異世界行って黒ネコに変身してしまった私の話。

しろっくま

文字の大きさ
143 / 249
王宮編

72の2.やめてよっ!

しおりを挟む
 どういうこと?   あんぐり口を開けてボーっとしていたら、遠くから誰かの声が聞こえてくる。

「……ラ、サ……」

 辺りが急に真っ暗になり、慌てて周りを見渡すが目印になるようなものもなく、怖くなってその場にしゃがみ込んだ。

 ギュッと瞑っていた目をゆっくりと開けると、ルディのチョーどアップな顔が目の前にあった。

「ぐぁっ、でっ、ちょっ……とぉっ」

 ゆさゆさと揺さぶってくる、至近距離のルディの顔に向かって、思いっきり頭突きを食らわしてヤツを悶絶させた。自己防衛だし、これは仕方ない。
なんてことするんだよ、ドキドキするじゃないか。ホントやめてくれやっ!

「どぅあーーっ、でーーぃ」
「ふん、急に私の前に現れるからよっ……全くやめてよねっ。くぅぅ、私だって結構痛いんだからっ」

 のたうち回るルディに向かって喋るが、頭突きの痛みが自分にも襲ってきて、両手で頭をさすってその痛みを散らした。

「こらぁ、サーラには感謝されることはあっても、頭突きして非難される覚えはねぇっ」

 おんや?   どういうことだ?   私、ルディにお礼を言う出来事なんてあったかしら?
 まあ、普段から私の護衛をしっかりやってくれてるし、時には雑用みたいなもんまで手伝ってくるてたりするからね。
 ホントは嫌だったのかな?   無理させちゃってたんだったら、そこは頑張ってくれてた分、感謝しておかなきゃ。

「えっと、いつも雑用とかまでやってくれてありがと。根回しとか気遣いとかも。これからもよろしくね。なんならスカート履いて侍女やってもいいよ」
「ちっがーーうっ。誰が侍女じゃいっ!   俺はスカートなんか、ぜってー履かねえっ。礼を言うのはそこじゃねえだろっ」

 おや?   違ったか。なら何に対してだろう。
 ここはひとつ、胸に手を当ててじっくりと考え込んで……
 ……何も思いつかん。降参だ。

「ルディごめん。心当たりないんだよね」

 ぽややんとした私の顔をみて、やれやれと半分呆れ気味にため息をついたルディがピシリと指差して私に言った。

「お前、また三日ばかり寝たまま起きなかったんだよ。前みたくならないように、早めに団長……あっと違った、ユーグレイ公に頼もうかと思ってたんだけど、その前に俺が起こしてみることになったんだって。だから俺は良いことしてやったんだぜ、感謝しろよな」
「ええっ、そんなはずないし。さっきラッセルの面会が終わって、少しだけ横になっただけだよ。なんで三日も経ってるのよ」
「知らねえよ、とにかく俺はミリアルたちからも頼まれたんだって。お前が起きねえから助けてくれって。ったく、姐さんは仕事で出かけっ放しの大変な時なんだぜ?」

 信じられない……ちょっと目を瞑っただけで三日も過ぎてるなんて。冗談やめてよね。ビックリしてミリィちゃんを探して目が合うと、無言のままコクリと頷いている。

「ルディ、ホントありがとね。私も気をつける……って何に気をつければいいかわかんないけどさ」

 後半は『ぼやき』に近かったが、とにかくお礼を言って感謝を伝えた。
 全く不思議なこともあるもんだ。でも考えようによっちゃあ、あり得る話しかも。

 なんてったって魔術や魔法がある世界だし、私が暮らしていた現代科学が発達した世界ではないのだから。こんな不思議な体験をしても半分受け入れている自分がいる。

「さて、今日はどんな予定かしら?」

 気を取り直してメガネ侍女さんに問えば、ここ何日かのお茶会は全てキャンセルして緊急事態に対応していたとのこと。
 確かに目が覚めるまでは誰にも会えないし、遊びにも行けなかったしね。

 急に空いた時間をどう使おう?
 まあ、たまにはゆっくりと一人で散歩もいいかしら。素早く身支度を整えてもらってから、近くの庭先へと散歩に出かけた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。 さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった! しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って? いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

処理中です...