヒク付いた。際限なく溢れる蜜が手を伝っていく感触に、孝一の背筋にゾクゾクと興奮が走る。

(全てを、喰い尽くしてしまいたい)
 不意に生じたその感情が、組み敷いた相手に対する原始的な支配欲なのか、それとも真白にだけ抱くまた別の何かなのか、彼には判らない。ただ、これまで一度として、肌を合わせた相手に対してそんなふうに思ったことがないのだけは確かだった。
 彼の中にあるものがその願望だけであれば、とうにそうしていただろう。しかし、その凶暴な欲望のすぐ裏側には、真白を傷付けたくないという想いが同居している。それが孝一を尽きぬ愛撫へと駆り立てた。
 他の女を抱く時も、前戯はする。だがそれは、孝一自身が快楽を得る為の準備に過ぎなかった。いつも自分本位のセックスで、相手の満足など考えたことがない。だから、彼のすることでどんなに腕の中の女が悶えようとも、何も感じたことがなかった。
 だが、今、息を詰め、身体を震わせ彼の動き全てに反応する真白を見ていると、それだけで彼自身が達してしまいそうなほどの満足感が込み上げてくる。そうして、もっと彼女を啼かせたい、自分が与える快楽で狂わせたいと思ってしまう。
 色気があるとは言えない真白の身体に触れれば触れるほど、孝一の中にはこれまで知らなかった様々な感覚が生まれてくるのだ。
 だから、もっと、もっと彼女を震わせたくなる。

 孝一にとっては瞬き程の時間にしか感じられていなかったが、真白にとってはそうではなかったようだ。
 執拗な孝一の責めを受け続け、息も絶え絶えになった彼女が、唐突に息を詰める。

「は……ぁッ、んん――!」
 唇を引き結んだ真白の全身が突っ張り、内腿に痙攣が走った。そして、次の瞬間、彼女の中にある孝一の指がきつく締め付けられる。
「あ……あ……お腹、が……おか、しい……」
「おかしくない。それはイッただけだ」
 放心した様子で呟く真白に、孝一は身体を起こして、小刻みに震え続ける彼女の身体を宥めるように抱き締めた。時折、達した余韻に華奢な身体がピクンと跳ねる。
「イッ、た――?」
「そう。気持ち良かっただろう?」
「何だか……よく、わからない。けど……」
「けど?」
「はずかし、かった」

 真白の顔は孝一の胸に伏せられていて見ることができない。けれど、栗色のクセ毛から覗く小さな耳は、真っ赤だった。それがあまりに美味そうで、孝一は首を捻じってパクリとくわえる。
「ひゃうッ」
 不意を打たれた真白が頓狂な悲鳴を上げて首を竦める。孝一は構わず柔らかな耳朶を口に含み、舌で転がした。
「大丈夫、すぐに全部慣れるさ」
 耳の中に吐息を吹き込むように囁いて、彼はその後ろの薄い皮膚を痕が残るほどに吸い上げる。
「ゃあ……んッ」
 イッたばかりで敏感になっているのか、真白はそれだけで背筋をびくつかせた。少し離れて彼女の顔を覗き込むと、そんな反応を示してしまう自分の身体に戸惑っているように心許なげな目で見返してくる。
 その眼差しに追いやられるように孝一は真白の唇を奪い、その舌を捉え、その吐息を吸い込んだ。

 思うがままにキスをむさぼって、やがてぐたりと全身の力が抜けきった真白から腕を解き、孝一は彼女の腰の下に手を入れる。それを持ち上げ、耐え難いほどに昂ぶりきっている屹立を、蜜をこぼしてとろけている入口にそっとあてがった。
 先端が触れ合っただけで、ジンと痺れるような感覚が彼の腰を走り抜ける。
 正気を取り戻しかけているらしい真白の目が、ゆるりと孝一に向けられた。それを見つめながら、ジリジリと腰を押し進めていく。

「んぁ……」
 ただでさえ大きな目を更に見開いて、真白が喘ぐ。浅い呼吸は痛みによるものなのかもしれなかったが、孝一はもう引き返せなかった。
 ともすれば衝動に任せて突き上げてしまいそうになるのを懸命に抑え、孝一は額に汗をにじませて最大限の自制心を振り絞って己をコントロールする。

「は……ぁ……」
 真白の口から苦しそうな吐息が漏れる。彼女の中はきついが、溢れさせた蜜で孝一の猛りをじりじりと受け入れてくれた。
 だが、じきに小さな抵抗に行き当たる。

「も、終わり……?」
 動きを止めた孝一に、真白が潤んだ目でそう問い掛けてきた。
「いや――まだだ」
 むしろこれからが本番なのだとは言えず、彼は細い腰を軽くさする。
「んん」
 真白が微かに身をよじるだけで、孝一はめまいがするような快感に襲われた。

(傷付けたくはない、が……)
 どうすれば真白に痛みを与えずに済むのか、彼にはさっぱり判らなかった。何しろ、これまではすでにそれを愉しみとして覚えている者ばかりを相手にしてきたのだから。
 わずかな逡巡の後、孝一は胸の中で呟く。

(もう、無理だ)
 逃れられないように真白の腰をしっかりと掴み、小さく息を吸って、次の瞬間一気に彼女を貫いた。

「ヒゥッ」
 白い喉を突いて出た鋭い悲鳴。
 真白は自らの拳に歯を立てて肩を震わせている。
 全てが真白に包み込まれるのを感じ、障壁を破って彼女の最奥まで到達したことに孝一は指の先まで言いようのない満足感に満たされる。が、直後、閉じられた彼女の眦から零れ落ちた滴を目にして鼓動がドクンと乱れた。彼は両手を伸ばして真白の手首を取り、拳に刻まれた歯の痕に口付ける。そうして、固く握り込まれた手を開かせて、指の一本一本にまたキスをした。

「痛い、よな? ……すまない」
 ためらいがちにそう言った孝一に、真白は小さく首を振った。彼女の手のひらに置かれた彼の親指を、細い指が握り返してくる。
「ちょっと、だけ――でも、だい、じょうぶ」
「シロ……」
 頬を微かにひきつらせた彼女の強張った微笑みに、孝一の全身の血管が脈打った。

(クソ、イきそうだ)
 孝一は奥歯を食いしばってそっと腰を揺する。と、彼の手を握る真白の指に力が入った。

「んうッ」
「つらいか?」
「んん、へいき」
 真白はそう答えたが、無理していることが明らかな笑顔でそう答えられても、鵜呑みにできるわけがない。

 孝一は右手を下げて真白とつながるその場所へと伸ばした。そして、ついさっきまで舌と歯を使って入念な愛撫を施していた小さな真珠に触れる。

「ふぁっ!?」
「ッ!」
 不意打ちの刺激に真白が身体を縮め、同時に彼女の中にいる孝一も締め付けた。
「もう少し、力を抜け」
「……できない……」
 半分泣きそうな顔の真白に、孝一を酩酊感に似たものが襲う。上体を倒して彼女の唇を奪い、彼女の舌に自分のそれを絡めながら、右手では間断なく小さなふくらみを弄び続けた。
「ん、ん、んん、ッふぅ……う」
 孝一が指先を動かす度に、彼の下で真白の身体がビクビクと跳ねる。塞いだ口から漏れてくる微かな呻きは、どんな嬌声よりも彼を興奮させた。

 花芯への刺激が与える快楽で彼女の中にいる彼の存在を忘れ去られてしまわないように、孝一はゆるゆると抽送を加える。優しく撫でられるようなその感触に彼の剛直は弾けそうになるが、必死に耐える。全ての動きで、一定のリズムを保ち続けた。
 いつまでもそうしていたい。
 だが、早く『その時』を迎えたい。
 孝一は痺れるような快楽を与えてくれるあえかな真白の吐息を受け止めながら、正反対な二つの思いの間を行き来する。
 と、唐突に孝一の胸の中の真白の様子が変わった。キスを止めてほんの少し身体を離すと、彼女の方から腕を伸ばして彼の首にすがりついてくる。

 ゆっくり、優しく、と動きを制御しようとする理性を裏切り、孝一の動きは次第に早く、強くなっていく。
 グッと、彼の高まりが真白の中をこすり上げた、時だった。

「や、ぁぅッ」
 真白が小さな悲鳴を上げたかと思うと背を引きつらせ、それまで以上の強さで彼女の中がきつく収縮した。
「う!」
 思わず呻いた孝一の耳元に、息を切らせた真白が口を寄せる。そして、甘い声で熱に浮かされたように囁いた。
「あ……あ……コウ、コウ、好き、大好き」
 それが鼓膜に届くと同時に、孝一の脳髄を信じられないほどの快感が貫く。両腕で真白の身体を折れんばかりに抱き締め彼女の中を深く突き上げた瞬間、彼は初めて知る強烈な悦楽と共に達していた。
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