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王宮編
72の2.やめてよっ!
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どういうこと? あんぐり口を開けてボーっとしていたら、遠くから誰かの声が聞こえてくる。
「……ラ、サ……」
辺りが急に真っ暗になり、慌てて周りを見渡すが目印になるようなものもなく、怖くなってその場にしゃがみ込んだ。
ギュッと瞑っていた目をゆっくりと開けると、ルディのチョーどアップな顔が目の前にあった。
「ぐぁっ、でっ、ちょっ……とぉっ」
ゆさゆさと揺さぶってくる、至近距離のルディの顔に向かって、思いっきり頭突きを食らわしてヤツを悶絶させた。自己防衛だし、これは仕方ない。
なんてことするんだよ、ドキドキするじゃないか。ホントやめてくれやっ!
「どぅあーーっ、でーーぃ」
「ふん、急に私の前に現れるからよっ……全くやめてよねっ。くぅぅ、私だって結構痛いんだからっ」
のたうち回るルディに向かって喋るが、頭突きの痛みが自分にも襲ってきて、両手で頭をさすってその痛みを散らした。
「こらぁ、サーラには感謝されることはあっても、頭突きして非難される覚えはねぇっ」
おんや? どういうことだ? 私、ルディにお礼を言う出来事なんてあったかしら?
まあ、普段から私の護衛をしっかりやってくれてるし、時には雑用みたいなもんまで手伝ってくるてたりするからね。
ホントは嫌だったのかな? 無理させちゃってたんだったら、そこは頑張ってくれてた分、感謝しておかなきゃ。
「えっと、いつも雑用とかまでやってくれてありがと。根回しとか気遣いとかも。これからもよろしくね。なんならスカート履いて侍女やってもいいよ」
「ちっがーーうっ。誰が侍女じゃいっ! 俺はスカートなんか、ぜってー履かねえっ。礼を言うのはそこじゃねえだろっ」
おや? 違ったか。なら何に対してだろう。
ここはひとつ、胸に手を当ててじっくりと考え込んで……
……何も思いつかん。降参だ。
「ルディごめん。心当たりないんだよね」
ぽややんとした私の顔をみて、やれやれと半分呆れ気味にため息をついたルディがピシリと指差して私に言った。
「お前、また三日ばかり寝たまま起きなかったんだよ。前みたくならないように、早めに団長……あっと違った、ユーグレイ公に頼もうかと思ってたんだけど、その前に俺が起こしてみることになったんだって。だから俺は良いことしてやったんだぜ、感謝しろよな」
「ええっ、そんなはずないし。さっきラッセルの面会が終わって、少しだけ横になっただけだよ。なんで三日も経ってるのよ」
「知らねえよ、とにかく俺はミリアルたちからも頼まれたんだって。お前が起きねえから助けてくれって。ったく、姐さんは仕事で出かけっ放しの大変な時なんだぜ?」
信じられない……ちょっと目を瞑っただけで三日も過ぎてるなんて。冗談やめてよね。ビックリしてミリィちゃんを探して目が合うと、無言のままコクリと頷いている。
「ルディ、ホントありがとね。私も気をつける……って何に気をつければいいかわかんないけどさ」
後半は『ぼやき』に近かったが、とにかくお礼を言って感謝を伝えた。
全く不思議なこともあるもんだ。でも考えようによっちゃあ、あり得る話しかも。
なんてったって魔術や魔法がある世界だし、私が暮らしていた現代科学が発達した世界ではないのだから。こんな不思議な体験をしても半分受け入れている自分がいる。
「さて、今日はどんな予定かしら?」
気を取り直してメガネ侍女さんに問えば、ここ何日かのお茶会は全てキャンセルして緊急事態に対応していたとのこと。
確かに目が覚めるまでは誰にも会えないし、遊びにも行けなかったしね。
急に空いた時間をどう使おう?
まあ、たまにはゆっくりと一人で散歩もいいかしら。素早く身支度を整えてもらってから、近くの庭先へと散歩に出かけた。
「……ラ、サ……」
辺りが急に真っ暗になり、慌てて周りを見渡すが目印になるようなものもなく、怖くなってその場にしゃがみ込んだ。
ギュッと瞑っていた目をゆっくりと開けると、ルディのチョーどアップな顔が目の前にあった。
「ぐぁっ、でっ、ちょっ……とぉっ」
ゆさゆさと揺さぶってくる、至近距離のルディの顔に向かって、思いっきり頭突きを食らわしてヤツを悶絶させた。自己防衛だし、これは仕方ない。
なんてことするんだよ、ドキドキするじゃないか。ホントやめてくれやっ!
「どぅあーーっ、でーーぃ」
「ふん、急に私の前に現れるからよっ……全くやめてよねっ。くぅぅ、私だって結構痛いんだからっ」
のたうち回るルディに向かって喋るが、頭突きの痛みが自分にも襲ってきて、両手で頭をさすってその痛みを散らした。
「こらぁ、サーラには感謝されることはあっても、頭突きして非難される覚えはねぇっ」
おんや? どういうことだ? 私、ルディにお礼を言う出来事なんてあったかしら?
まあ、普段から私の護衛をしっかりやってくれてるし、時には雑用みたいなもんまで手伝ってくるてたりするからね。
ホントは嫌だったのかな? 無理させちゃってたんだったら、そこは頑張ってくれてた分、感謝しておかなきゃ。
「えっと、いつも雑用とかまでやってくれてありがと。根回しとか気遣いとかも。これからもよろしくね。なんならスカート履いて侍女やってもいいよ」
「ちっがーーうっ。誰が侍女じゃいっ! 俺はスカートなんか、ぜってー履かねえっ。礼を言うのはそこじゃねえだろっ」
おや? 違ったか。なら何に対してだろう。
ここはひとつ、胸に手を当ててじっくりと考え込んで……
……何も思いつかん。降参だ。
「ルディごめん。心当たりないんだよね」
ぽややんとした私の顔をみて、やれやれと半分呆れ気味にため息をついたルディがピシリと指差して私に言った。
「お前、また三日ばかり寝たまま起きなかったんだよ。前みたくならないように、早めに団長……あっと違った、ユーグレイ公に頼もうかと思ってたんだけど、その前に俺が起こしてみることになったんだって。だから俺は良いことしてやったんだぜ、感謝しろよな」
「ええっ、そんなはずないし。さっきラッセルの面会が終わって、少しだけ横になっただけだよ。なんで三日も経ってるのよ」
「知らねえよ、とにかく俺はミリアルたちからも頼まれたんだって。お前が起きねえから助けてくれって。ったく、姐さんは仕事で出かけっ放しの大変な時なんだぜ?」
信じられない……ちょっと目を瞑っただけで三日も過ぎてるなんて。冗談やめてよね。ビックリしてミリィちゃんを探して目が合うと、無言のままコクリと頷いている。
「ルディ、ホントありがとね。私も気をつける……って何に気をつければいいかわかんないけどさ」
後半は『ぼやき』に近かったが、とにかくお礼を言って感謝を伝えた。
全く不思議なこともあるもんだ。でも考えようによっちゃあ、あり得る話しかも。
なんてったって魔術や魔法がある世界だし、私が暮らしていた現代科学が発達した世界ではないのだから。こんな不思議な体験をしても半分受け入れている自分がいる。
「さて、今日はどんな予定かしら?」
気を取り直してメガネ侍女さんに問えば、ここ何日かのお茶会は全てキャンセルして緊急事態に対応していたとのこと。
確かに目が覚めるまでは誰にも会えないし、遊びにも行けなかったしね。
急に空いた時間をどう使おう?
まあ、たまにはゆっくりと一人で散歩もいいかしら。素早く身支度を整えてもらってから、近くの庭先へと散歩に出かけた。
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