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王宮編
79の2.忍者だ!
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私のせいでマリアさんの印象がマイナスになるのは考えものだ。ここは顔バレしないようにテキパキ仕事をこなそう。ただし忍者の精神は忘れずに。
しばらく飾り棚やソファを磨いていたら、これが意外と真剣になる。乾拭きしてツヤが出るのが面白くて、ついつい気合いが入ってくる。
コレって集中力鍛えるのにもいいかもね。忍者修行にはもってこいじゃない? まあ、忍者になる気なんてサラサラないけどさ。
夢中になって磨いていると、突然ハルのお部屋に常駐していると思われる侍女さんがガターン、とデカい音を立てたようだった。
こちらも集中していたために、一瞬気を抜いて、マトモにそちら側、つまりベテラン侍女さん側に顔を向けた。
そして最悪なことに、バッチリと目が合った先に見えた顔はなんと、目をまん丸にしたミリィちゃんだった。
「やっ……」
ヤバい……口をついて出そうになった言葉を両手で押さえすぐに顔を隠したのだが、たぶんアウトだろう。隙をみてここから逃げ出さないと大騒ぎになりそうな予感がする。
出口は……と部屋を見回すと随分と離れたところにあった。夢中で拭き拭きしているうちに、ドンドン奥の方まで移動してきてしまったのだろう。
くそっ、失敗した。
「どうしたの?」
その音に反応してか、別室で作業していたハルがヒョイと顔を覗かせて、こちらの部屋へ戻ってきた。
ハルの問いかけにハッとなったミリィちゃんが動揺を隠しながら対応する。
「失礼しました。少し手元が狂って」
「ミリィが失敗するなんて珍しいね。ケガしてないならいいよ。毎日付き合ってもらってるから、疲れたんなら早めにあがって?」
ハルが労うような言葉をかけて、ミリィちゃんと会話してるのを背中で聞いて、ゆっくりと移動を始める。
ここから出口までの動線の中にハルが入って来なければ、背中を向けっぱなしで出られるはず。
ミリィちゃんにはあとで言い訳するとして、ハルに騒がれないようにフェイドアウトするぞ。気配を消して。忍者の本領発揮よ!
こっそりミリィちゃんの方を盗み見ると、戸惑いの表情をしながら、ハルとのやりとりをしているようだ。以前よりずいぶんと親しげな様子で、ハルからは優しい雰囲気が伝わってくるようだ。へえ、なんだか私の知らない間に仲良くなってんじゃん……て、今はそんなことより逃げの一手だ。
ヤバいヤバい。私はこっそりと顔の前でバッテンを作り、ミリィちゃんにだけ見えるようにしてみた。私の方は見ないでって意味で送ったんだけど、彼女にはその意味がうまく伝わらなかったようだ。完全に私を凝視して小首を傾げている。
明らかにミリィちゃんの態度がおかしかったのを気にしてか、ハルがミリィちゃんの視線の先にいる私に近づいてきて、トンと肩に手をかけてきた。
「ひっ……」
心臓が縮みあがるかと思う恐怖を感じ、小さな悲鳴が口から飛び出す。肩にかかる手の重圧は実際の重さとは違って、ズッシリと重く、絶対に逃がさない、という意思まで伝わってくるようだった。
これはアレだ、ヤバいヤツだ。
たぶん今のハルには、私は敵認識されているのだろう。捕まえた、とでも思っているのか、肩にかかる手はビクとも動かない。
肩をグイッと引かれて正面を向かされた私は、とてもいい笑顔の、しかし目の奥が絶対笑っていないハルとのご対面となった。
「ミリィはあがっていいよ? あとはこちらの侍女さんに……て、え? あ? はああ?」
慌てたハルが私から飛びのいて、ミリィちゃんと私を交互に見ながら、バタバタと手を上下させている。
ミリィちゃんはミリィちゃんで、両手で自分の口元を覆い、ハルと私を見ながらオロオロとしている。
……終わった……
楽しい楽しい潜入生活が。軟禁状態のお嬢様扱いされない、私の楽園生活が……
一緒に仕事をしていたマリアさんは、なぜそんな事態になっているのか理解できなかったようで、戸惑いの表情を浮かべている。
しかし、私のあまりの落胆ぶりに、同情とも、憐れみともとれる視線をチラリとくれる。
私の張りつめていた緊張が、一瞬でプツリと切れて、ダランと体から力が抜けた。
「ああ……あーあ……」
ガックリと俯いて、その場にペタッと座り込み、深々とため息をついた。
しばらく飾り棚やソファを磨いていたら、これが意外と真剣になる。乾拭きしてツヤが出るのが面白くて、ついつい気合いが入ってくる。
コレって集中力鍛えるのにもいいかもね。忍者修行にはもってこいじゃない? まあ、忍者になる気なんてサラサラないけどさ。
夢中になって磨いていると、突然ハルのお部屋に常駐していると思われる侍女さんがガターン、とデカい音を立てたようだった。
こちらも集中していたために、一瞬気を抜いて、マトモにそちら側、つまりベテラン侍女さん側に顔を向けた。
そして最悪なことに、バッチリと目が合った先に見えた顔はなんと、目をまん丸にしたミリィちゃんだった。
「やっ……」
ヤバい……口をついて出そうになった言葉を両手で押さえすぐに顔を隠したのだが、たぶんアウトだろう。隙をみてここから逃げ出さないと大騒ぎになりそうな予感がする。
出口は……と部屋を見回すと随分と離れたところにあった。夢中で拭き拭きしているうちに、ドンドン奥の方まで移動してきてしまったのだろう。
くそっ、失敗した。
「どうしたの?」
その音に反応してか、別室で作業していたハルがヒョイと顔を覗かせて、こちらの部屋へ戻ってきた。
ハルの問いかけにハッとなったミリィちゃんが動揺を隠しながら対応する。
「失礼しました。少し手元が狂って」
「ミリィが失敗するなんて珍しいね。ケガしてないならいいよ。毎日付き合ってもらってるから、疲れたんなら早めにあがって?」
ハルが労うような言葉をかけて、ミリィちゃんと会話してるのを背中で聞いて、ゆっくりと移動を始める。
ここから出口までの動線の中にハルが入って来なければ、背中を向けっぱなしで出られるはず。
ミリィちゃんにはあとで言い訳するとして、ハルに騒がれないようにフェイドアウトするぞ。気配を消して。忍者の本領発揮よ!
こっそりミリィちゃんの方を盗み見ると、戸惑いの表情をしながら、ハルとのやりとりをしているようだ。以前よりずいぶんと親しげな様子で、ハルからは優しい雰囲気が伝わってくるようだ。へえ、なんだか私の知らない間に仲良くなってんじゃん……て、今はそんなことより逃げの一手だ。
ヤバいヤバい。私はこっそりと顔の前でバッテンを作り、ミリィちゃんにだけ見えるようにしてみた。私の方は見ないでって意味で送ったんだけど、彼女にはその意味がうまく伝わらなかったようだ。完全に私を凝視して小首を傾げている。
明らかにミリィちゃんの態度がおかしかったのを気にしてか、ハルがミリィちゃんの視線の先にいる私に近づいてきて、トンと肩に手をかけてきた。
「ひっ……」
心臓が縮みあがるかと思う恐怖を感じ、小さな悲鳴が口から飛び出す。肩にかかる手の重圧は実際の重さとは違って、ズッシリと重く、絶対に逃がさない、という意思まで伝わってくるようだった。
これはアレだ、ヤバいヤツだ。
たぶん今のハルには、私は敵認識されているのだろう。捕まえた、とでも思っているのか、肩にかかる手はビクとも動かない。
肩をグイッと引かれて正面を向かされた私は、とてもいい笑顔の、しかし目の奥が絶対笑っていないハルとのご対面となった。
「ミリィはあがっていいよ? あとはこちらの侍女さんに……て、え? あ? はああ?」
慌てたハルが私から飛びのいて、ミリィちゃんと私を交互に見ながら、バタバタと手を上下させている。
ミリィちゃんはミリィちゃんで、両手で自分の口元を覆い、ハルと私を見ながらオロオロとしている。
……終わった……
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一緒に仕事をしていたマリアさんは、なぜそんな事態になっているのか理解できなかったようで、戸惑いの表情を浮かべている。
しかし、私のあまりの落胆ぶりに、同情とも、憐れみともとれる視線をチラリとくれる。
私の張りつめていた緊張が、一瞬でプツリと切れて、ダランと体から力が抜けた。
「ああ……あーあ……」
ガックリと俯いて、その場にペタッと座り込み、深々とため息をついた。
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