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魔術師団編
35の2.元凶はお前じゃっ!
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しかしながら、キッカケになったのは私への説明だったワケだが。日を改めてルディのご機嫌をとっておくかな。
部屋の中では、ラッセルとコークス先生がお茶を飲みながら、様々な書類を並べて話し合いをしていたようだ。私を確認すると、先生がにこやかに話しかけてくれる。
「廊下での各隊長との面談はどうでしたか? なかなか味のある人たちでしょう? 険悪な気配が感じられなかったので、みなさんあなたを気に入られたようですね」
「いやあ、レイニー隊長とロイズ隊長はものすごく険悪でしたよ?」
「ふふふ、あの方々はあれが通常ですから。仲の良いことです」
あれで仲がいいだって? やっぱり魔術師連中って変な人ばっかじゃん。私にはまだまだ理解できない領域があるみたい。
なんとも微妙な表情を浮かべて、促されるままにソファで寛ぐ。
と、今さっき対面したばかりのロイズ隊長が部屋にやってきた。
おやや? と彼を見ていたら、にこやかな笑顔で「師団長と打ち合わせがあってね」と答えをもらう。
表情から察してもらえるなんて、さすが紳士、空気が読める男だわ。
私は邪魔にならないように席を外して、離れた場所で勉強をすることにした。
まだまだ頭に叩き込まないといけない常識やしきたりがいっぱいだからね。
ソファでは、先ほどの会議の内容に付随したものらしく、着々と作戦が進んでいるのがわかった。
私も、自分のせいで周りの皆さんに迷惑かけることがないように、出来るだけ貴族っぽく振る舞う練習をしなくちゃね。
集中して勉強していたら、あっという間に時間も過ぎたらしい、向こうの打ち合わせもひと段落して談笑してるのが耳に届く。
チラリとみた私の視線にロイズ隊長が気づいたようで、話しの内容を私のことに切り替えてきた。
「それにしても、師団長がここまで目をかける人物が現れようとは。彼女、何者ですか?」
「何者、と言われてもな。表現し難いが……ふむ、やはり『異物』だな」
カッチーンっ!
またもや『異物』扱いかいっ。
思わずラッセルに向かって鬼の形相になり、両手の指先を曲げ、全指でヤツの顔を引っ掻いてやろうと頭を低くして身構えた。
それを見かけたロイズ隊長は、すかさず私の側に来て、優しく片手を包み込むようにしながら話しかけてきた。
「可愛いレディにそんな態度をとらせるなんて、師団長はまだまだ女性の気持ちに疎いですね。本来女性は愛でるものであって、決して貶すものではないのですから」
ニッコリと笑って「ねえ、そう思うでしょ?」と言われたら、さっきの毒気も抜かれてしまう。
なるほど、こりゃ免疫ない女子にゃイチコロだわぃ。
しかしなあ、私の怒りの矛先はラッセルであって、アンタには関係ない。そもそもアンタのその薄っぺらい態度に問題あるんじゃないの?
しかーも、優しい言葉をかけて穏便に済ませようとする手馴れた感じに少々苛立つ。それだからレイニーさんだってイライラするわけじゃん。
甘ったるい言葉と態度で私を丸め込もうという魂胆と、うやむやにしてさっさと話しを先に進めたい、という思惑が透けて見えて、だんだんと腹が立ってきた。話しを進めるのは私が一言ラッセルに物申してからよっ。アンタがどうこう決める権利はないわっ。不満を吐き出してスッキリしたんだったら、その後は適当に丸め込まれてやるわよっ。
ふん、いかにアンタが乙女ゲームから抜け出してきたような王子様キャラだとて、私が君に落ちることはない。
昔の、ゲームにハマってた頃の私に向かって言ってくれてたら、萌えキュンしてただろうがなっ。
アタシゃ、乙女ゲームはとっくに卒業してんのさっ。
すかさず私も極上の笑みを浮かべてロイズ隊長に向き合い、次の瞬間、渾身のアッパーカットをお見舞いした。
よっしゃ、決まった!
部屋の中では、ラッセルとコークス先生がお茶を飲みながら、様々な書類を並べて話し合いをしていたようだ。私を確認すると、先生がにこやかに話しかけてくれる。
「廊下での各隊長との面談はどうでしたか? なかなか味のある人たちでしょう? 険悪な気配が感じられなかったので、みなさんあなたを気に入られたようですね」
「いやあ、レイニー隊長とロイズ隊長はものすごく険悪でしたよ?」
「ふふふ、あの方々はあれが通常ですから。仲の良いことです」
あれで仲がいいだって? やっぱり魔術師連中って変な人ばっかじゃん。私にはまだまだ理解できない領域があるみたい。
なんとも微妙な表情を浮かべて、促されるままにソファで寛ぐ。
と、今さっき対面したばかりのロイズ隊長が部屋にやってきた。
おやや? と彼を見ていたら、にこやかな笑顔で「師団長と打ち合わせがあってね」と答えをもらう。
表情から察してもらえるなんて、さすが紳士、空気が読める男だわ。
私は邪魔にならないように席を外して、離れた場所で勉強をすることにした。
まだまだ頭に叩き込まないといけない常識やしきたりがいっぱいだからね。
ソファでは、先ほどの会議の内容に付随したものらしく、着々と作戦が進んでいるのがわかった。
私も、自分のせいで周りの皆さんに迷惑かけることがないように、出来るだけ貴族っぽく振る舞う練習をしなくちゃね。
集中して勉強していたら、あっという間に時間も過ぎたらしい、向こうの打ち合わせもひと段落して談笑してるのが耳に届く。
チラリとみた私の視線にロイズ隊長が気づいたようで、話しの内容を私のことに切り替えてきた。
「それにしても、師団長がここまで目をかける人物が現れようとは。彼女、何者ですか?」
「何者、と言われてもな。表現し難いが……ふむ、やはり『異物』だな」
カッチーンっ!
またもや『異物』扱いかいっ。
思わずラッセルに向かって鬼の形相になり、両手の指先を曲げ、全指でヤツの顔を引っ掻いてやろうと頭を低くして身構えた。
それを見かけたロイズ隊長は、すかさず私の側に来て、優しく片手を包み込むようにしながら話しかけてきた。
「可愛いレディにそんな態度をとらせるなんて、師団長はまだまだ女性の気持ちに疎いですね。本来女性は愛でるものであって、決して貶すものではないのですから」
ニッコリと笑って「ねえ、そう思うでしょ?」と言われたら、さっきの毒気も抜かれてしまう。
なるほど、こりゃ免疫ない女子にゃイチコロだわぃ。
しかしなあ、私の怒りの矛先はラッセルであって、アンタには関係ない。そもそもアンタのその薄っぺらい態度に問題あるんじゃないの?
しかーも、優しい言葉をかけて穏便に済ませようとする手馴れた感じに少々苛立つ。それだからレイニーさんだってイライラするわけじゃん。
甘ったるい言葉と態度で私を丸め込もうという魂胆と、うやむやにしてさっさと話しを先に進めたい、という思惑が透けて見えて、だんだんと腹が立ってきた。話しを進めるのは私が一言ラッセルに物申してからよっ。アンタがどうこう決める権利はないわっ。不満を吐き出してスッキリしたんだったら、その後は適当に丸め込まれてやるわよっ。
ふん、いかにアンタが乙女ゲームから抜け出してきたような王子様キャラだとて、私が君に落ちることはない。
昔の、ゲームにハマってた頃の私に向かって言ってくれてたら、萌えキュンしてただろうがなっ。
アタシゃ、乙女ゲームはとっくに卒業してんのさっ。
すかさず私も極上の笑みを浮かべてロイズ隊長に向き合い、次の瞬間、渾身のアッパーカットをお見舞いした。
よっしゃ、決まった!
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